オキサミドとは
オキサミド (英: Oxamide) とは、白色の結晶性粉末の有機化合物です。
IUPAC名は、エタンジアミド (英: Ethanediamide) です。別名として、シュウ酸ジアミド (英: Oxalic diamide) やジアミノグリオキサール (英: Diaminoglyoxal) 、オキサルアミドまたはオキサラミド (英: Oxalamide) やオキサムイミド酸 (英: Oxamimidic acid) 、シュウ酸ジアミド (英: Oxalic acid diamide) 、2-アミノ-2-オキソエタンイミド酸 (英: 2-Amino-2-oxoethanimidic acid) とも呼ばれます。
オキサミドの使用用途
1. 尿素肥料の代替
オキサミドは、散布後に徐々に土壌中に肥効を与える緩効性肥料として使用されています。水に難溶で吸湿性がないため、地下水への流亡が少ない優れた肥料です。また、土壌中の微生物により時間をかけて加水分解され、アンモニアを徐々に放出します。
粒径によってオキサミドの分解速度やアンモニアの放出速度を調節できるため、使い勝手がよく、作物栽培の省力化に有効です。オキサミドの土壌中での分解機構は、1分子のアンモニアを放出してオキサミン酸を生成した後、オキサミン酸がさらにシュウ酸とアンモニアに分解されます。
シュウ酸の最終的な分解物は、水と酸素、二酸化炭素です。分解物に硫酸や塩素などの有害な副生成物を含まないため、土中の微生物環境や土壌成分、作物の育成に悪影響がありません。オキサミド自体は空気中で安定で、pH10以上のアルカリ性条件下またはpH1以下の酸性条件下でなければ加水分解されません。
2. その他
オキサミドはニトロセルロース合成における安定剤としても用いられます。また、過塩素酸アンモニウム複合推進薬 (APCP) と呼ばれる燃料において高性能燃焼速度抑制剤としても有用です。オキサミドを1〜3wt%の濃度で使用することで、推進剤比推力への影響を最小限に抑えながら、直線燃焼速度を遅延できます。
さらに、N,N’-置換オキサミドはウルマン-ゴールドベルグ反応 (英: Ullmann-Goldberg reaction) の補助配位子として使用されます。ウルマン-ゴールドベルグ反応とは、銅触媒存在下で行われるハロゲン化アリールとアニリンのカップリング反応です。ハロゲン化アリールの中でも、ヨウ化アリールは反応性が高いことが知られています。また、電子求引性基を持つハロゲン化アリールも、カップリングを促進します。
オキサミドの性質
化学式はC2H4N2O2で表され、分子量は88.07です。CAS番号は471-46-5で登録されています。
オキサミドは350°C (融点) で水とジシアン分解する、密度1.667g/ml (20℃) の固体です。針状結晶を形成し、一部昇華性を持ちます。エタノールに可溶であり、水にほとんど溶けず、またジエチルエーテルに不溶です。
オキサミドのその他情報
1. オキサミドの製造法
オキサミドは、シュウ酸ジエチルにアンモニアを作用させることで得られます。また、ジシアンを部分的に加水分解させたり、シュウ酸のアンモニウム塩であるシュウ酸アンモニウムを加熱することでも合成可能です。
2. 取り扱い及び保管上の注意
取り扱い時の対策
酸化剤は、オキサミドの混触危険物質に指定されています。取り扱いの際や保管時に、接触しないよう注意してください。
取り扱う際は、必ず保護衣と保護メガネ、保護手袋を着用し、ドラフトチャンバ内で使用します。使用後は、手を洗ってください。
火災の場合
燃焼による分解で、一酸化炭素 (CO) 、二酸化炭素 (CO2) 、窒素酸化物 (NOx) を生成するおそれがあります。粉末消火剤や泡消火剤、水噴霧、二酸化炭素 (CO2) を用いて消火してください。使用禁止の消火剤は特にはありません。
皮膚に付着した場合
オキサミドは、皮膚刺激性を持ちます。皮膚に付いてしまった場合は、石鹸と大量の水でよく洗い流します。皮膚刺激または発疹が生じた際は、医師の診断や手当てを受けてください。汚染された衣類を再度使用する場合は、洗濯します。
眼に入った場合
オキサミドは、強い眼刺激性を持ちます。眼に入ってしまった際は、数分間水で注意深く洗浄します。眼への刺激が続く場合は、医師の診察を受けてください。
保管する場合
容器は密閉し、冷暗所に置いてください。混触危険物質からは離して保管します。
参考文献
https://www.tcichemicals.com/JP/ja/p/O0086#docomentsSectionPDP
https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/Oxamide
https://www.jstage.jst.go.jp/article/dojo/56/1/56_KJ00002481336/_pdf/-char/ja