オキセタン

オキセタンとは

オキセタンの基本情報

図1. オキセタンの基本情報

オキセタンとは、飽和の4員環に酸素を1個持つ構造の環状エーテルです。

別称、トリメチレンオキシド、酸化トリメチレン、オキサシクロブタン、3-ヒドロキシ-3-ブテン酸ラクトン、4-メチレンオキセタン-2-オン、1,3-エポキシプロパンと呼ばれます。

有機化学の分野では、オキセタンの4員環構造を指して「オキセタン」や「オキセタン環」と呼ぶ場合もあります。

オキセタンの使用用途

オキセタンは、医薬品原料、染料原料、防腐剤原料に用いられます。有機合成では、アミン、アルコール、ベンゼンのヒドロキシプロピル化に利用可能です。

オキセタンを含む各種誘導体は、エポキシ樹脂の高速硬化やプラスチック材料に対する優れた密着性のような特徴を持つため、エポキシ樹脂用添加剤に使用され、塗料、接着剤、各種コーティング剤などの用途があります。柔軟性や密着性に優れるほか、環境にやさしい材料として注目を浴びています。

オキセタン環を有する化合物の中には、抗ウイルス剤や血小板凝集に関わる物質、抗がん剤などの生化学的特徴を持つものも多いです。

オキセタンの性質

オキセタンの融点は−97°C、沸点は49〜50°Cであり、特有の匂いを持つ無色の液体です。有機溶媒に溶けやすく、水と混和します。

オキセタン環は歪みエネルギーが高く、求核剤と反応して容易に開環します。アミンやアルコールのほか、フリーデル・クラフツ触媒 (英: Friedel–Crafts Catalyst) の存在下でベンゼンをヒドロキシプロピル化するために使用可能です。

オキセタンの構造

オキセタンの化学式は、C3H6Oまたは(CH2)3Oで表されます。分子量は58.08g/mol、密度は0.8930g/cm3です。

オキセタンのような環状エーテルの例として、炭素原子を2個持つ三員環化合物のエチレンオキシド (オキシラン) が挙げられます。そのほか、炭素原子を4個持つ五員環化合物のテトラヒドロフラン (THF、テトラメチレンオキシド) 、炭素原子を5個持つ六員環化合物テトラヒドロピラン (THP、ペンタメチレンオキシド) などもあります。

オキセタンのその他情報

1. オキセタンの合成法

オキセタンの合成

図2. オキセタンの合成

150°Cで水酸化カリウムと酢酸3-クロロプロピルが反応すると、オキセタンが得られます。さまざまな副生生物が生じるため、収率は40%です。

パターノ・ビューチ反応 (英: Paternò–Büchi reaction) でもオキセタンを合成可能です。カルボニル化合物とアルケンに紫外光を照射すると、[2+2]環化が進行してオキセタン環が生成します。

ジオールの環化や6員環状カーボネートの脱炭酸でも、オキセタン環を合成できます。

2. オキセタン環を含む天然化合物

オキセタン環を持つ天然物はあまり多くありませんが、代表例はβ-アミノ酸であるオキセチンです。オキセチンはオキセタン環上に、カルボキシ基とアミノ基を有します。

オキセタノシンAは、オキセタン環にヒドロキシメチル基を2個有し、アデニンが置換された構造を持っています。アデニンの代わりにチミンやグアニンを有する類縁体も合成されており、オキセタノシンTとオキセタノシンGです。

オキセタン環を有するテルペノイド (英: Terpenoid) には、タキソール、クレメンテイン、テウクロキシドなどが知られています。

3. オキセタン環を有する関連化合物

オキセタンの関連化合物

図3. オキセタンの関連化合物

オキセタン環を有する100種類以上の化合物が合成されています。具体例として、メチル基を持つ2-メチルオキセタンや3-メチルオキセタン以外にも、ニトロ基を有する3-ニトロオキセタンや3,3-ジニトロオキセタンなどが挙げられます。

そのほか、3-アジドオキセタン、3,3-ジメチルオキセタン、3,3-ビス (クロロメチル) オキセタン、3,3-ビス (アジドメチル) オキセタンなどもあります。

オキシド

オキシドとは

 

“オキシドとは、広義には酸化物(英:oxide)全般を指します。つまり、酸素およびそれより電気陰性度の小さな元素からなる化合物を指します。

狭義には、以下の有機化合物を指します。

  1. 分子中の2個のC原子がO原子と結合した環状エーテルです。この環状エーテルをエポキシドとよびます。C2の三員環化合物のエチレンオキシド(オキシラン)、C3の四員環化合物のトリメチレンオキシド(オキセタン)、C4の五員環化合物テトラヒドロフラン(THF、テトラメチレンオキシド、オキソラン)C5の六員環化合物テトラヒドロピラン(THP、ペンタメチレンオキシド)が代表的なオキシド化合物として有名です。
  2. 分子中のC, H原子以外の原子(ヘテロ原子)が、O原子に配位結合した有機化合物です。代表例としては、ピリジン-N-オキシドC5H5N→OまたはPy→O、トリフェニルホスフィンオキシドPh3P→Oがあります。 

オキシドの使用用途

ここでは、狭義のオキシドの使用例について説明します。

①のエポキシドは、歪みエネルギーが高く反応性に富み、求核性を持った化合物と容易に付加反応を起こします。そのためポリマー、医薬品、ファインケミカルなどの有機合成原料の用途があります。また、分子内に2個以上のエポキシ基をもつ化合物を重縮合させてつくるのがエポキシ樹脂であり、これは主に接着剤に用いられています。

また、エポキシドの一種であるプロピレンオキシドは、ポリウレタンの合成原料に、エチレンオキシドは、エチレングリコールの合成原料に、エチレンオキシドガスは、医療機器・器具の滅菌剤に使用されています。

また、②に該当する化合物であるピリジン-N-オキシドは有機合成において酸化剤としての用途があります。また、錯体化学における配位子として選択されることがあります。

トリフェニルホスフィンオキシドは、硬い金属に対する配位子、難燃剤原料、有機合成反応触媒といった用途があります。 

オキサロ酢酸

オキサロ酢酸とは

オキサロ酢酸 (英: Oxaloacetic acid) とは、化学式はC4H4O5で表される低分子生体物質のひとつです。

また、有機酸の一種で炭素鎖が4つの炭素原子を持ち、カルボキシル基 (COOH) とカルボニル基 (C=O) がそれぞれ2つ存在します。別称としては、α-ケトコハク酸、2-ケトコハク酸、2-オキソコハク酸、2-ケトブタン二酸、2-オキソブタン二酸、OAA、オキサル酢酸(旧名)があります。

クエン酸回路 (トリカルボン酸回路、TCA回路) の第一段階であるアセチルCoAの脱炭酸反応により、アセチルCoAが酵素によって脱炭酸されオキサロ酢酸となります。アセチルCoAと反応してクエン酸を生成することによりクエン回路が働き、エネルギーの生産や代謝産物の生成などが行われます。

アミノ酸代謝においては、アミノ酸の一部がクエン酸回路へと入るために必要な中間体であり、オキサロ酢酸と反応することでクエン酸回路へ入っていきます。また、一部のアミノ酸の前駆物質としても機能します。

また、ホスホエノールピルビン酸を経由し糖新生にも利用されます。単子葉植物などのC4植物において、炭酸固定の最初に生成する物質です。常温では不安定で、脱炭酸化が起きてピルビン酸に変換されます。

化学式 C4H4O5
英語名 Oxaloacetic acid
分子量 132.07
融点 161 °C

 

オキサロ酢酸の性質

1. 化学的性質

オキサロ酢酸はカルボキシル基とケトン基を含むジカルボン酸であり、酸性を示します。強酸性であり、水溶液中でのpHは比較的低くなります。また、オキサロ酢酸は不安定であり、空気中で酸化されることがあります。

2. 生化学的性質

オキサロ酢酸はクエン酸回路において酸素を受け取ることでクエン酸に変換されます。また、アミノ酸の分解によっても生成され、アミノ基を持つ分子と反応してアスパラギン酸を生成することがあります。

3.生物学的役割

細胞内で代謝反応において重要な役割を果たしています。クエン酸回路において、酸素を受け取りエネルギー生産の過程に関与します。また、アミノ酸の代謝や、糖質の代謝など様々な化学反応にも関与します。

オキサロ酢酸の使用用途

1. 医薬品

医薬品の原料として広く使用され、高血圧治療薬や抗てんかん薬にオキサロ酢酸が含まれていることがあります。オキサロ酢酸を体内に補充することで、肝機能障害や腎臓病などの疾患治療に役立つことが報告されています。また、抗酸化作用や抗がん作用もあるとされ、がん治療の補助的な治療薬として研究が進んでいます。

2. 化学反応の触媒

有機合成の反応において、アルキル化やアセトアセチル化などの反応触媒として使用されます。

オキサロ酢酸のその他情報

1. 法規情報

消防法は危険物第4類、労働安全衛生法は第2特定化学物質、毒物及び劇物取締法では劇物に分類されます。

2. 使用上の注意

オキサロ酢酸を取り扱う際は、危険物取扱者の安全衛生責任者が必須です。使用前には、安全衛生データシート (SDS) を確認し、眼や皮膚に万が一触れた場合は水洗いして医師の診察を受けます。

保管する際は火気や高温を避け、密閉容器に保管します。また、強い酸性を示し、アルカリ性の物質と反応すると発熱することがあるため、アルカリ性物質との混合は避けることが大切です。

オキサロ酢酸を摂取すると消化器系や腎臓に悪影響を及ぼすことがあるため、絶対に口にしないでください。過剰な吸入や摂取、皮膚への吸収などにより呼吸困難やめまい、吐き気、頭痛、意識障害などの症状を引き起こすことがあります。使用後は、手洗いをし、衣服の洗浄を行います。廃棄物は適切な方法で処理することが必要です。

参考文献
https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/970

オキサミド

オキサミドとは

オキサミド (英: Oxamide) とは、白色の結晶性粉末の有機化合物です。

IUPAC名は、エタンジアミド (英: Ethanediamide) です。別名として、シュウ酸ジアミド (英: Oxalic diamide) やジアミノグリオキサール (英: Diaminoglyoxal) 、オキサルアミドまたはオキサラミド (英: Oxalamide) やオキサムイミド酸 (英: Oxamimidic acid) 、シュウ酸ジアミド (英: Oxalic acid diamide) 、2-アミノ-2-オキソエタンイミド酸 (英: 2-Amino-2-oxoethanimidic acid) とも呼ばれます。

オキサミドの使用用途

1. 尿素肥料の代替

オキサミドは、散布後に徐々に土壌中に肥効を与える緩効性肥料として使用されています。水に難溶で吸湿性がないため、地下水への流亡が少ない優れた肥料です。また、土壌中の微生物により時間をかけて加水分解され、アンモニアを徐々に放出します。

粒径によってオキサミドの分解速度やアンモニアの放出速度を調節できるため、使い勝手がよく、作物栽培の省力化に有効です。オキサミドの土壌中での分解機構は、1分子のアンモニアを放出してオキサミン酸を生成した後、オキサミン酸がさらにシュウ酸とアンモニアに分解されます。

シュウ酸の最終的な分解物は、水と酸素、二酸化炭素です。分解物に硫酸や塩素などの有害な副生成物を含まないため、土中の微生物環境や土壌成分、作物の育成に悪影響がありません。オキサミド自体は空気中で安定で、pH10以上のアルカリ性条件下またはpH1以下の酸性条件下でなければ加水分解されません。

2. その他

オキサミドはニトロセルロース合成における安定剤としても用いられます。また、過塩素酸アンモニウム複合推進薬 (APCP) と呼ばれる燃料において高性能燃焼速度抑制剤としても有用です。オキサミドを1〜3wt%の濃度で使用することで、推進剤比推力への影響を最小限に抑えながら、直線燃焼速度を遅延できます。

さらに、N,N’-置換オキサミドはウルマン-ゴールドベルグ反応 (英: Ullmann-Goldberg reaction) の補助配位子として使用されます。ウルマン-ゴールドベルグ反応とは、銅触媒存在下で行われるハロゲン化アリールとアニリンのカップリング反応です。ハロゲン化アリールの中でも、ヨウ化アリールは反応性が高いことが知られています。また、電子求引性基を持つハロゲン化アリールも、カップリングを促進します。

オキサミドの性質

化学式はC2H4N2O2で表され、分子量は88.07です。CAS番号は471-46-5で登録されています。

オキサミドは350°C (融点) で水とジシアン分解する、密度1.667g/ml (20℃) の固体です。針状結晶を形成し、一部昇華性を持ちます。エタノールに可溶であり、水にほとんど溶けず、またジエチルエーテルに不溶です。

オキサミドのその他情報

1. オキサミドの製造法

オキサミドは、シュウ酸ジエチルにアンモニアを作用させることで得られます。また、ジシアンを部分的に加水分解させたり、シュウ酸のアンモニウム塩であるシュウ酸アンモニウムを加熱することでも合成可能です。

2. 取り扱い及び保管上の注意

取り扱い時の対策
酸化剤は、オキサミドの混触危険物質に指定されています。取り扱いの際や保管時に、接触しないよう注意してください。

取り扱う際は、必ず保護衣と保護メガネ、保護手袋を着用し、ドラフトチャンバ内で使用します。使用後は、手を洗ってください。

火災の場合
燃焼による分解で、一酸化炭素 (CO) 、二酸化炭素 (CO2) 、窒素酸化物 (NOx) を生成するおそれがあります。粉末消火剤や泡消火剤、水噴霧、二酸化炭素 (CO2) を用いて消火してください。使用禁止の消火剤は特にはありません。

皮膚に付着した場合
オキサミドは、皮膚刺激性を持ちます。皮膚に付いてしまった場合は、石鹸と大量の水でよく洗い流します。皮膚刺激または発疹が生じた際は、医師の診断や手当てを受けてください。汚染された衣類を再度使用する場合は、洗濯します。

眼に入った場合
オキサミドは、強い眼刺激性を持ちます。眼に入ってしまった際は、数分間水で注意深く洗浄します。眼への刺激が続く場合は、医師の診察を受けてください。

保管する場合
容器は密閉し、冷暗所に置いてください。混触危険物質からは離して保管します。

参考文献
https://www.tcichemicals.com/JP/ja/p/O0086#docomentsSectionPDP
https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/Oxamide
https://www.jstage.jst.go.jp/article/dojo/56/1/56_KJ00002481336/_pdf/-char/ja

イソブテン

イソブテンとは

イソブテンの基本情報

図1. イソブテンの基本情報

イソブテン (英: isobutene) とは、化学式がC4H8で表される、枝分かれ状に4個の炭素原子を持つ炭化水素です。

イソブチレン (英: isobuthylene) や2-メチルプロペン (英: 2-methylpropene)とも呼ばれます。ブテンの3種類の異性体の一つで、その中で最も化学反応性に富んでいます。そのため石油化学の重要な原料の一つです。

イソブテンは極めて燃焼性が高く、空気と爆発性混合気を生じます。危険物に該当する物質で、取り扱いや管理には注意が必要です。

イソブテンの使用用途

石油化学分野でイソブテンは、合成中間体として幅広く使用されます。

イソブテンをメタノールエタノールに付加すると、ガソリン添加剤として用いられる「メチルtert-ブチルエーテル」や「エチルtert-ブチルエーテル」を生成可能です。イソブテンをアルキル化すると、ガソリンに加えるイソオクタンが得られます。

そのほかイソブテンは、合成樹脂、合成ゴム、各種プラスチックの製造にも利用されます。

イソブテンの性質

イソブテンの融点は−140.3°Cで、沸点は-6.9°Cであり、常温常圧では無色の気体として存在します。可燃性が高く、爆発しやすいです。発火点は465°Cで、水には溶けません。

イソブテンの構造

イソブテンはエチレン (英: ethylene) の片方の炭素原子に、メチル基が2個結合した構造を有します。示性式はCH2=C(CH3)2で表されます。モル質量は56.11g/molで、密度は0.5879g/cm3です。

イソブテンの構造異性体には1-ブテンと2-ブテンがあります。2-ブテンは幾何異性体を有し、シス-2-ブテンとトランス-2-ブテンが存在します。イソブテンの分子サイズは小さいため、物理的または化学的方法で分離可能です。

イソブテンのその他情報

1. イソブテンの製造

ブテン類は接触分解によって、エチレンやプロピレンなどの副産物として生産され、C4留分が10%未満の総重量で生成します。ブタジエンの回収後の留分は、主成分がイソブテンで、四十数%前後です。残りは二十数%が1-ブテンで、二十数%が2-ブテンであり、n-ブタンやイソブタンなどの混合物になっています。ただし成分の生成比は、接触分解の調節で変わります。

2. イソブテンの合成法

イソブテンの合成

図2. イソブテンの合成

石油精製ストリームで硫酸と反応させると、イソブテンを単離可能です。tert-ブチルアルコールの脱水や触媒を使ったイソブタンの脱水素化でも製造できます。アセトン、セルロース、キシロースなどからも合成可能です。

ネオヘキセン (英: neohexene) を合成する際に、ジイソブチレン (英: diisobutylene) のエテノリシス (英: ethenolysis) の副産物としてもイソブテンは生じます。

3. イソブテンの反応

イソブテンの反応

図3. イソブテンの反応

メタクロレイン (英: methacrolein) の原料にイソブテンを利用可能です。メタノールやエタノールがイソブテンに付加すると、メチルtert-ブチルエーテルやエチルtert-ブチルエーテルが生成します。商業的にtert-ブチルアミンは、ゼオライト触媒を使ったイソブチレンのアミノ化 (英: amination) で製造されます。

イソブテンのアルキル化によって、イソオクタンを合成可能です。フェノールや4-メトキシフェノールとのフリーデル・クラフツ反応 (英: Friedel–Crafts reaction) では、イソブテンからジブチルヒドロキシトルエンやブチルヒドロキシアニソールが得られます。

イソブテンの重合でポリイソブチレンを生成可能です。ブチルゴム (英: Butyl rubber) はイソプレン (英: isoprene) とイソブテンの共重合体です。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/115-11-7.html

イソキノリン

イソキノリンとは

イソキノリン (化学式: C9H7N) とは、ベンゼン環とピリジン環が縮合した構造を持つ複素環式芳香族化合物です。

キノリンという化学物質の異性体で、その構造から2-アザナフタレン、2-ベンズアジンとも呼ばれています。天然由来の窒素原子を含む有機化合物であるアルカノイドには、イソキノリンの構造骨格を持つものが多く存在します。広義には、イソキノリンはこの骨格を持つさまざまな物質を指しています。

国内においてイソキノリンは、消防法や毒物及び劇物取締法などの指定には該当しない物質です。

化学式 C9H7N
英語名 Isoquinoline
分子量 129.16
CAS番号 119-65-3

イソキノリンの使用用途

1. 医薬品

イノキノリンおよびイソキノリンの誘導体は、主に医薬品分野において使用されます。具体的な使用例を挙げると、麻酔薬、抗高血圧剤、血管拡張剤などに使用されます。

麻酔薬
キニソカインなどの薬品が実用化されていおり、神経のナトリウムチャネルをブロックすることで局部麻酔作用を発揮します。

抗高血圧剤
キナプリルなどの薬品が実用化されています。この薬は、高血圧を誘導するアンジオテンシンという物質を合成する酵素を働かなくさせることで、血圧を下げる働きを持ちます。

血管拡張剤
パパべリンという薬品が使われています。この薬品は、血管や腸の運動を支配している平滑筋に存在するアセチルコリン受容体などの受容体に作用して、血管の拡張を行います。その主な作用機序は、血管平滑筋へのカルシウムイオンの流入を阻止することによるものです。

 

その他にも、医薬品としては抗マラリア剤、抗真菌剤、消毒薬としても用いられています。

2. 染料

また、イソキノリンは、染料を合成する際の原料として利用されており、イソキノリン系の染料として多くの物質がイソキノリン骨格を持っています。イソキノリンは適切な光の波長を吸収する上に、さまざまな誘導体を合成しやすいことから、多種多様な染料が合成されています。

さらに、イソキノリンは殺虫用途の農薬の製造時の合成原料として使用されます。イソキノリンは3級アミンの部分を持っており、この部分が昆虫のコリンエステラーゼを阻害し、アセチルコリンの濃度を大幅に上昇させることで作用を発揮します。

その他、イソキノリンは製造業分野でも使用され、ポリイミドフィルム製造時の触媒や腐食抑制剤としても有用です。

イソキノリンの性質

イソキノリンの融点は26°C程度で、溶けると無色の油状状態になりますが、純度の低いサンプルは褐色を呈することがあります。多くの窒素原子を含む化合物と同様、強い臭いを放ちます。ピリジン環を持つため、弱塩基性を示し、そのpKbはおよそ8.6です。

イソキノリンは水には溶けにくいですが、エタノール、ジエチルエーテル、二硫化炭素などの通常の有機溶媒に対する溶解度は高いです。ただし、希酸に対しては分子中の窒素原子がプロトン化されるためよく溶けることができます。

イソキノリンの構造

イソキノリンは、芳香環中に窒素原子を含むような構造になっています。そのため、同じく芳香環中に窒素原子を持つピリジンと同様に、求電子置換反応に対しては、2位の炭素が反応を受けやすくなります。

また、ベンゼン環やナフタレン環よりも電子密度が高いため、これらの分子よりも求電子置換反応に対する反応性は高いです。

イソキノリンのその他情報

イソキノリンの合成法

イソキノリンは工業的にはコールタールから抽出されることで得られますが、実験室においてはさまざまな合成法があります。

1つ目は、Pomeranz-Fritsch反応を利用して、ベンジルアミンとグリオキサールのアセタールを反応させて合成する方法です。この方法は、無置換のイソキノリンを得る方法としては非常に優れています。

2つ目は、Pictet-Spengler反応を用いて、様々なベンジルアミン誘導体とアルデヒドから、テトラヒドロイソキノリン誘導体を合成し、脱水素を行う反応です。

参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0117-0022JGHEJP.pdf

イオウフロアブル

イオウフロアブルとは

イオウフロアブルとは、農薬の1種で、殺菌剤に部類されるものです。

名前が示す通り、硫黄 (元素記号:S) を主成分としています。硫黄は温泉の成分に含まれていたり、ゴムやマッチなどの原料に使用されたりする用途がよく知られていますが、農薬としての働きや土壌のphを下げる働きがあり、農業界でも使用される元素です。

イオウフロアブルは、微細粒子の硫黄を水に懸濁させてつくられています。微粒子製剤 (フロアブル) なので散布しても葉や果実などに農薬が付着してできる汚れが目立たないのが特徴です。

また、農薬の散布回数にカウントされないため、特別栽培農物 (化学肥料、化学農薬の使用を減らして栽培された農作物) に使用できたり、防除効果があったりします。通常の硫黄は、消防法の第二類に該当する可燃性危険物として扱われますが、イオウフロアブルは発火・引火性が無く、危険物に該当しません。

イオウフロアブルの使用用途

イオウフロアブルの使用用途は、農作物のうどんこ病やさび病などの病気の予防と治療を行う殺菌剤としての働きと、サビダニやホコリダニなどダニ類などの防除を行う殺虫剤としての働きの2つになります。

1. 殺菌剤

イオウフロアブルは、殺菌剤として野菜・果樹の病気予防・治療を目的として使用されます。イオウフロアブルの主成分である硫黄は、菌や微生物のSH酵素と呼ばれる酵素の働きを妨害し、エネルギー代謝を阻害するため、殺菌効果が得られます。農薬の作用機構分類では、M2 (多作用接触活性) に分類されています。

殺菌剤としてのイオウフロアブルは、モモやリンゴ、カキなどの果樹の褐斑病や黒星病、ナスやキュウリなどの野菜類やネギ、イチゴのうどんこ病、ネギやシバのさび病に効果的です。使用方法は水に溶かして農作物に散布を行います。農作物によって希釈の倍率が異なりますが、300倍から1,000倍希釈が一般的です。

使用時期は病気の発生前から発生初期までと幅があり、病気の予防と治療の両方に使用できます。

2. 殺虫剤

イオウフロアブルは殺虫剤としても野菜・果樹に対する害虫の防除を目的に使用されます。殺虫剤としてのイオウフロアブルはカンキツのミカンサビダニ、チャノホコリダニやトマト、ミニトマトのトマトサビダニに有用です。

使用方法は水に溶かして農作物に散布を行います。希釈の倍率は、400倍に定められていることが多いです。使用時期は害虫の発生初期となっており、この時期の害虫の防除に適しています。

イオウフロアブルの特徴

長所

  • 形状がフロアブルになっているため、粉立ちや希釈時の泡立ちが少ないです。
  • 農作物に均等に付着するため、葉や果実につく汚れが少ないです。
  • 有機農作物栽培に登録し農作物を栽培している人でも使用できます。
  • 予防と治療の両方の場面で使用することができます。
  • 登録の少ないシバの病気に対して登録があるため、使用できます。

短所

  • 薬剤や散布機のコストがかかります。コストに見合う効果がでるか検討して、使用する必要があります。
  • 気温の高い日や室温の高いハウス内では、薬害が発生する可能性があります。

イオウフロアブルのその他情報

使用時の注意点

  • 散布時は手袋やマスクを着用し、目や鼻、肌に直接かからないよう注意が必要です。
  • 石灰硫黄合材、ボルドー液、マシン油乳剤との混用使用は避ける必要があります。またマシン油乳剤散布後14日以内の近接散布も避けなければなりません。
  • 貯蔵中に成分が分離することがあるので、使用時は混和してから使用します。
  • 蚕に対して影響がでるため、周辺に桑葉がある場合は散布時に注意が必要です。

参考文献
https://www.nichino.co.jp/products/query/db/sds/20190806154658918.pdf

アズレン

アズレンとは

アズレンの構造

図1. アズレンの構造

アズレン (英: Azulene) とは、炭素原子と水素原子だけから構成される多環芳香族炭化水素の1つです。

アズレン骨格を有する化合物の総称でもあります。ベンゼン環を持たない非ベンゼン系芳香族化合物であり、ナフタレンの構造異性体で、5員環と7員環の縮合した構造を持ちます。カモミールなどの植物にも含まれる天然の有機化合物で、炭化水素化合物としては珍しく美しい濃い青色を有しています。

この特徴的な色から、スペイン語で青を意味する「azul」を引用し「アズレン」と命名されました。アズレンは、消防法や、毒物及び劇物取締法などの国内法規での指定には該当しない物質です。人体に無害で抗炎症作用をもつため、医薬品や化粧品などに広く使用されています。

アズレンの使用用途

アズレン誘導体の構造

図2. アズレン誘導体の構造

アズレンは、その穏やかな抗炎症作用から主に医薬品や化粧品、有機合成材料として使われています。例えば、アズレン誘導体の1つであるアズレンスルホン酸ナトリウム水和物は「水溶性アズレン」と呼ばれ、うがい薬、鼻・のどの炎症を抑える医薬品、胃炎・胃潰瘍治療薬などの主成分です。

また、アズレン誘導体であるグアイアズレン (アズロン、1,4-ジメチル-7-イソプロピルアズレン) は肌の炎症を抑える軟膏薬に使用されています。皮膚への抗炎症作用から、このようなアズレン誘導体は入浴剤や化粧品など肌に直接触れる日用品にも広く使用されています。

アズレンは、カモミールやカミツレなどの精油成分の主成分です。古くからこれらのハーブは民間薬として使用されてきましたが、その効能はハーブに含まれるアズレンの抗炎症作用によるものです。現在でも、皮膚の炎症を抑える薬用入浴剤や化粧品の成分としてカモミール精油やカミツレ精油を使用した商品は多くあり、それらもまたアズレンを含有した日用品の1つです。

アズレンの性質

アズレンは、エタノールおよびアセトンに良く溶けます。一方で、水にはほとんど溶けません。医薬品として使用するためには水溶性であることが重要となるため、医薬品用途では水溶性のアズレン誘導体であるアズレンスルホン酸ナトリウム水和物が良く用いられます。

また、アズレンは医薬品や日用品にも用いられる成分です。人体への危険有害性はありません。そのため、厚生労働省が公開している職場のあんぜんサイトの化合物の安全データシート (SDS) には、アズレンに関する情報はありません。

なお、アズレンの別名として、ビシクロ[5.3.0]デカペンタエン (英: Bicyclo[5.3.0]decapentaene) 、シクロペンタシクロヘプテン (英: Cyclopentacycloheptene) などが挙げられます。日本国内の大手試薬メーカーのウェブサイトでは、主に「アズレン」の名称を使用する場合が多いです。

化学式 C10H8
日本語名 アズレン
英語名 Azulene
CAS番号 275-51-4
分子量 128.17g/mol
融点 100℃
沸点または初留点および沸騰範囲 242℃

アズレンのその他情報

1. アズレンの安全注意情報

アズレンは人体に無害な有機化合物であるため、取り扱い時は特別な安全対策は必要ありませんが、ナフタレンのような独特な臭いを持っているため、換気の良い場所で取り扱うことが大切です。

2. アズレンの注意点

アズレンは、昇華性を有する固体の有機化合物です。昇華とは、化合物が液体の状態を経由することなく、固体から気体へ、または気体から固体へと相転移する現象のことです。昇華性を有する代表的な化合物として、アズレンの構造異性体であるナフタレンが有名です。

アズレンは比較的安定な固体の化合物ですが、昇華性によって独特の臭気を有しています。また、アズレンと他の有機化合物・有機溶媒との混合物を蒸留や減圧濃縮した場合、アズレンの昇華性によって沸点の低い有機化合物・有機溶媒側にもアズレンが混入することがあります。昇華性のある化合物であるという点に留意して、取り扱いおよび保管を行ってください。

3. 廃棄処分方法

アズレンを廃棄処分する方法について、法規制上の制約はありません。しかし、実験用試薬または医療用原料としてアズレンを取り扱う場合が多いため、都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に依頼するなどして適切に廃棄してください。

参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0101-1723JGHEJP.pdf

酸化クロム

酸化クロムとは

酸化クロムとは、クロムの酸化物です。

クロムの酸化数によって異なる化合物が存在しますが、単純に酸化クロムと呼ぶ際には酸化クロム (III) のことが多いです。酸化クロム (III) 以外にも、酸化クロム (II) 、酸化クロム (IV) 、酸化クロム (VI) があります。

クロムの酸化物の中では、酸化クロム (III) が最も安定です。酸化クロム (III) は、労働安全衛生法で「名称等を表示すべき危険有害物」に指定されており、PRTR法では「第1種指定化学物質」に該当します。

酸化クロムの使用用途

酸化クロム (III) は、酸やアルカリに対して非常に安定な化合物であり、融点が2,300℃と極めて高く、熱に対してもとても安定です。この特徴を活かし、主に耐火物の原料に使用されています。

その他、ガラスや布地に緑色を着色するための顔料、研磨剤、セラミックの成分としても利用可能です。また、化学用途として、水素化、水素化分解および他の多くの有機変換反応の触媒としてや他のクロム塩の合成にも使用されます。

酸化クロムの性質

酸化クロム (II) は黒色の粉末で、水に溶けません。希硫酸や希硝酸に不溶ですが、塩酸には溶けて水素が発生して青色溶液になります。また、化学的に不安定です。空気中で酸化すると酸化クロム (III) に変わり、加熱によって金属クロムと酸化クロム (III) に不均化します。

その一方で、酸化クロム (III) は非常に安定です。酸やアルカリに溶けず、臭素酸アルカリ水溶液と加熱すると溶けます。酸化クロム (IV) は黒色の粉末で、強磁性を示し、水に溶けません。

酸化クロム (VI) は赤色の結晶で、潮解性があり、毒性が非常に強いです。水に溶けると、クロム酸や二クロム酸を生じます。250°Cで分解すると酸素が発生して、酸化クロム (III) になります。

酸化クロムの構造

化学式は酸化クロム (II) がCrO、酸化クロム (III) がCr2O3、酸化クロム (IV) がCrO2、酸化クロム (VI) がCrO3です。酸化クロム (III) は、六方晶系のコランダム型構造を有し、酸化物イオンが六方最密充填構造を取り、八面体形の間隙の3分の1をクロムイオンが占有しています。

酸化クロム (IV) は、正方晶系のルチル型構造を持っています。酸化クロム (VI) は、斜方晶系の針状結晶です。

固体中で四面体形構造のクロム原子は、頂点を共有しながら鎖状に並んでいます。各クロム原子は隣のクロム原子と、酸素2個を共有しています。

酸化クロムのその他情報

1. 酸化クロムの合成法

クロムアマルガムを空気や硝酸と反応させて酸化すると、酸化クロム (II) が生成します。水素やエタノールを赤熱した酸化クロム (III) と反応させても、酸化クロム (II) が得られます。塩化クロム (II) と炭酸ナトリウムを混ぜて熱するか、クロムカルボニルの熱分解でも生成可能です。

酸化クロム (III) は、クロム鉄鉱からNa2Cr2O7を経由して、高温で硫黄により還元すると製造できます。硝酸クロムなどのクロム塩の分解や二クロム酸アンモニウムの加熱分解でも生成可能です。

酸化クロム (VI) は、硫酸でクロム酸ナトリウムや二クロム酸ナトリウムを処理すると生じます。

2. 酸化クロムの反応

酸化クロム (III) は、両性酸化物です。酸には水和クロムイオンである[Cr(H2O)6]3+になり、濃アルカリには亜クロム酸イオンであるCrO2や[Cr(OH)6]3-になって溶解します。炭素やアルミニウムの微粉末とともに熱すると、金属クロムに還元されます。塩素や炭素と熱すると塩化クロム (III) が得られ、空気中で他の金属酸化物を酸化するとクロム酸塩を生成可能です。

酸化クロム (VI) は酢酸やアセトンに溶かして、酸化剤として合成反応に利用されます。酸化クロム (VI) を用いた酸化反応では、1.5等量のアルコールを対応するアルデヒドやケトンに変えます。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/1308-38-9.html

群青

群青とは

群青とは、アルミニウムナトリウムのケイ酸塩、硫化物イオン、硫酸イオンが混じりあって構成される無機物質です。

天然にはラピスラズリの主成分として存在し、深みのある青色が特徴です。ラピスラズリのラピスの語源は、ラテン語で石を表すLapis、ペルシャ語で青や空を表すLazwardだと言われています。

群青は、別名としてウルトラマリン (英: Ultramarine) があります。ヨーロッパでは原料のラピスラズリは産出されず、アフガニスタンから海を越えてやってくることから、この名前が付けられました。画家のフェルメールが、群青顔料を使用して名作を多く残したことから、フェルメールブルーとしても知られています。

群青の使用用途

群青は高彩度の美しい青色を活かし、顔料として使用されることが一般的です。紺青と共に、水性塗料や印刷インキ、絵の具などに配合される青色無機顔料として多用されてきました。天然の群青はとても高価であったため、ルネッサンス期のヨーロッパの芸術家たちは、聖マリアやキリストのローブでのみこの顔料を使用していました。

現在では、天然顔料はほとんど生産されておらず、合成顔料が大半です。純粋なウルトラマリンの他に、ウルトラマリンバイオレットやウルトラマリンレッド、ウルトラマリンピンクなど、さまざまな色調のウルトラマリンが販売されています。

合成製造物は非常に安価なため、紙やゴム、プラスチックの着色・青みづけ、または壁紙や更紗の染色など、様々な分野の量産製品に使われます。群青は安全性も高く、化粧品にも使用できる塗料です。また、合成ウルトラマリン溶液であるランドリーブルーは、白い服の洗濯洗剤として用いられます。

群青の性質

群青のCAS番号は57455-37-5で登録されています。硫黄を含むアルミノシリケート錯体として知られていますが、分子構造は定義されていません。取りうる分子構造の一例は、Na8(Al6Si6O24)S2~4とされています。

群青は青色の粉末で、水やアルコールにはほとんど溶けません。空気中では、約300℃まで安定です。酸に対して不安定で、硫化水素が発生して分解して退色しますが、塩基や硫化ガスに対しては比較的安定です。

アルミノシリケートの格子内に、ナトリウムイオンと硫黄のラジカル陰イオンが対として存在する構造を取ります。群青の深い青色は、結晶格子内に存在する酸化数の異なるラジカル陰イオン、S3やS2の光吸収に起因します。

人工の群青は、ケイ酸アルミニウムナトリウムと硫化ナトリウムの複塩であり、その組成式は、Na10Al6Si6O24・Na4S2です。天然のものと比べ、やや赤みを感じる青色を呈します。色は焼成条件により変化しますが、結晶構造は常に立方晶を示します。なお、消防法や毒物及び劇物取締法などの国内法令には該当しません。

群青の種類

岩群青と呼ばれるものもあり、こちらも顔料として使用されています。天然では藍銅鉱 (アズライト) として産出します。塩基性炭酸銅が主成分で、化学式は2CuCO3・Cu(OH)2です。比重は3.88の青色粉末で、希酸やアンモニア水には溶けますが、水には溶けません。

同じく塩基性炭酸銅である孔雀石 (マカライト) との混合物として採掘されることが多いため、精製の困難さから比較的高価な顔料です。孔雀石は、化学式CuCO3・Cu(OH)2で表され、緑色を呈する、比重3.85、単斜晶系の粉末です。酸やアンモニア水には溶けますが、水やエタノールには溶けません。

群青のその他情報

1. 群青の製造方法

中世ごろから、ラピスラズリという天然鉱石を粉砕して作られていました。天然のものは、中央アジアや中近東で産出されます。

群青は、合成によっても製造可能です。カオリンと珪藻土、ソーダ灰、硫黄に、還元剤として木炭または石灰を加え、るつぼに密閉します。750〜850℃の高温で40〜50時間加熱した後、副生成物の硫酸ナトリウムを水洗いにより取り除くことで得られます。

2. 取り扱い及び保管上の注意

取り扱い時の対策
強酸化剤は混触危険物質です。取り扱い時や保管時に、近づけないでください。

火災の場合
熱分解で、一酸化炭素や二酸化炭素、硫黄酸化物 (SOx) 、金属酸化物を放出するおそれがあります。消火には、水噴霧や二酸化炭素、泡、粉末消火剤、消火砂を使用してください。

保管する場合
ポリエチレン製容器に密閉し、直射日光を避け、換気の良いなるべく涼しい場所に保管してください。

参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0121-0001JGHEJP.pdf
https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/Ultramarine-Blue