プッシャ

プッシャとは

プッシャ (英: pusher) とは、押す動作を行う機械装置です。

機械的な力によって、物体を押すまたは押し込むために使用されます。プッシャは機械的な力を利用して物体を押すことができるため、人の力だけでは難しい重い物体を押す場合に重宝します。大きな圧力をかける必要のある物体を容易に移動、押し出すことが可能です。

機械的にプログラムされた動きを再現することができるため、高い精度と一貫性を保ちます。これは、製造ラインや精密な作業において重要です。自動化プロセスに組み込めるので、人の介入を最小限に抑えて作業を進めることが可能です。

ただし、プッシャーを操作する前には適切なトレーニングを受けた作業者が操作することが必要となります。

プッシャの使用用途

プッシャはさまざまな用途で使用されます。以下はプッシャの使用用途一例です。

1. 自動設備

自動製造ラインでは、製品の組み立てや加工の過程で部品を正確な位置に配置する必要があります。このような場面でプッシャーが利用されます。

自動車製造のラインなどで、使用されることが多いです。車体に部品を取り付ける際に、プッシャーが部品を正確な位置に押し込むことで、高精度な組み立てが可能です。

2. ドア

自動ドアやエレベーターの開閉機構にプッシャを使用されます。センサーによって近づいた人や障害物を検知し、プッシャーを用いてドアを開閉する仕組みです。センサーが反応すると、プッシャーがドアを押し出すことで自動的に開閉します。

3. 建設機械

建設現場では土砂や建材を移動させたり、地面を平坦にしたりするために、プッシャーが重機に搭載されています。ブルドーザーはフロントブレードを使って土砂を押し出し、地形を整えることが可能です。これにより、人力での作業よりも効率的な地ならしが可能です。

4. ゲーム機器

アミューズメント施設や遊技場にあるプッシャーゲームとして知られる装置では、コインや景品を押し出すためにプッシャーが使われます。コインをプッシャの台の端に置き、プッシャが後ろから押してコインを押し出すことで、景品を獲得できる仕組みです。 

プッシャの原理

プッシャは、機械的な力を利用して物体を押すという基本的な原理に基づいています。動力源として電気、油圧、空気圧、人力などさまざまです。このエネルギー源を介してプッシャに力が供給されます。

エネルギー源からの力は、リンクやピストンなどの伝達機構を介して動作部分に伝えられることが多いです。動作部分は物体を押し出すための役割を果たします。これは通常、棒や板、プレートなどの形状をしており、物体に直接力を加える部分です。

エネルギー源から伝達された力によって、プッシャの動作部分が物体に働きかけます。その結果、物体が押し出され、移動するまたは押し込まれることになります。

このような原理に基づいて、さまざまな形態で設計されています。油圧プッシャは油圧シリンダーを使用して力を増幅し、物体を押し出すことが可能です。電動プッシャは、モーターや歯車機構を使って力を伝達して物体を押し出します。

プッシャの選び方

プッシャを選ぶ際には、使用する目的や要件に合った適切な製品を選ぶことが重要です。まず、プッシャをどのような用途で使用するかを明確にします。自動製造ラインでの組み立て作業や建設現場での土砂の移動など、用途によって必要なプッシャの特性が異なります。

押し出す対象の物体のサイズや形状などを考慮して、適切なプッシャの能力を選ぶことも必要です。物体の重さや押し出す力が、プッシャの許容範囲を超えないように注意します。

プッシャの動力源は、電気や空気圧、人力などがあります。使用環境や作業要件に応じて、適切な動力源の選定が必要です。屋外や遠隔地で使用する場合は電気や空気圧が利用しやすい場合も多いです。

エキセンプレス

エキセンプレスとは

回転運動を偏心軸を用いて上下運動ないしは水平運動に変換することでプレスする工作機械を言います。
偏心軸プレス、手廻しプレスなどと呼ぶこともあり、金型を取り付けて、切断や穴あけ、および折り曲げ加工を行います。

ここでエキセンとは、回転運動をスライドの往復運動に変えるためのエキセン軸で、エキセン軸のメイン軸(主軸)同士をつなぐ位置にある偏心部分のことを意味します。

余談ですが英語のエキセントリックとは、行動や性格が突拍子もない意味もあり、この偏心の動きに由来しています。

エキセンプレスの使用用途

丸形のハンドルを手廻しして用いるプレス機械であり、金属板の圧入加工や打ち抜きプレス加工に用います。例えば、一例をあげると、ストロークとコミ穴にあった金型を作製し、取り付けることで薄い鋼板で板厚が0.3mm程度の板のコーナーをカットする作業などに用いられます。

なお、関東型と関西型があり、前者はストッパーボルト内蔵でストロークの途中で停止させることができます。後者は、標準型とも呼ばれ、両側にある調整ボルドで、ストロークの正確な高さなどの調整ができます。

エキセンプレスの原理

エキセントリック(偏心)は、蒸気機関車によく用いられた機械要素であり、偏心軸を回転運動させることで、上下ないしは水平なロッドの直線往復運動に変換させています。エキセンプレスの原理も同様に、丸形の手廻し用のハンドルを回すことで、偏心軸を回転運動からストロークの上下運動へ変換し、金型を介してプレス工作に活用する動作になっています。

ハンドプレスの場合はレバーの上げ下げに連動したプレス動作ですが、エキセンプレスの場合、ハンドルを回すと、ピストンのように連続した上下運動をするプレスの機構が異なります。この上下運動とコミ穴にあった金型の組み合わせにて、金属板のコーナーカットや、打ち抜き加工を平易な力にて行うことができます。

なお、通常はマニュアルのミシン機械のような手廻しハンドルタイプであり、昨今は中古品のオークション市場で見かける場合も多いプレス機ですが、大型の自動化されたエキセンプレス装置についても、専門の機械メーカーによっては制作販売の取り扱いがなされています。

ワークガイド

ワークガイドとは

ワークガイドとは、機械加工に伴いワーク (被加工物) を決められた位置に固定するための治工具です。

使用用途によって多くの種類のワークガイドが作られています。

ワークの3次元空間における位置決めは「3-2-1ルール」という原則があり、この原則に従えば、正確な位置決めが可能となるというものです。この「3-2-1ルール」とは、XYZの3座標からなる3次元空間においてある面を基準面と定め、その面で3ポイント、それ以外の面でそれぞれ2ポイントと1ポイントという座標のポイント数を指しています。ワークガイドは、必要に応じて、この「3-2-1ルール」に則って適時設置していきます。

ワークガイドの使用用途

ワークガイドは、工業や製造業において、加工や組み立ての際に加工対象物を正確に位置決めし、安定した作業を行うための補助装置です。主に金属加工、木工、プラスチック成形、電子部品の組み立てなど、多様な分野で使用されます。

例えば、金属加工では、切削や溶接時にワークを一定の位置に保持し、精度の高い加工を実現します。木工の分野では、鋸やルーターのガイドとして機能し、均一な仕上がりを確保できます。また、電子部品の組み立てでは、基板の正確な配置をサポートし、精密な接合作業を補助します。

さらに、自動化された生産ラインでは、ワークガイドがロボットや機械と連携し、効率的な材料供給や加工精度の向上に貢献します。作業の精度と安全性を向上させる重要な役割を持つため、ワークガイドは多くの産業で不可欠なツールとなっています。

ワークガイドの特徴

ワークガイドは、位置決めという精度に関わる部品となるため、使用される材質など、吟味され製作されています。

ワークガイドの仕様をひとつ例示すると、材質は「SS400」でメッキ厚5~10μmの無電解ニッケルメッキ処理があります。一般構造用圧延鋼板の一種である「SS400」は、含有する炭素量は、JISに特に規定されていませんが、通常は0.15~0.20%程度と低めで、低炭素鋼のひとつに挙げられるものです。この「SS400」という鋼材は、低炭素のため、熱処理による強度アップができない代わりに、熱によるトラブルは少ないとされています。

また、無電解ニッケルメッキは、被膜硬度が優れていることから、メッキ厚など、きちんと管理されたものであれば、耐食性や耐摩耗性の優れたメッキとして機械部品によく使用されているものです。無電解ニッケルメッキは、通常リンが含有されており、その含有率により低・中・高という3タイプがあり、それぞれ物性が異なるため、留意する必要があります。ちなみに、中リンタイプのリン含有率は7~9%となります。

ワークガイドの原理

ワークガイドは、加工や組立工程においてワーク(加工対象物)の位置決めや誘導を行う装置や機構です。その原理は、適切なガイド機構を設けることでワークの動きを制御し、精度の高い加工や組立を実現することにあります。

一般的なワークガイドの仕組みとしては、リニアガイド、ローラーガイド、スライドガイドなどがあり、それぞれ異なる動作方式でワークを誘導します。

例えば、リニアガイドは直線的な動きを滑らかに制御し、ローラーガイドは回転運動を活用して摩擦を減らしながらワークを移動させます。また、ワークガイドには精密な寸法管理が求められ、ガイドレールやストッパーを組み合わせることで位置決め精度を向上させる仕組みが採用されています。これにより、加工誤差の低減や作業効率の向上が可能となり、自動化ラインや高精度加工において不可欠な要素となっています。

ワークガイドの種類

ワークガイドには、加工や組立の精度を向上させるために使用されるさまざまな種類があります。主に、リニアガイド、ローラーガイド、スライドガイド、フィンガーガイドなどが代表的です。これらのワークガイドは、用途や精度要求に応じて適切に選択され、効率的な生産を支える重要な役割を果たしています。

  • リニアガイド:ワークを直線的に移動させるためのガイドで、精密加工や組立工程で多用されます。
  • ローラーガイド:回転するローラーを利用してワークをスムーズに移動させる仕組みで、摩擦を低減しながら高精度な動作が可能です。
  • スライドガイド:摺動面を持つ構造で、ワークの位置決めや一定範囲内の移動を制御します。
  • フィンガーガイド:エアシリンダーやカム機構を活用してワークを固定・誘導するタイプで、組立や搬送ラインで広く使用されます。

ワークガイドの選び方

ワークガイドを選ぶ際には、加工や組立工程の精度、ワークの形状、移動距離、負荷条件などを考慮することが重要です。適切なワークガイドを選ぶことで、作業効率や精度の向上、設備の長寿命化が実現できます。

まず、直線的な動きが求められる場合はリニアガイドを選び、精密な位置決めが必要な加工にはスライドガイドが適しています。一方で、摩擦を減らしながらスムーズな移動が必要な場合はローラーガイドが最適です。搬送ラインなどでワークを確実に固定しながら移動させるなら、フィンガーガイドが有効です。

さらに、ガイドの耐久性やメンテナンスのしやすさも選定基準の一つです。使用環境や負荷に応じて、適切な素材や構造を持つワークガイドを選び、長期間安定した運用ができるものを導入することが重要です。

ウレタンスプリング

ウレタンスプリングとは

ウレタンスプリングとは、バネ性を活かしてスプリングとして使用するウレタン製の部材です。

モールド成型ウレタンを使用する場合が多く、ウレタンスプリングは柔軟性と弾力性に優れており、衝撃を吸収してクッション性を提供します。これにより、快適性が向上し、振動や衝撃による負担を軽減することが可能です。耐久性にも優れるため、製品の寿命を延ばすこともできます。

また、ウレタンは比較的軽量な素材であり、製品の軽量化が実現されます。特に車両や航空機などの輸送機器において、燃費やエネルギー効率の向上に寄与することがあります。ウレタンは高温に弱く、長時間高温にさらされると劣化するケースが多いです。

特に、車両のエンジンルームなど高温の環境では、適切な対策行います。高荷重がかかると変形する可能性もあるため、適切な硬度や厚さのウレタンを選択することが重要です。

ウレタンスプリングの使用用途

ウレタンスプリングはその柔軟性やクッション性、衝撃吸収性などの特性により、さまざまな用途で利用されています。以下はウレタンスプリングの主な使用用途の例です。

1. 自動車

ウレタンスプリングは、自動車のシートにクッションとして使われます。ウレタンの柔らかさと弾力性により、ドライバーや乗客の快適性が向上させることが可能です。また、長時間の運転による疲労を軽減する効果もあります。

2. 家具

ソファやチェアのクッションにウレタンスプリングが使用されます。座り心地がよく、長時間の座っていても疲れにくいです。また、形状を維持しやすいため、長期間使用してもへたりにくいという利点もあります。

マットレスやベッドにもウレタンスプリングが使われます。体圧分散や体のラインにフィットする快適な寝心地を提供することが可能です。

3. 建築材料

地震や風などの外部からの振動を吸収し、建築物の耐震性や安定性を向上させるために利用されることがあります。建築物の構造部材にウレタンスプリングを組み込むことで、建物自体の振動や衝撃を吸収します。結果として、内部の機器や装置へのダメージを軽減することが可能です。

ウレタンスプリングの原理

ウレタンスプリングの原理は、ウレタン素材の特性に基づいています。ウレタンは弾性体であり、外力が加わると変形しますが、外力が取り除かれると元の形状に戻る特性があります。これはウレタン分子の構造によるものです。

外力によって一時的に分子の配置が変化し、外力が取り除かれると元の配置に戻ることで弾性を示します。また、ウレタンの弾性特性により、外力が加わったときにその力を吸収することが可能です。

その結果、クッション性や衝撃吸収性に優れた性能を発揮します。ウレタンスプリングが自動車のシートなどに使用されると、体重や衝撃が加わったときにウレタンが一時的に変形し、その力を吸収することが可能です。

ウレタンは振動を吸収する特性もあります。振動がウレタンスプリングに加わると、ウレタン内の分子が一時的に振動し、そのエネルギーを吸収します。これにより、建築物の振動制御などで振動を軽減することができます。

ウレタンスプリングの選び方

ウレタンスプリングは、形状や材質など、用途に合わせた各種のタイプが製作されています。選び方のポイントは次の通りです。

1. 荷重と硬度

使用する製品や装置にかかる荷重や負荷を考慮して、適切な硬度のウレタンスプリングを選ぶことが重要です。硬度が高いほど耐荷重性が向上しますが、柔軟性や衝撃吸収性は低下します。

逆に、硬度が低いほど柔軟性やクッション性が増しますが、耐荷重性は低下します。物性的な数値把握のため、形状係数や弾性係数といった数値も事前につかんでおくことも大切です。

2. サイズと形状

製品や装置に合わせて、適切なサイズや形状のウレタンスプリングを選ぶことが重要です。必要な寸法や形状を考慮して製品を選定し、必要に応じてカスタムオーダーすることもできます。

3. 快適性と耐久性

ソファやマットレスなどの快適性を重視する用途では、柔らかめのウレタンスプリングが適しています。一方、自動車のサスペンションなどの耐久性が求められる場合には、硬めのウレタンスプリングが最適です。

ロケートリング

ロケートリングとは

ロケートリングとは、成形機と金型の位置合わせに使用されるリングです。

金型に2本もしくは4本で取付けられ、成形機のノズルと金型のスプルーの位置合わせを高精度に行えるよう作られています。成形機を金型へ取付ける際、ロケートリングは重要な役割を果たしています。金型のスプルーブッシュと成形機の射出ノズルの位置ずれは、射出材料の漏出や成形品の不良につながり、大きなトラブルの原因となります。

ロケートリングの使用用途

ロケートリングは、射出成形機と金型の固定側取付板を位置決めする目的として使用されます。

射出成形機はプラスチックをはじめとする熱可塑性樹脂を加熱溶融して金型に流し込み、冷やして成形する加工機です。射出成形機には樹脂を射出するノズルと、射出された樹脂が通るスプルーブッシュがあります。そのため少しでもズレてしまうと樹脂が正常に流れず成形できません。

金型の固定側取付板の穴の位置を正確に一致させることで、材料の漏れを防ぎ、成形品の品質を安定させます。特に、大型金型や高精度な成形が求められる場合には、わずかなズレでも成形不良の原因となるため、ロケートリングが重要になります。

ロケートリングの原理

ロケートリングによる固定の原理は、機械的な拘束、摩擦力の利用、弾性変形による保持の3つの基本メカニズムによって成り立っています。それぞれのメカニズムについて解説します。

1. 機械的な拘束

ロケートリングの最も基本的な固定原理は、機械的な拘束によって部品の移動を制限することです。これは、ロケートリングをシャフトやハウジングの溝 (グルーブ) にはめ込むことで、物理的に部品の位置を固定する仕組みです。

利点としては、強固なストッパー効果と高い信頼性にあります。一度装着すれば、外部から強い力が加わらない限り、ズレることがありません。また、段付きシャフトやキー溝と併用することで、より確実な位置決めが可能となります。

2. 摩擦力

摩擦力を活用した固定では、ロケートリングが部品と接触することで静止摩擦力が発生し、部品のズレを防ぎます。代表的な例がクランプ式ロケートリングで、ネジを締めることでリングがシャフトを圧迫し、摩擦力によって固定する仕組みです。

また、摩擦ウェッジ機構を利用することで、リングと接触面の間に圧力を増大させ、より強い摩擦固定を実現できます。一方で、摩擦固定は振動や衝撃によって緩みが生じる可能性があるため、長期間安定した固定力を維持するには適切な締め付けトルクの管理が必要になります。

3. 弾性変形

ロケートリングの中には、弾性変形を利用して部品を固定するものがあります。たとえば、波形スプリングワッシャーとの併用では、スプリングの弾力を利用して、振動を吸収しながら部品を押さえつけることが可能です。

さらに、コレットチャック機構を応用したロケートリングでは、軸を包み込むように締め付けることで、均一な圧力を発生させ、高精度な位置決めが可能となります。弾性変形を利用することで、繰り返し着脱が可能であり、振動や衝撃に強いというメリットがあります。

ロケートリングの種類

JISでは4種類のロケートリングが規定されています。

  • A形
  • B形
  • AJ形
  • BJ形

A形はテーパのあるタイプで、B形は内穴すらないタイプです。AJ形とBJ形はボルト穴付きで、AJ形はテーパのないタイプ、BJ形はテーパとなっているタイプです。さらに実際の使用によって次のように分類されます。

1. 形状による分類

ロケートリングは、使用環境や金型の設計に応じて標準型・フランジ付き・薄型の3種類に分類されます。標準型は、金型の取付穴に挿入される円筒形状で、最も一般的に使用されるタイプです。フランジ付きロケートリングは、リングの外周にフランジを設けることで、金型取付面にしっかりと密着し、高い固定力を発揮します。

特に、大型金型や高圧射出成形では、フランジの支えによって横方向のズレを防止できるため有効です。薄型ロケートリングは、限られたスペースでの使用を目的としており、金型の設計自由度を向上させます。

2. 取り付け方法による分類

ロケートリングの取り付け方法は、ボルト固定式と差し込み式の2種類が主流です。ボルト固定式は、金型の取付板にネジで固定することで、位置ズレを防ぎながら高い精度を確保できます。

一方、差し込み式ロケートリングは、金型の穴に直接挿入するだけで使用でき、金型交換時の作業負担を軽減できる点がメリットです。頻繁に金型を変更する生産ラインや、小型・中型の成形機でよく使用されます。

3. 材質による分類

ロケートリングの材質選定は、耐摩耗性・耐熱性・耐食性など、成形環境の条件に応じた適切な特性を考慮する必要があります。最も一般的なのはスチール製です。硬度と剛性が高く、標準的な射出成形機で広く使用されます。

ステンレス製ロケートリングは、耐食性に優れ、湿度の高い環境や化学薬品を使用するクリーンルーム向け成形機に適しています。また、高温環境での使用には耐熱合金製 (ハステロイ、インコネルなど) が適切です。

ロケートリングの選び方

適切なロケートリングを選ぶには、金型のサイズや成形機の仕様、使用環境、メンテナンス性などを考慮する必要があります。

1. サイズ

ロケートリングのサイズ選定では、外径・内径・高さを適切に決定することが不可欠です。外径は金型の取付穴と一致させ、ガタつきを防ぐ必要があります。大きすぎると装着できず、小さすぎると固定精度が低下し、成形品の寸法不良を引き起こします。

また、ズレがあると材料漏れや充填ムラが発生します。高さについても、金型と成形機の構造に適合するものを選ぶ必要があります。

2. 形状

ロケートリングには標準型、フランジ付き、薄型などの形状があり、それぞれ特定の用途に適しています。標準型 (円筒形) は、最も一般的な形状で、多くの成形機に対応する汎用性の高いタイプです。フランジ付きロケートリングは、リングの外周にフランジが付いており、金型取付面に密着してズレを防ぐ構造になっています。

一方、薄型ロケートリングは、スペースが限られている金型に適しています。ただし、標準型やフランジ付きと比較すると剛性が低くなるため、使用環境を考慮した上で適切に選定することが重要です。

3. 組立性

ロケートリングの取り付け方法には、ボルト固定式と差し込み式の2種類があります。ボルト固定式は、ネジでしっかりと固定するため、高精度な位置決めが可能であり、射出圧力が高い成形条件でも安定した固定力を発揮します。

一方、差し込み式は、金型の穴に直接挿入するタイプで、ボルト固定が不要なため、金型交換が容易で作業時間を短縮できます。頻繁に金型を交換する生産ラインでは、作業効率の向上につながります。選定時には、作業頻度や精度要件を考慮し、最適な取り付け方法を選ぶことが重要です。

ナックルジョイント

ナックルジョイントとは

ナックルジョイントとは、指のように可動域が存在する継手です。

機械や車両において使用される接続機構の1種で、回転運動を伝達する場合などに使用されます。ナックルジョイントは軸の間で柔軟な運動を可能にします。これにより、振動や角度の変化に対して柔軟に対応できるようになります。剛性も高く、運動を正確に伝達可能です。

また、頑丈で耐久性がある点も特徴の1つです。高い負荷や振動にも耐えられ、長期間の使用においても安定した性能を維持します。回転運動などを伝達する際は、グリースを使用してスムーズな運動を実現します。

ただし、適切なシールが欠ける場合にグリースの漏れが発生することも多いです。これにより、潤滑不足などが生じ、動作の品質や寿命に影響を与える可能性があります。

ナックルジョイントの使用用途

ナックルジョイントは産業界で広く使用される重要な部品です。以下はナックルジョイントの使用用途一例です。

1. 自動車

自動車のフロントサスペンションに使用されます。フロントサスペンションは車体とホイールハブの間の振動や衝撃を吸収し、スムーズな乗り心地を提供する役割を果たす機構部です。ナックルジョイントはステアリング軸とホイールハブを接続し、車両の操縦性や操舵性が向上させます。

また、ドライブトレインにおいても重要な役割を果たします。ドライブトレインは、エンジンからの動力を駆動輪に伝達するシステムです。ナックルジョイントはエンジンの出力を駆動輪に伝え、車両が前進または後退を補助します。

2. 産業機械

ナックルジョイントは、関節部分や回転運動の伝達に使用されます。産業機械やロボットアームなどでは、関節の動きを制御するためにナックルジョイントが使用される場合も多いです。ナックルジョイントにより、機械の動作範囲や可動性が向上し、必要な運動や位置制御が可能になります。

また、プレス機にも使用されることがあります。ナックルジョイントを使用したプレス機は、曲げ加工や穴あけ加工を実施することが可能です。

3. 航空機

航空機においてもナックルジョイントは、さまざまな用途で使用される部品です。航空機の操縦系統では、ステアリング操作や制御面の運動を伝達するためにナックルジョイントが使用されます。また、格納機構などにもナックルジョイントが用いられます。

ナックルジョイントの原理

ナックルジョイントは、一般的に金属で構成される部品です。強度が重要なため、ステンレス鋼や鉄などが使用されます。部品としては、主に本体、ピン、割りピンなどで構成されます。

1. 本体

ナックルジョイントの本体は、ピンと割りピンを収める外部の構造です。頑丈な金属製で、各部品を保持する役割を果たします。めねじなどが切られており、これを装置にねじ込んで取り付けられます。

2. ピン

ピンは運動を伝達するための軸として機能する部品です。一般的に円柱状の部品です。ナックルジョイントの中心軸となり、回転運動が行われます。

3. 割りピン

ピンを固定するための割りピンが使用されます。割りピンは通常ピンの一端に挿入され、広がることによって固定することが可能です。割りピンによってピンが外れることを防止し、安全な固定を提供します。

ナックルジョイントの種類

ナックルジョイントは材質や大きさに応じて種類があります。具体的には、大きく1山ナックルジョンと2山ナックルジョイントに分類することが可能です。

1. 1山ナックルジョイント

1山ナックルジョイントは、本体にピンを通す穴が1山のみあるナックルジョイントです。ジョイント対象がコの字の場合は、1山ナックルジョイントが使用されます。

2. 2山ナックルジョイント

2山ナックルジョイントは、本体にピンを通す穴が2山あるナックルジョイントです。ジョイント対象が1山の場合は2山ナックルジョイントが使用されます。

1山と2山は、基本的にセットで使用されます。一方を1山として他方を2山とすることで、軸を自在に駆動させることが可能です。

フラップシール

フラップシールとは

フラップシール (英: flap seal) とは、板金や鉄板のエッジ部の保護するトリムシールの中で隙間をふさげるようにフラップがついているトリムシールのことをいいます。

コの字型の形状をしていて、エッジ部を挟むようにフラップシールをはめるだけ、接着剤を使わずに使用できます。

フラップシールの使用用途

フラップシールはエッジ部の保護や、隙間をふさぐ防塵・防水効果を期待されて使用されます。

1.自動車産業

ドアエッジやトランク周辺にフラップシールを取り付けることで、ドアの開閉の際の衝撃や、荷物の出し入れ時に車体に傷がつくのを防ぐことができます。

またエンジンルーム内の配線やホースを保護するために使用されることもあり、フラップシールは振動や摩擦を軽減する効果もあります。

2.建築・建設

窓やドアの縁にフラップシールを取り付けることで、風や雨の侵入を防ぎ、断熱効果を高めることができます。

扉やパーテーションのエッジ部にフラップシールを取り付けて隙間を埋めることで、防音効果や断熱効果が高まります。

3.家電製品

冷蔵庫のドアの縁にフラップシールを取り付けることで隙間が埋まり、冷気の漏れを防ぐことで断熱効果や省エネ効果が高まります。

洗濯機や乾燥機の ドアやフタの周辺にフラップシールを取り付けることで、水漏れや振動を防ぐことができます。

4.工業機械

機械のカバーやパネルの縁にフラップシールを取り付けることで、内部の部品を保護し、振動や衝撃から守ることができます。

また、コンベヤベルトの縁にフラップシールを取り付けることでベルトの摩耗を防ぎ、耐久性があがりベルトの寿命を延ばすことができます。

フラップシールの原理

フラップシールはトリムシールにフラップが付いていて、トリムシールで覆うことでエッジ部が保護され、フラップ部分で隙間を埋めることができます。

フラップは樹脂やゴムなど柔軟で適応性のある素材で作られており、隙間をしっかり覆うことがで未使用の状態よりも塵や水分の侵入を防ぐことができます。外部の温度や音が内部に侵入するのを防ぐこともできます。

トリムシールにフラップを追加したことで外部からの衝撃が分散され、内部の部品に衝撃がより伝わりにくくなります。

フラップシールの種類

フラップシールはさまざまなタイプのものがあります。選ぶ際にポイントとなるのは素材を使用用途や使用環境に合わせることです。

1.TPE

TPE (英: thermoplastic elastomer) は、熱可塑性エラストマーと言われ、樹脂とゴムの特性を併せ持っています。熱で変形しやすいため加工がしやすく、リサイクルできる環境に優しい素材です。

TPEには油に強い「耐油TPE」もあり、機械加工の現場での使用時に選ばれることがあります。

2.PVC

PVC (塩化ビニール) は耐候性が高く、長期間にわたって使用できます。形成しやすく、さまざまな形状に加工できる特徴もあります。また酸やアルカリに対して強く安定しています。

他のプラスチックに比べてコストも低くおさえられます。家電製品のカバー、コンピュータの内部シール、建築用窓枠などに使われることが多い素材です。

3.EPDM

EPDM (エチレンプロピレンジエンゴム) は耐候性、耐熱性、耐オゾン性に優れた合成ゴムです。

アルコール、エステル、硫酸などの薬品や有機物に対する耐性も高いです。他にも耐熱性・耐候性・耐オゾン性に優れており、他の素材に比べて屋外で長期間使用しても劣化しにくいです。

自動車のドアエッジ、エンジンルーム、窓枠のシーリングなどに使われることが多い素材です。

4.金属

金属フラップシール

ステンレススチール、アルミニウム、銅などで作られたフラップは高い耐熱性、耐久性。防錆性があります。高温環境下で使用ができ、産業機械の保護シール、航空宇宙機器などに使われることが多い素材です。

5.複合素材

ゴムとプラスチックを組み合わせた繊維強化プとすることで、耐久性と柔軟性が高いシールフラップを作ることが可能です。複数の素材の特性の組み合わセブ就いては

  • 用途: 特定の要件に応じたカスタマイズシール、自動車部品、産業機械部品など

センサーレール

センサーレールとは

センサーレール (英: Sensor Rail) とは、センサーやその他のデバイスを取り付けるためのレール状の構造物です。

一般的に、工業や自動化などの分野で使用されます。センサーレールには穴やスロットがあり、センサーやデバイスを簡単に取り付けることが可能です。交換やメンテナンスが容易となる点が特徴です。また、レールに沿って配線を通すことで、外観を整えられます。

センサーレールには標準化された規格が存在し、さまざまなメーカーやデバイスに対応しています。これにより、異なるセンサーやデバイスを同じレールに取り付けることが可能です。

センサーレールに取り付けるセンサーやデバイスの電気的な特性や要件に留意が必要です。適切な絶縁や接地が必要な場合もあります。

センサーレールの使用用途

センサーレールはさまざまな応用用途が存在します。以下はセンサーレールの使用用途一例です。

1. 工業

自動化および制御システムでは、センサーレールはさまざまなセンサーやデバイスを設置するために使用されます。工場の生産ラインではセンサーレールに位置センサーや温度センサーなどを取り付けることで、生産プロセスの監視や制御を行うことが可能です。センサーレール上のデバイスは制御装置やコントローラなどと連携し、自動化プロセスを制御します。

2. セキュリティ

センサーレールはセキュリティシステムにおいて重要な要素です。監視カメラなどはセンサーレールに取り付けられることもあります。

動き検知センサーやドアアクセス制御装置もセンサーレールに取り付けられ、不正な侵入や動きを検知してセキュリティを強化します。人感センサーなども取り付けられることが多いです。センサーレール上のセンサーからセキュリティシステムの中枢にデータ送信され、適切なアクションが実行されます。

3. ビル管理システム

ビル管理システムにおいて、センサーレールはさまざまな環境データの収集に使用されます。照明制御システムでは照明センサーや光センサーをセンサーレールに取り付け、明るさの変化を検知して照明の制御を行うことが可能です。

また、温度センサーや湿度センサーもセンサーレールに取り付けられ、快適な環境の維持やエネルギー効率の向上に役立ちます。

センサーレールの原理

センサーレールは、センサーやデバイスを取り付けるための物理的な構造物です。センサーレールの目的は、センサーやデバイスを一定の規格に基づいて配置し、効率的な配線や取り付けを可能にすることです。

通常のセンサーレールは軽量かつ低コストであることが望ましく、部材としてアルミニウムが多く用いられます。ただし、耐食性が重要な場合にはステンレスのセンサーレールが使用されることも多いです。レールの長さは用途に合わせて切断されます。

センサーレールには、一連の穴やスロットがあります。これらの穴やスロットに、センサーやデバイスを取り付けることが可能です。センサーレールは、センサーやデバイスを正確に位置決めし、必要な場所に取り付けるための基盤となります。

センサーレールの種類

センサーレールには以下のような種類が存在します。

1. ツバ平行型

ツバ平行型は、上部に平行なツバがあるセンサーレールです。ツバはセンサー取り付け用スペースを提供し、装置を保持する役割も果たします。センサーを横方向に配置するのに適しています。

2. ツバ直交型

ツバ直交型は、上部に直角に突き出たツバがあるセンサーレールです。ツバ平行型と比べてセンサーやデバイスの取り付け方向が垂直です。ツバ直交型のセンサーレールは、狭いスペースや複雑な配置が必要な場合に使用されます。

3. ストレート型

ストレート型は上部にツバがない直線状のレールです。センサーはストレート型のセンサーレールに取り付けられ、一直線に配置されます。シンプルなセンサー配置が必要な場合や、センサーやデバイスの密度を高めたい場合に適しています。

ブレーキローラ

ブレーキローラとは

ブレーキローラとは、ブレーキ機能を持ったローラのことです。

工場や物流倉庫で広く利用されているローラコンベヤは代表的な搬送機器です。そのローラコンベヤに多数組み込まれているローラーの一部はブレーキ機能を持っています。ブレーキローラが、コンベア上を流れて来る部品や製品の速度を調節したり、停止させることで、スムースな搬送を実現します。このため、ブレーキローラを組み込んだローラコンベヤのことを、ブレーキローラと呼ぶこともあります。この他にも、ブレーキローラは様々な装置で使用されています。

ブレーキローラの使用用途

ブレーキローラは物体の場所を移動させ、その動きを制御する様々な機械で使用されています。

ローラは、円筒形をした回転する部品です。それを多数平行に並べることで、その上に乗せた物体を、ローラを回転させることで移動させることができます。その代表例がローラコンベヤです。多くの場合はローラコンベヤには傾斜が付けられており、物体は傾斜に沿ってコンベヤ上を移動して行きます。ブレーキローラはコンベヤ上に一定間隔で設置されており、ブレーキローラにブレーキがかかることで、移動する物体の速度を抑制させたり、途中で一時停止させることが可能になります。このことで、コンベヤ上を流れる物体どうしが衝突したり、コンベヤから逸脱して破損することを防ぎます。

また、ブレーキローラは、ローラコンベヤ以外にも物体を転がして移動させる様々な機械で使用されています。その具体例としては、缶飲料の自動販売機、印刷機械、医療機械などがあります。

ブレーキローラの原理

ブレーキローラは、円筒の内部に遠心力で膨らむブレーキシューを持ったメカニカルなものや、電動ブレーキを備えた電動式のもの等があります。また、ローラーの外側からブレーキシューを押し当てる外押型ブレーキローラ等もあります。

1. 遠心力を利用したブレーキローラ

遠心力を利用したブレーキローラは、ローラの中に遠心力によって広がるブレーキシューが組み込まれています。このブレーキシューがローラに押し当てられることで回転が減速されます。このタイプのブレーキローラは外部からの動力源を必要とせず、物体の重さや速度に応じて自動的にブレーキがかかるのが特徴です。

2. 電動ブレーキを備えたブレーキローラ

電動ブレーキを備えたブレーキローラは、内部にモーターで動くブレーキシューが組み込まれています。このタイプのブレーキローラは、外部からの電気信号によってブレーキをかけたり、ブレーキの強さを制御することが可能です。よって物体の流れをより精密に、早い速度で制御できる利点があります。

3. 外押型ブレーキローラ

外押型ブレーキローラは、ローラの外周にブレーキシューと、それをローラに押付ける機構が取り付けられています。外押型ブレーキローラは構造が比較的シンプルであり、耐久性が高く、大きな制動力が得られる等の特徴があります。

ブレーキローラの選び方

搬送機器やその他の機械にブレーキローラを使用する場合には、上記の各ブレーキローラの原理の違いや、それぞれの特性を把握した上で、以下のような項目について検討することをお薦めします。

1. 運ぶ物体の大きさと重さ

ローラの上を移動させる物体の大きさと重さに対して、十分に対応できる大きさと耐荷重性を持たせる必要があります。その一方で、組み込む装置や環境の中で、設置可能で空間効率よい大きさを検討する必要があります。

2. 制動力

移動させる物体の大きさや、速度、移動させる面の傾きの大きさ、必要な減速に使える距離等によって、必要となる制動力が異なってきます。また、多数並べられるローラの中でのブレーキローラの間隔や個数によっても個々のブレーキローラに求められる制動力が異なります。

3. 応答速度

迅速な停止が必要な場合、応答性の高いブレーキローラが必要となります。電動ブレーキローラは、相対的に応答性が高いため、高速で物体が流れる搬送ラインなどに適しています。

4. メンテナンス性

消耗品でもあるブレーキシューの交換や、故障した際のブレーキローラの取り換えや修理等を考慮して、ブレーキローラやその周囲にはある程度の作業空間を確保する等、メンテナンス性への配慮も必要です。

アンギュラピン

アンギュラピンとは

アンギュラピン (英: angular pin) とは、アンダーカットのある射出成型品用金型に使用されるピンです。

アンダーカット処理をするためにスライドコアという専用の金型を使用しますが、このスライドコアを動かすためにアンギュラピンを使用します。アンギュラピンとスライドコアの連動によって、射出成型品における複雑な形状の製造が可能です。

アンギュラピンは、一般的に円柱状または円筒状の形状です。スライドコアと擦れあう使用状況から、高い精度と耐久性が要求されます。このため、アンギュラピンは高強度な工具鋼など耐摩耗性のある材料で作られます。

アンギュラピンの使用用途

図1. アンギュラピンの使用用途

アンギュラピンは、部品を成型及び取り出すための機構の一部で、スライドコアを動かすために使用されます。スライドコアは主に、アンダーカット部位や複雑な形状を実現するために使用されます。

アンダーカットとは、成型品を金型から外す際、通常の金型抜き方向に障害がある形状のことです。アンギュラピンによって、金型の一部であるスライドコアを成型品から抜く方向にかからない位置にずらすことができ、一度の成形でアンダーカット部位を形成可能です。

例えば、シンプルな取手の付いていないコップのような形状であれば、通常の金型でも抜くことが可能ですが、取手の付いたコップになると「アンダーカット」形状が発生してしまうため、スライドコアが必要になります。このほか、建築部品の窓枠やドアハンドル、電子機器のハウジングなどをはじめ、さまざまな樹脂成型品の製造で使用されています。

アンギュラピンの原理

アンギュラピンの原理は、金型内のスライドコアや別の動作要素と連動して、アンダーカット部分の成形と部品の取り出しを可能にすることです。アンギュラピンは通常、成型金型内のスライドコアやスライドコアプレートと連動しています。

スライドコアは金型内で動く部品で、アンダーカット部分を形成するための主要な要素です。アンギュラピンはスライドコアに取り付けられ、スライドコアの動きを制御します。

アンギュラピンのその他情報

1. アンギュラピンとスライドコアの動き

図2. アンギュラピンとスライドコアの動き

プラスチック材料の射出・充填
プラスチック材料を充填するとき金型は閉じた状態です。アンダーカット部はスライドコアとアンギュラピンによって閉じられています。

金型開放
成形材料が硬化したのち、金型が解放されます。通常、アンギュラピンは回転またはスライドし、アンダーカット部を金型から解放します。

製品の取り出し
アンギュラピンがアンダーカット部から解放されると、通常は成型機の取り出し機構によって製品が取り出されます。製品が取り出されたのち、再び金型は閉じられ、プラスチック材料の充填が始まります。

2. アンギュラピンの取り付け角度

アンギュラピンを金型が動く直線方向に対して、傾斜 (英: angular) をつけて金型に設置されます。より大きなスライド量を求める場合、金型の動作方向に対して、大きな角度をつけることで実現できますが、それだけピンが折れやすくなってしまいます。

通常、おおよそ20度までを目安に傾斜をつけるのが一般的です。また、同様の目的でアンギュラピンの長さを増やすことでも対応可能です。しかし、アンギュラピンを長くすると、金型の移動量を増やす必要があり、設備のスペースの問題が発生します。

3. アンギュラピンの材質

アンギュラピンは、常にスライドコアの孔と摺動するため、耐摩耗性や強度が必要です。また、射出成型で充填される材料の温度は200度近くまで上がることもあります。このため、熱変形、ヒートサイクルによる腐食への耐性も必要です。

アンギュラピンの材質としては、SUJ-2などをはじめとした高炭素鋼が使用されたり、焼き入れによって硬度を確保したり、コーティングによって耐摩耗性を確保したりと様々な処理が施されています。

4. アンダーカット処理の種類

図3. アンダカット処理の種類

スライドコア方式
主にアンギュラピンとスライドコアを組み合わせた比較的単純な構造です。アンギュラピンは固定側の型に設けられます。可動側にはスライドコアがあります。可動側の型が固定側に近づくにつれ、アンギュラピンにスライドコアが接近。アンギュラピンとスライドコアの孔が勘合後、アンギュラピンの傾きによってスライドコアを動かし、アンダーカット部を形作ります。

傾斜スライド方式
小さなアンダーカット部の成形に用いられやすい方式です。アンギュラピンは使用しません。エジェクタプレートには、スライドロッドと傾斜スライドを動かすためのスライドユニットが設けられています。

成型完了後、型が開いたのち、可動側の型が固定側から離れるにつれて、スライドユニットが製品の内側まで移動し、製品をエジェクト (押し出し) します。金型の直動方向に対して、スライドユニットは直角方向に動くため、スライドロッドには大きな力を強います。スライドコア方式よりも高価な傾向です。

油圧駆動スライド方式
油圧シリンダを使用して、スライドコアを移動させる方式です。固定型側にスライド機構を設け、型開きとは別のアクションとしてスライドを移動させることができます。また、大きなスライドコアを動かすことができます。