イオウフロアブルとは
イオウフロアブルとは、農薬の1種で、殺菌剤に部類されるものです。
名前が示す通り、硫黄 (元素記号:S) を主成分としています。硫黄は温泉の成分に含まれていたり、ゴムやマッチなどの原料に使用されたりする用途がよく知られていますが、農薬としての働きや土壌のphを下げる働きがあり、農業界でも使用される元素です。
イオウフロアブルは、微細粒子の硫黄を水に懸濁させてつくられています。微粒子製剤 (フロアブル) なので散布しても葉や果実などに農薬が付着してできる汚れが目立たないのが特徴です。
また、農薬の散布回数にカウントされないため、特別栽培農物 (化学肥料、化学農薬の使用を減らして栽培された農作物) に使用できたり、防除効果があったりします。通常の硫黄は、消防法の第二類に該当する可燃性危険物として扱われますが、イオウフロアブルは発火・引火性が無く、危険物に該当しません。
イオウフロアブルの使用用途
イオウフロアブルの使用用途は、農作物のうどんこ病やさび病などの病気の予防と治療を行う殺菌剤としての働きと、サビダニやホコリダニなどダニ類などの防除を行う殺虫剤としての働きの2つになります。
1. 殺菌剤
イオウフロアブルは、殺菌剤として野菜・果樹の病気予防・治療を目的として使用されます。イオウフロアブルの主成分である硫黄は、菌や微生物のSH酵素と呼ばれる酵素の働きを妨害し、エネルギー代謝を阻害するため、殺菌効果が得られます。農薬の作用機構分類では、M2 (多作用接触活性) に分類されています。
殺菌剤としてのイオウフロアブルは、モモやリンゴ、カキなどの果樹の褐斑病や黒星病、ナスやキュウリなどの野菜類やネギ、イチゴのうどんこ病、ネギやシバのさび病に効果的です。使用方法は水に溶かして農作物に散布を行います。農作物によって希釈の倍率が異なりますが、300倍から1,000倍希釈が一般的です。
使用時期は病気の発生前から発生初期までと幅があり、病気の予防と治療の両方に使用できます。
2. 殺虫剤
イオウフロアブルは殺虫剤としても野菜・果樹に対する害虫の防除を目的に使用されます。殺虫剤としてのイオウフロアブルはカンキツのミカンサビダニ、チャノホコリダニやトマト、ミニトマトのトマトサビダニに有用です。
使用方法は水に溶かして農作物に散布を行います。希釈の倍率は、400倍に定められていることが多いです。使用時期は害虫の発生初期となっており、この時期の害虫の防除に適しています。
イオウフロアブルの特徴
長所
- 形状がフロアブルになっているため、粉立ちや希釈時の泡立ちが少ないです。
- 農作物に均等に付着するため、葉や果実につく汚れが少ないです。
- 有機農作物栽培に登録し農作物を栽培している人でも使用できます。
- 予防と治療の両方の場面で使用することができます。
- 登録の少ないシバの病気に対して登録があるため、使用できます。
短所
- 薬剤や散布機のコストがかかります。コストに見合う効果がでるか検討して、使用する必要があります。
- 気温の高い日や室温の高いハウス内では、薬害が発生する可能性があります。
イオウフロアブルのその他情報
使用時の注意点
- 散布時は手袋やマスクを着用し、目や鼻、肌に直接かからないよう注意が必要です。
- 石灰硫黄合材、ボルドー液、マシン油乳剤との混用使用は避ける必要があります。またマシン油乳剤散布後14日以内の近接散布も避けなければなりません。
- 貯蔵中に成分が分離することがあるので、使用時は混和してから使用します。
- 蚕に対して影響がでるため、周辺に桑葉がある場合は散布時に注意が必要です。
参考文献
https://www.nichino.co.jp/products/query/db/sds/20190806154658918.pdf