2色成形

2色成形とは

2色成形とは、2色成形機と呼ばれる専用の射出成形機を用い、異なる材料を一体化させて成形する射出成形工法です。

異材質・異材異色・同材異色など、様々な組み合わせの樹脂素材を成形することができます。他工法では2部品を別々で成形して組合せていたものを、2色成形では成形工程内で一体化して成形機より取出す事が可能です。製造工程において部品点数削減や組立て工数削減などの効果があります。

2色成形の使用用途

1. 概要

2色成形は、様々な製品製造用途で使用されています。2色成形の採用目的には主に下記のようなものがあります。

  • 防塵防⽔部品 (押しボタンやパッキン) と筐体を⼀体成形する
  • 有⾊材と透明材のような異色2層構造を⼀体成形する
  • エラストマーと硬質素材のような触感の異なる素材を一体成形する (グリップ力のある部品と嵌合部)
  • パッキンやボタンのような多機能多部品を⼀体成形する

2. 具体的な製品例

  • ウェアラブルバンド
  • カメラグリップ 
  • 電⼦機器の外装
  • スマートフォン部品
  • バーコードリーダー、リモコンなどのケース類の防塵・防滴パッキン、操作パネルの押しボタンなど
  • 服飾ヒモ留めパーツ
  • 工具等のグリップ
  • 透明材での厚肉成形・表示マークの文字
  • 各種外観部品
  • 車載用内装部品 

透明材での表示マーク・文字は、各種機器の他、車載用オーディオ製品やドアノブなどの文字やマークにも使用されます。また、めっき加工製品においては、めっきが析出するプラスチック (ABS樹脂など) と析出しないプラスチック (PC樹脂など) の組み合わせで生地の2色成形を行うと、設計意図した部分のみに綺麗に部分めっきを施すことが可能です。主に加飾用途などで使用され、車載内装部品をはじめとする様々な製品に使用されます。

2色成形の原理

1. 概要

2色成形機には、2本のノズル、シリンダーがあります。それぞれから金型内部に順次、射出充填することで2層を組み合わせた一体成形製品を製造する仕組みです。一般的な2色成形では、金型の凹側、キャビティの異なる2つの金型を用い、1次型へ射出した後、2次型へ射出する際に180度回転や反転などの工程が加わることが特徴です。

2色成形は、1つの工程で2つの樹脂や異材を組み合わせることからダブルモールドと呼ばれることもあります。

2. 2色成形に使用される素材

2色成形には、様々な樹脂が使用されます。下記は主な樹脂素材の例です。

  • ポリカーボネート樹脂 (PC): 耐衝撃性、耐熱性、耐候性に優れており、伸縮性があるため加工性も良好。
  • アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂 (ABS): 光沢があり、印刷や塗装などの加工が容易。耐熱性、強度、耐油性、耐衝撃性にも優れる。
  • アクリル樹脂 (PMMA) : 高い耐久性と透明性が特徴。
  • アクリロニトリルスチレン樹脂 (AS) : 耐酸性、耐アルカリ性、耐薬品性があり、透明性や耐熱性 (80度〜100度) に優れる。
  • 熱可塑性エラストマー (TPE) : ゴムのような高い弾性を持ち、熱を加えると軟化する。材料の配合によって柔軟性、硬度などの調整が可能。

2色成形の種類

前述の通り、2色成形では様々な材料が使用されており、材料によって柔らかさや性質などが異なるため、組み合わせに注意することが必要です。例えば、軟質材料と硬質材料の組み合わせでは、素材の特性により密着力が低い場合が多く、剥離が起きやすくなります。異なる材料同士で密着性が低下する可能性がある場合は、接着面積を多めに取ることが必要です。

また、1次成形で着色材料を成形し、2次成形で透明樹脂を上から成形する場合では、2次成形時に1次成形品が溶け出してしまわないよう、樹脂の組み合わせを注意する必要があります。

所望の外観や機能が得られるように、設計においては、材料同士の密着性、適切な金型構造、成形条件 (射出圧力や射出速度、保持圧力や冷却時間)  などが綿密に検討されます。