サーマルプロテクター

監修:高野精密工業株式会社

サーマルプロテクターとは

サーマルプロテクターとは、一定の温度を超えると自動的に電流を制御して温度を下げる役割を持つ過熱保護装置の1つです。

モーターや、電池・バッテリーの他、回路や部品の過熱保護、過電流保護、発火防止に使われています。一般的にはバイメタル材を使用し、形状変化によりスイッチの開閉、温度調整を行う仕組みです。ヒューズの場合は過大電流が流れた際に溶断するのに対し、サーマルプロテクターは温度による形状変化を利用していることから、温度が下がると再度通電可能になるという違いがあります。また、スイッチの開閉を行うことから、ON-OFFは瞬時に切り替わる特長をもっています。スマートフォンをはじめとする様々な小型機器の電池や、医療機器やサーバーなど様々な産業機器に使用されています。

サーマルプロテクターの使用用途

サーマルプロテクターは、家庭用から業務用まで様々な電気製品・バッテリー類において過熱防止装置として使用されています。下記は主な使用用途の例です。

  • リチウムイオン電池 (ノートパソコン、タブレット、スマートフォン、電動工具、デジタルカメラなどに使用される)
  • ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池 データサーバー、緊急・非常用バックアップ電源、無線通信機器、(医療機器、などに使用される)
  • ACモーター
  • 各種家電製品 (ヘアドライヤー、コーヒーメーカー、トースター、洗濯機、エアコンファンなど)
  • 電気ヒーター
  • LED照明
  • 変圧器
  • バラスト
  • 業務用の冷凍用圧縮機

これらの製品において、サーマルプロテクターは、過電流や異常な温度上昇から製品を保護し、発火などの事故を未然に防止するために使用されている装置です。

サーマルプロテクターの原理

サーマルプロテクターは、バイメタル材などの、温度によって形状が変化する素材を用いて動作する機器です。回路に接続するリード線や端子・バイメタル材・絶縁キャップなどの外装材から構成されます。使用している機器・回路の温度が上昇すると、材料の熱膨張によりバイメタルシートが曲がり、それによってスイッチまたは接点が開閉する仕組みです。

バイメタル材とは、クラッドメタルの技術を用いて熱膨張係数の異なる異種金属を圧延接合したものです。表と裏で熱膨張係数が異なることにより、温度変化とともに一定の曲率で変形します。サーマルプロテクターで使用されるバイメタル材には、銅と鉄のクラッド材などがあります。

サーマルプロテクターの動作機構では、通常時に閉じている回路の接点を温度の上昇によって開放するものが多いですが、温度の上昇により通常時に開いている回路をクローズにするものもあります。

サーマルプロテクターの種類

1. 概要

サーマルプロテクターは、様々な製品が販売されています。設定温度帯は、5〜150℃、5〜200℃、30〜90℃などの中から様々な製品があり、5℃刻みや10℃刻みで用意されていることが多いです。大きさも様々であり、小さいものでは外形寸法9mm前後のものもあります。

定格電流や最大許容電流なども製品によって異なるため、用途に合わせて適切なものを選択することが必要です。

2. 自動復帰型と自己保持型

温度上昇により接点が開いて回路保護が行われた後の動作については、自動復帰型と自己保持型があります。

自動復帰型とは、設定温度に達して電流が流れなくなったあと、温度が下がって復帰温度になれば自動的に接点が閉じて通電状態になります。

自己保持型は、温度上昇によって達すれば電流が流れなくなった後、温度が下がっても通電状態に戻らない仕組みです。自己保持型の一つの仕組みには、PTCヒーターを内蔵させるものがあります。温度上昇による接点開放と同時に可動接点板がPTCと導通し、回路からの電圧によるPTCの発熱を利用して、バイメタルが接点開放状態を保持します。自己保持の間はPTCを通してサーマルプロテクターに微小の電流が流れます。尚、通電状態にするには、回路を他動的に切断して温度が下降すると復帰します。 

本記事はサーマルプロテクターを製造・販売する高野精密工業株式会社様に監修を頂きました。

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