パラジウム触媒とは
パラジウム触媒 (英: palladium catalyst) とは、パラジウムを含む化合物を触媒用途に製造したものです。
パラジウム (元素記号: Pd) とは、原子番号46の白金族元素の1つです。パラジウム触媒は、有機合成には欠かせない材料で、創薬・天然物合成・高分子合成などの分野で、幅広く利用されています。
特に2010年にノーベル化学賞を受賞した、パラジウム触媒クロスカップリング反応は世界的に有名です。クロスカップリング反応とは、2つの化学物質を選択的に結合させる反応を指します。パラジウム触媒には数多くの種類があり、使用する原料や反応に合わせた使い分けが必要です。
パラジウム触媒の使用用途
パラジウムは、触媒・ 歯科用材料・電気・電子工業用部品・宝飾品などに使われています。パラジウムは、自身の体積の935倍の水素を内部に吸着できるので、水素吸蔵合金の用途もあります。
パラジウムを主成分とした化合物を、触媒用途に製造したものがパラジウム触媒です。触媒はそれ自身は反応前後で変化しませんが、反応物の反応速度を変化させます。反応物と反応中間体を形成し、この反応中間体を介して反応が進行します。
パラジウム触媒は有機合成に使用されることが多いです。特にクロスカップリング反応を使って、目的物を合成する際に使用されます。医薬品合成や天然物合成などには欠かせない重要な材料です。近年では、自動車エンジンの排ガス浄化用触媒の用途が増加しています。
パラジウム触媒の原理
代表的なパラジウム触媒として、塩化パラジウム・酢酸パラジウム・ホスフィン配位子がついたパラジウム錯体などが挙げられ、種類によって反応性が異なります。これらの触媒は創薬・天然物合成・高分子合成などの分野で、幅広く利用されています。
また、パラジウムは自動車分野の三元触媒に使用されます。三元触媒とは、自動車の排気ガス中に含まれる炭化水素・一酸化炭素・窒素酸化物などの有害物質を除去することができる装置のことです。パラジウム・プラチナ・ロジウムなどの金属が使用されています。
パラジウム触媒のその他情報
1. パラジウム触媒の自動車排ガスの無害化利用
自動車の排気ガスには有毒で環境負荷の高い、窒素酸化物 (Nox) ・一酸化炭素 (CO) ・未燃焼の成分である炭化水素 (HC) が多く含まれています。この有毒な成分を酸化・還元反応により無害な二酸化炭素・水・窒素・酸素に変換するのが触媒であり、パラジウムはここで利用されています。
他にもプラチナやロジウムなどの貴金属元素も触媒として利用されています。パラジウムはガソリン車の触媒を主とするため、より需要が高いです。
パラジウム触媒は、エンジンからの排気を集中させるエキゾーストマニホールドの後に設置されます。排ガスとの接触面積を増やすために、ハチの巣状のハニカム構造をしたセラミックスに、ナノメートルサイズのパラジウム触媒が均一に分散されています。
自動車排ガスの無害化利用でのパラジウム触媒のデメリットは、非常に高価であることと、さらに高温での使用中にセラミックス表面を触媒が移動して集まり、表面積を減らしてしまうため、あらかじめ大量に投入する必要があることです。パラジウム資源の枯渇に対応すため、パラジウム触媒の使用量を減らす研究開発が行われています。
2. パラジウム触媒の価格
パラジウム触媒に使用されるパラジウムは、希少なレアメタルであり、1kg数百万円もする高価な金属です。パラジウム需要のほとんどはガソリン自動車の触媒であるため、ガソリン車の需要が高まれば高まるほど価格は高騰します。
近年、パラジウムの価格は、急激に上昇しています。この要因は、鉱山生産が200t/年であるのに対して、需要が300t/年と需給ギャップが大きいことです。近年の環境規制の厳格化や中国などでのガソリン車需要の上昇はもちろん、ディーゼル車の排ガス対策不正も、ガソリン車需要の上昇を加速させる要因になっています。
パラジウムの産出国は主にロシアと南アフリカで、2017年のデータによると、それぞれ40.5%と37.5%と大部分を占めています。産出国が限られていることで、政情不安などによる供給不足の影響が大きく、さらに最近のロシアでの産出量の激減なども、価格が高騰する原因になっています。
参考文献
https://www.tcichemicals.com/JP/ja/c/12640
http://www.spring8.or.jp/ja/news_publications/research_highlights/no_07/