ヘキセンとは
図1. 1-ヘキセンの基本情報
ヘキセンとは、分子式がC6H12で表されるアルケンです。
鎖の中の二重結合の配置や分岐によって、13種類の構造異性体が存在します。工業的に最も良く用いられる異性体は、α-オレフィンの1-ヘキセンです。
1-ヘキセンはα位に二重結合を有するため、反応性が高いです。化学的に有用なヘキセンの異性体であり、例えばポリエチレンを製造するために、共単量体 (コモノマー)として用いられています。消防法で1-ヘキセンは、「第4類危険物」と「第1石油類」に該当しています。
ヘキセンの使用用途
ヘキセンの異性体の中で、最も利用されているのは、1-ヘキセンです。1-ヘキセンはポリエチレンのモノマーの1つとして、使用可能です。高密度ポリエチレンに2〜4%、リニアポリエチレンに8〜10%含まれています。
また、1-ヘキセンは、ヒドロホルミル化するとアルデヒドになり、アルデヒドからエナント酸を得るために使用されます。ヘキセンの異性体である3,3-ジメチル-1-ブテンは、オクタン価が非常に高いです。
オクタン価とは、ガソリンでエンジン内の自己着火のしにくさやノッキングの起こりにくさを表す数値です。そのため、ノッキングが発生しにくく、ガソリンの添加剤に使用されています。そのほか、抗真菌薬に使われているテルビナフィンや合成ムスク系香料に用いられているトナリドを合成する際に、原料として3,3-ジメチル-1-ブテンを使用できます。
ヘキセンの性質
ヘキセンと構造が類似しているヘキサンは、飽和炭化水素であり、反応しにくいです。その一方で、ヘキセンは二重結合を持つため、臭素化や酸化を受けます。
1-ヘキセンの融点は-139.8°C、沸点は63°Cであり、密度は0.673g/cm3です。3,3-ジメチル-1-ブテンの沸点は41°C、引火点は-21℃です。
ヘキセンの構造
ヘキセンは、2個の炭素原子が二重結合で結ばれている構造を有する有機化合物です。分子量は84.1608です。
3,3-ジメチル-1-ブテンは、ネオヘキセンとも呼ばれます。タングステン触媒を用いて、イソブテンを接触させると合成可能です。
ヘキセンのその他情報
1. ヘキセンの直鎖アルケンの構造異性体
図2. ヘキセンの直鎖アルケンの構造異性体
ヘキセンには、二重結合の位置の違いによって、3種類の構造異性体が存在します。具体的には、1-ヘキセン、2-ヘキセン、3-ヘキセンです。
2-ヘキセンには幾何異性体が存在し、それぞれcis-2-ヘキセンとtrans-2-ヘキセンです。3-ヘキセンにも、幾何異性体であるcis-3-ヘキセンとtrans-3-ヘキセンがあります。
2. ヘキセンの分岐アルケンの構造異性体
図3. ヘキセンの分岐アルケンの構造異性体
分岐も考慮すると、ヘキセンには合計13種類の構造異性体が存在します。主鎖の炭素原子の数が5のヘキセンの構造異性体には、2-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、2-メチル-2-ペンテン、3-メチル-2-ペンテン、4-メチル-2-ペンテンがあります。
主鎖の炭素原子の数が4、側鎖の数が1つのヘキセンの構造異性体は、2-エチル-1-ブテンのみです。主鎖の炭素原子の数が4、側鎖の数が2つのヘキセンの構造異性体には、2,3-ジメチル-1-ブテン、3,3-ジメチル-1-ブテン、2,3-ジメチル-2-ブテンが存在します。
3. ヘキセンの幾何異性体
ヘキセンの分岐アルケンの異性体の1つである3-メチル-2-ペンテンには、幾何異性体が存在します。それぞれcis-3-メチル-2-ペンテンとtrans-3-メチル-2-ペンテンです。4-メチル-2-ペンテンにも、幾何異性体であるcis-4-メチル-2-ペンテンとtrans-4-メチル-2-ペンテンがあります。
4. ヘキセンの光学異性体
ヘキセンの分岐アルケンの異性体の1つである3-メチル-1-ペンテンには、光学異性体が存在します。それぞれ(R)-3-メチル-1-ペンテンと(S)-3-メチル-1-ペンテンです。