金属繊維とは
金属繊維とは、細く繊維状にした金属のことです。
金属繊維は直径10μm以下から200μm前後まで、幅広く製造されています。主に、引抜法・溶融紡糸法・切削法によって製造可能です。最近では、CVD法などの新しい製造技術も開発されています。
古くから装飾用に金糸や銀糸などが使用されていました。現在では複合材料の発達によって、繊維状材料への注目が高まっており、ステンレス・アルミニウム・鉄・ニッケル・銅・タングステン・モリブデン・ベリリウムなど、様々な種類の金属繊維が生産されています。
金属繊維の使用用途
金属繊維は、主に、複合材・強化材・ろ過材・除電など、特殊な分野で使用されています。その他にも、金属繊維の一種であるステンレス繊維は、織物などに混織させて、帯電防止用に使われる場合があります。さらに、金や銀は装飾用として、鉄は綿状にして研磨用に利用可能です。
金属繊維は繊維強化複合材料として、釣り竿やゴルフシャフトの補強材など、身近な材料にも用いられています。また、錆びにくく耐久性にも優れているため、各種フィルターにも使われています。そして、金属繊維の導電性を活かし、電磁波シールドアイテムとしても使用可能です。
金属繊維は硬さがあり、皮膚への刺激が強い恐れがあるため、あまり衣類には使用されません。ただし一部ブラジャーカップの補形材やワイヤーなどに利用される場合があります。
金属繊維の原理
1. 引抜法
金属繊維の製造方法の一つである「引抜法」は、金属の線材を、ダイスと呼ばれる型に通して引き伸ばしていく方法です。金属の線材を通す際に、少しずつダイスを小型のものに替えながら引抜を繰り返して、金属繊維を細く成形していきます。
2. 溶融紡糸法
「溶融紡糸法」では、金属を溶かし、溶けた金属をノズルから押し出して、金属を繊維状に成形します。
3. 切削法
「切削法」は、金属の薄い板を、切削装置の主軸に巻き付け、金属板の端を切り落として、金属繊維を製造する方法です。
金属繊維の種類
金属繊維は用途に応じて、様々な形状で流通しています。具体的には、金属繊維の束である「トウ」や、綿状の「ウェブ」、ウェブをシート状に加工した「ニードルパンチウェブ」、ウェブを焼結して多孔質体とした「焼結品」などの状態があります。
焼結体は透過性に優れ、耐熱性や耐腐食性が高いです。ポリマー繊維から構成されるポリマーペレットや顆粒もあります。繊維の束はサイジングで接着されて、互換性がある押出コーティングが適用されます。従来の織物繊維と同じように、不織布やフェルトも金属繊維で製造可能です。紡績の工程でエンドレスステンレス鋼繊維の束を糸へ変えられます。対衝撃性や導電性を改善するため、複合材料の補強繊維としても使用可能です。
金属繊維の選び方
金属繊維の特徴として、高導電性や高熱伝導性が挙げられます。粘り強さがあり、繊維が引き伸ばしやすく、切れにくいです。さらに、強度が高く、耐熱性にも優れているため、産業資材用途に適した繊維と言われています。
その一方で、一般衣料に使用する繊維と比較すると、金属繊維は硬いため、肌に直接触れるような用途では使用しにくい素材です。金属繊維は何度も折り曲げると金属疲労が生じ、強度が低下するなどの課題も挙げられます。
金属繊維の構造
金属繊維の製造で最も多く使用されている技術は、集束伸線です。コンポジットワイヤーと呼ばれる状態に数千ものフィラメントを束ねて、型の中を引っ張り抜いて製造可能です。覆われているチューブを酸に溶解させると、それぞれの金属長繊維が得られます。コンポジットワイヤーが各繊維の求める細さになるまで、工程を繰り返します。
集束伸線法では、数千メートルの長繊維束も製造可能です。繊維の断面形状は八角形になり、技術の洗練によって太さのばらつきが少なくて均質な繊維が得られます。最近では、200nm以下の細さでも作れるようになりました。