ダイマー酸とは
ダイマー酸 (英: Dimer acid) とは、淡黄色の液体です。
炭素数36(C36)のアルキル基をもつジカルボン酸です。
「二量体酸」あるいは「ダイマ酸」とも呼ばれています。リノール酸やオレイン酸などの植物油脂を原料とし、C18不飽和脂肪酸の二量化により生成されます。また、廃食用油リサイクルで得られる植物油脂も原料になります。
なお、ダイマー酸は、原料の脂肪酸の種類、重合方式などにより生成物の構造が大きく異なります。工業製品として販売されている「ダイマー酸」は、製品ごとに二量体以外の三量体などの含有量が異なることから品質に差異があります。
ダイマー酸の使用用途
ダイマー酸は、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂の改質剤として、エポキシ樹脂硬化剤のポリアミドアミンや熱可塑性ポリアミド樹脂などの原料として用いられています。最終的には、塗料、インキ、接着剤などに使用されます。
また、ダイマー酸が有する柔軟性を利用して、潤滑剤や切削油としても用いられています。このほか、腐食防止剤や防錆剤の添加物として、あるいは肌からの水分の蒸発を防ぎ、うるおいを保つ化粧品の閉塞剤としても使用されています。
ダイマー酸の性質
ダイマー酸のその他情報
1. ダイマー酸の製法
ダイマー酸は、ポリ不飽和脂肪酸を高温に加熱すると重合反応が起こり生成します。触媒やアルカリを加えることで、収率が改善する場合もあります。具体的には、リノール酸を含む大豆油やトール油の脂肪酸を少量の水とともに、加圧下300℃に加熱する方法、オレイン酸などのモノ不飽和脂肪酸を原料に少量の結晶粘土鉱物を添加して180℃から260℃に加熱する方法などがあります。
2. ダイマー酸の反応
ダイマー酸の化学反応は、カルボキシル基とそのアルファ位置の炭素と不飽和結合の三ヶ所で起こります。カルボキシル基では、二官能基のため他の多官能性化合物と反応してポリマーを形成します。アルコールやポリオールに対してはジエステルやポリエステルを形成し、ポリアミンに対してはポリアミド樹脂を生成します。他にも、ケン化反応、還元反応、酸クロリド反応などが起こります。
アルファ位置の炭素ではハロゲン化が、不飽和結合ではハロゲン化や水素添加、スルホン化、エポキシ化反応が起こります。
3. 法規情報
4. 取扱いおよび保管上の注意
取扱い及び保管上の注意は、下記の通りです。
- 容器を密栓し、直射日光を避け冷暗所に保管する。
- 引火の可能性があるため、炎や高温のものから遠ざける。
- 高温で空気と反応して爆発性混合物を生じるため、高温条件を避ける。
- 揮発性の性質があるため、ヒュームや蒸気を吸わないように注意する。
- 屋外や換気の良い区域のみで使用する。
- 使用時は保護手袋、保護眼鏡、保護衣、保護面を着用する。
- 取扱い後はよく手を洗浄する。
- 皮膚に付着した場合は、石鹸と水で洗い流す。
- 眼に入った場合は、水で数分間注意深く洗う。
参考文献
「ダイマー酸について」
日本油脂(株)鈴木慶一
https://www.jstage.jst.go.jp/article/yukigoseikyokaishi1943/25/2/25_2_180/_pdf