ベアリングとは
図1. ラジアル荷重とスラスト荷重
ベアリング(英語:Bearing)は、軸(シャフト)などの回転体を正確で滑らかに支持するための機械部品です。軸を回転させると、軸と支持している構造物や支持物は接触しているため、必ず摩擦による抵抗力や摩擦熱が発生し、回転するエネルギーの損失が生じます。その摩擦によるエネルギーの損失と発熱を防ぐためにベアリングを使用します。ベアリング以外にも「軸受」と呼ぶことがあります。
ベアリングは構造の違いにより「転がり軸受」と「滑り軸受」の2種類があります。転がり軸受は転動体を使用し、滑り軸受は油膜を使用する違いになります。
また、ベアリングにかかる荷重方向の違いによって「ラジアルベアリング」と「スラストベアリング」の2種類があります。
ラジアルベアリングは、軸の中心線方向に荷重がベアリングにかかる場合に使用します。
スラストベアリンググ、軸の中心線と垂直方向に荷重がベアリングにかかる場合に使用します。
ベアリングの使用用途
ベアリングは、産業用の軸を回転させる機械、自動車や航空機、鉄道車両、日常生活の中でも家電製品などさまざまな製品に幅広く使用されています。
身近な例では、車やバイクは大小100個以上のベアリングが使用されています。特にエンジンは、多くの回転部がありエネルギー損失を抑えるためにもベアリングが欠かせません。
ベアリングを使用する目的としては主に2つあります。
1. 回転を支持し軸の正確な位置を維持します
2. 回転による摩擦を低減し滑らかな回転を維持します
ベアリングは、その他ありとあらゆる場面で使用されているため、使用例を挙げるのは難しいくらいです。現代ではベアリングのない世界は考えにくく、摩擦のエネルギー損失による石油などの資源消費の低減に大きく寄与しています。
ベアリングの種類
図2. ベアリングの種類
各ベアリングの構造と特徴を以下に説明いたします。それぞれのベアリングには、荷重のかかる方向の違いにより「ラジアルベアリング」と「スラストベアリング」の2種類があります。またそれぞれのベアリングに、軸に多少のたわみが発生するような場合に使用する「自動調心軸受」があります。
1. 転がり軸受
一般的な転がり軸受の構造は、軸と接する「内輪」、ボールやころといった「転動体」、転動体を保持する「保持器」、外部ハウジングと接する「外輪」で構成されています。転がり軸受には、「ボールベアリング(玉軸受)」と「ローラーベアリング(ころ軸受)」の2種類があります。
1) ボールベアリング(玉軸受)
図3. ボールベアリング (玉軸受)
転動体に球状のボール(玉)を使用しているベアリングです。比較的に高速回転で低荷重の軸受として使用します。構造や使用方法の違いで「深溝ボールベアリング(深溝玉軸受)」「アンギュラボールベアリング(アンギュラ玉軸受)」「自動調心ボールベアリング(自動調心玉軸受)」「スラストボールベアリング(スラスト玉軸受)」などがあります。
2) ローラーベアリング(ころ軸受)
図4. ローラーベアリング (ころ軸受)
転動体に円筒、円すい、針状のローラー(ころ)を使用しているベアリングです。比較的に大きな荷重の軸受として使用します。構造や使用方法の違いで「ローラーベアリング(円筒ころ軸受)」「テーパーローラーベアリング(円すいころ軸受)」「自動調心ローラーベアリング(自動調心ころ軸受)」「スラスト自動調心ローラーベアリング(スラスト自動調心ころ軸受)」などがあります。
3) ニードルベアリング(針状軸受)
図5. ニードルベアリング (針状軸受)
ローラーベアリングの一種ですが、ローラが針のように細いのが特徴です。ニードルベアリングは「ラジアルベアリング」と「スラストベアリング」があります。
2. 滑り軸受
滑り軸受は、ベアリングにはボールやころといった転動体が存在せず、含油した金属や摩擦抵抗の小さい樹脂を円筒形に加工し製作されています。一般的に「メタル」や「ブッシング」などと呼ばれています。形状の違いにより「メタル、ブッシング(平軸受)」「フランジメタル、フランジブッシング(平フランジ軸受)」などがあります。
図6. メタル・ブッシング (平軸受)
転がり軸受は、小~中負荷荷重の場合に使用され、消耗品として定期交換します。あらかじめグリース(潤滑剤)が封入されているタイプ以外では、充填するオイル(潤滑油)の定期的な点検と入れ替えなどの管理を適切に行う必要があります。
ベアリングの軸への組み込みは、軸とのはめ合い(ベアリングと軸またはハウジングの隙間の大きさによる固定直の相違)によっては、ベアリングを加熱し焼きばめにより軸に組み込み必要があります。
滑り軸受は、大負荷荷重の場合に使用され、ベアリングと軸の間は油膜により金属接触は発生しないため、使用環境とメンテナンスが良い場合には永久的に使用することが可能です。ただし摩耗や損傷が発生した場合は交換します。一般的な転がり軸受と滑り軸受の比較は以下の表を参照してください。
図7. 転がり軸受と滑り軸受の一般的な比較