アズレン

アズレンとは

アズレンの構造

図1. アズレンの構造

アズレン (英: Azulene) とは、炭素原子と水素原子だけから構成される多環芳香族炭化水素の1つです。

アズレン骨格を有する化合物の総称でもあります。ベンゼン環を持たない非ベンゼン系芳香族化合物であり、ナフタレンの構造異性体で、5員環と7員環の縮合した構造を持ちます。カモミールなどの植物にも含まれる天然の有機化合物で、炭化水素化合物としては珍しく美しい濃い青色を有しています。

この特徴的な色から、スペイン語で青を意味する「azul」を引用し「アズレン」と命名されました。アズレンは、消防法や、毒物及び劇物取締法などの国内法規での指定には該当しない物質です。人体に無害で抗炎症作用をもつため、医薬品や化粧品などに広く使用されています。

アズレンの使用用途

アズレン誘導体の構造

図2. アズレン誘導体の構造

アズレンは、その穏やかな抗炎症作用から主に医薬品や化粧品、有機合成材料として使われています。例えば、アズレン誘導体の1つであるアズレンスルホン酸ナトリウム水和物は「水溶性アズレン」と呼ばれ、うがい薬、鼻・のどの炎症を抑える医薬品、胃炎・胃潰瘍治療薬などの主成分です。

また、アズレン誘導体であるグアイアズレン (アズロン、1,4-ジメチル-7-イソプロピルアズレン) は肌の炎症を抑える軟膏薬に使用されています。皮膚への抗炎症作用から、このようなアズレン誘導体は入浴剤や化粧品など肌に直接触れる日用品にも広く使用されています。

アズレンは、カモミールやカミツレなどの精油成分の主成分です。古くからこれらのハーブは民間薬として使用されてきましたが、その効能はハーブに含まれるアズレンの抗炎症作用によるものです。現在でも、皮膚の炎症を抑える薬用入浴剤や化粧品の成分としてカモミール精油やカミツレ精油を使用した商品は多くあり、それらもまたアズレンを含有した日用品の1つです。

アズレンの性質

アズレンは、エタノールおよびアセトンに良く溶けます。一方で、水にはほとんど溶けません。医薬品として使用するためには水溶性であることが重要となるため、医薬品用途では水溶性のアズレン誘導体であるアズレンスルホン酸ナトリウム水和物が良く用いられます。

また、アズレンは医薬品や日用品にも用いられる成分です。人体への危険有害性はありません。そのため、厚生労働省が公開している職場のあんぜんサイトの化合物の安全データシート (SDS) には、アズレンに関する情報はありません。

なお、アズレンの別名として、ビシクロ[5.3.0]デカペンタエン (英: Bicyclo[5.3.0]decapentaene) 、シクロペンタシクロヘプテン (英: Cyclopentacycloheptene) などが挙げられます。日本国内の大手試薬メーカーのウェブサイトでは、主に「アズレン」の名称を使用する場合が多いです。

化学式 C10H8
日本語名 アズレン
英語名 Azulene
CAS番号 275-51-4
分子量 128.17g/mol
融点 100℃
沸点または初留点および沸騰範囲 242℃

アズレンのその他情報

1. アズレンの安全注意情報

アズレンは人体に無害な有機化合物であるため、取り扱い時は特別な安全対策は必要ありませんが、ナフタレンのような独特な臭いを持っているため、換気の良い場所で取り扱うことが大切です。

2. アズレンの注意点

アズレンは、昇華性を有する固体の有機化合物です。昇華とは、化合物が液体の状態を経由することなく、固体から気体へ、または気体から固体へと相転移する現象のことです。昇華性を有する代表的な化合物として、アズレンの構造異性体であるナフタレンが有名です。

アズレンは比較的安定な固体の化合物ですが、昇華性によって独特の臭気を有しています。また、アズレンと他の有機化合物・有機溶媒との混合物を蒸留や減圧濃縮した場合、アズレンの昇華性によって沸点の低い有機化合物・有機溶媒側にもアズレンが混入することがあります。昇華性のある化合物であるという点に留意して、取り扱いおよび保管を行ってください。

3. 廃棄処分方法

アズレンを廃棄処分する方法について、法規制上の制約はありません。しかし、実験用試薬または医療用原料としてアズレンを取り扱う場合が多いため、都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に依頼するなどして適切に廃棄してください。

参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0101-1723JGHEJP.pdf

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