グリース

グリースとは

グリース

グリースとは、基油に増稠剤を混ぜ合わせてジェル状にした潤滑剤です。

グリスとも呼ばれ、具体的にはJIS K2220:2013で定義されます。使われる基油によって鉱油系グリースと合成油系グリースに分けられ、鉱油系グリースが一般的です。

グリースに特徴を持たせるために、酸化防止剤や耐荷重添加剤などの添加剤を加えることもあります。

グリースの使用用途

グリースは産業において、幅広い機械装置に適用される潤滑剤です。以下は、グリースの使用用途一例です。

  • 軸受や装置機械の可動部分の摩擦防止
  • ジョイント部分へ塗布し密着性の向上
  • 機械の放熱補助

特に軸受の潤滑剤性能は、自動車産業や精密機器業界で重要な役割を担います。また、機械の放熱を補助するグリースは放熱グリースと呼び、コンピュータのCPUヒートシンクなどに使用されます。

グリースの原理

グリースは、石けん分子からなる増稠剤が三次元の網目状構造を形成し、基油を取り込むことで構成されます。グリースに応力がかかることで網目状構造が歪み、基油が滲み出すことで潤滑の役割を果たします。異物がグリースに接触しても網目状構造は大きく乱れず構造を保持するため、潤滑剤としての機能が大きく損なわない点が特徴です。

なお、回転中のグリース評価は流体の非ニュートン性を考慮する必要があります。潤滑油は低速の応力ではくさび効果が生じず、油膜が切れてしまいます。一方、グリースは低速でも一定の粘性を示すため、せん断面での膜厚を保つことが可能です。

グリースの種類

増稠剤の種類によって、石けん系グリースと非石けん系グリースにも分けられます。とりわけリチウム石けん基グリースは、現在でも幅広い分野で利用されています。

また、さまざまな種類に分類されますが、代表例は以下の通りです。

1. モリブデングリース

二硫化モリブデンを配合したグリースです。極圧性が高いことが特徴で、重荷重部に多く用いられます。ただし、粘度が比較的低いので、グリースの流出には注意が必要です。

2. リチウムグリース

原料基油にステアリン酸リチウムやひまし油の硬化脂肪酸のリチウム塩を増稠剤として分散させた石けん系のグリースです。耐熱温度は約130℃です。1938年に耐水性・耐熱性ともに優れたリチウムグリースが開発されて以降、万能グリースとして幅広い分野において使用されています。

耐水性・機械的安定性に優れますが、いずれも非石けん系のウレアグリースと比較して劣ります。しかしながら、ウレアグリースは高温下やせん断によって硬化・軟化するものがあるため、特異な用途でない限りリチウムグリースを用いるのが一般的です。低速から高速まで、幅広い回転速度での利用に適しています。

ゴムや樹脂に悪影響を与える場合もあるため、ゴム製品や樹脂製品にはラバー用と明記された製品を使用します。

3. シャーシグリース

カルシウム石鹸などを増稠剤としたグリースです。自動車に多く使用されており、汎用性の高いのが特徴です。リチウムグリースに比べて性能は劣りますが、比較的安価で入手できるグリースです。

4. シリコングリース

シリコンオイルを使用したグリースです。ゴムや樹脂に悪影響が出にくいため、ゴム製品や樹脂製品に多く用いられます。

グリースの使い方

グリースの使用方法は塗布、手動給脂、自動給脂などがあります。

1. 塗布

塗布は、潤滑したい部分に手で塗布する方法です。機器によっては塗布を指定されている場合があります。

2. 手動給脂

手動給脂は、リニアガイドボールネジなど内部にグリースを給脂する際に行う方法です。内部に給脂が必要な機器にはグリースニップルと呼ばれる給脂口がついており、グリースガンを使用して給脂します。

3. 自動給脂

自動給脂は、グリースポンプによって定期的に自動給脂するシステムです。硬質チューブなどで給脂位置までグリースを供給します。

配管内に定量バルブを組み込み、グリースの供給量を一定にするのが一般的です。グリースポンプには一般的に電動ポンプが使用され、制御機器からの指令で定期的に給脂してメンテナンス工数を削減しつつ、給脂忘れによる設備トラブルを防止します。

グリースのその他情報

1. グリースのメリット

潤滑材と比較したときのメリットは以下の通りです。

  • 使用中の損失が少なく、交換および給油回数が少なくて済む
  • 漏れが生じにくく保管しやすい
  • 低速回転、衝撃荷重の条件下でも使用できる
  • グリースに異物が混入した場合でも、グリース内で保持され機械装置を傷つけない
  • 少量の水が混入しても潤滑材として使用できる

2. グリースのデメリット

潤滑材と比較したときのデメリットは以下の通りです。

  • 交換および掃除する際の手順が煩雑
  • 放熱しにくいため、超高速回転での利用には適していない
  • 異物の除去が困難

参考文献
https://kikakurui.com/k2/K2220-2013-01.html
https://www.eneos.co.jp/company/rd/technical_review/pdf/vol51_no02_06.pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sekiyu/2008f/0/2008f_0_136/_article/-char/ja/
https://f-gear.co.jp/howto/3063/
https://www.kyusha.net/?p=86

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