イソブテンとは
図1. イソブテンの基本情報
イソブテン (英: isobutene) とは、化学式がC4H8で表される、枝分かれ状に4個の炭素原子を持つ炭化水素です。
イソブチレン (英: isobuthylene) や2-メチルプロペン (英: 2-methylpropene)とも呼ばれます。ブテンの3種類の異性体の一つで、その中で最も化学反応性に富んでいます。そのため石油化学の重要な原料の一つです。
イソブテンは極めて燃焼性が高く、空気と爆発性混合気を生じます。危険物に該当する物質で、取り扱いや管理には注意が必要です。
イソブテンの使用用途
石油化学分野でイソブテンは、合成中間体として幅広く使用されます。
イソブテンをメタノールやエタノールに付加すると、ガソリン添加剤として用いられる「メチルtert-ブチルエーテル」や「エチルtert-ブチルエーテル」を生成可能です。イソブテンをアルキル化すると、ガソリンに加えるイソオクタンが得られます。
そのほかイソブテンは、合成樹脂、合成ゴム、各種プラスチックの製造にも利用されます。
イソブテンの性質
イソブテンの融点は−140.3°Cで、沸点は-6.9°Cであり、常温常圧では無色の気体として存在します。可燃性が高く、爆発しやすいです。発火点は465°Cで、水には溶けません。
イソブテンの構造
イソブテンはエチレン (英: ethylene) の片方の炭素原子に、メチル基が2個結合した構造を有します。示性式はCH2=C(CH3)2で表されます。モル質量は56.11g/molで、密度は0.5879g/cm3です。
イソブテンの構造異性体には1-ブテンと2-ブテンがあります。2-ブテンは幾何異性体を有し、シス-2-ブテンとトランス-2-ブテンが存在します。イソブテンの分子サイズは小さいため、物理的または化学的方法で分離可能です。
イソブテンのその他情報
1. イソブテンの製造
ブテン類は接触分解によって、エチレンやプロピレンなどの副産物として生産され、C4留分が10%未満の総重量で生成します。ブタジエンの回収後の留分は、主成分がイソブテンで、四十数%前後です。残りは二十数%が1-ブテンで、二十数%が2-ブテンであり、n-ブタンやイソブタンなどの混合物になっています。ただし成分の生成比は、接触分解の調節で変わります。
2. イソブテンの合成法
図2. イソブテンの合成
石油精製ストリームで硫酸と反応させると、イソブテンを単離可能です。tert-ブチルアルコールの脱水や触媒を使ったイソブタンの脱水素化でも製造できます。アセトン、セルロース、キシロースなどからも合成可能です。
ネオヘキセン (英: neohexene) を合成する際に、ジイソブチレン (英: diisobutylene) のエテノリシス (英: ethenolysis) の副産物としてもイソブテンは生じます。
3. イソブテンの反応
図3. イソブテンの反応
メタクロレイン (英: methacrolein) の原料にイソブテンを利用可能です。メタノールやエタノールがイソブテンに付加すると、メチルtert-ブチルエーテルやエチルtert-ブチルエーテルが生成します。商業的にtert-ブチルアミンは、ゼオライト触媒を使ったイソブチレンのアミノ化 (英: amination) で製造されます。
イソブテンのアルキル化によって、イソオクタンを合成可能です。フェノールや4-メトキシフェノールとのフリーデル・クラフツ反応 (英: Friedel–Crafts reaction) では、イソブテンからジブチルヒドロキシトルエンやブチルヒドロキシアニソールが得られます。
イソブテンの重合でポリイソブチレンを生成可能です。ブチルゴム (英: Butyl rubber) はイソプレン (英: isoprene) とイソブテンの共重合体です。