ディスクブレーキ

ディスクブレーキとは自動車ブレーキ

ディスクブレーキ (英: Disc brake) とは、ディスクローターとブレーキキャリパー、その中にあるブレーキパッドという3つの部品によって構成されるブレーキシステム (制動装置) のことです。

ディスクブレーキに含まれる部品一式は、タイヤのホイールの内側に位置しており、外部から露出して見えるようになっており、放熱性が高い点が特徴です。

また、放熱性が高いことにより、連続使用によりブレーキの効きが悪くなるフェード現象が起こりにくく、水によりブレーキの効きが悪くなるウォーターフェード現象に強いのがメリットと言えます。一方で、ドラムブレーキに比べると拘束力は低いのがデメリットです。

ディスクブレーキの使用用途

ディスクブレーキは、放熱性が高く、フェード現象やウォーターフェード現象が起こりにくいことや、安定した制動力を持つ点が特徴です。そのため、多くの乗用車や、バイクや自転車、鉄道、航空機、建設機械、農業機械など、車輪を減速・停止させる必要がある幅広い用途で使われています。

また、近年では、電子制御ブレーキシステム (EBS) の普及により、ドラムブレーキが主流の商用車にもディスクブレーキが採用されるようになるなど、使用範囲が拡大してきてきています。

ディスクブレーキの原理

ディスクブレーキは、ディスクローターと、ブレーキキャリバー、その中にあるブレーキパッドという3つの部品によって構成されています。ディスクローターとブレーキキャリバーで車輪を挟み込むことで、摩擦によって車輪の回転運動を減速、停止させるというシンプルな仕組みです。

摩擦によって車輪の回転エネルギー (運動エネルギー) を熱エネルギーに変え、外に放出することで回転運動を止めることが可能です。

ディスクブレーキが作動するまでの流れとしては、まず自動車の運転席に存在するブレーキペダルを踏み込むと、その力がブレーキブースターによって力が増大します。ブレーキブースターによって増大した圧力は、ブレーキオイルで満たされた配管を通ることによって油圧となり、ブレーキキャリパー内のピストンを押し出します。

ピストンが押し出される力に連動し、ブレーキパッドがディスクローターに押し付けられ、この時生じる摩擦力によって車にブレーキがかかります。

ディスクブレーキの種類

ディスクブレーキには、大きく分けて2つの種類が存在します。

1. フローティングタイプディスクブレーキ

ブレーキキャリパー内のピストンがディスクローターの片側にあるものを「フローティングタイプディスクブレーキ」と呼びます。

構造が単純で軽量、安価なことから、ほとんどの乗用車にはこのタイプが採用されています。

2. オポーズドタイプディスクブレーキ

ブレーキキャリパー内のピストンがディスクローターの両側にあり、均等に圧力をかけることができるブレーキシステムのことを「オポーズドタイプディスクブレーキ」と呼びます。

対向ピストン型ディスクブレーキとも呼ばれ、ディスクブレーキの中でもトップクラスの高い制動力が得られるのが特徴です。ピストンの数も左右両方に2つずつで計4つの「対向4ピストンタイプ」や、3つずつの「対向6ピストンタイプ」のように増やすことができます。

そのため、より大きな制動力が必要となるスポーツカーや、大きい面積のブレーキパットを使わなければならない大型高性能車などによく使われます。

ディスクブレーキのその他情報

1. ドラムブレーキとの違い

ドラムブレーキは、車輪の内側に設置されているブレーキシューを内側から回転する車輪に押し付けることで、車輪の回転運動を摩擦によって減速、停止させる仕組みになっています。

摩擦により、車輪の回転エネルギーを熱エネルギーに変えて減速、停止させるという点ではディスクブレーキと原理は同じですが、摩擦をどのように発生させているかが大きく異なります。

ディスクブレーキは車輪を挟むことで摩擦を発生させていますが、ドラムブレーキは車輪を内側から広げることにより摩擦を発生させています。この違いによりドラムブレーキの方が車輪との接触面積が広く、セルフサーボ効果 (回転によりブレーキシュー表面の摩擦材に車輪が食い込む現象) も得られることから、ドラムブレーキの方が拘束力が強いのが大きな違いと言えます。

一方で、ドラムブレーキはディスクブレーキに比べて放熱性が悪く、フェード現象やウォーターフェード現象が起きやすいというデメリットもあります。

2. ディスクブレーキの寿命

ディスクブレーキが正しく作動するためには、摩耗の影響を受けやすいブレーキパッドやディスクローターに異常がないことが前提です。ブレーキパッドは3~5万キロ走行、ディスクローターは10万キロ走行が寿命の目安となるため、定期的に点検を行う必要があります。

しかし、高い制動性能を有するディスクブレーキの場合は、負荷や摩耗がそれだけ激しいため2〜3万キロで寿命を迎える場合もあるので、必ずそのブレーキ自体の寿命を調べることが重要です。

また、ディスクブレーキの中でも、車の減速に最も重要な部品はブレーキパッドです。ブレーキパッドが摩耗によってすり減ると、異音やブレーキの質が悪化する原因となるため、注意が必要です。

ヘッドアップディスプレイ

ヘッドアップディスプレイとは

ヘッドアップディスプレイ

ヘッドアップディスプレイ (英: Head-Up Display) とは、フロントガラスやメーターフードの前方に配置されたディスプレイのことです。

車の速度やカーナビの情報を映し出すことが特徴です。限られたスペースに必要な情報を表示するため、視点の移動が減り、運転時の疲労軽減に繋がるとされています。

ヘッドアップディスプレイの歴史はまだ浅いですが、近年多くの車に採用されています。また、別で売られている場合もあり、後付けも可能な部品です。

ヘッドアップディスプレイの使用用途

ヘッドアップディスプレイはドライバーの目線上に、運転に必要な情報を映し出す目的で使用されています。ヘッドアップディスプレイに映し出される主な内容として、スピード、カーナビ情報、燃料残量などが挙げられます。

通常カーナビは、運転席と助手席の間に配置可能です。カーナビを確認する際には目線を落とす必要がありますが、ヘッドアップディスプレイに映し出されると目線を外す必要がありません。そのため、よそ見防止の観点からさらに普及が広がると考えられています。

ヘッドアップディスプレイの原理

ヘッドアップディスプレイは、ディスプレイが透過式です。透過して映し出すために、映像を投影する工夫がされています。

フロントガラスの一部がヘッドアップディスプレイの場合には、フロントガラスに直接情報を映し出すのではなく、鏡を利用しています。一般的に必要な情報を表示する表示機はダッシュボードの中にあり、表示機から映し出される映像は、拡散板や拡大鏡によって拡大され、ウィンドシールドに映し出されるのは反射した状態です。

この時、映像が実際に投影されている光路と、運転者が感じる光路が重なることでフロントガラスに映っているように見えます。このような原理からヘッドアップディスプレイ上に表示されている場所以外は透過して見えるため、ヘッドアップディスプレイを採用すると運転中の目線の動きが減少します。

ヘッドアップディスプレイの種類

投影タイプのヘッドアップディスプレイでは、専用のディスプレイに半透明の画面が出て、情報が映されます。

ディスプレイにスマホの画面を投影するスマホディスプレイタイプもあります。よってスマホに目線を移さずに、ナビを使用可能です。ヘッドアップディスプレイの装置にスマホを置き、反射させて情報を得ます。ほかにもヘッドアップディスプレイの装置とスマホをWi-Fiで接続して、情報を映し出す場合もあります。

照射タイプはフロントガラスに情報を投影可能です。映像をヘッドアップディスプレイから映し出して、フロントガラスに直接表示できます。

ヘッドアップディスプレイの選び方

自動車に搭載された車両故障診断システムに接続するタイプとスマートフォンに連携させるタイプがあります。車両故障診断システムを用いる場合には、コネクターとヘッドアップディスプレイの間をコードによって接合します。GPS搭載であればUSBから給電でき、一部の機能を使用可能です。

スマートフォンに連携するヘッドアップディスプレイでは、基本的な機能はアプリなどに寄ります。スマートフォンの画面が反射するタイプでは、映し出される画面が反転するため、スマートフォンの画面を反転させて表示する必要があります。有線やBluetoothで接続する場合には、Android AutoやApple CarPlayを使用可能です。

ヘッドアップディスプレイの構造

シガーソケットや車載式故障診断装置を使って、自動車とヘッドアップディスプレイを接続できます。USB端末が付いたカーチャージャーのように、車内に装備されたシガーソケットに接続すると電気が得られ、取り外しも容易です。車載式故障診断装置は電源が安定して供給され、メーターの機能は途切れません。ただし車載式故障診断装置は、取り外しにくいです。

ターボチャージャー

ターボチャージャーとは

ターボチャージャー

ターボチャージャー (英: Turbocharger) とは、過給機と呼ばれる装置の一種です。

ターボチャージャーを搭載することで、エンジン内に圧縮した空気を送りこみ、同じ排気量でもより高い出力を引き出すことができます。軽自動車などに搭載されている小型エンジンの場合、トラックの大型エンジンと比べてエンジン内に取り込める空気の量が少なくなるため、その分パワーが劣ります。

しかし、圧縮した空気であれば、小さいサイズであっても通常以上の空気を送ることが可能です。例えば、1,000ccの排気量を持つエンジンであっても、ターボチャージャーで圧縮した空気を送り込めば、2,000ccの排気量を持つエンジンに匹敵するパワーを得ることが可能になります。

ターボチャージャーの原理

ターボチャージャーは、次の部品によって構成されています。

  • タービン: 排気ガスを動力源にして回転する部品
  • コンプレッサー: 空気を圧縮する装置
  • ハウジング: タービンとコンプレッサーによって生まれた流れを制御する部品

風車の羽のような形状のタービンは、エキゾーストマニホールドを通じて排出されるエンジンの排気ガスの流れを動力源として回転し、タービンに連動してコンプレッサーが稼働します。そして、吸入した空気を圧縮し、エンジンへと供給します。

ターボチャージャーの使用用途

ターボチャージャーは、エンジンの排気ガスを動力源としているため、エンジンから排気ガスが出る高回転域での稼働が強みです。また、排気ガスという本来排出するものを使っていることから、スーパーチャージャーに比べると効率が良く、搭載することで、燃費性能も向上させることができます。

高回転域でのエンジン稼働時間が長い自動車をはじめ、船舶、発電機、建設機械、鉄道、航空機などで幅広く使われています。自動車などでは、同じ排気量でもエンジンの出力を上げられることや、排気量によって自動車税額が変動することから、軽自動車やコンパクトカーなどに多く採用されています。

よく、車の名称の後に「ターボ」とついているものは、このターボチャージャーが搭載されているという意味です。

ターボチャージャーの種類

ターボチャージャーには、構造の違いによって次の3種類が存在します。

1. シングルターボ

ターボチャージャーが1つついた構造となっています。重量などの関係から、主に軽自動車やコンパクトカーに採用されることが多い種類です。

2. ツインターボ

ターボチャージャーが2つついた構造となっていますが、ただ単純に同じ種類のターボチャージャーを2つつけているという訳ではなく、違う2種類のターボを組み合わせることで、低回転域でうまく稼働するよう工夫したものがほとんどです。

ターボチャージャーの欠点であるターボラグを少なくする事ができる一方で、重量がその分重くなり、かつコストも上がってしまうのがデメリットです。

3. ツインスクロールターボ

シングルターボと同様にタービンが1つの構造でありながら、排気ガスの取り込み口が2つあるのが特徴です。ツインエントリーターボとも呼ばれます。

2つあることで、低回転域での稼働時と、高回転域での稼働時で、取り込み口を使い分けることができ、ターボラグの影響を極力抑えることができます。全回転域で効率良くターボチャージャーを稼働させることができることから、近年利用されることが多くなりました。

ターボチャージャーのその他情報

1. 電動ターボチャージャー

ターボチャージャーの不得意領域である低回転域での稼働を、電動モーターでアシストし、全回転域で効率的、かつ安定的に稼働できるのが電動ターボチャージャーです。

一方で、電動モーターを搭載しているということから、従来のターボチャージャーよりも重く、コストが高いというデメリットもあります。また、高温な排気ガスに電動モーターが耐えうる設計にしなければならず、設計の難易度が高いということから、まだ実用化に至っていないのが現状です。

2. ダウンサイジングターボ

車の中で最も重い部品である、エンジンをあえて小さく軽量化したものです。代わりにターボチャージャーを取り付けることで、小さくする前と同じエンジン出力を出すエンジンも開発されています。

3. スーパーチャージャーとの違い

過給機にはターボチャージャーとスーパーチャージャーの2種類が存在します。その違いは、動力源と性能です。ターボチャージャーはエンジンの排気ガスの流れを動力源として稼働しますが、スーパーチャージャーはエンジンのクランクやベルトを動力として稼働します。

エンジンの排気ガスを使って動くという特性上、エンジンが稼働してすぐの低回転域ではうまく稼働せず、エンジンの回転数が上がるにつれて働くようになります。これをターボラグと呼びます。

一方で、スーパーチャージャーは、動力源がエンジン自体であるため、エンジンが動き出してすぐの低回転域でもしっかりと働くことができます。ある一定の出力を超えると空気圧縮効率が落ちてきてしまうという欠点があり、トータルで空気を効率的に圧縮できるターボチャージャーが主流となっています。

車載ECU

車載ECUとは

車載ECU

車載ECUとは、自動車のさまざまな機能を電子制御する装置です。

かつて排ガス規制に対応するためにエンジンの電子制御化が進み、ECUを搭載してきめ細かい制御が可能になりました。当時のECUは「Engine Control Unit」の略です。

一方で、現在の車載ECUは、エンジン制御以外にもトランスミッション・ブレーキ・パワーステアリング・エアバッグなどの機能を制御していることから「Electronic Control Unit」と呼ばれ、1台の自動車に50〜100個のECUが搭載されています。

車載ECUの使用用途

自動車には、用途に応じて多様な種類の車載ECUが搭載されています。

  • エンジン制御ECU
    エンジンが必要とする燃料噴射量・点火時期を制御します。
  • ハイブリッド制御ECU
    ハイブリッド車のエンジンとモーターを発進時・通常走行時などの状況に応じて最適に駆動させる制御を行います。
  • トランスミッション制御ECU
    複数のギア比を必要に応じて切り替える制御を行います。
  • パワーステアリング制御ECU
    は運転者が少ない力でハンドル操舵できるよう制御します。
  • エアバッグECU
    自動車の衝突時に衝撃レベルを判断してエアバッグを展開させます。
  • 先進運転支援システムECU
    衝突被害軽減ブレーキ・車間距離制御・無線通信によるソフトウェア更新などさまざまな用途に対応します。

車載ECUの原理

センサから車載ECUに送られてくる信号のインタフェースは、オンオフ信号・アナログ信号・シリアル通信に分類されます。このうち、デジタル処理されたシリアル通信には、2本のワイヤを使った差動電圧方式のCAN (Controller Area Network) 、ライン型バス構造のLIN (Local Interconnect Network)、センサ・ECU間を1対1でつなぐ送信専用通信のSENT (Single Edge Nibble Transmission) 、ツイストペア2線の電流変調式通信のPSI (Peripheral Sensor Interface 5) など、さまざまなプロトコルがあります。

1. CAN (Controller Area Network)

従来のECU間の通信は配線の本数が多いため、配線スペース確保の必要や重量の増加が問題点としてありました。一方CAN通信では少ないハーネスで接続が可能になり、1つの情報を複数のECUで共有することが可能です。

複数のECUから自由にデータ送信を行うとデータが衝突してしまう恐れがあります。それを解決するのがCANのCSMA/CA (Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance) と呼ばれる仕組みです。

送信データに優先度の情報を付与させます。複数ECUから同時にデータ送信が生じてもデータ同士の優先度を比較し、優先度が高いものを送信データとして選定する方式です。

2. LIN (Local Interconnect Network)

LINは通信の高速性が要求されないボディ制御系などで使用されます。具体的には、ドアミラーやパワーシートなどです。通信スケジュールを管理するマスタノードとデータ送受信を行うスレーブノードといった2種類の端末で通信を行うマスター・スレーブ方式を取ります。

3. SENT (Single Edge Nibble Transmission)

SENTは、高精度のアナログ信号を扱う電動パワーステアリング・エンジン制御などで使用されます。LIN通信と比較して通信速度が速い特徴を持ちます。センサとECUを繋ぐ送信専用通信を指します。

車載ECUの構造

車載ECUは、マイクロコントローラ、入出力機器等の周辺装置、通信モジュールから構成されます。自動車は、カメラ・ミリ波レーダー超音波センサー・LiDAR (Light Detection and Ranging) など用途に応じたさまざまなセンサが検知した信号が車載ECUの入力装置に送られ、その情報を元にECU内のマイクロコントローラが判断し、出力装置を経て各部アクチュエータに指示を出すことによって電子制御されます。

ブレーキパッド

ブレーキパッドとは

ブレーキパッド

ブレーキパッド (英: Brake pad) とは、ディスクブレーキにおけるブレーキキャリパーに含まれる部品の1つで、ディスクローターと共に、車やバイクの制動に直接作用している重要部品の1つです。

ディスクローターを内側と外側から挟み込むようにブレーキパッドが設置されています。自動車やバイクの車輪と共に回転するディスクローターをブレーキパッドで挟み込むことで、摩擦熱を発生させ、車輪の回転を止める仕組みです。

ディスクローターとの間に直接摩擦を発生させる部品なので、ブレーキパッドは使用に応じて徐々に摩耗します。摩耗すると制動力が落ちてしまうため、定期的な交換が必要な部品でもあります。

ブレーキパッドの使用用途

ブレーキパッドは、ディスクブレーキの作動に直接関係する部品です。そのため、ディスクブレーキを搭載する自動車、バイク、またはディスクブレーキを採用している鉄道、航空機、建設機械、農業機械などに搭載されています。

近年、EBS (電子制御ブレーキシステム) の普及と共に、ドラムブレーキが主流だった商用車にも、ディスクブレーキが採用されるようになりました。

ブレーキパッドの原理

自動車の場合にはブレーキペダルを踏み込む、バイクの場合にはブレーキレバーを引く、というようにブレーキ作動の方法は異なりますが、ブレーキの作動方法や、原理は同じです。

自動車の運転席にあるブレーキペダルを踏み込む、もしくはバイクのブレーキレバーを引くことによって、ブレーキブースターと呼ばれる倍力装置によってこの力が増幅します。

その後、マスターシリンダーにて油圧へと変換され、ブレーキキャリパー内のピストンに圧力が加わります。ピストンが圧力によって押されることで、ブレーキパッドがディスクローター側に押し付けられ、ブレーキパッドとディスクローターの間に摩擦が発生します。

回転運動のエネルギーが、摩擦によって発生した熱エネルギーとして、外に放出されることで車輪の回転が止まるという仕組みです。そのため、ブレーキは、力学的に運動エネルギーを熱に変えて、車輪の運動エネルギーを減少させる装置とも言えます。

ブレーキパッドの種類

ブレーキパッドには、使われる素材によって、次の4つに大きく分類されます。

  • ノンアスベスト材
  • セミメタリック材
  • カーボンメタリック材
  • メタリック材

一般的に広く使われているのが「ノンアスベスト材」で、種類によってそれぞれメリット、デメリットが異なります。

1. ノンアスベスト材

ブレーキ音 (鳴き) や、ブレーキダスト、ディスクローターへの負荷が少ないことから、国産の自動車やバイクのブレーキパッドに一番多く採用されています。

耐熱性があまり高くないですが、本の市街地での走行には一番適した素材と言われています。特に走行性能に大きなこだわりがなければ、ノンアスベスト材のブレーキパッドが最適です。

2. セミメタリック材

コントロール性や、耐摩耗性に優れており、サーキットなどブレーキに負荷がかかる走行でも安定した制動性能を発揮します。一方で、ブレーキ音 (鳴き) が発生しやすいということや、車輪のホイールが汚れやすいなどのデメリットがあります。

1つのブレーキで、市街地の運転だけではなく、サーキット走行なども行いたいという場合には、セミメタリック材が推奨されます。

3. メタリック材

主にレーシングカーなどサーキット走行を行う車両のブレーキパッドとして使われる素材です。耐熱性能に優れ、サーキット走行のような高速かつ、ブレーキに高い負荷がかかる走行でも、抜群の制動性能、コントロール性能を発揮します。

しかし、ブレーキ音 (鳴き) やホイール汚れが発生しやすく、低速走行でのブレーキがかかりにくいため、ディスクホイールへの負荷も高いです。

ノンアスベスト材やセミメタリック材と比べて劣化も早く、交換を細めに行わなければならないのもデメリットの1つです。市街地走行には不向きで、サーキット走行のみ最適なものになります。

4. カーボンメタリック材

耐熱性能と制動性能に優れており、メタリック材と同様にサーキット走行をするレーシングカーなどにも採用されています。ブレーキ音 (鳴き) やホイール汚れが発生しやすく、ディスクローターへの負荷が大きいです。

メタリック材のように低速でブレーキの効きが悪くなることがないため、市街地走行などでも十分使用可能です。スポーツカーなどで安定感のある走りを楽しみたい場合に最適です。

ブレーキパッドのその他情報

ブレーキパッドの寿命・交換時期

ブレーキパッドは摩擦材の役割を果たすため、長期間使用していると摩耗し、制動性能が悪化しますが、車検などの検査項目としてブレーキパッドの残量などは含まれていません。

そのため、ブレーキパッドが3mm以下に減少した事、もしくは走行距離で言えば3〜5万キロの走行を目安に、自己判断でのブレーキパッドの定期的な交換が必要です。

また、ブレーキパッドの減少や、走行距離に関わらず、ブレーキの効きが悪くなった場合やブレーキ時に異音が発生する場合には、ブレーキパッドの作動に何らかの不具合が起きている事が考えられます。自動車の安全に直結する部品であるため、緊急時には早急に点検と交換を行うことが大切です。

スーパーチャージャー

スーパーチャージャーとは

スーパーチャージャー

スーパーチャージャー (英: Supercharger) とは、過給機と呼ばれる装置の一種です。

エンジンのシリンダ内に圧縮した空気を送り、車の出力を上げる役割を果たしています。基本的に、エンジンは流れ込む空気量で出せるパワーが決まります。例えば、軽自動車に搭載されている小さいサイズのエンジンで、トラックなどの大型車が動かせないのは、小さいサイズのエンジンに流し込める空気量が少ないためです。

しかし、スーパーチャージャーを使えば圧縮した空気を安定して送り混むことができるため、小さいサイズのエンジンであっても、圧縮した分より多くの空気を送ることが可能になります。結果的に、そのエンジンが持つ排気量以上のエンジン出力を引き出すことが可能になります。

排気量が少ない軽自動車やコンパクトカーであっても、スーパーチャージャーを搭載することにより、排気量以上のパワーを発揮することができます。

スーパーチャージャーの原理

スーパーチャージャーは、エンジンのクランクと、クランクにかかっているベルトを介することで働きます。

エンジンのクランクにかかるベルトの回転により、コンプレッサーが起動します。そして、空気を圧縮し、エンジンのシリンダ内に圧縮空気を送り込むという仕組みです。

スーパーチャージャーとよく比較されるターボチャージャーは、エンジンの排気ガスの流れを動力源としてコンプレッサーを起動させて空気を圧縮していますが、スーパーチャージャーはエンジンのクランクによる回転運動を動力源として空気を送り込んでいます。

スーパーチャージャーの使用用途

スーパーチャージャーは、エンジン自体を動力源としているため、エンジンの回転数が少ない状況であっても働きます。

一方で、スーパーチャージャーには対応できる出力に限界があります。エンジンの回転が早くなり、一定のエンジン出力を超えると、スーパーチャージャーにかかる負荷が高くなり、空気圧縮効率が落ちてしまいます。

そのため、あまりエンジンの高回転域を使わず、停車が多い街乗りをするならスーパーチャージャー搭載の車が良いと言えます。スーパーチャージャーは主にエンジン出力が小さく、街乗りなどが中心となる軽自動車などに使われることが多い傾向です。

しかし、近年ではターボチャージャーの発達により、高回転域での圧縮効率の低下や、エンジン自体を動力に使うことによるエンジン損失、構造が複雑でコストが高いという点から、ほとんど使われていないのが現状です。

スーパーチャージャーの種類

スーパーチャージャーには、使用する圧縮機の種類によって、次の6種類が存在します。

  • ルーツ式
  • 遠心式
  • リショルム式
  • スクロール式
  • スライディングベーン式
  • レシプロ式

それぞれ、コンプレッサーを働かせる部品が異なりますが、エンジンの回転の力を使って稼働させている点は同じであるため、スーパーチャージャーはエンジンの回転数と空気の供給量がある程度比例しています。

例えば、高出力のエンジンの場合、スーパーチャージャーもよく働きますが、駆動損失により燃費が悪化するため、その副作用には注意が必要です。

1. ルーツ式

「ルーツ式」では、ローターが回転する力を利用して空気の吸入から吐出までの作業を行っています。ドライブローターとドリブンローターが対になって働いていることや、形状が簡単で、コストが安いのが特徴です。

2. 遠心式

「遠心式」では、クランクの力を利用して、コンプレッサーを直接回転させることで空気の吐出を行っています。スーパーチャージャーと同様に過給機の一種である、ターボチャージャーと同じ圧縮方法です。一方で、スーパーチャージャーの中でもレスポンスが悪いのが欠点と言えます。

3. リショルム式

「リショルム式」では、ルーツ式と似た原理を使用してスーパーチャージャーを作動させています。対になったローターを使用するところは同じですが、ローターの構造がらせん状になっています。振動が少なく、スーパーチャージャーの中では一番性能が良いのが特徴ですが、その分コストが高くなるのが欠点です。

4. スクロール式

「スクロール式」では、2つのうずまき形状の羽 (スクロール) のうち1つを固定、もう1つを円運動させることで、空気を吸入し、圧縮しながら吐出します。

5. スライディングベーン式

「スライディングベーン式」では、溝が放射状に掘られた円柱形状のローターが楕円形のハウジングの中を回転することで、空気を圧縮します。

6. レシプロ式

「レシプロ式」では、シリンダ内のピストンが上下運動することにより空気を圧縮します。

スーパーチャージャーのその他情報

電動スーパーチャージャー

電動スーパーチャージャーは、スーパーチャージャーの欠点である高回転域での稼働を補うために開発されました。電動モーターを搭載することで、高回転域でも空気圧縮効率の低下することなく稼働できるのが特徴で、小さい排気量の軽自動車などに採用されています。

しかし、スーパーチャージャーやターボチャージャーの方が風量としては大きいため、あくまで補助的に使われることが多く、ターボチャージャーの低回転域を補う装置として利用されることがほとんどです。

ブレーキキャリパー

ブレーキキャリパーとは

ブレーキキャリパー

ブレーキキャリパー (英: Brake caliper) とは、ディスクブレーキの構成部品の一つであり、ブレーキパッドの動きを制御するのが主な役割です。

車輪と共に回転するディスクホイールを、ブレーキパッドで挟み込み、摩擦熱を発生させて車輪の動きを止める重要部品です。

ブレーキキャリパーの使用用途

ディスクブレーキは、自動車やバイク、航空機、農業機械、建設機械、鉄道などあらゆる乗り物の車輪に採用されており、ディスクブレーキが採用されている全ての車輪にブレーキキャリパーが搭載されています。

近年では、ドラムブレーキが主流の商用車にもディスクブレーキが採用されています。

ブレーキキャリパーの原理

自動車の運転席にあるブレーキペダルを踏むことや、バイクのブレーキレバーを引くことで、ブレーキフルードと呼ばれるオイルに油圧がかかります。

この油圧の力を使用し、ブレーキキャリパー内のピストンに圧力を加えると、ブレーキキャリパー内のブレーキパッドが作動します。ブレーキパッドが車輪と共に回転するディスクローターに押し付けられ、摩擦が発生します。

摩擦によって生じる熱によって、車輪の回転エネルギー (運動エネルギー) が熱エネルギーに代わり外に放出され、車輪の回転エネルギーが減少し、車輪の動きが止まるという仕組みです。

ブレーキキャリパーの種類

ブレーキキャリパーには、次のような3種類のタイプが存在します。

  • フローティングタイプ
  • オポーズドタイプ
  • スライディング・キャリパータイプ

それぞれ、特徴やメリット・デメリットが異なるため、重視するものによって採用すべきブレーキキャリパーが異なります。

具体的には、フローティングタイプは軽自動車や小型車、オポーズドタイプはスポーツカーや高級車、商用車、スライディング・キャリパータイプは乗用車やトラックなどに搭載されています。

1. フローティングタイプ

浮動型、または片押し式とも呼ばれます。ディスクローターの両側ではなく、片側からピストンを押し付ける構造となっており、ブレーキキャリパーの中でも一番シンプルな構造となっています。ピストンやシリンダの数も1本で、構成部品も少ないため、軽くて安価で、組み込みやすいのがメリットです。

一方で、ブレーキ時に発生する音 (ラトル音) の発生や、剛性の低さなどがデメリットです。このような特徴から、軽自動車や小型車など、安価な車に主に採用されています。

2. オポーズドタイプ

固定側、または対向ピストン型とも呼ばれます。

ディスクローターの両側からピストンを押し付ける構造となっており、制動性の高さや剛性の高さがメリットです。ピストンの数が2つ以上あるタイプも存在します。

一方で、ピストンの数が他のタイプよりも多いため、重くて高いのがデメリットと言えます。安定したコントロール性や制動性を発揮できることから、より大きな制動力が必要となる商用車や、高級車、スポーツカーなどに採用されています。

3. スライディング・キャリパータイプ

フローティングタイプをベースに、ピストン数を2つに増やしたタイプです。

2つのピストンが背合わせの状態になっており、片方のピストンを押し出すと、もう片方のピストンが引き寄せられるという仕組みです。ピストンが2つで、シリンダが1つとなっており、フローティングタイプの安さや軽さという良さを残しつつ、弱点である剛性の低さを補ったブレーキキャリパーと言えます。

フローティング、オポーズドタイプに比べてデメリットが少ない点が最大のメリットです。

ブレーキキャリパーのその他情報

1. ブレーキキャリパーの寿命・交換時期

ブレーキキャリパーの寿命は、約10万キロ走行程度が目安とされていますが、ブレーキキャリパーの構成部品の1つであるブレーキパッドは、直接ディスクローターと接触する部品であるためブレーキキャリパーよりも寿命が短く、約3〜5万キロ走行、もしくは3mm以下が交換時期とされています。

そのため、ブレーキパッドの点検を行う際に一緒にブレーキキャリパーの点検も行えば、安心です。また、ブレーキの効きが悪くなった、異音がする、などブレーキの不調を感じた場合には、早急に点検・交換が必要です。

2. ブレーキキャリパーの固着

ブレーキキャリパーの代表的な不具合として挙げられるのが固着です。固着とは、ブレーキキャリパーの内のピストンにサビや汚れが付着し、ピストンの動きが鈍くなったり、ピストンが動かなくなってしまい、ブレーキパッドがディスクローターに押し付けられた状態から戻らなくなった不具合のことです。

つまり、走行中にブレーキが効きっぱなしの状態となり、ブレーキの破損などに繋がり、危険です。特に片方の車輪のみ固着が起きてしまった場合には、片方だけブレーキがかかってしまうため、車のコントロールができず、大きな事故原因にも繋がります。

ブレーキキャリパーは比較的安く交換できるため、固着など、不調を起こす前に定期的に点検・交換を行うことが大切です。

3. ブレーキキャリパーの点検・メンテナンス方法

ブレーキキャリパーの点検やメンテナンスは自分でも行えますが、業者に依頼する場合の費用相場は1.5〜2万円程度です。メンテナンスでは次のような点を確認します。

  • サビの有無
  • ピストンシール、オイルシールの劣化
  • ブレーキフルードの充填

車載カメラ

車載カメラとは

車載カメラ

車載カメラとは、一般的に自動車に搭載され、運転中の映像やデータを捉えるための装置です。

さまざまな形態と機能を持つ車載カメラが存在しますが、主な役割はドライバーの安全運転を支援し、車両の周囲の状況の把握です。さらに、一部の高度なモデルでは障害物検知、車線逸脱警告、自動駐車支援などの高度なドライバーアシスト機能も提供します。

このように、車載カメラは自動車の安全性向上に必要不可欠な要素であり、さらなる自動運転技術の実現に向けて重要な役割を果たしています。自動車業界の設計者や購買担当者にとって、適切な車載カメラの選択と組み込みは、次世代の自動車開発のキーファクターです。

車載カメラの使用用途

車載カメラはその機能性と汎用性から、現代の自動車の重要なコンポーネントとなり、さまざまな用途で使用されています。

1. 駐車支援

駐車は運転の中でも特に繊細さが求められる作業であり、運転者にとってストレスを感じることも少なくありません。車載カメラはバックや並列駐車を安全に、そして確実に行うための重要なツールです。リアビューとトップビューを提供し、車両と周囲環境の間の距離を的確に判断するのに役立ちます。

2. 事故記録

車載カメラは、事故や衝突の瞬間を記録するための信頼性の高いツールとなります。後の保険請求や警察への報告で非常に価値のある証拠となる可能性が高いです。事故の原因や責任を明確にするためには、車載カメラの映像がしばしば必要となります。

3. 運転記録

日々の運転行動を記録するためにも、車載カメラは有効です。これは運転習慣の分析、改善のため、または特定の事件や問題が生じたときに運転者を保護する際に使用されます。

4. 車内監視

車載カメラは車内監視にも用いられ、盗難や車上荒らしを防ぐために活用されます。また、タクシーや配送業などで運転者の行動を記録したり、車両を共有するシナリオでは乗客の行動を監視したりするためにも使用されます。

5. ADAS (先進運転支援システム) の一部として

最後に、車載カメラは先進運転支援システム   (ADAS) の一部として機能します。これには車線逸脱警報、前方衝突警報、歩行者検出などの機能が含まれます。これらのシステムは運転者の反応時間を補完し、事故を防ぐために設計されています。

車載カメラの原理

車載カメラには、単眼カメラ方式とステレオカメラ方式の2種類の方式があります。

1. 単眼カメラ方式

単眼カメラ方式は、1台のカメラに写る画像座標の縦方向のピクセル位置から、先行車や歩行者までの距離を算出します。単眼カメラは低コストでサイズも小さいメリットがありますが、誤差が大きい点がデメリットです。ただし、近年、画像処理技術の発展によって単眼カメラの精度は上がってきています。

2. ステレオカメラ方式

ステレオカメラ方式は、カメラを2台搭載して対象物を認識します。。人間の眼と同様に、撮像位置の視差を利用した三角測量の原理を使います。2台のカメラ間の距離、カメラの焦点距離、視差から三角測量法で対象物までの距離を計測し、画面全体を三次元として把握が可能です。

ステレオカメラでの距離計測は、歪み補正・画像輝度の正規化などの前処理、マッチングのための画像変換、視差を推定するマッチング、三角測量の4段階のアルゴリズムで処理が行われます。このうち、マッチング・アルゴリズムには、画像パターンがない部分での視差を推定するSGM (Semi Global Matching) 方式や画像パターンがない部分はデータ無しのまま信頼性の高いデータを用いるSAD (Sum of Absolute Difference) 方式など、さまざまなマッチング手法があります。

車載カメラの種類

車載カメラは機能や用途によって多種多様なものが存在します。主要なものは、以下のとおりです。

1. フロントカメラ

車両のフロント部分に搭載され、前方の視界を拡大します。道路上の障害物、車線、信号、歩行者等を検知し、ドライバーに情報を提供します。ADASシステムの一部として機能し、衝突回避や自動運転の実現に寄与します。

2. リアビューカメラ

車両の後部に設置され、バックミラーでは確認しにくい後方の状況を捉えます。これにより駐車時の安全性が大幅に向上します。

3. サイドビューカメラ

車両の側面に取り付けられ、盲点をカバーします。このカメラは、車線変更や交差点での把握が困難な死角の視界を改善します。

4. 全周囲カメラシステム

複数のカメラを車両の各部に設置し、車両全体の360度視界を提供します。これは駐車や狭いスペースでの操縦を容易にします。

ピストンリング

ピストンリングとは

ピストンリング

ピストンリングとは、車のエンジンを効率よく働かせるために必要な部品です。

ピストンとシリンダの間に存在することで、燃料ガスがピストンやシリンダから漏れないように防ぎます。そのほかにも、ピストンやシリンダに触れる高温のガスによって劣化しないよう潤滑油の役割として働いたり、熱を外に逃がしたり、ピストンがシリンダに当たるのを防いだりとさまざまな役割があります。ピストンリングは、車を動かす上で重要な部品です。

ピストンリングの使用用途

ピストンリングは、車に使用されています。主な役割は、燃焼ガスの漏れを防ぐことです。燃焼ガスが漏れると、エンジンオイルの劣化が早まります。

ピストンリングは高温の燃焼ガスによって膨張してしまうため完全に防ぐことはできませんが、燃焼ガスの漏れを防ぐ以外の目的があることからピストンリングが存在しています。

ピストンリングは3本セットで上から順にトップリング、セカンドリング、オイルリングと呼ばれており、これらが重なった状態でピストンに装着されています。

ピストンリングの原理

ピストンリングは3本セットですが、その中には2種類のリングが存在しています。

1. コンプレッションリング

コンプレッションリングは、ピストンとシリンダの間の隙間をなくし、ガスが漏れることを防ぐ目的で使用されています。トップリングとセカンドリングの2枚構成です。

トップリング
トップリングはバレルフェース型と呼ばれる型を使用することが多く、これはシリンダと当たる摺動部が孤を描いた形になっています。そのため、シリンダーとの摩耗が少なくなります。

セカンドリング
セカンドリングには、テーパーフェース型もしくはアンダカット型が使用されることが多いです。テーパーフェース型は摺動部が面ではなく線で接触する形になっており、上昇時は持ち上がり易い構造です。

アンダカット型は下側が削れた構造になっています。こちらも上昇時にはシリンダ面と線接触するため、滑らかな動きが実現可能です。

2. オイルリング

一番下層には、シリンダの壁につくエンジンオイルの厚みをコントロールするオイルリングが使用されています。オイルリングはじゃばら構造をしているスペーサをレールと呼ばれる2枚のリングで挟んだ構成をしています。

シリンダ壁面との間にできるオイル膜厚を調整するのが役割です。このオイル膜が不十分だと、スカッフと呼ばれるシリンダに傷がつく現象が発生します。

 

これらのピストンリングは、ピストンに装着されています。そのため、ピストンと同時に1分間に10,000回以上に往復しています。適度な密着力を出すことによって圧力の変化が起きないまま、滑らかにシリンダ内を往復できるようになっています。

エンジン内で燃焼ガスに触れながら働く部品の1つであるため、高温、摩耗にも耐えられる素材であることが重要です。そのため、鋳鉄製のものやスチール製のものが採用されていますが、最近では、高い耐摩耗性をもつスチール製のものを使用することが多いです。

ピストンリングのその他情報

ピストンリングの機能

1. 燃焼ガスシール
燃焼時に発生したガスがシリンダー内に漏れ出ないように、シリンダー壁とピストンリングでガスをシールします。

2. エンジンオイルコントロール
シリンダーとピストンに傷が入ってしまう焼付きと呼ばれる現象を防ぐ目的で、エンジンオイルの膜をシリンダー壁面に作ります。ピストンリングでこの膜の厚みを調整しています。そのほか、余分なエンジンオイルが燃焼室にはいらないようにする役割も担っています。

3. 伝熱機能
ガス爆発を起こして発生した熱を逃がす役割を持ちます。ピストン頂部からピストンリング、そこからシリンダーに熱を逃がすことでエンジン内が高熱になるのを防ぎます。

4. ピストン姿勢サポート
ピストンがシリンダーに当たってしまうことを防ぐ機能です。ピストンの姿勢が斜めになってしまっても、ピストンリングのお陰でスムーズにピストンが動けます。

燃料ポンプ

燃料ポンプとは

燃料ポンプ

燃料ポンプ (英: Fuel pump) とは、エンジンなど燃料を燃焼する場所に燃料を供給するためのポンプの総称です。

フューエルポンプとも呼ばれます。燃料ポンプには、下記のようなポンプも含まれますが、一般的にはエンジンの燃料気化装置に燃料を送るフィードポンプの事を指して「燃料ポンプ」と呼ばれます。燃料タンクから燃料を吸い上げ、燃料をエンジンのシリンダ内に噴霧する噴射口まで運ぶ役割を担っています。

  • フィードポンプ
  • プライミングポンプ
  • インジェクションポンプ
  • サプライポンプ

燃料ポンプの使用用途

かつては、燃料タンクがエンジンより高い位置にあったため、自然にエンジンに燃料を流す事ができていましたが、エンジン位置の多様化や、燃料流入制御の必要性などから、現在では燃料ポンプが必要不可欠となっています。

そのため、燃料ポンプは基本的にエンジンが使用される自動車やバイク、航空機、船舶、農業機械、建設機械など、あらゆる乗り物に採用されています。

燃料ポンプの原理

燃料タンクは、ポンプ部と、モーター部という2つの構成要素からなっており、ポンプ部では燃料を吸入し、モーター部では燃焼ガスを圧送します。この2つの構成要素が同時に動くことで、エンジンに燃料が送られる仕組みです。

ます、はじめにイグニッションのスイッチがつくことで、燃料ポンプが作動し、ポンプ部の羽根が回ることで、燃料ポンプ内は燃料で満たされた状態となります。

その後、モーターの回転に合わせてポンプ内のインぺーラーも回転を開始します。インぺーラーの外側には、羽根溝が存在しており、わずかな隙間を利用してポンプの中には過流が発生します。この圧力を利用して、燃料がポンプ室から吐出されます。

また、燃料ポンプは、燃料の燃焼が行われる場所付近に存在するため、異常が発生すると他の部品にも大きな影響を及ぼしかねません。

そのため、燃料ポンプには異常時に燃料タンク内に燃料を戻す装置もついており、異常を検知すると、燃料タンク内に燃料を自動的に戻します。

燃料ポンプの種類

燃料ポンプは、大きく機械式と電動式に分けられます。電動式には、燃料タンクの外側に配置されるアウトタンク型と燃料タンクの中に配置されるインタンク型の2種類があります。

1. 機械式

エンジンの回転運動を動力として利用した燃料ポンプです。エンジンのカムシャフトの動きに合わせて、ポンプ内にある、革もしくは合成ゴム製のダイヤフラム (隔膜) が往復運動し、燃料を汲み上げます。

かつてキャブレター型の燃料噴射装置を採用している車には機械式燃料ポンプが採用されていました。

しかし、ダイヤフラムからの燃料漏れが発生しやすいという点や、エンジンの回転数によって吸い上げる力が変化してしまう点、エンジンの動力を使って稼働するためにエンジンの動力損失が発生してしまうという欠点から、現在は電動式の採用が主流となっています。

2. 電動式

電気モーターを動力として燃料を汲み上げる燃料ポンプです。まず、電気モーターで燃料を汲み上げ、インジェクターに一定の圧力を保った状態で貯めます。

その後、燃料噴射の電気信号を受けたインジェクター内のコイルに電流が走り、燃料噴射口から燃料が高圧で噴霧されるという仕組みです。

機械式の燃料ポンプとは違い、電気モーターを動力としていることから、エンジンの動力を損失することなく安定して燃料の汲み上げができます。そのため、現在では電動式の燃料ポンプの採用が主流です。

また、電動式にはポンプが燃料タンクの内側に位置するインタンク型と、外側に位置するアウトタンク型の2種類が存在します。

アウトタンク型はポンプの交換がしやすいというメリットがありますが、ポンプに不具合が起きた際にエンジンルーム内に燃料が飛び散ってしまい危険なことや、燃料を燃料タンクに戻す際にリターンパイプが必要になるというデメリットがあります。

そのため、現在はそういったデメリットがなく、ポンプから発生する熱を燃料タンク内の燃料自体で冷却できる利点を備えたインタンク型の燃料ポンプが主流となっています。

燃料ポンプのその他情報

1. 燃料ポンプの寿命・交換時期

燃料ポンプの寿命は5~10万キロ走行と言われていますが、厳密にはエンジンが動いている間、燃料ポンプも動き続けているため、アイドリングが多い車のように走行距離が短くてもエンジンが動いている時間が長い場合には、寿命が短くなります。

燃料ポンプが故障すると、エンジンに燃料が送られず、車が動かなくなってしまうため、定期的に点検や交換を行うことが大切です。

燃料ポンプを交換する際は、後部座席と燃料タンクを取り外して行いますが、燃料ポンプ周辺は、配線やホースで入り組んでいるため、交換を自力で行うのは難しいです。燃料ポンプの交換は、自動車整備業者に依頼することが推奨されます。

2. 燃料ポンプの故障

燃料ポンプが故障したかどうかを判断する基準は次の通りです。

  • 走行中にウィーンという大きなモーター音が聞こえる
  • エンジンをかけようとしてもかからない

このような症状が見られる場合には、燃料ポンプの故障が考えられます。すぐに整備業者に連絡し、点検及び燃料ポンプの交換を行います。