安息香酸メチル

安息香酸メチルとは

安息香酸メチル (英: Methyl benzoate) とは、芳香を持つ無色の液体です。

IUPAC名は、安息香酸メチル (英: Methyl benzoateまたは、Methyl benzenecarboxylate) 、英語の別名としてMethylbenzoate、Benzoic acid methyl ester、Niobe oilとも呼ばれます。

化学式C8H8O2で表され、分子量136.15の有機化合物です。CAS登録番号は93-58-3です。なお、消防法による第4類危険物、および第3石油類に該当します。

安息香酸メチルの使用用途

安息香酸メチルは、フルーティーな香りのあるエステル化合物で、天然にはグアバやマンゴーおよびキウイフルーツに含まれます。その特徴的な香りから、食品のフレーバーやイランイラン系の香料・香水などに使用されています。

また、合成樹脂、セルロースエステルやゴムの溶剤、ポリエステル繊維の染色助剤、殺菌剤や農薬への添加剤などさまざまな用途で使用可能です。ランミツバチの雄は、植物から安息香酸メチルを採取し、フェロモンの合成に使用していることが知られています。

化学合成では、前駆体として次のような反応に利用されています。

  • 担持酸化マンガン触媒を用いたベンズアルデヒドの選択的合成
  • フリーデル‐クラフツアシル化を介したアリール化合物との反応によるベンゾフェノン誘導体の生成

安息香酸メチルの性質

融点は−15°C、沸点は199.6°C、引火点82℃、常温で密度1.094g/cm3の液体です。安息香酸メチルは親油性で、エタノールアセトンには極めて溶けやすく、水には溶けにくい性質を持ちます。

安息香酸メチルは、用いる反応剤によって環とエステルの両部位での反応が可能です。例えば、酸触媒下、求電子剤である硝酸を用いると、3-ニトロ安息香酸メチルが生成します。

求核剤はカルボニル炭素を攻撃するため、安息香酸メチルをNaOH水溶液で加水分解すると、安息香酸ナトリウムが得られます。

安息香酸メチルのその他情報

1. 安息香酸メチルの製造法

フィッシャーのエステル化法により、硫酸など少量の強酸触媒下、メタノール溶液中で安息香酸と反応させることで合成できます。

自然界では、水生植物の一種オオサンショウモから単離されます。

2. 取り扱い及び保管上の注意

取り扱う場合
安息香酸メチルは、可燃性の液体です。高温のものや裸火、火花などの着火源から離れて使用します。また、静電気放電により安息香酸メチルの蒸気に引火する可能性があります。

アースを取るなど、静電気を避けるための措置が必要です。局所排気装置であるドラフトチャンバー内で使用します。使用の際は、個人用保護具を着用します。

火災の場合
火災が生じた場合、安息香酸メチルの熱分解で、分解して二酸化炭素や一酸化炭素を発生させる恐れがあります。消火には水噴霧や泡消火剤、粉末消火剤、炭酸ガス、消化砂などを使用します。

皮膚に付着した場合
皮膚に付着しないよう注意が必要です。使用時は必ず白衣や作業着などの保護衣や保護手袋を着用し、保護衣の袖は決して捲らず、皮膚が暴露しないようにします。

万が一皮膚に付着した場合は、石けんと大量の水で洗い流します。衣類に付着した場合は、汚染された衣類をすべて脱いで隔離が必要です。皮膚刺激が生じた場合は、医師の診療を受けることをおすすめします。

眼に入った場合
使用時は、必ず保護メガネまたはゴーグルを着用します。万が一眼に入った場合は、水で数分間注意深く洗います。

コンタクトを着用している場合で簡単に外せるときは外し、しっかり洗浄します。眼の刺激が持続する場合は、医師の診察を受けた方が無難です。

保管する場合
保管する際は、ガラス製容器に入れて密閉します。直射日光を避け、換気がよく、なるべく涼しい場所が最適です。混触危険物質である強酸化剤との接触は避けるようにします。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/93-58-3.html
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0113-0199JGHEJP.pdf
https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/Methyl-benzoate

亜硫酸水素ナトリウム

亜硫酸水素ナトリウムとは

亜硫酸水素ナトリウムとは、化学式NaHSO3で表される無機化合物です。

通常は、亜硫酸水素ナトリウム (NaHSO3) と重亜硫酸ナトリウム (ピロ亜硫酸ナトリウム (Na2Ss2O5)) との混合物です。別名として、重亜硫酸ソーダ、酸性亜硫酸ソーダ、無水重亜硫酸ソーダなどがあります。

わずかに硫黄臭のある白い単結晶の粉末で、水に溶けやすく、エタノールにはほとんど溶けません。水溶液は弱酸性を示します。

亜硫酸水素ナトリウムの使用用途

亜硫酸水素ナトリウムは、食品添加物の防腐剤、漂白剤として広く使用されています。その他にも、皮革 (タンニン溶解剤) 、染料及び中間物精製、写真 (定着補助剤) 、還元剤、漂白剤、廃液処理剤、洗剤、香料、試薬、医薬化粧品原料 (抗酸化剤) と使用用途は様々です。化粧品原料として使用する場合は、製品中への配合量の上限が定められています。

また、化学物質過敏症やシックハウス症候群の原因物質の一つとされているホルムアルデヒドと亜硫酸塩、重亜硫酸塩は水分の存在下で反応し、分子内に取り込むことができるため、ホルムアルデヒドが空気中に放散することを抑制するアルデヒドキャッチャーとしても使用されています。

亜硫酸水素ナトリウムは、刺激性があり、健康への影響も懸念されるため、用途によってそれぞれの配合量上限が定められいる点に注意が必要です。

亜硫酸水素ナトリウムの性質

構造と物性

図1. 亜硫酸水素ナトリウムの構造と物性

亜硫酸水素ナトリウム (亜硫酸水素ナトリウムと重亜硫酸ナトリウムの混合物) の分子構造は、亜硫酸水素イオンと重亜硫酸イオンそれぞれがナトリウムイオンと塩を形成したものです。室温においてさえ、固体の状態では不安定で、空気中で徐々に酸化され、微量の亜硫酸ガスを放ちながら硫酸塩に変化します。

そのため、製品形態としては粉末状の固体としてだけではなく、34%以上の高濃度水溶液としても販売されています。水溶液は加熱すると分解し、アルデヒドと付加物を作ります。

亜硫酸水素ナトリウムのその他情報

1. 亜硫酸水素ナトリウムの製造方法

製造方法

図2. 亜硫酸水素ナトリウムの製造方法

原料としては精製硫黄 (S) と水酸化ナトリウム (NaOH) を使用します。精製硫黄を焙焼 (空気の存在下で高温に加熱) することで、亜硫酸ガスを生成させます。吸収槽中で水酸化ナトリウム水溶液に亜硫酸ガスを吹き込むと、淡黄色透明の反応液が得られます。この反応液を濾過することで亜硫酸水素ナトリウム水溶液が得られます。

亜硫酸水素ナトリウム水溶液に、追加で水酸化ナトリウム水溶液と亜硫酸ガスを加えることで、さらに濃厚な亜硫酸水素ナトリウム水溶液に濃縮可能です。これを冷却、ろ過することで亜硫酸水素ナトリウムの結晶を得ることができます。

亜硫酸水素ナトリウムの結晶を乾燥加熱すると脱水反応が起こり、重亜硫酸ナトリウムの無色粉末になりますが、これを水に溶解させると再び亜硫酸水素ナトリウムに戻ります。

2. 亜硫酸水素ナトリウムの安全性

安全性及び法規制

図3. 亜硫酸水素ナトリウムの安全性と法規制

亜硫酸水素ナトリウム自体は不燃物ですが、高温で熱分解すると亜硫酸ガス (二酸化硫黄) の有害ガスが発生します。酸、鉱酸類などとの反応によっても亜硫酸ガスを発生します。また、酸化剤との混合により激しく発熱します。

労働安全衛生法では、名称等を表示すべき危険物及び有害物およびリスクアセスメントを実施すべき危険有害物に該当します。それ以外の法令においても有害物質、腐食性物質など危険性の高い種類の化合物として指定されており、取扱いには注意を要します。 

参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0119-0137JGHEJP.pdf

亜塩素酸

亜塩素酸とは

亜塩素酸 (英: Chlorous acid) とは、化学式HClO2で表される塩素のオキソ酸の1種です。

CAS登録番号は13898-47-0です。塩素の酸化数は+3あり、塩素酸 (+5価) よりも酸化数が小さいため、塩素酸と呼ばれます。遊離酸としては非常に不安定であるため、基本的には水溶液として存在します (亜塩素酸水) 。

なお、亜塩素酸塩は常温で安定です。具体的なものには亜塩素酸ナトリウム (NaClO2) や亜塩素酸カリウム (KClO2) などがあります。

亜塩素酸の使用用途

亜塩素酸の水溶液である「亜塩素酸水」の主な使用用途は、殺菌消毒剤です。細菌類等に対する殺菌効果やウイルス類の不活化効果が認められています。塩素のオキソ酸の中では、消毒剤として良く知られる次亜塩素酸より酸性度・酸化力が強く、塩素酸よりは弱いです。

亜塩素酸水は、食品添加物の製造用剤 (殺菌料) として認可されていますが、最終食品の完成前に除去あるいは分解しなければならないとされる物質です。具体的には、「精米、豆類、 (きのこ類を除いた) 野菜、果実、海藻類、鮮魚介類、食肉、食肉製品及び鯨肉製品並びにこれらを塩蔵、乾燥その他の方法によって保存したもの」などに対して使用が認められています。

亜塩素酸の性質

亜塩素酸の基本情報

図1. 亜塩素酸の基本情報

亜塩素酸HClO2は、分子量68.46、酸解離定数pKaは2.36である、中程度の酸です。また、亜塩素酸水は、亜塩素酸を4.0~6.0%程度含む水溶液で、うすい黄緑から黄赤色の透明な液体です。塩素の臭いを帯びます。

亜塩素酸水は、亜塩素酸 (HClO2) 分子の状態で存在していることはほとんどありませんが、瞬間的に存在する非解離状態の亜塩素酸 (HClO2) と解離状態の亜塩素酸イオン (H+・ClO−2) が平衡状態にあると考えられています。

亜塩素酸の種類

亜塩素酸水は、主に食品添加物として販売されている他、あるいはその他の物質と混合した殺菌消毒液として販売されています。また、関連物質として亜塩素酸の塩である、亜塩素酸ナトリウムや亜塩素酸カリウムなどが販売されています。

こちらは常温で安定な物質であることから、有機合成などに用いられる研究開発用試薬製品や、一般的な漂白剤薬品などとして広く販売されている物質です。

亜塩素酸のその他情報

1. 亜塩素酸の合成

亜塩素酸の合成

図2. 亜塩素酸の合成

遊離酸としての亜塩素酸は、亜塩素酸バリウムや亜塩素酸鉛などの水溶液に硫酸等の強酸を加え、生じた沈殿を濾別することで得られます。ただし、室温では容易に分解して二酸化塩素と次亜塩素酸となるため、低温下で合成・精製することが必要です。

2. 亜塩素酸水の合成

亜塩素酸水の合成

図3. 亜塩素酸水の合成

亜塩素酸水は、下記の合成手順で合成される物質です。

  • 飽和塩化ナトリウム溶液に塩酸を加え、酸性条件下で、
    無隔膜電解槽内で電解する
  • 得られた水溶液に、硫酸を加えて強酸性とする
  • 生成した塩素酸に過酸化水素水を加えて反応させる

その他、亜塩素酸ナトリウムにGRAS酸を加えても亜塩素酸 (HClO2) は生じるものの、この方法で合成された亜塩素酸は容易に分解され、安定に存在させる事はできません。前述の合成方法は亜塩素酸を液中に安定化させる優れた方法であるとみなされています。

3. 亜塩素酸の化学反応

亜塩素酸は不安定なため、不均化により、次亜塩素酸 (HClO) と塩素酸 (HClO3) を発生させます。酸化作用があり、有機合成では反応系中で亜塩素酸を発生させて酸化剤として用いる場合があります。

具体的な例としては、アルデヒドをカルボン酸へ酸化する反応などが挙げられます。この反応では、リン酸緩衝液などで pH を微弱な酸性に保った状態で行われることが多いです。

また、次亜塩素酸 (HClO) など、副反応を誘発する塩素化合物が発生するため、これらを捕捉するために、捕捉剤 (2-メチル-2-ブテンなど) がしばしば添加されます。

参考文献
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002wy32-att/2r9852000002wybn.pdf

ルビジウム

ルビジウムとは

ルビジウムとは、原子番号が37番、原子量が85.4678のアルカリ金属の1種です。

元素記号はRbで示されます。1861年にドイツのブンゼン (英: Bunsen) とキルヒホッフ (英: Kirchhoff) により発見されました。地殻の中には比較的多く存在する元素ですが、鉱石としてはほとんど存在しません。

リチウム (Li) を精製する際の副産物として得られます。なお、消防法では自然発火性物質として、危険物に指定されています。

ルビジウムの使用用途

ルビジウムは、ガラスに添加すると、強度や電気絶縁性が高くなります。主に炭酸ルビジウム (Rb2CO3) としてガラスに混ぜられ、ブラウン管に利用可能です。

そのほか、原子時計にも使用可能です。ただし、ルビジウムの商業・工業用途は限られています。

それ以外にも、年代測定に利用されています。鉱物中などのルビジウム87とストロンチウム87の含有量比から、これらの物質が結晶化してから現在までの年代を算出可能です。

ルビジウムの性質

ルビジウムは、銀白色の柔らかくて、非常に軽い金属です。炎色反応で、カリウムと似た暗赤色を示します。融点が低く、39°Cです。沸点は688 °Cで、気体は青色です。

特性は他のアルカリ金属に似ています。非放射性のアルカリ金属元素の中で電気陰性度が2番目に小さく、イオン化エネルギーも406 kJ/molととても低いです。

化合物中の原子価は+1です。ルビジウムイオンは、カリウムイオンと同様に、植物や動物の細胞に取り込まれます。

ルビジウムの構造

ルビジウムの室温付近での密度は1.532g/cm3で、融点での液体密度は1.46g/cm3です。常温常圧で安定な結晶は、体心立方構造を取っています。電子配置は[Kr] 5s1です。

ルビジウムのイオン半径は大きいため、不適合元素に含まれます。不適合元素とは、造岩鉱物の結晶へ入りにくい元素のことです。

ルビジウムのその他情報

1. ルビジウムの反応

ルビジウムの反応性は、他のアルカリ金属と似ています。ただし、カリウムやナトリウムよりも反応性があります。空気中でルビジウムは自然発火し、すぐに酸化して過酸化物のRb2O2や超酸化物のRbO2を生成可能です。

また、ハロゲン元素とも激しく反応します。さらに、水と反応すると水素が生じ、水素を点火するために十分な量の反応熱も得られるため、爆発的に反応が進行します。

そのほか、カリウム、ナトリウム、セシウム、カルシウム、金などと合金を生成可能です。水銀に溶けると、アマルガムを形成します。

2. 天然のルビジウム

地殻中にルビジウムは、23番目に多く存在します。白榴石 (英: Leucite) 、カーナライト(英: Carnallite) 、ポルサイト(英: Pollucite) 、チンワルド雲母 (英: Zinnwaldite) のような鉱石に、酸化物として最大1%程度含まれます。リチア雲母 (英: Lepidolite) はルビジウムを0.3〜3.5%含有しているため、商用ベースのルビジウム源に使用可能です。

海水は、平均125μg/Lのルビジウムを含んでいます。同族元素と比べると、カリウムより大幅に少なく、セシウムより大幅に多いです。ルビジウムの主要な産出源は、イタリアにあるエルバ島のルビジウム微斜長石とカナダにあるバーニック湖のポルサイト鉱床です。

3. ルビジウムの生産

ルビジウム化合物は、年間2〜4トンほど生産されます。カリウムから、ルビジウムやセシウムを分離可能です。例えば、ルビジウムセシウムミョウバンから分別晶出により、純粋なルビジウムミョウバンが生成します。

4. ルビジウムの同位体

ルビジウムの同位体は、24種類知られています。天然に存在する同位体は、安定同位体の85Rbと放射性同位体の87Rbです。天然存在比は、それぞれ72.2%と27.8%です。

環境中に87Rbは広く存在します。87Rbの半減期は4.88×1010年です。87Rbはベータ崩壊によって安定な87Srに変わるため、年代測定に利用されています。

82Rbは天然には存在しませんが、82Srの崩壊によって生成します。82Rbの半減期は1.273分です。82Rbは心臓のポジトロン断層法に使用されます。

ルテニウム

ルテニウムとは

ルテニウム (英: Ruthenium) とは、銀白色で硬いがもろく、粉末になりやすい固体です。

ルテニウムの元素記号はRuで、原子番号は44番、原子量101.07、CAS番号は7440-18-8の白金族元素です。

1828年にドイツの化学者オサンにより、ロシアのウラル山脈の堆積物から新しい元素として認識されました。しかしオサンのルテニウムは不純物が多いものであり、1844年にロシアの化学者 クラウスによってはじめて単離されました。ルテニウムは天然には、イリジウムなど他の白金金属と共に地殻中に存在します。

ルテニウムの使用用途

ルテニウムの主な使用用途は下記の通りです。

1. 金属への添加

ルテニウムは、白金、パラジウム、チタンおよびモリブデンと合金化され、様々な用途に用いられています。このような合金は、腐食や酸化に対する耐性が高く、激しい摩耗に耐えることができます。そのため、例えば、ルテニウム-パラジウム合金は、宝飾品、装飾品、歯科治療に使用され、ルテニウム-白金合金は、装飾の他、電気接点の材料に用いられます。

2. 医療材料

ルテニウムのベータ崩壊同位体Ru-106は、眼腫瘍、主にぶどう膜の悪性黒色腫の放射線療法に使用されます。また、ルテニウム中心錯体は、可能な抗癌特性について研究されています。白金錯体と比較して、ルテニウムのものは加水分解に対してより大きな耐性を示すため、腫瘍に対してより選択的な作用を示すことが期待されます。

3. 触媒

ルテニウム含有化合物の多くは、有用な触媒特性を示します。均一系触媒としての利用は、三塩化ルテニウムやグラブス触媒によるオレフィンメタセシス反応、キラルルテニウム触媒によるケトン類のエナンチオ選択的水素化などがあります。不均一系触媒としては、フィッシャートロプシュ合成などへの利用があります。

4. その他

他にもルテニウムは、地下構造物や水中構造物のカソード防食や、塩水から塩素を生成する電解槽に使用される複合金属酸化物陽極の成分にもなっています。

ルテニウムの性質

ルテニウムは、融点が2,450℃、沸点が3,700℃で、常温では固体として存在し、固体状態での密度は12.43g/cm3です。王水を含む酸などにほとんど溶解せず、溶融アルカリには溶解してルテニウム酸塩 (RuO42-) を形成します。

ルテニウム金属は、電気や熱分解によってメッキすることができる他、白金やパラジウム、チタンなどに少量添加することで、硬度や強度を高める性質があります。

ルテニウムのその他情報

1. ルテニウムの製法

ルテニウムは、他の白金族金属と同様に、ニッケルや銅、および白金金属鉱石を処理する際のの副産物として商業的に得られます。銅やニッケルの電解精錬中に、銀、金、および白金族金属などの貴金属が陽極泥として沈殿し、これを抽出することでルテニウムを得ることが出来ます。ルテニウムは、使用済みの核燃料の中に、直接核分裂生成物や中性子吸収生成物としても含まれています。

2. ルテニウムの反応

ルテニウムは、二酸化ルテニウム (RuO2) に酸化することができ、さらにメタ過ヨウ素酸ナトリウムによって、強力な酸化剤である四酸化ルテニウム (RuO4) に酸化することができます。四酸化ルテニウムは、主に鉱石や放射性廃棄物からのルテニウムの精製における中間体として使用されます。

3. 法規情報

ルテニウムは、毒物及び劇物取締法、消防法、化学物質排出把握管理促進法 (PRTR法) など、主要な法規制のいずれにも該当していません。

4. 取扱いおよび保管上の注意

取扱い及び保管上の注意は、下記の通りです。

  • 容器を密栓し、乾燥した冷暗所に保管する。
  • 屋外や換気の良い区域のみで使用する。
  • 強酸化剤との接触は避ける。
  • 使用時は保護手袋、保護眼鏡を着用する。
  • 取扱い後はよく手を洗浄する。
  • 皮膚に付着した場合は、速やかに水で洗い流す。
  • 眼に入った場合は、水で数分間注意深く洗う。

参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/jp/product/detail/W01W0118-0164.html

メチル

メチルとは

メチル(英語:Methyl)は、最も分子量の小さいアルキル基の一つです。メチル基とも呼ばれます。CH3-もしくはMe-と表記されます。 水素原子(H)と結合する事で、メタン分子(分子式:CH4)になります。メチル単体で存在する場合は、メチルラジカルと呼ばれます。

メタンの熱分解もしくは、アセトンを光分解する事で生成されます。メチルラジカル同士が再結合する事で、エタン(構造式:CH3-CH3)となります。 ヒドロキシ基が結合する事で、メタノール(構造式:CH3-OH)となります。メタノールは、メチルアルコールとも呼ばれます。

メチルの使用用途

メチル基が結合したメチル化合物は、様々な製品やその製造工程において広く使われています。 その一例として、メチルアルコールが挙げられます。

メチルアルコールは工業製品の原料や有機溶剤として使用されています。 メチルアルコールを原料として、プラスチックや合成繊維、接着材、塗料、農薬、医薬品が製造されます。 メチルアルコールは、戦時中に密造酒として飲まれていました。メチルアルコールは有毒であり、摂取する事で、失明する場合もあります。そのため、目が散るメチルとも呼ばれていました。

ヘキセン

ヘキセンとは

1-ヘキセンの基本情報

図1. 1-ヘキセンの基本情報

ヘキセンとは、分子式がC6H12で表されるアルケンです。

鎖の中の二重結合の配置や分岐によって、13種類の構造異性体が存在します。工業的に最も良く用いられる異性体は、α-オレフィンの1-ヘキセンです。

1-ヘキセンはα位に二重結合を有するため、反応性が高いです。化学的に有用なヘキセンの異性体であり、例えばポリエチレンを製造するために、共単量体 (コモノマー)として用いられています。消防法で1-ヘキセンは、「第4類危険物」と「第1石油類」に該当しています。

ヘキセンの使用用途

ヘキセンの異性体の中で、最も利用されているのは、1-ヘキセンです。1-ヘキセンはポリエチレンのモノマーの1つとして、使用可能です。高密度ポリエチレンに2〜4%、リニアポリエチレンに8〜10%含まれています。

また、1-ヘキセンは、ヒドロホルミル化するとアルデヒドになり、アルデヒドからエナント酸を得るために使用されます。ヘキセンの異性体である3,3-ジメチル-1-ブテンは、オクタン価が非常に高いです。

オクタン価とは、ガソリンでエンジン内の自己着火のしにくさやノッキングの起こりにくさを表す数値です。そのため、ノッキングが発生しにくく、ガソリンの添加剤に使用されています。そのほか、抗真菌薬に使われているテルビナフィンや合成ムスク系香料に用いられているトナリドを合成する際に、原料として3,3-ジメチル-1-ブテンを使用できます。

ヘキセンの性質

ヘキセンと構造が類似しているヘキサンは、飽和炭化水素であり、反応しにくいです。その一方で、ヘキセンは二重結合を持つため、臭素化や酸化を受けます。

1-ヘキセンの融点は-139.8°C、沸点は63°Cであり、密度は0.673g/cm3です。3,3-ジメチル-1-ブテンの沸点は41°C、引火点は-21℃です。

ヘキセンの構造

ヘキセンは、2個の炭素原子が二重結合で結ばれている構造を有する有機化合物です。分子量は84.1608です。

3,3-ジメチル-1-ブテンは、ネオヘキセンとも呼ばれます。タングステン触媒を用いて、イソブテンを接触させると合成可能です。

ヘキセンのその他情報

1. ヘキセンの直鎖アルケンの構造異性体

ヘキセンの直鎖アルケンの構造異性体

図2. ヘキセンの直鎖アルケンの構造異性体

ヘキセンには、二重結合の位置の違いによって、3種類の構造異性体が存在します。具体的には、1-ヘキセン、2-ヘキセン、3-ヘキセンです。 

2-ヘキセンには幾何異性体が存在し、それぞれcis-2-ヘキセンとtrans-2-ヘキセンです。3-ヘキセンにも、幾何異性体であるcis-3-ヘキセンとtrans-3-ヘキセンがあります。

2. ヘキセンの分岐アルケンの構造異性体

ヘキセンの分岐アルケンの構造異性体

図3. ヘキセンの分岐アルケンの構造異性体

分岐も考慮すると、ヘキセンには合計13種類の構造異性体が存在します。主鎖の炭素原子の数が5のヘキセンの構造異性体には、2-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、2-メチル-2-ペンテン、3-メチル-2-ペンテン、4-メチル-2-ペンテンがあります。

主鎖の炭素原子の数が4、側鎖の数が1つのヘキセンの構造異性体は、2-エチル-1-ブテンのみです。主鎖の炭素原子の数が4、側鎖の数が2つのヘキセンの構造異性体には、2,3-ジメチル-1-ブテン、3,3-ジメチル-1-ブテン、2,3-ジメチル-2-ブテンが存在します。

3. ヘキセンの幾何異性体

ヘキセンの分岐アルケンの異性体の1つである3-メチル-2-ペンテンには、幾何異性体が存在します。それぞれcis-3-メチル-2-ペンテンとtrans-3-メチル-2-ペンテンです。4-メチル-2-ペンテンにも、幾何異性体であるcis-4-メチル-2-ペンテンとtrans-4-メチル-2-ペンテンがあります。

4. ヘキセンの光学異性体

ヘキセンの分岐アルケンの異性体の1つである3-メチル-1-ペンテンには、光学異性体が存在します。それぞれ(R)-3-メチル-1-ペンテンと(S)-3-メチル-1-ペンテンです。

ヒスタミン

ヒスタミンとは

ヒスタミンの基本情報

図1. ヒスタミンの基本情報

ヒスタミンとは、分子式がC5H9N3と表され、分子量が111.14の活性アミンです。

1910年にヘンリー・ハレット・デール (英: Henry Hallett Dale) とパトリック・プレイフェア・レイドロー (英: Patrick Playfair Laidlaw) が、麦角抽出物中に血圧降下物質として発見しました。

ヒスタミンは食物により直接体内へ取り込まれる以外にも、生体内で合成されています。免疫反応の異常により起きる食物アレルギーに、ヒスタミン食中毒の症状は似ていますが、発症の機構が異なります。

ヒスタミンの使用用途

ヒスタミンは、胃液分泌機能の検査やクロム親和細胞腫の検査に利用可能です。ただし、薬理作用としてヒスタミンは、平滑筋の収縮、細動脈の拡張による急激な血圧降下、炎症時の発赤、毛細血管透過性亢進による浮腫の発生、分泌腺の機能亢進などを生じる場合があります。

ヒスタミンの性質

ヒスタミンの融点は83〜84°C、沸点は380.29°Cです。ヒスタミンの塩酸塩やリン酸塩は吸湿性の白色結晶です。水やエタノールには容易に溶けますが、エーテルには溶解しません。

イミダゾール環の窒素原子のpKaは6.04、脂肪族アミノ基のpKaは9.75です。生理学的条件下で、脂肪族アミノ基はプロトン化されますが、イミダゾール環の窒素原子はプロトン化されません。したがって、通常ヒスタミンは、一価の陽イオンになります。

ヒトの血液のpHは7.35〜7.45で、わずかに塩基性であり、ヒトの血液中に存在するヒスタミンは主に脂肪族窒素だけプロトン化しています。

ヒスタミンの構造

ヒスタミンの構造

図2. ヒスタミンの構造

水溶液中でヒスタミンのイミダゾール環は、2種類の互変異性型として存在しています。窒素原子のいずれかがプロトン化されています。側鎖から遠い窒素原子はτ、側鎖に近い窒素原子はπと表され、Nπ-H-ヒスタミンよりもNτ-H-ヒスタミンの方が溶液中で安定です。

ヒスタミンはβ‐イミダゾールエチルアミンとも呼ばれ、モノアミン神経伝達物質 (英: monoamine neurotransmitter) です。モノアミン神経伝達物質とは、アミノ基を1つ有する神経伝達物質や神経修飾物質の総称で、アドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミン、ヒスタミン、セロトニンなども含まれます。

ヒスタミンのその他情報

1. ヒスタミンの合成

ヒスタミンの合成

図3. ヒスタミンの合成

チオシアン化カリウムを用いて、1,4-ジアミノ-2-ブタノンを環化させ、塩化鉄 (III) で処理すると、ヒスタミンを生成可能です。体内では、食品中に含まれるアミノ酸の1種であるヒスチジンに、ヒスタミン産生菌の酵素が作用して、ヒスタミンは合成されます。

ヒスタミンは主に肥満細胞に貯蔵され、刺激に応じて放出されてアレルギー反応を生じます。中枢では視床下部乳頭体にヒスタミンニューロンが集まっていて、脳内各部位に神経伝達物質として作用可能です。睡眠、覚醒、摂食調節などに関与しています。

2. ヒスタミンの毒性

ヒスタミンが細菌によって合成された食品が原因で、食中毒が起きます。血小板輸血後には、敗血性ショック症状も知られています。熟成チーズ、シイタケ、発酵食品、魚醤、ワイン、魚などの食品中に蓄積され、赤身魚や青身魚などはとくに食中毒の原因になりやすいです。

高濃度のヒスタミンを含む食品を食べた場合には、アレルギー様症状を呈すこともあり、口のまわりや耳たぶの紅潮のほか、頭痛やじんましんなどの症状が出ます。ただし通常、症状は1日以内に回復します。

ヒスタミンは調理による加熱では分解しません。蓄積によって味や臭いが変わらないため、汚染の有無の判断は困難です。予防策として、保存時に温度の管理や鮮度の確認などが重要です。高濃度のヒスタミンを含んだ食材を口にすると、唇や舌先に刺激を感じる場合もあり、その際には食べずに吐き出すことが望ましいです。

トリクロロシラン

トリクロロシランとは

トリクロロシランの基本情報

図1. トリクロロシランの基本情報

トリクロロシラン (英: Trichlorosilane) とは、化学式がHCl3Siで表される無機化合物です。

三塩化シラン、三塩化ケイ素、TCSなどとも呼ばれます。トリクロロシランは、純度が高い多結晶ケイ素 (英: Polysilicon) の原料に利用可能です。

三塩化シランは、労働安全衛生法で危険物・引火性の物に、毒物及び劇物取締法では劇物に該当します。また消防法では、第3類自然発火性物質及び禁水性物質、塩素化ケイ素化合物に該当します。

トリクロロシランの使用用途

トリクロロシランは、主に無機化学分野と有機化学分野で利用されています。無機材料化学の分野では半導体用高純度シリコンの原料に、有機材料化学の分野ではシランカップリング材料の原料に、極めて重要な役割を担っています。具体的には、ダイオードなどの個別素子やウエハーおよびシリコーン樹脂の製造に利用可能です。

その他の有機合成の分野でも、特殊有機シラン化合物の原料や還元剤としての用途が期待されています。 

トリクロロシランの性質

トリクロロシランの融点は-126.6°C、沸点は31.8°Cです。常温で無色透明で、刺激臭のある液体です。

可燃性が非常に高く、空気中で容易に発火します。数滴のトリクロロシランを中和する際には、NaOH (水酸化ナトリウム) またはNaHCO3 (炭酸水素ナトリウム) を使用可能です。

トリクロロシランの構造

トリクロロシランは、水素、塩素、ケイ素から構成される無機化合物です。中心のケイ素原子に1個の水素原子と3個の塩素原子が結合しており、正四面体型の構造を取っています。モル質量は135.45g/molで、密度は1.342kg/m3です。

トリクロロシランのその他情報

1. トリクロロシランの合成法

トリクロロシランの合成

図2. トリクロロシランの合成

工業的にトリクロロシランは、300°Cで塩化水素ガスをケイ素の粉末に吹き付けると得られます。この反応ではトリクロロシランとともに、水素が生じます。適切な設計の反応装置では、トリクロロシランの収率は80〜90%です。主な副生物として、H2SiCl2 (ジクロロシラン) 、SiCl4 (四塩化ケイ素)、Si2Cl6 (六塩化二ケイ素) が挙げられます。これら副生物から蒸留によって、トリクロロシランを取り出せます。

さらにこの逆反応で、高純度の単体ケイ素を生成可能です。

また副生物の四塩化ケイ素が水素やケイ素と反応しても、トリクロロシランが生じます。

2. トリクロロシランの反応

トリクロロシランの反応

図3. トリクロロシランの反応

トリクロロシランが空気中の水分と反応すると、腐食性のある塩化水素ガスが発生して、シリカが生成します。

安息香酸をトルエン誘導体に変換する際に、トリクロロシランを使用可能です。まずカルボン酸がトリクロロシリルベンジル化合物になり、続いて塩基によってベンジルシリル誘導体がトルエン誘導体に変換されます。

トリクロロシランのヒドロシリル化や類似の反応によって、有用な有機ケイ素化合物を合成可能です。具体例として、オクタデシルトリクロロシラン (英: octadecyltrichlorosilane)、パーフルオロオクチルトリクロロシラン (英: perfluoroctyltrichlorosilane)、パーフルオロデシルトリクロロシラン (英: perfluorodecyltrichlorosilane) などが挙げられます。

3. 原料としてのトリクロロシラン

トリクロロシランのヒドロシリル化や類似の反応で得られる有機ケイ素化合物は、表面科学やナノテクノロジーで自己組織化単分子膜を形成する際に使用可能です。フッ素を含んだ層は、表面エネルギーを減らして、付着を減少させるためです。

主にMEMS (英: Micro Electro Mechanical Systems) のコーティング、ナノインプリント・リソグラフィ (英: Nanoimprint Lithography) 用の微細加工スタンプ、射出成形 (英: Injection Molding) などに利用されています。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/10025-78-2.html
https://www.jstage.jst.go.jp/article/yukigoseikyokaishi1943/59/10/59_10_1005/_pdf

チオシアン酸アンモニウム

チオシアン酸アンモニウムとは

チオシアン酸アンモニウム (英: Ammonium thiocyanate) とは、無色または白色の無臭の潮解性のある結晶です。

化学式はNH4SCN、分子量は76.12、CAS登録番号は1762-95-4で表されるチオシアン酸のアンモニウム塩です。別名ロダン化アンモニウムとも呼ばれます。

チオシアン酸アンモニウムの使用用途

工業的には、主に繊維の染色や絹の強度改良など、繊維産業で多く利用されています。その他、薬品及び合成樹脂の原料、マッチ、写真用材料、殺虫剤、除草剤等に幅広く利用されています。

さらには、分析用試薬として銀、水銀 (Ag, Hg) 滴定における標準液として使用されます。チオシアン酸アンモニウムの水溶液はFe3+で血赤色に呈色するため、微量な鉄 (Fe) の比色分析にも用いられており、清涼飲料中の鉄含有量を決定するためにも使用できます。石炭を燃やした際に発生する気体から、硫黄を取り除く液体の主成分にもなっています。

チオシアン酸アンモニウムの性質

チオシアン酸アンモニウムの融点は149℃、沸点 (分解) は170℃、密度は1.305です。水に溶けやすく、水に溶かすと吸熱反応します。エタノールアセトンには溶けますが、クロロホルムには溶けません。チオシアン酸アンモニウム水溶液のpHは4.5~6.0で弱酸性を示します。

また、水酸化ナトリウム等の強塩基と混合するとアンモニアを発生します。加熱するとアンモニア、二酸化炭素硫化水素に分解されながら、チオ尿素を生成します。

チオシアン酸アンモニウムのその他情報

1. チオシアン酸アンモニウムの製法

製法は、二硫化炭素とアンモニア水との反応によって合成できます。ジチオカルバミン酸アンモニウムがこの反応の中間体として形成し、加熱するとチオシアン酸アンモニウムと硫化水素に分解します。

   CS2 + 2NH3(aq) → NH2C( = S)SNH4 → NH4SCN + H2S

2. チオシアン酸アンモニウムの反応

チオシアン酸アンモニウムは空気中で安定ですが、加熱するとチオ尿素に異性化します。化学式は下記の通りです。

    NH4SCN → NH2C( = S)NH2

200°Cまで加熱すると、乾燥粉末はアンモニア、硫化水素、二硫化炭素に分解し、チオシアン酸グアニジニウムの残留物が残ります。

チオシアン酸アンモニウムは弱酸性で、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ水溶液と反応して、水やアンモニアとともにチオシアン酸アニオンを形成し、チオシアン酸アニオンは、鉄塩と反応して深赤色のチオシアン酸第二鉄錯体を形成します (6SCN+Fe3+→[Fe(SCN)6]3-)。

また、銅や銀、亜鉛、鉛、水銀などの金属イオンと反応してチオシアン酸塩の沈殿物を形成し、有機溶媒で抽出できます。

3. 法規情報

毒物及び劇物取締法、消防法、化学物質排出把握管理促進法 (PRTR法) など、主要な法規制のいずれにも該当していません。ただし、水質汚濁防止法においては「有害物質」に指定されていますので、使用の際には注意が必要です。

4. 取扱いおよび保管上の注意

取扱い及び保管上の注意は、下記の通りです。

  • 容器を密栓し、乾燥した冷暗所に保管する。
  • 光により変質する恐れがあり、潮解性もあるため保管環境には注意する。
  • 屋外や換気の良い区域のみで使用する。
  • アルカリや強酸化剤との接触は避ける。
  • 分解すると一酸化炭素、二酸化炭素、窒素酸化物、硫黄酸化物を生じる恐れがあるので注意する。
  • 使用時は保護手袋、保護眼鏡、保護衣を着用する。
  • 取扱い後はよく手を洗浄する。
  • 皮膚に付着した場合は、石鹸と水で洗い流す。
  • 眼に入った場合は、水で数分間注意深く洗う。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/1762-95-4.html