ヒスタミン

ヒスタミンとは

ヒスタミンの基本情報

図1. ヒスタミンの基本情報

ヒスタミンとは、分子式がC5H9N3と表され、分子量が111.14の活性アミンです。

1910年にヘンリー・ハレット・デール (英: Henry Hallett Dale) とパトリック・プレイフェア・レイドロー (英: Patrick Playfair Laidlaw) が、麦角抽出物中に血圧降下物質として発見しました。

ヒスタミンは食物により直接体内へ取り込まれる以外にも、生体内で合成されています。免疫反応の異常により起きる食物アレルギーに、ヒスタミン食中毒の症状は似ていますが、発症の機構が異なります。

ヒスタミンの使用用途

ヒスタミンは、胃液分泌機能の検査やクロム親和細胞腫の検査に利用可能です。ただし、薬理作用としてヒスタミンは、平滑筋の収縮、細動脈の拡張による急激な血圧降下、炎症時の発赤、毛細血管透過性亢進による浮腫の発生、分泌腺の機能亢進などを生じる場合があります。

ヒスタミンの性質

ヒスタミンの融点は83〜84°C、沸点は380.29°Cです。ヒスタミンの塩酸塩やリン酸塩は吸湿性の白色結晶です。水やエタノールには容易に溶けますが、エーテルには溶解しません。

イミダゾール環の窒素原子のpKaは6.04、脂肪族アミノ基のpKaは9.75です。生理学的条件下で、脂肪族アミノ基はプロトン化されますが、イミダゾール環の窒素原子はプロトン化されません。したがって、通常ヒスタミンは、一価の陽イオンになります。

ヒトの血液のpHは7.35〜7.45で、わずかに塩基性であり、ヒトの血液中に存在するヒスタミンは主に脂肪族窒素だけプロトン化しています。

ヒスタミンの構造

ヒスタミンの構造

図2. ヒスタミンの構造

水溶液中でヒスタミンのイミダゾール環は、2種類の互変異性型として存在しています。窒素原子のいずれかがプロトン化されています。側鎖から遠い窒素原子はτ、側鎖に近い窒素原子はπと表され、Nπ-H-ヒスタミンよりもNτ-H-ヒスタミンの方が溶液中で安定です。

ヒスタミンはβ‐イミダゾールエチルアミンとも呼ばれ、モノアミン神経伝達物質 (英: monoamine neurotransmitter) です。モノアミン神経伝達物質とは、アミノ基を1つ有する神経伝達物質や神経修飾物質の総称で、アドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミン、ヒスタミン、セロトニンなども含まれます。

ヒスタミンのその他情報

1. ヒスタミンの合成

ヒスタミンの合成

図3. ヒスタミンの合成

チオシアン化カリウムを用いて、1,4-ジアミノ-2-ブタノンを環化させ、塩化鉄 (III) で処理すると、ヒスタミンを生成可能です。体内では、食品中に含まれるアミノ酸の1種であるヒスチジンに、ヒスタミン産生菌の酵素が作用して、ヒスタミンは合成されます。

ヒスタミンは主に肥満細胞に貯蔵され、刺激に応じて放出されてアレルギー反応を生じます。中枢では視床下部乳頭体にヒスタミンニューロンが集まっていて、脳内各部位に神経伝達物質として作用可能です。睡眠、覚醒、摂食調節などに関与しています。

2. ヒスタミンの毒性

ヒスタミンが細菌によって合成された食品が原因で、食中毒が起きます。血小板輸血後には、敗血性ショック症状も知られています。熟成チーズ、シイタケ、発酵食品、魚醤、ワイン、魚などの食品中に蓄積され、赤身魚や青身魚などはとくに食中毒の原因になりやすいです。

高濃度のヒスタミンを含む食品を食べた場合には、アレルギー様症状を呈すこともあり、口のまわりや耳たぶの紅潮のほか、頭痛やじんましんなどの症状が出ます。ただし通常、症状は1日以内に回復します。

ヒスタミンは調理による加熱では分解しません。蓄積によって味や臭いが変わらないため、汚染の有無の判断は困難です。予防策として、保存時に温度の管理や鮮度の確認などが重要です。高濃度のヒスタミンを含んだ食材を口にすると、唇や舌先に刺激を感じる場合もあり、その際には食べずに吐き出すことが望ましいです。

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