リセッタブルヒューズ

リセッタブルヒューズとは

リセッタブルヒューズ

リセッタブルヒューズとは、ヒューズとして過電流を防止する役割を果たしつつ繰り返し使用できる電子部品です。

ポリスイッチまたはポリヒューズとも呼ばれます。導電性ポリマーを使用したPTCサーミスタで、ヒューズとは基本的な原理が異なります。ヒューズは過電流が流れると加熱によってエレメントが切れることで回路を遮断します。

それに対して、リセッタブルヒューズは過電流によって素子内部の温度が高くなり、抵抗値が増大することで電流を制限します。ヒューズよりも小型な製品が多いため省スペース化が可能で、構造が壊れにくく衝撃や振動にも強いです。

リセッタブルヒューズの使用用途

リセッタブルヒューズは、繰り返し過電流が流れるような回路の保護に使われています。高密度の実装で故意に短絡させる場合にも使用されます。以下は、リセッタブルヒューズの使用用途一例です。

  • 小型モーターやスイッチング電源
  • 衛星放送受信機
  • 火災報知器
  • 電気カーペット
  • スマートフォンやタブレットなどの通信機器
  • コンピュータ

ただし、リセッタブルヒューズは電子部品を使用するため、大電流回路には不向きです。高圧回路保護用の限流ヒューズなどには、エレメント溶断によるヒューズが使用されます。

リセッタブルヒューズの原理

リセッタブルヒューズは、導電性ポリマーが金属の電極箔にはさみこまれている構造です。電極箔に接続するようにはんだ付けもしくは溶接でリード線が取り付けられています。PTCサーミスタと同じ原理であり、電流が大きくなると抵抗が大きくなる性質を持っています。

導電性ポリマーは、絶縁体ポリマーにカーボンやニッケルなどの導電性粒子を分散させています。量や材質を変化させることで、抵抗値の調整が可能です。抵抗値変化は10,000から1,000,000倍にも達する場合もあります。

過電流によりリセッタブルヒューズ内部温度が高くなると抵抗値が増大し、電流を制限します。リセッタブルヒューズはヒューズと異なり溶断せずに、内部の温度が下がればまた電流の流れが元に戻ります。そのため、繰り返し使用することが可能です。

電流値が高くなって温度が変化すると、急激に抵抗値が増加する性質があります。これは導電性ポリマーが融解するため発生する現象です。ただし、微小な電流の増加では反応性が低い場合があります。

リセッタブルヒューズの選び方

リセッタブルヒューズは定格電圧、定格電流、実装方法などを基に選定します。

1. 定格電圧

定格電圧は、リセッタブルヒューズが使用に耐える電圧の高さです。定格電圧を超えて使用すると、回路の破損や焼損などが発生する危険があります。

一般的にはDC72V程度の製品が多く販売されています。定格電圧が高い製品として、AC240Vの製品も市販されています。したがって、耐電圧が400V系統以上の製品が必要な場合は特注することになります。

2. 定格電流

定格電流は、リセッタブルヒューズが使用に耐える電流の高さです。定格電流を超えると抵抗値が高くなり、電流値を制限します。

一般的には数A程度の製品が多く販売されています。市販品は、最大で20A程度が限度です。

3. 実装方法

実装方法は、リセッタブルヒューズを取り付ける方法です。表面実装や差込端子実装などの製品が販売されています。

表面実装
表面実装は基板上にはんだなどで固定する実装方法で、差込端子実装と比較してスペースを取らない利点があります。ただし、表面実装の電子素子は小型の製品が多く、手はんだでの実装は正しい知識と技能を必要とします。

メーカーによっては、手はんだでの性能を保証しない場合も多いです。

差込端子実装
差込端子実装は、リード線をプリント基板に差し込む実装方法です。プリント基板には部品を取り付けやすいようにリード線取付穴が開口されており、そこに差し込んで実装します。さらに、部品を固定するために、取り付け穴にはんだ付けするのが一般的です。

差込端子実装は部品を簡単に実装可能ですが、スペースを多く必要とします。ただし、手作業で部品を実装する予定であれば、差込端子実装を選定する方が無難です。

参考文献
https://www.rs-online.com/designspark/article-18-jp
https://detail-infomation.com/poly-switch/
http://www.op316.com/pdf/fuse/polyswitch_summary.pdf

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