サーマルプロテクター

監修:高野精密工業株式会社

サーマルプロテクターとは

サーマルプロテクターとは、一定の温度を超えると自動的に電流を制御して温度を下げる役割を持つ過熱保護装置の1つです。

モーターや、電池・バッテリーの他、回路や部品の過熱保護、過電流保護、発火防止に使われています。一般的にはバイメタル材を使用し、形状変化によりスイッチの開閉、温度調整を行う仕組みです。ヒューズの場合は過大電流が流れた際に溶断するのに対し、サーマルプロテクターは温度による形状変化を利用していることから、温度が下がると再度通電可能になるという違いがあります。また、スイッチの開閉を行うことから、ON-OFFは瞬時に切り替わる特長をもっています。スマートフォンをはじめとする様々な小型機器の電池や、医療機器やサーバーなど様々な産業機器に使用されています。

サーマルプロテクターの使用用途

サーマルプロテクターは、家庭用から業務用まで様々な電気製品・バッテリー類において過熱防止装置として使用されています。下記は主な使用用途の例です。

  • リチウムイオン電池 (ノートパソコン、タブレット、スマートフォン、電動工具、デジタルカメラなどに使用される)
  • ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池 データサーバー、緊急・非常用バックアップ電源、無線通信機器、(医療機器、などに使用される)
  • ACモーター
  • 各種家電製品 (ヘアドライヤー、コーヒーメーカー、トースター、洗濯機、エアコンファンなど)
  • 電気ヒーター
  • LED照明
  • 変圧器
  • バラスト
  • 業務用の冷凍用圧縮機

これらの製品において、サーマルプロテクターは、過電流や異常な温度上昇から製品を保護し、発火などの事故を未然に防止するために使用されている装置です。

サーマルプロテクターの原理

サーマルプロテクターは、バイメタル材などの、温度によって形状が変化する素材を用いて動作する機器です。回路に接続するリード線や端子・バイメタル材・絶縁キャップなどの外装材から構成されます。使用している機器・回路の温度が上昇すると、材料の熱膨張によりバイメタルシートが曲がり、それによってスイッチまたは接点が開閉する仕組みです。

バイメタル材とは、クラッドメタルの技術を用いて熱膨張係数の異なる異種金属を圧延接合したものです。表と裏で熱膨張係数が異なることにより、温度変化とともに一定の曲率で変形します。サーマルプロテクターで使用されるバイメタル材には、銅と鉄のクラッド材などがあります。

サーマルプロテクターの動作機構では、通常時に閉じている回路の接点を温度の上昇によって開放するものが多いですが、温度の上昇により通常時に開いている回路をクローズにするものもあります。

サーマルプロテクターの種類

1. 概要

サーマルプロテクターは、様々な製品が販売されています。設定温度帯は、5〜150℃、5〜200℃、30〜90℃などの中から様々な製品があり、5℃刻みや10℃刻みで用意されていることが多いです。大きさも様々であり、小さいものでは外形寸法9mm前後のものもあります。

定格電流や最大許容電流なども製品によって異なるため、用途に合わせて適切なものを選択することが必要です。

2. 自動復帰型と自己保持型

温度上昇により接点が開いて回路保護が行われた後の動作については、自動復帰型と自己保持型があります。

自動復帰型とは、設定温度に達して電流が流れなくなったあと、温度が下がって復帰温度になれば自動的に接点が閉じて通電状態になります。

自己保持型は、温度上昇によって達すれば電流が流れなくなった後、温度が下がっても通電状態に戻らない仕組みです。自己保持型の一つの仕組みには、PTCヒーターを内蔵させるものがあります。温度上昇による接点開放と同時に可動接点板がPTCと導通し、回路からの電圧によるPTCの発熱を利用して、バイメタルが接点開放状態を保持します。自己保持の間はPTCを通してサーマルプロテクターに微小の電流が流れます。尚、通電状態にするには、回路を他動的に切断して温度が下降すると復帰します。 

本記事はサーマルプロテクターを製造・販売する高野精密工業株式会社様に監修を頂きました。

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RFIDゲート

RFIDゲートとは

RFIDゲートとは、RFID (英:Radio Frequency Identification) 技術を使用して物体や人物を識別するゲートです。

RFIDは、無線周波数を利用して物体を識別する技術です。タグとリーダーから構成され、タグには情報を記録したチップとアンテナが内蔵されています。リーダーは電磁波を発信し、タグがそれを受信して応答することで、物体の識別や追跡が可能です。

RFIDゲートは、タグを持つ物体や人物が高速で通過しても問題ないため、効率的な処理が可能です。これにより、混雑した場所でもスムーズな流れを確保できます。また、人手を介さずにタグの読み取りやデータの処理が行われるため、作業の効率化やヒューマンエラーの低減が図られます。

RFIDゲートの使用用途

RFIDゲートは様々な業界で使用することが可能です。以下はその一例です。

1. 物流業

倉庫内のすべての商品にRFIDタグを付けることで、リアルタイムでの在庫管理が可能になります。RFIDゲートを通過することで自動的にタグ情報を読み取り、在庫をデータベースに反映する仕組みです。これにより、在庫不足や過剰在庫を防ぎ、正確なリレーションシップを管理することができます。

2. 小売業

小売業界では在庫の正確性と迅速な補充が重要です。RFIDタグを使用することで、商品の個別識別や棚卸し作業の自動化が可能になります。店内でのタグ読み取りにはRFIDゲートを使用し、商品がどの程度売れたか、またはどの棚に商品が不足しているかを瞬時に把握できます。

3. 公共施設

大規模なイベントや施設では、RFIDゲートを使用して入場管理を行う場合があります。チケットやパスにRFIDタグを組み込み、正規の参加者のみがアクセスできるようにします。このシステムにより、入場待ちの列を短縮し、イベント運営の効率を向上させることが可能です。

4. 医療

患者にRFIDタグを付けることで、正確な患者情報の管理が可能になります。これにより、誤った処置や医療ミスを防止し、医療スタッフの業務効率化を図ることができます。また、医療資材の在庫管理にも使用することが可能です。

RFIDゲートの原理

RFIDゲートの基本的な要素はRFIDタグです。このタグには色別情報が記録されており、通常は電池不要です。タグがゲートからの電磁波エネルギーを受信して、それを利用して動作します。

RFIDゲートには、RFIDタグの情報を読み取るRFIDリーダーが組み込まれています。RFIDタグが通過するゲートの近くに配置され、周囲の電磁波を送信します。

このリーダーは、特定の周波数の電磁波を使用して通信を行います。RFIDタグが受信した電磁波エネルギーを使用して内部の回路を活性化し、タグに記録された情報をリーダーに送信する仕組みです。リーダーはこの情報を読み取り、必要に応じてデータベースなどのシステムと連携して処理を行います。

RFIDゲートは受信した情報を解析し、そのタグが正規のものであるかどうかを判断します。これにより、対象物や人物の識別、およびアクセス制御を自動的に行うことが可能です。

RFIDゲートの選び方

RFIDゲートを選ぶ際は、以下を考慮することが重要です。

1. 寸法・重量

RFIDゲートの設置場所や使用環境に応じて、適切なサイズを選ぶ必要があります。設置スペースの制約や通過する対象物の大きさに合わせて選択することが重要です。特に、移動可能なタイプのゲートでは、軽量でありながら十分な安定性を確保することが重要です。

2. 対象周波数帯

RFIDシステムはさまざまな周波数帯で動作します。使用するRFIDタグの種類や通信距離に応じて、適切な周波数帯を選ぶ必要があります。短距離の場合は低周波数帯の製品を選定し、長距離の読み取りが必要な場合は高周波数帯の製品を選定する場合が多いです。

3. インターフェイス

RFIDゲートが接続されるデータベースとのインターフェイスについても考慮します。一般的にはEthernetやシリアルポートなどが使用され、データのリアルタイム送受信が可能です。他のセキュリティシステムなどとの連携を行えることも確認する必要があります。

4. その他機能

RFIDゲートは不正アクセスを防止するためのセキュリティ機能を有する場合があります。不正タグの検出やアラーム機能がその一例です。必要に応じて、様々な機能を有する機器を選定します。

自在アイボルト

自在アイボルトとは

自在アイボルトとは、吊り金具が自由に動くアイボルトです。

自在アイボルトは回転可能な設計をしているため、様々な角度から対象物を取り扱うことができます。これにより、吊荷に対する作業の柔軟性が増します。板状の吊荷を反転させたり、側面にアイボルトを取り付ける際に便利です。

一般的には鋼やステンレス鋼などの耐久性の高い材料で作られており、耐荷重性能も高いです。したがって、角度を変更した場合でも吊荷を安全に吊り上げることが可能です。負荷をかけた際にも安定した性能を発揮します。

自在アイボルトの使用用途

自在アイボルトは様々な用途で使用されます。以下はその一例です。

1. 建築業

建設現場では、高所や特定の位置に建材や機器を正確に配置する必要があります。自在アイボルトを使用することで、クレーンから吊り上げた荷物が自在に回転し、安全かつ効率的に目的地に配置することが可能です。荷物が回転できることで、荷揚げ中に荷物がねじれたりするリスクが軽減され、作業員の安全を確保することができます。

2. 工業

自動車や航空機などの製造業界では、大型部品や構造体を組み立てる際に自在アイボルトが使用されます。エンジンや機体の部品を吊り上げ、組み立てる際に、荷物が回転できることで精密な操作が可能になります。高い耐荷重と安全性が求められる製造現場で、自在アイボルトは荷揚げ作業の効率化と作業員の安全確保に貢献します。

3. 造船業

造船では、船体の大型部品やセクションを移動させる際に自在アイボルトが重宝されます。これにより、船体の組み立て作業が円滑に進行し、効率的な製造が可能です。船体の構造物を吊り上げ、位置を調整する際に、アイボルトの回転機能が特に重要です。

4. エンターテイメント業

コンサートやイベントのステージ設置では、大型の音響機器や照明装置を高所に設置する必要があります。自在アイボルトを使用することで、荷物を安全に吊り上げ、正確な位置に設置することが可能です。

自在アイボルトの原理

自在アイボルトの主な原理は、荷物を吊り上げる際に荷物が自在に回転できることです。通常のアイボルトと異なり、自在アイボルトには回転機構が組み込まれています。これにより、吊り上げた荷物がねじれたり振れたりすることなく、安全かつ確実に操作できます。

一般的にはスチールや合金鋼などの耐荷重性能の高い材料で作られています。一般的なアイボルトと同様に、取り付ける際にはねじ込みで連結する仕組みです。

自在アイボルトの最大の特徴は、荷物を回転する機構を有する点です。一般的にはベアリングが内蔵されていたり、スリーブが配置されていることが多いです。これにより、荷物を吊りながらも自在に回転させることができます。

自在アイボルトの選び方

自在アイボルトを選ぶ際は、以下の要素を考慮することが重要です。

1. ネジ径

自在アイボルトの本体部分には、雄ねじが付属することが多いです。選ぶ際には、取り付け先のクレーンや吊り上げ機器の仕様に合わせて適切なネジ径を選ぶ必要があります。一般的に使用されるネジ径は、M6、M8、M10などがあります。

2. 耐荷重

自在アイボルトは吊り上げ作業で使用されるため、耐荷重性能が非常に重要です。耐荷重は吊り上げる荷物の重量を考慮し、メーカーの仕様書や耐荷重表を参考にして選定します。安全かつ適切な荷重能力の自在アイボルトを選ぶことが必要です。単位はトン (t) またはキログラム (kg) で表されます。

3. 寸法

自在アイボルトの全長やネジの長さも重要な要素です。吊り上げ作業時には、自在アイボルトが適切に取り付けられていることが安全性の確保につながります。全長やネジの長さは、吊り上げ作業の状況や使用する機器に応じて選定します。

4. 材質・仕上げ

自在アイボルトの材質は一般的にはスチールや合金鋼が使用されますが、使用環境や耐久性の要求に応じて選定します。また、表面処理や仕上げも重要で、耐腐食性や耐摩耗性を向上させるために亜鉛メッキや黒染め及び粉体塗装などが施されることがあります。

2色成形

2色成形とは

2色成形とは、2色成形機と呼ばれる専用の射出成形機を用い、異なる材料を一体化させて成形する射出成形工法です。

異材質・異材異色・同材異色など、様々な組み合わせの樹脂素材を成形することができます。他工法では2部品を別々で成形して組合せていたものを、2色成形では成形工程内で一体化して成形機より取出す事が可能です。製造工程において部品点数削減や組立て工数削減などの効果があります。

2色成形の使用用途

1. 概要

2色成形は、様々な製品製造用途で使用されています。2色成形の採用目的には主に下記のようなものがあります。

  • 防塵防⽔部品 (押しボタンやパッキン) と筐体を⼀体成形する
  • 有⾊材と透明材のような異色2層構造を⼀体成形する
  • エラストマーと硬質素材のような触感の異なる素材を一体成形する (グリップ力のある部品と嵌合部)
  • パッキンやボタンのような多機能多部品を⼀体成形する

2. 具体的な製品例

  • ウェアラブルバンド
  • カメラグリップ 
  • 電⼦機器の外装
  • スマートフォン部品
  • バーコードリーダー、リモコンなどのケース類の防塵・防滴パッキン、操作パネルの押しボタンなど
  • 服飾ヒモ留めパーツ
  • 工具等のグリップ
  • 透明材での厚肉成形・表示マークの文字
  • 各種外観部品
  • 車載用内装部品 

透明材での表示マーク・文字は、各種機器の他、車載用オーディオ製品やドアノブなどの文字やマークにも使用されます。また、めっき加工製品においては、めっきが析出するプラスチック (ABS樹脂など) と析出しないプラスチック (PC樹脂など) の組み合わせで生地の2色成形を行うと、設計意図した部分のみに綺麗に部分めっきを施すことが可能です。主に加飾用途などで使用され、車載内装部品をはじめとする様々な製品に使用されます。

2色成形の原理

1. 概要

2色成形機には、2本のノズル、シリンダーがあります。それぞれから金型内部に順次、射出充填することで2層を組み合わせた一体成形製品を製造する仕組みです。一般的な2色成形では、金型の凹側、キャビティの異なる2つの金型を用い、1次型へ射出した後、2次型へ射出する際に180度回転や反転などの工程が加わることが特徴です。

2色成形は、1つの工程で2つの樹脂や異材を組み合わせることからダブルモールドと呼ばれることもあります。

2. 2色成形に使用される素材

2色成形には、様々な樹脂が使用されます。下記は主な樹脂素材の例です。

  • ポリカーボネート樹脂 (PC): 耐衝撃性、耐熱性、耐候性に優れており、伸縮性があるため加工性も良好。
  • アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂 (ABS): 光沢があり、印刷や塗装などの加工が容易。耐熱性、強度、耐油性、耐衝撃性にも優れる。
  • アクリル樹脂 (PMMA) : 高い耐久性と透明性が特徴。
  • アクリロニトリルスチレン樹脂 (AS) : 耐酸性、耐アルカリ性、耐薬品性があり、透明性や耐熱性 (80度〜100度) に優れる。
  • 熱可塑性エラストマー (TPE) : ゴムのような高い弾性を持ち、熱を加えると軟化する。材料の配合によって柔軟性、硬度などの調整が可能。

2色成形の種類

前述の通り、2色成形では様々な材料が使用されており、材料によって柔らかさや性質などが異なるため、組み合わせに注意することが必要です。例えば、軟質材料と硬質材料の組み合わせでは、素材の特性により密着力が低い場合が多く、剥離が起きやすくなります。異なる材料同士で密着性が低下する可能性がある場合は、接着面積を多めに取ることが必要です。

また、1次成形で着色材料を成形し、2次成形で透明樹脂を上から成形する場合では、2次成形時に1次成形品が溶け出してしまわないよう、樹脂の組み合わせを注意する必要があります。

所望の外観や機能が得られるように、設計においては、材料同士の密着性、適切な金型構造、成形条件 (射出圧力や射出速度、保持圧力や冷却時間)  などが綿密に検討されます。

ノンクロム処理

ノンクロム処理とは

ノンクロム処理とは、クロムを使用せずに金属を表面処理する方法です。

通常、金属の表面処理においてクロムは耐食性や耐摩耗性を向上させるために使用されます。しかしながら、クロムによる環境や健康への影響が懸念される場合も多いです。そのため、近年ではクロムを使用せずに同等の性能を持たせるための技術や処理方法が開発されています。

ノンクロム処理は、材料や処理工程の最適化によってコストを削減できることがあります。特に廃棄物処理や処理設備の維持管理費用が低減できることも多いです。

ノンクロム処理の使用用途

ノンクロム処理は様々な用途で使用されます。以下はその一例です。

1. 自動車産業

自動車の外装や内装部品は、耐候性や見た目の美しさを保つために表面処理が重要です。ノンクロム処理では、ジルコニウムや有機塗料を使用して、耐食性や耐摩耗性を向上させます。これらを使用することで、環境負荷の低い方法で高い性能を実現します。

2. 航空宇宙産業

航空宇宙産業では軽量化が要求される一方で、機体やエンジン部品などの耐食性も非常に重要です。ノンクロム処理は軽合金やチタン合金などの材料に対して、有機塗料などを使用して耐食性を高めます。これにより、耐久性と安全性を確保しつつ、環境にも配慮した処理が可能です。

3. 電子機器産業

電子機器は精密な部品が多く、その表面処理は導電性や耐蝕性の向上が重要です。ノンクロム処理によって銅合金やアルミニウム合金に対して、特殊な塗料を使用して接続部品やケースの耐久性を高めます。これにより、電子機器の信頼性を向上させつつ、環境規制へ配慮することが可能です。

4. 建築産業

建設機械や建材の金属部品は屋外で使用する製品も多く、耐候性が求められます。ノンクロム処理では鉄鋼やアルミニウム合金に対して、耐食性や耐摩耗性を向上させることが可能です。これにより、建設現場での耐久性を確保しつつ、環境への負荷を軽減します。

ノンフロン処理の原理

ノンクロム処理では、クロムを含む有害な化学物質を使用せず、代替となる安全で環境に配慮した材料を使用します。代表的な代替材料としては、亜鉛メッキやニッケル合金、有機塗料、セラミックコーティングなどが挙げられます。

実施の際には、まずは処理する金属部品の表面を適切に清掃や前処理を実施します。これにより、油脂や汚れおよび酸化皮膜などを除去し、処理後の接着性や効果を向上させます。

その後、化学反応や塗布、電気メッキ技術などを使用して金属表面を処理します。適切な時間と温度条件で処理を行い、所定の仕上がりを目指します。必要に応じて、洗浄・乾燥などの後処理が実施されることも多いです。

環境規制の厳格化や顧客の要求に応じて、ノンクロム処理の技術革新は進歩しています。新しい材料や処理方法の開発により、より効果的で持続可能な表面処理が可能となっています。

ノンクロム処理の種類

ノンクロム処理にはいくつかの種類があります。以下はその一例です。

1. 亜鉛メッキ

金属部品を亜鉛イオンを含む溶液に浸漬し、電気化学的にメッキを施す方法です。一般的な金属表面処理技術の一つであり、耐食性を向上させることができます。亜鉛メッキは比較的低コストであり、広範な用途に適しています。

2. ニッケル合金メッキ

ニッケルを主成分とする合金を使用して金属部品の表面をコーティングする方法です。ニッケル合金は耐摩耗性や耐蝕性が高く、耐熱性にも優れています。ニッケルメッキは高度な工業部品や装飾用途に適しています。

3. 有機塗料コーティング

環境に配慮した有機溶剤を基にした塗料を使用して、金属部品の表面にコーティングする方法です。有機塗料は塗布や噴霧によって施工され、耐候性や耐摩耗性を向上させます。この方法は特に外装部品や食品産業の用途に適しています。

4. セラミックコーティング

セラミック材料を使用して金属部品の表面をコーティングする方法です。セラミックコーティングは高温に耐える性質があり、耐摩耗性や耐食性を向上させることができます。航空宇宙や自動車産業などで使用されることが多いです。

三価クロム処理

三価クロム処理とは

三価クロム処理とは、クロムを使って金属表面に施す表面処理です。

三価クロム処理を施すことで、金属表面に均一で硬い保護膜を形成することができます。この保護膜により、金属の耐食性が向上し、長期間にわたって品質を維持することが可能です。特に屋外での使用や耐久性が求められる製品に適しています。

クロムでの表面処理は、二価または六価の形態で使用されることが多いです。ただし、近年では環境負荷が少ないとされる三価クロム処理が注目されています。環境規制に適合しやすく、持続可能な製品加工が可能です。

三価クロム処理の使用用途

三価クロム処理は様々な業界で使用されます。以下はその一例です。

1. 自動車産業

自動車部品の表面処理として、三価クロム処理が広く用いられています。特に外装部品や車体の金属部品およびホイールなどに適用され、耐食性や外観の美しさを保つために可能です。また、自動車産業では環境規制が厳しく、六価クロム処理に代わる選択肢として、三価クロム処理が注目されています。

2. 建築産業

建築業界では、外壁材や屋根材または手すりなどの金属部品に三価クロム処理が使用されます。これにより、屋外での耐候性が向上し、製品の寿命を延ばすことが可能です。また、建築デザインにおいても見た目の美観を重視する場面で重宝されます。

3. 電子機器産業

電子機器の部品やケース、コネクタなどにも三価クロム処理が適用されます。耐食性や導電性を向上させることが可能で、さらには外観の美観を保つこともできます。軽量化や高性能化が進む中で、表面処理技術の進化も重要な要素となっています。

4. その他産業

他にも、家庭用品やスポーツ用品、医療機器、そして産業機械の部品など、様々な製品に三価クロム処理が応用されます。これらの産業においても製品の長寿命化や見た目の品質維持が重視されるため、三価クロム処理が有効です。

三価クロム処理の原理

三価クロム処理に使用される主要な成分は、三価クロムイオンを含む処理溶液です。この溶液には三価クロムイオンの他に、酸化剤や添加剤が含まれています。これらの成分が相互作用し、金属表面に保護膜を生成する仕組みです。

金属部品が三価クロム処理の溶液に浸されると、まず表面にクロムの酸化物が生成します。この酸化物が金属表面を覆い、均一な保護膜を形成する役割を果たします。

生成された酸化物は金属表面に密着して硬い保護膜を形成します。この保護膜は耐食性や耐摩耗性を向上させるとともに、金属の腐食を防ぐことが可能です。また、一部の三価クロム処理では、保護膜の下にさらに密着性のある封孔層を形成することがあります。

三価クロム処理の効果を最大限に引き出すためには、処理溶液の成分濃度や温度または処理時間などの作業条件が重要です。これらの条件を適切に制御することで、保護膜の質や均一性を確保し、製品の品質を維持します。

三価クロム処理の選び方

三価クロム処理の施工業者を選定する際は、以下の要素を考慮することが重要です。

1. 技術

サービス提供者の技術力と経験は非常に重要です。三価クロム処理は処理条件の微調整や保護膜の品質管理が大きな影響を与えるため、技術的な専門知識と豊富な実績が求められます。信頼できる施工業者であることを確認するために、実績や顧客の評価を調査することが必要です。

2. 品質

提供される処理の品質も重要です。保護膜の均一性、耐食性、耐摩耗性などが製品の寿命や性能に直結します。施工業者がどのように品質を管理しているかを確認し、サンプルやテスト処理の結果を参考にすることが推奨されます。

3. コンプライアンス

現代の産業では環境に配慮した製品加工が求められます。施工業者がどのように環境規制に対応しているか、使用する化学物質の管理や廃棄物処理方法なども確認することが必要です。

4. カスタマーサポート

処理の進捗状況や技術的な相談、問題解決に対するサポート体制も考慮すべきポイントです。長期的な取引においては、迅速かつ明確なコミュニケーションが信頼関係の構築に役立ちます。

薄膜コーティング

薄膜コーティングとは

薄膜コーティングとは、ベースとなる基材・基板の上に薄膜層を作り、様々な機能を付与する技術・サービスです。

一般的には、10μm以下の膜が薄膜と呼ばれますが、100μmでも薄膜と呼ぶ場合もあり、厳密な定義はありません。薄膜は、基材表面の保護、意匠性の付与、反射防止、絶縁など様々な機能性向上のために使用されます。CPU、HDDの記録面、液晶ディスプレイや、レンズ、電子部品の電極、工具の耐久性向上など、さまざまな製品に使用されているテクノロジーです。

薄膜コーティングの使用用途

薄膜コーティングは、主に下記のような用途で使用されています。

  • 物体の表面の強化や保護
  • 光学的性質の付与 (反射防止膜・反射膜・蛍光・光学フィルタ)
  • 低摩擦化
  • 導電性付与・絶縁性付与
  • 意匠性の付与
  • 撥水・撥油

薄膜コーティングによって付与されるこれらの表面効果は、様々な産業分野で活用されています。

1. 電子工業

電子工業産業において、薄膜コーティング技術は、電子機器・ディスプレイ機器の高性能化、小型・薄型化、耐久性向上などに貢献しています。成膜される薄膜の種類は、絶縁膜、保護膜、磁性膜などです。主な用途には下記のようなものがあります。

  • 集積回路・半導体素子の電極や配線
  • 表示素子の透明導電膜、絶縁膜、保護膜、蛍光体
  • 磁気素子の軟磁性膜、硬磁性膜、ギャップ材、絶縁膜
  • オプトエレクトロニクス素子

2. エネルギー関連分野

薄膜コーティングはエネルギー分野においても活用されている技術です。特に、太陽電池にアモルファスシリコン膜が使用されています。アモルファスシリコン膜とは、シランガスという物質をプラズマ化学蒸着して得られる薄膜です。エネルギー分野における主な用途には下記のようなものがあります。

  • 太陽電池用薄膜
  • 透明導電膜
  • 電極
  • 反射防止膜
  • 光熱変換素子用薄膜 (選択吸収膜、反射膜、選択透過膜など)

3. 工業

各種工業製品では、ガラス表面などの反射膜、反射防止膜、保護膜などに薄膜コーティングが施されます。これらの薄膜コーティングが施されたガラスは、

  • 電車・鉄道車両の窓
  • 鉄道の信号機・表示灯
  • 航空機の計器類・ディスプレイ
  • 車載ディスプレイ機器

などに使用されます。また、各種切削工具や金型の表面に施される薄膜コーティングは、耐摩耗、耐食、耐熱、潤滑などの機能を付与することなどが目的です。その他、レーザー加工機、医療機器、分析装置、プロジェクターなどにも薄膜コーティングは使用されます。

薄膜コーティングの原理

薄膜を形成する方法で一般的なものは、真空成膜です。
真空成膜では、真空中で膜の材料を基板の表面に堆積させます。真空成膜には、物理蒸着 (PVD) 、化学気相成長 (CVD) などがあります。

真空成膜以外には、メッキ、溶射、塗装、スプレー法なども薄膜コーティングの一種として含まれることがあります。ただし、これらは真空成膜よりも膜が厚くなることが多いので、塗膜や皮膜と呼ばれることのほうが一般的には多いです。

1. PVD (物理蒸着)

PVD (英: Physical Vapor Deposition) とは、真空容器内で発生させた原料の蒸気を工具や部品などの成膜対象物に付着させることで薄膜を形成する方法です。最も一般的な PVD法にはアーク放電とスパッタリングがあります。処理温度は 70 ~ 600℃程度で、原料や条件を変えることで様々な薄膜を作製することが可能です。

構造は単層膜、多層膜、グラデーションをつけたもの
など多種にわたり、TiN、AlTiN、TiAlN、CrNなどがあります。膜の種類や構造,組成などを変えることで、膜の硬さや弾性、密着性などの特性を変化させることが可能です。

2. CVD (化学気相成長)

CVD (英: Chemical Vapor Deposition) は、原料の蒸気を気相中もしくは成膜対象物の表面において分解及び化学反応させ,薄膜をコーティングする方法です。主には熱CVDとプラズマCVDがあります。

熱CVDとは減圧下において原料ガスを熱のエネルギーによって分解・反応させる方法です。700~1050℃の処理温度で、TiC、TiCN、TiN、Al2O3 (アルミナ) などの単層膜や多層膜を形成します。ガスが触れるすべての表面にコーティングが可能であるため、複雑な形状や内側への均一なコーティングも可能です。

プラズマ CVDとは、原料ガスをプラズマ放電のエネルギーによって分解・反応させる方法です。成膜温度は 200℃程度と、熱CVDに比べて低くなります。プラズマ CVD で形成される DLC 膜 (Diamond-Like Carbon) 膜はアモルファス構造をしており、これによって潤滑不足の条件でも硬さや耐摩耗
性、低摩擦特性に優れているという特徴があります。

薄膜コーティングの種類

薄膜コーティングの成膜材料には、金属 (Zn、Au、Al、In、Ag、Cr、Tiなど) 、誘電体 (Al2O3、Nb2O5、SiO2、TiO2) など様々な種類が使用されます。平面、曲面、ドーム、フィルムロール、円筒、ワイヤーや繊維、特殊立体物などの様々な形状に適用可能です。

機能別の種類では、主に下記のようなものがあります。

  • 反射防止膜: 光の反射を抑えて透過率を向上させる薄膜
  • フィルタ膜: 光を弱めたり、特定の波長範囲の光だけを透過させたりする目的で使われる光学薄膜
  • 透明導電膜: 導電性と可視光を透過する性質の両方を持った材料で作られた薄膜
  • 耐摩耗性膜: 耐摩耗性を向上させる機能を持ち、工作機械やドリルビットなど、さまざまな工具・金型の表面に施される薄膜
  • 固体潤滑膜: 潤滑油やグリースなどを使用できない部品や機械などに使用される薄膜

シャックル

シャックルとは

シャックルとは、重量物の吊り上げ・固定時にスリングと重量物の連結に使用する金具です。

クレーンなどで重量物を吊り上げ移動させる場合、ワイヤロープなどのスリングと重量物を安全確実に連結する用途でシャックルは広く使用されています。他にも、船舶の係留、アウトドアなど様々な場面でシャックルが使用されています。

近年、製造業、建設業の発展に伴い、耐荷重が大きく軽量の高強度シャックルが開発されています。同じ耐荷重のシャックルであっても、大きさや形状、シャックル単重、耐久性などが異なる多種多様なシャックルがあります。

シャックルは安全面に関わる重要な金具であるため、使用する際には耐荷重・形状を始め使用用途に適したシャックルを選択することが大切です。

シャックルの使用用途

シャックルは様々な場面で使用されています。以下はその使用用途の一例です。

1. 重量物の吊り上げ

シャックルは、製造業の現場や建設現場、資材置き場など様々な場所で使用されています。クレーンやホイストで重量物を吊り上げる際に、ワイヤロープやチェーンと重量物をシャックルで連結しています。

土木工事で矢板の引き抜きを行う際には、作業性の良さからロングタイプのシャックルが使用されることが多いです。

2. 重量物の固定

トラックでの輸送時に重量物をトラックに固定する場合にも、シャックルを使用しています。

3. 船舶などの係留

ボートや船舶などの係留時に、チェーンやロープとの連結にシャックルを使用しています。表面処理の施されたステンレス製のシャックルを使用すると、高価にはなりますが防錆性・耐久性をあげることが可能です。

4. 消波ブロックの連結

消波ブロック同士の連結には、強度のある鍛造タイプのシャックルがよく使用されています。

5. アウトドア

クライミングやスラックラインなどのアウトドアでも、ロープ、アンカーなどとの連結にシャックルを使用する場合があります。

シャックルの構造

シャックルは本体と、本体を閉じるためのボルト (ピン) で構成されています。

1. 本体

ワイヤロープなどのスリングを引っ掛ける部分をもつ本体は様々な形状がありますが、代表的なものとしてストレート型とバウ型があります。

・ストレート型

ストレート型はU字形状で、スリングを引っ掛ける部分であるふところが狭く、バウ型と比べ軽いのが特徴で主に一本吊りの時に使用されます。

・バウ型

バウ型はおたふくとも呼ばれる様にふところが広いので、複数のスリングを掛けても重なりにくくなっており、多重吊りの時に使用されることが多いです。

2. ボルト (ピン)

ボルト (ピン)部分は、ボルト・ナット型とねじ込み型があります。

・ボルト・ナット型

ボルトとナットで止めた後に割ピンを入れてナットの抜け落ちを防ぐため、振動が多い場所での使用に適しています。取り外しの作業性は下がるため、取り外しの頻度が少ない場合に使用されることが多いです。

・ねじ込み型

ボルトのつまみ部分の開いた穴に、棒を差し込んで増し締めや取り外しを容易に行うことができ、スリングの取り外しが多い場合に適したタイプです。

3. シャックルの取り付け

シャックルの取り付けの際は、ボルトの回転を防ぐため、シャックルの本体側にワイヤロープなどの振動する側を、シャックルのボルト側に固定されている側がくる様に取り付けます。

4. シャックルの素材

シャックルの素材は、強度や重さ、性質が異なる、鉄・アルミ・ステンレスなどの金属を使用しています。

シャックルの選び方

1. 耐荷重

シャックルを使用して安全に重量物を吊り上げるためには、耐荷重を満たすことが重要です。この耐荷重は、縦方向に荷重をかけることを前提とした値です。耐荷重を超えて使用すると、シャックルの破損、重量物の落下につながる可能性があり危険です。

2. 形状・サイズ

スリングが一本吊りの場合はストレート型、多重吊りの場合はバウ型のシャックルを選択するのが一般的です。ボルトのタイプは、取り外しの頻度や緩みにくさを考慮して選択します。

また、連結するスリングのサイズや作業性を考慮しながら、最適なサイズのシャックルを選択することが必要です。

3. 素材

シャックルの素材や表面処理により、強度や重さ、防錆性・耐久性など特性が異なります。

鉄は、強度が高く比較的安価で多くの場所で使用されていますが錆びやすい欠点があります。

ステンレスは、鉄より高価になりますが錆びにくく耐久性があります。

アルミは鉄やステンレスより強度は劣りますが、軽量で持ち運びに適しています。

素材にメッキや塗装を施し錆びにくくしたものや、熱処理を施し強度を上げたシャックルもあるので、使用環境やコストを考慮しながら選択します。

タープ取付金具

監修:浅野金属工業株式会社

タープ取付金具とは

タープ取付金具とは、各種タープ・シェード・オーニングなどの設置に使用される金具です。

タープ・シェード・オーニングとは、日差しを遮る目的で張られる布製のシートです。夏を中心に紫外線対策・熱中症対策で使用されることが多くなっています。これらの日除けは、専用の金具 (タープ取付金具) を用いて支柱や柵などに固定されます。幼稚園・保育園や、飲食店及び商業施設などのテラス、屋上スペース、個人住宅の庭など、幅広く使用されている製品です。

また近年のアウトドアブームで、車やテントにタープを金具で連結して使用する人が多くなってきました。

タープ取付金具の使用用途

1. 取り付け場所

タープ取付金具は、日除けのためのタープ・シェード・オーニングを設置することに使用されます。金具の種類にもよりますが、取り付ける場所は主に下記のような場所です。

  • 柵・フェンス・支柱
  • 物干しざお・手すり
  • サッシ枠
  • 窓 (ガラス面)
  • シャッター・雨戸
  • 建物外壁 (木・金属・コンクリート)

また、キャンプなどのアウトドアシーンでは、テントや車にタープを連結する用途もあります。車に取り付けるタープは、カーサイドタープと呼ばれ、そのタープを連結する金具はカージョイントと呼ばれることがああります。

2. 使用シーン

タープ取付金具は、個人使用・業務利用を問わず様々な分野での用途があります。

  • 個人住宅の庭・ベランダ
  • 幼稚園・保育園の園庭・プール・砂場など、教育施設の屋外
  • オフィスビルやマンションなどの屋上施設
  • 飲食店・商業施設・ホテルなどのテラス・屋上施設
  • キャンプなどのアウトドア

それぞれの利用シーンにおいて、用途にあったタープ・シェード・オーニングを設置することに使用されています。

タープ取付金具の原理

タープ取付金具は、用途に合わせて、フック・吊り滑車・カラビナなどのうち一種類もしくは複数の種類を組み合わせて使用されます。

1. 個人用

個人住宅で使用する場合は比較的タープも小型で簡易的な使用であるため、サッシ・外壁用のフックが使用されることが多いです。製品によりますが、ねじ留めもしくはマグネットや粘着テープで取り付けることが可能です。

アウトドアなどで車に取り付けるカーサイドタープでは、吸盤式のフックが用いられます。また、窓などのガラス面に取り付ける場合も吸盤式のフックを使用することが可能です。

2. 業務用

業務用の使用では、タープの使用期間も長く大型になる傾向があります。安全に設置するために、カラビナなどが使用されることが多いです。更に吊り滑車などを併用することで昇降式として利用される場合もあります。フェンスなどに設置したり、専用の支柱などに取り付けたりします。

使用の都度外す必要のない商業施設の屋上などでは、ステンレスワイヤー・滑車・カラビナなどを使用し、タープにパイプを通して吊り上げている場合もあります。ワイヤーを使用することで大規模まで広く対応することが可能です。また、滑車を組み合わせて用いることで、開閉式として使用することができ、利便性が向上します。

タープ取付金具の種類

タープ取付金具は、前述の通り様々な種類があり、用途に合わせて一種類もしくは複数種類を組み合わせて使用されます。

材質では、ステンレス製の金具は特に耐食性、耐久性に優れており、腐食しやすい屋外での使用に適しています。雨や雪の多いエリア、沿岸地域などでも劣化しにくく使用することが可能です。

1. 家庭用

家庭用では、サッシ枠取り付け用・外壁用 (木・コンクリート・金属) などの種類があり、ねじ留め・マグネット・粘着テープ・接着剤・吸盤などの設置方法があります。タープ側はフック形状になっていることが一般的です。耐荷重等は大きくないことが多いですが、取り付けが比較的容易であるものが多いです。

2. 業務用

業務用では、カラビナ、滑車、シャックル、リングキャッチなど、家庭用よりも丈夫な金具が使用されることが多く、必要に応じてステンレスワイヤーやタープ用のパイプなども併用されます。滑車などの可動式の金具を組み合わせることで、開閉式や昇降式のタープとして使用することが可能です。

本記事はタープ取付金具を製造・販売する浅野金属工業株式会社様に監修を頂きました。

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六価クロム処理

六価クロム処理とは

六価クロム処理とは、六価クロムを使用して金属表面に表面処理を施す技術です。

清浄された金属表面に六価クロムの溶液を浸漬またはめっきすることで表面処理を施します。これにより、金属表面の耐食性が大幅に向上させることが可能です。外部環境からの腐食を防止し、強化金属部品や構造物の寿命が延ばすことができます。

また、六価クロム処理によって、金属表面の耐摩耗性を向上させることも可能です。特に機械部品や工業用装置などで重宝されます。耐摩耗性が向上することで、長期間使用することができます。

ただし、六価クロム処理には環境への影響や作業者の健康リスクが指摘されています。特に六価クロム自体が有害物質であるため、処理工程や廃液の処理には特別な注意が必要です。そのため、近年ではより環境に優しい代替処理法の開発や使用が進められています。

六価クロム処理の使用用途

六価クロム処理は様々な産業で使用されます。以下はその一例です。

1. 自動車産業

自動車のバンパーやホイールなどは、耐食性や耐摩耗性が求められるため六価クロム処理が広く利用されます。特に外気や潮風などから保護するために重要です。また、エンジン部品に六価クロムめっきを施し、耐摩耗性を向上させて長寿命化を促進することもあります。

2. 航空宇宙産業

航空機の主翼やエンジン部品などは非常に高い性能が求められます。六価クロム処理により、部品の耐食性を向上させることが可能です。部品に軽い主材を使用することができるため、軽量化にも寄与します。

また、空港の地上設備や地上支援機器などは、海岸沿いに設置されることも多いです。これらの部品に六価クロム処理を施し、メンテナンス頻度を減らすことができます。

3. 電子機器産業

電子機器の配線やコネクタの端子部分に六価クロム処理が施されることがあります。めっきすることにより、耐食性を確保して信頼性を高めます。また、ハードディスクの外部ケースなどにも使用され、装飾的な効果とともに耐久性を向上させます。

4. その他

工場に使用される機械部品やベアリング及び歯車などは、耐摩耗性が求められます。したがって、六価クロム処理を施して耐摩耗性を向上させることも多いです。建設機械や農業機械などの耐久性を高めるためにも、六価クロム処理が採用されています。

六価クロム処理の原理

六価クロム処理は、金属表面に六価クロムイオンをめっきすることで表面特性を改良する表面処理技術です。一般的に電気めっき法または浸漬めっき法が使用されます。

電気めっき法は金属部品を陰極として電気めっき槽に浸して電気を流す方法です。陽極に六価クロムの塩化物などがある場合、電流が流れてクロムイオンが金属表面に還元され、めっき膜として析出します。電流密度やめっき時間を調整することで、めっき膜の厚さや性質を精密に制御できる点が特徴です。

浸漬めっき法は六価クロムが溶液に金属を浸す方法です。金属表面に六価クロムイオンが吸着し、化学的反応によって金属表面に六価クロムの膜が形成されます。操作が簡便であるため、全体的なコストが低く抑えられる利点があります。

六価クロム処理はその特性から広範な産業で使用されていますが、同時に六価クロム自体が環境に悪影響を与える可能性があるため、管理と廃液処理には特別な注意が必要です。

六価クロム処理の選び方

六価クロム処理のサービスプロバイダーを選ぶ際は、以下を考慮することが重要です。

1. 技術・経験

サービス業者がどれだけの経験と専門知識を持っているかを確認します。長年の実績や顧客の信頼性を調査することが重要です。口コミなどを確認することで検討します。

2. 品質

サービス業者がどのように品質管理を行っているかを確認します。ISO認証などの品質管理システムの有無や、めっき膜の品質に関する証明書の提供可否を確認します。

3. 環境配慮・法令順守

六価クロム処理は環境への影響が懸念されます。そのため、サービス業者が環境配慮をどのように考慮しているかを確認することが需要です。排出基準などの法規制を遵守していることを確認します。