タンタル酸リチウムとは
タンタル酸リチウムとは、「酸化タンタルリチウム」とも呼ばれている、三方晶系イルメナイト類似構造を持つ強誘電体です。
タンタル酸リチウム単結晶は、比較的安価に得られることや、光学的な特性が優れていることから、非線形光学効果および電気光学効果などを利用した各種光学素子として用いられています。
特に、タンタル酸リチウムを用いた波長変換デバイスは、レーザープロジェクタやレーザーディスプレイなどの光学機器における、高出力の緑色レーザーを得る重要な部品として利用されています。
タンタル酸リチウムの使用用途
タンタル酸リチウム単結晶は、圧電性、焦電性、非線形光学効果を有しています。この特徴を利用して、電子光学、核融合などの様々な分野で利用されています。代表的な例は以下の通りです。
1. 表面弾性波フィルター
表面弾性波 (SAW) フィルターとは、携帯電話やTVなどの周波数選択フィルターにおいて圧電素子に使用される基板です。圧電体の薄膜、もしくは基板上に形成された規則性のあるくし型電極により、特定の周波数帯域の電気信号を取り出すことが可能です。
くし型電極 (IDT) の構造周期と圧電体や電極の物性により、中心周波数や帯域を決めることができます。
2. 圧電素子
圧電 (ピエゾ) 素子とは、圧力を加えることで電圧が発生する圧電効果を有する素子のことです。また、圧電素子は電圧をかけると変形する性質があります。
通常の状態では、空気中のイオンを吸着し、結晶表面の電荷は中和されているため、電圧は発生しません。外から圧力が加わり、結晶が変形すると、分極の状態が変化し電圧が発生します。
圧電素子の用途は、ガスコンロ、ライター、振動センサー、インクジェットプリンタ、圧電スピーカー、ピエゾドライバ、アクチュエーターなどです。また、床発電システムとしての開発も進んでいます。
3. 波長変換素子
波長変換素子とは、レーザー光の波長を変換する素子のことです。波長変換素子を利用することで、使用するレーザーを目的とする出射波長に合わせて、光の波長を変換可能です。
波長変換素子にタンタル酸リチウムを使用すると、高出力の緑色レーザーを得ることが出来ます。
4. 焦電材料
焦電とは、温度変化によって誘導体の分極が変化する現象のことです。ポーリング処理 (減圧下で分極を一方向に揃える処理) を行ったタンタル酸リチウムは焦電性を持ち、温度を変化させることでX線を発生させる性質を持ちます。
また、B.Naranjoらによって核融合可能であることが報告されており、中性子の発生に関する研究が盛んに行われています。
タンタル酸リチウムの性質
タンタル酸リチウムは、化学式LiTaO3、分子量235.9、CAS番号12031-66-2で表わされる白色の粉末です。
融点は1,650℃、不燃性であり、熱的に非常に安定した物質です。水に不溶で、混触危険物質に関する情報は現在のところありません。
危険有害な分解生成物は、酸化リチウムおよびタンタル酸化物です。分解性、水生生物への有害性、海洋汚染に関するデータはありません。
タンタル酸リチウムのその他情報
1. 安全性
非危険物であり、GHS分類についても該当する項目はありません。また、不燃物であることから、火災時の消火においてタンタル酸リチウムについて特に考慮すべきことはありません。
製品の容器は密閉し、乾燥した冷暗所に保管することで、安全に保管することができます。
2. 取り扱い方法
作業場所は、粉塵が発生する可能性がある場合は、発散源密閉装置、もしくは局所排気設備等の排気設備の設置が必要です。作業者は、呼吸用保護具、防塵マスク、保護眼鏡、保護面 (防災面) 保護手袋、その他必要に応じて保護服、長靴、前掛け、アームカバーを着用し作業を行います。
人体への影響は現在のところ確認されていませんが、以前情報が少なく不明な点が多いです。人体への接触、摂取は避けて取り扱う必要があります。