MLSS計

MLSS計とは

MLSS計とは、液中の浮遊物質 (SS) の濃度を測定する装置のことです。

主に水処理分野で用いられています。下水処理では、活性汚泥を用いた生物処理である、活性汚泥法を採用するのが一般的です。

MLSSとは「Mixed Liquor Suspended Solids」の略で、処理装置に流入する下水と返送汚泥の混合液中の浮遊物質のことを指します。MLSS濃度は下水処理装置内の微生物量の目安になるため、溶存酸素量と並ぶ重要な計測項目です。 

MLSS計の使用用途

MLSS計は水処理分野において、活性汚泥法の機能を管理するために使われます。MLSS濃度とは、活性汚泥法を用いた処理施設の維持管理基準として重要視されており、適正な値に保持することが法令で定められています。

活性汚泥法に用いられるのは、有機物を栄養源とする菌です。微生物量に対して有機物が多すぎると、有機物が分解しきれないことに加え、菌が過剰に分裂してフロックの沈降性が悪化します。反対に有機物が不足していても、自己消化によってフロックが崩れ、沈降性が悪化することが知られています。

微生物量の指標となるMLSS濃度を測定し、有機物量に合わせて管理することで、処理施設の機能を最大限発揮することが可能です。 

MLSS計の原理

MLSS計は、光の散乱現象を利用してMLSS濃度を測定する装置です。MLSSを含む液に光を入射すると、MLSSによって光の散乱が起こります。MLSS濃度が高くなるにつれて透過光の量は少なくなり、反対に散乱光の量は多くなります。

このような理由から、透過光または散乱光、もしくは両方の光量が分かれば、MLSS濃度を求めることが可能です。なお、市販のMLSS計の多くは、透過光測定方式か散乱光測定方式を採用しています。

1. 透過光測定方式

透過光測定方式は、測定セルに導入したMLSS含有液に対して光源ランプからの光を入射し、透過光を測定する方式です。入射光量が変動すると測定誤差が生じるため、受光器を設けるなど、光源の光量を一定に保てるように設計されています。

2. 散乱光測定方式

散乱光測定方式は、測定液に直接光を入射し、MLSSによる散乱光を測定する方式です。透過光測定方式と同じく、入射光量の変動が誤差の原因となるため、2個の受光器を用いた二重散乱光比較方式が用いられます。 

MLSS計の選び方

1. 測定原理

MLSS計には膜フィルター法や固形物回転法など、さまざまな測定原理があります。目的や用途に応じて適した原理を選ぶことが重要です。精度や再現性、操作の容易さなどを考慮し、選択します。

2. 測定範囲

対象となる水処理プロセスのMLSS範囲に適した測定範囲を持つMLSS計を選びます。一般的なMLSS範囲は、数mg/Lから数g/Lまで広範囲にわたります。測定範囲がプロセスの要件に合っていることを確認します。

3. 精度と信頼性

MLSS計の精度と信頼性は、正確なデータ収集とプロセスの評価に不可欠です。高い精度と信頼性を持つMLSS計を選択することで、正確なデータを得ることができます。また、信頼性が高いメーカーや製品を選ぶことで、長期間にわたって安定した測定が可能になります。

4. 操作性とメンテナンス

MLSS計の操作が簡単で使いやすい製品を選ぶことが重要です。また、定期的なキャリブレーションやメンテナンスが容易に行えるMLSS計を選択することで、正確な測定と安定した性能を維持できます。

MLSS計のその他情報

1. MLSS計の使い方

MLSS計の一般的な測定方法

  1. 電源を入れます。
  2. プローブを検水に入れ、センサーがつかるまで沈めます。
  3. 指示値の安定を持ち、安定したら指示値を読み取ります。表示される値はMLSS計によって異なるので、必要に応じた定数や値をかけて指示値を求めます。
    指示値のふらつき緩和機能を持つMLSS計もあります。

界面の測定方法

  1. 電源を入れます。
  2. プローブを検水に入れ、センサーがつかるまで沈めます。
  3. MLSS測定値が大きく変化した点の水深指示値を読み取ります。

界面ランプを用いた界面測定方法

  1. 界面判断濃度を設定します。
  2. 検水にプローブをゆっくりと沈めます。
  3. 界面ランプが点灯した際の水深の指示値を読み取ります。

2. MLSS計の校正

MLSS計の校正の実施をする場合は下記の通りです。

  • 検出器を交換した時
  • プリズムアセンブリを交換した時
  • MLSS計の測定誤差が許容値を超えた時
  • 定期的な保守実施後

なお、校正の方法は以下の2つあります。

実液校正法
測定液を手分析もしくは、基準計器で測定し得られた値に合わせる校正法です。正確なMLSS測定にはこの校正方法が必要です。

この校正には3つの校正手順があります。

  1. MLSSの値は測定する液体の性質・状態によって異なるので、測定範囲の100%付近の測定液を採取し100%となる点を合わせます。
  2. 100%点の校正に用いた液体を希釈し、50%点を合わせます。
  3. 水道水を用いて0%点を合わせます。

簡易校正法
簡易校正法では、とセットの校正板を使用します。上記の実液校正法を実施した直後に校正板を検出器に取り付けます。その時のMLSS値を校正板に記入します。

次の校正は、校正板に記録されている値に合わせるように実施します。この校正法は定期的な保全の際に採用される方法です。値が記入済みの校正板は、他のMLSS計に転用できません。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jswe1978/9/12/9_12_771/_pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/denkiseiko1925/47/3/47_3_183/_pdf/-char/ja 
https://www.yokogawa.co.jp/library/resources/faqs/an-mlss-06-calibration/
http://www.iijima-elec.sakura.ne.jp/manual/im100p.pdf

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