パワーMOSFET

パワーMOSFETとはパワーMOSFET

パワーMOSFETは、大出力用途に対応したMOSFETデバイスの総称です。MOSFETはゲート端子に電圧を印加しドレインとソースをONさせ、増幅出力を得ることが出来る電界効果トランジスタ(FET)であり、MOSは「Metal Oxide Silicon」の頭文字をとっています。

昔は、スイッチング素子といえば、ベースとコレクタとエミッタ端子を備えたバイポーラトランジスタが主力でしたが、それに比較して、MOSFETはスイッチング速度が速く、低圧でオン抵抗が小さいので低損失な動作が可能です。

パワーMOSFETの使用用途

パワーMOSFETの使用用途としては、従来、パワートランジスタにバイポーラを使用している回路において、その代替えとして使用することが可能です。特に、パワーMOSFETは、バイポーラ型のパワートランジスタに比べて、スイッチング損失が低減できます。

それまでMOSFETの課題であったオン抵抗の高さや耐圧の低さと大電力への応用困難と言う問題に関して、昨今のプレーナゲート型の二重拡散構造やトレンチゲート構造、更にはスーパージャンクション構造と言った技術革新により、全て課題はクリアされて、現在ではパワートランジスタの世界において、MOSFETが主力になっています。

パワーMOSFETの原理

パワーMOSFETは、その原理上、多数キヤリア(n型では電子、p型では正孔)のみで動作します。よって、従来パワートランジスタとして主力であったバイポーラ型の様な少数キヤリアの影響はなく、根本的には、接合型FET以上の高い入力インピーダンスを持っているので、最近のMOSFETは、従来に比べて壊れにくくなっています。

また、パワーMOSFETは、ゲート構造とドリフト層の構造によって大別することが可能で、近年主流の3大構造を以下に説明します。

1. D-MOS Double-Diffused MOSFET構造

これは二重拡散によるチャネル形成で高耐圧を得る構造で、高集積化と低オン抵抗と低損失の高性能パワーMOSFETを実現しました。具体的にはNチャネルMOSFETの場合、N基板エピタキシャル層上に低濃度p型層と高濃度n型層を二重拡散で形成しています。PチャネルMOSFETもありますが、正孔の移動度が電子に比べて小さいために、オン抵抗は大きく特性は劣化方向です。

2. トレンチゲート構造

これはゲートをU溝にして、チャネルを縦方向に形成することで高集積化を実現し、更なる低オン抵抗を図りました。ただし、この構造は低耐圧パワーMOSFETとしての使用となります。単位セル面積をゲートのU溝化で縮小するのが特徴です。

3. スーパージャンクション構造

現在は基板材料の変更を除くと、これが最も優秀なパワーMOSFETです。ドリフト層にスーパージャンクションと呼ばれる周期的な縦型構造のp/n構造を形成させて、従来のパワーMOSFETのシリコン限界を下回る超低オン抵抗を実現しています。

パワーMOSFETのその他情報

パワーMOSFETの市場での使用範囲

パワーMOSFETは低コストかつ高信頼性のシリコン基板で比較的安価に大パワー電源用途に用いられていますが、数KVAを扱う大電力電源用途になると、オン抵抗が数オームに増加するために、損失が著しく増加し使える領域からは外れていきます。

この領域で現在主に用いられている半導体デバイスは、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)もしくはSiCパワーMOSFETです。IGBTはMOSFETの大電流領域のオン抵抗の増加分を抑制するため、バイポーラトランジスタと組み合わせたデバイス構造の工夫が施されています。

SiCパワーMOSFETは基板材料にSiC化合物半導体というワイドバンドギャップの結晶を用い、耐圧を飛躍的に改善させている点に大きな特徴があるデバイスです。IGBTは数10Kから数100KVAという大電力で数10KHzの比較的低周波の電源用途に、SiCパワーMOSFETは大電力かつ数100KHzという高速スイッチング電源用途に使われています。

IGBTはデバイス構造上高速スイッチング電源には不向きであり、SiCパワーMOSFETはSiC基板コストが(ウエハサイズの制約などもあり)比較的高いため、このようなすみ分けがなされているのです。とはいえ、比較的安価で使いやすいシリコン基板でのパワーMOSFETは、置き換えるメリットのある新規デバイスが出現しない限りは、今後も中低パワー領域では特性やコスト面の改善を図りつつ、使われ続けるでしょう。

参考文献
https://ednjapan.com/edn/articles/1003/03/news115.html
https://www.fujielectric.co.jp/products/semiconductor/model/powermosfets/

マシンリーマ

マシンリーマとは

マシンリーマとは、穴仕上げ加工に使用される工作機械のリーマの1種です。

手仕上げに用いる「ハンドリーマ」とは異なり、マシンリーマは機械に取り付けて使用します。柄の部分 (シャンク) は、機械に刃物を固定する道具 (チャック) に取り付けられるように、ストレート形やテーパー形に設計されている点が特徴です。

刃物の形状は、直刃で構成されています。刃部では、刃先を用いて穴を切削する作業が行われます。また、刃の後ろにある「バニシング部」は、表面の凹凸を押しつぶしながら滑らかに仕上げる役割を担っているため、精密な穴仕上げ加工が可能です。マシンリーマは、その高い効率と正確さから、工業分野で広く利用されています。

マシンリーマの使用用途

マシンリーマは、高い精度の穴仕上げ加工に適した工具として、さまざまな用途で使用されています。リーマの基本的な役割は、ドリルで穴あけした後、穴の精度を高める仕上げ作業を行うことです。

マシンリーマを用いることで、ドリルやエンドミルでは得られない高い真円度と面粗さが実現可能です。また、規格が厳密な内径寸法も出すこともできます。そのため、金型の位置決めピンを挿入する穴や、エンジン部品のシャフトなどの摺動部品の加工、そしてノズルのような噴射口の加工に適しています。

リーマはドリルの下穴に従って加工するため、適切な下穴径の選択が重要です。適切な下穴径を選ぶことにより、マシンリーマを効果的に活用し、高精度な穴仕上げ加工を実現することが可能です。マシンリーマは、その特性を活かし、工業分野で幅広く利用されています。

マシンリーマの原理

マシンリーマは、高い穴精度を実現するための原理が備わっています。刃先で穴を加工しながら、バニシング部で穴を整える仕組みにより、精密な穴仕上げ加工が可能です。ただし、リーマ単体では穴あけをすることはできず、下穴が小さいと切りくずが刃物に詰まって加工が不可能になります。

適切な下穴寸法を選ぶことが重要です。リーマ仕上げギリギリの寸法で下穴をあけると、ドリル加工時にできたむしれや傷が消えず、面粗さが良くないままになってしまいます。また、楕円状の穴の修正も難しくなります。通常、下穴加工は仕上げ寸法の0.2〜1.0mmほど小さく加工することが一般的です。

機械で加工するリーマとして、「ブローチリーマ」が挙げられます。マシンリーマと同じ用途で、使い方も変わりませんが、ブローチリーマは直刃ではなく、ねじれた刃を持つ形状が特徴です。切りくずが前方に放出されるため、貫通穴の仕上げに適しています。

また、ねじれ形状により切りくずが詰まりにくく、良好な面粗度で加工できますが、やや高価であることがデメリットです。マシンリーマとブローチリーマは、それぞれの特徴を活かして適切な用途で使い分けることが重要です。

マシンリーマの種類

マシンリーマは、さまざまな工作機械において高精度な穴仕上げ加工を行うために使用される工具です。用途に応じてストレートリーマ、テーパーリーマ、ブローチリーマを使い分ける必要があります。

1. ストレートリーマ

ストレートリーマは、シャンク部分がストレート形状になっているマシンリーマです。一般的な穴仕上げ加工に広く使われており、取り付けや取り外しが容易であることが特徴です。刃先は直刃で、刃数が多いことから、穴の面粗さが良くなります。

2. テーパーリーマ

テーパーリーマは、シャンク部分がテーパー形状になっているマシンリーマです。テーパー穴を仕上げる際に使用されます。テーパー穴は、部品の位置決めや固定に使われることが多く、精度が求められる場合が多いため、テーパーリーマが適しています。

3. ブローチリーマ

ブローチリーマは、刃がねじれた形状を持つマシンリーマです。切りくずが前方に放出されるため、貫通穴の仕上げに適しています。また、ねじれ形状により切りくずが詰まりにくく、良好な面粗度で加工できます。ただし、高価であることがデメリットです。

マグネットリフター

マグネットリフターとはマグネットリフター

マグネットリフターとは、金属製の製品や材料、スクラップなどを吊り上げ、搬送するために使われる強力な電磁石です。

永磁タイプや電磁タイプ、バッテリータイプなどがあり、用途に合わせて様々なタイプを選択できますので、鉄を取り扱う各工場や製鉄所をはじめ、ショベルカーに取り付けたり、水中でも使えるタイプもあるため、リサイクル工場において欠かすことの出来ない搬送機器です。

略して「リフマ」や「リフマグ」と呼ばれることも多いです。

マグネットリフターの使用用途

製鉄所においては、主に鋼板、プレス製品の吊り上げ搬送、リサイクル工場においては金属スクラップや、工作機械から排出された切りくずの吊り上げ搬送に使われています。

マグネットの種類により、吊り上げ能力(何kgまで吊れるか)が異なり、吊り上げることが出来るサイズや材質が大幅に変わります。

マグネットや材料にゴミや粉塵が付いていても吸着力は変わりますので、安全に使用するには、用途に合ったマグネットを選定する必要があります。

マグネットリフターの原理

マグネットリフターには様々な種類があり、主に電源不要な永磁タイプ、磁力を変更できる電磁タイプ、脱着の時のみ電磁力を使う永電磁タイプ、コードレスを可能にしたバッテリータイプの4種類があります。

永磁タイプは、小型ながらも高い磁力を持ち、電源不要なため吊り上げ途中に停電しても落ちないので、安全です。しかし、手動で磁力のON/OFFを切り替えるため、遠隔での操作ができません。

電磁タイプは、磁力を変更することができますので、決められた鉄板の枚数分だけ搬送することができます。また、遠隔での磁力切り替えができますので、離れた場所でも操作できます。デメリットは、消費電力が大きい、停電時に落下する恐れがあることです。

2つの特性を組み合わせた永電磁タイプは、脱着のみ通電するので、吸い付けた後は永磁石で固定されます。なので、吊り上げた後に停電したとしても、落下の恐れはありませんし、消費電力も抑えることができます。

バッテリータイプは、ワイヤレスなので機動性に優れ、断線の心配がないことが挙げられます。

参考文献
https://jp.misumi-ec.com/tech-info/categories/technical_data/td06/x0053.html

ボタンダイ

ボタンダイとは

ボタンダイ (英: button die) とは、金型の下型ダイプレートに入れ子として使う部品です。

ボタンダイはボタンダイス、ねじ切り調整丸ダイス、丸割駒、調整丸ダイスとも呼ばれます。通常は、下型ダイプレートを使用し、メンテナンスでプレートの表面を研磨可能です。そのためプレートの厚みが薄くなり、下型ダイプレートの取り外しなどの手間がかかります。しかし、ボタンダイは入れ子式のため、ボタンダイのみを取り外し可能です。研磨や交換が可能なため、長期的に使えます。

ボタンダイの使用用途

ボタンダイは焼き入れしないダイプレートに、入れ子として組み込んで用います。金型を容易に製作したり、金型をメンテナンスしたり、長期的に使えます。ハサミで刃に当たる部分であり、ボタンダイのみでは機能せず、刃の相方となるパンチも必要です。ボタンダイが下側の刃で、パンチが上側の刃となって穴加工ができます。

穴加工を繰り返すと刃が摩耗するため、研磨が必要です。下型ダイからボタンダイを取り外して研磨でき、下型ダイにはめ込むと再度使用できます。

ボタンダイの原理

ボタンダイは刃にあたる部分であり、摩耗対策として焼き入れが必要です。ただし下型ダイは、焼き入れをしなくても問題ありません。

パンチが入ることで加工可能です。加工の際に穴詰まり対策として、切断した屑が下に落ちるように貫通させる必要があります。穴詰まり対策を行わないと、パンチが折れ製品を傷つける可能性があります。また、加工した残り屑がボタンダイの表面から飛び出すこともあり、その状態で加工すると製品に打痕が残るため注意が必要です。

ボタンダイの構造

ボタンダイの穴は逃がし部とランド部からなり、断面には3種類あります。材料の通過を考えて、ランド部がテーパーを有するボタンダイもあります。ただし再研磨の際に、穴が徐々に大きくなることが欠点です。

再研磨で必要となる箇所をストレートにして、再研磨で穴の寸法が変わらないようにしたボタンダイもあります。その一方で、ランド部の下部を大きく逃がさずに、ストレートのランド部を下部のテーパーで逃がしたボタンダイは、アンギュラーボタンダイ (英: Angular Button Dies) と呼ばれています。かす詰まりを考慮し、小径穴の抜きに使用しやすいです。

ボタンダイの種類

ストレートなタイプのボタンダイは、軽くプレートに圧入して使います。組込導入部が部品に付いており、組み込みは容易です。標準的なボタンダイはつば付きです。ボタンダイの材質には、粉末ハイス、超硬合金、SKD11、SKH51などが使用されています。

ボタンダイの刃先形状にも複数の種類があります。穴に方向性があるタイプには、回り止めが必要です。寸法と回り止めの作り方は、細かく設定できます。断面も変更可能で、加工する材質や板厚に合わせます。

つばがないボタンダイでは、裏に研磨分のスペーサを敷いて対応可能です。それに対して、つば付きのボタンダイでは、スペーサをつば上に入れる必要があります。再研磨でスペーサは増加しますが、数が多くなり過ぎないように、スペーサの厚さを変えます。

ボタンダイの選び方

ボタンダイの金型は切れ刃の痛みとともに、再研磨によって切れ刃を再生可能です。金型の再研磨の方法は、プレート全体の研磨と入れ子部品のみの研摩から選択します。

プレート全体の研磨では、プレートが薄くなりますが、入れ子部品も同じように変化するため問題ありません。その一方で、入れ子のみの研摩では、研磨分の調整が必要です。適切な調整ができないと、凸凹がプレート面に生じ、品質が悪くなります。

L寸法が穴径に対して長いと、詰まりやすいです。小径穴の場合には、短い方が適しています。加工によってプレートが厚くなって、穴径に対してL寸法が長くなる場合もあります。バランスの悪いときには、ボタンダイの後部にカラーを入れて、長さを調節可能です。

参考文献
https://jp.misumi-ec.com/tech-info/categories/press_mold_design/pr04/c0128.html

インチねじ

インチねじとは

インチねじ

インチねじとは、ねじの基本となる寸法がインチ単位で規格化されたねじのことです。

日本で広く普及しているねじはメートルねじで、基本となる寸法はメートル単位で規格化されています。インチねじはアメリカ、イギリス、カナダで広く使われています。

インチねじの使用用途

インチねじは主に以下の用途で使われています。

  • 土木建築: 電気、水道、空調機器、配管
  • PC関連: ハードディスク、筐体ケース
  • 精密機器: カメラ
  • 音楽機器: ドラム、スピーカー

その他、航空機や輸入家具にも使用されています。

インチねじの原理

インチねじの原理は、通常のねじの原理と同じです。ねじの斜面を使って重たいものを持ち上げることによって、ねじ本体を引っ張り、大きな締結力つまり軸力を発生させます。ねじを締め付けても弛まないのは、ねじの斜面に摩擦力があるためです。重力の斜面成分の分力よりも摩擦力が大きいことによって、弛まずに締結力が保持されます。

インチねじの種類

インチねじは、「ユニファイねじ」と「ウィットねじ」に大別されます。

1. ユニファイねじ

ユニファイねじは、アメリカのANSI (アメリカ国家規格協会) によって定められた規格です。ユニファイねじにはさらに2種類あります。「ユニファイ並目ねじ」と「ユニファイ細目ねじ」です。細目ねじは並目ねじよりも、ねじ山の間隔 (ねじピッチ) を小さくしたねじです。ピッチが細かいほうが緩みにくい性質がありますが、締結時に多く回さなければならないので、作業性は低下します。並目と細目の2種類があるのは、メートルねじでも同じです。

2. ウィットねじ

ユニファイねじ以外のインチねじとして、ウィットねじがあります。ウィットねじは世界で初めて規格化されたねじとして知られています。メートルねじやユニファイねじのねじ山角度が60°であるのに対して、ウィットねじは55°で定められています。日本では1968年にウィットねじを規格化したJISが廃止されましたが、一部の業界ではまだ使用されています。 

インチねじのその他情報

1. 取扱上の注意

インチねじでも取扱上で注意すべき点はメートルねじと変わりません。ただし、インチねじのねじ穴に、メートルねじを使ってしまうなどという誤使用を避けるように気を付ける必要があります。ねじだけを見ても、メートルねじなのかインチねじなのかを見分けるのは困難です。

ノギスなどを用いてねじの外径やピッチを測る必要があります。規格がわからないねじ穴にねじを締め付ける際に異変を感じたら、無理に作業せずねじのサイズを測ることを推奨します。

2. インチねじの表記

インチねじであるユニファイねじは、ねじの太さ (呼び) や長さを、1インチを8等分を基準にした分数で表記します。この分数について日本では、以下の例のように呼ばれています。

  • 1/8: いちぶ (一分)
  • 5/32: さんにのご
  • 3/16: いちぶごりん (一分五厘)
  • 1/4: にぶ (二分)

また、並目ねじは略号UNC、細目ねじは略号UNFが付けられています。インチねじの表記はこれらの分数や規格を用いて、①ねじの呼び (太さ) 、②ねじの山の数、③規格、 ④長さの順に記します。例としては以下のようになります。

1/4-25UNCx5/8

もう一つのウィットねじはWをつけて表記します。

参考文献
https://www.onoue1950.co.jp/nejichishiki/kikaku/3191/
https://www.tsurugacorp.co.jp/dictionary/inch/inch_screw.html
https://www.rakuten.ne.jp/gold/nejiya/chiebukuro/info_inchikikaku.html
https://www.tsurugacorp.co.jp/special/inchkoneji.html

モーノポンプ

モーノポンプとはモーノポンプ

モーノポンプとは、容積形ポンプの中の回転式ポンプに分類されるポンプです。

さまざまな液体を傷めずに移送できる点が最大の特徴です。モーノポンプを使用することによって、無脈動、定量移送も実現できます。

モーノポンプの使用用途

モーノポンプは低粘度から超高粘度の液体まで移送することができるため、化学工業から食品工業まで幅広く使用されています。また、モーノポンプは固形物が入った液体や固体の二相流体、気相も含む混相流体までも移送することが可能な唯一のポンプです。具体的な使用用途は、以下の通りです。

1. 単相流体

各種薬品、溶融樹脂、樹脂溶液、接着剤など

2. 二相流体

各種スラリー、食品類、塗料、ホイップクリームなど

3. 混相流体

脱水ケーキ、海底原油、工事現場の地盤改良をする際のグラウト (注入材) の輸送、泡を含む液状物など

モーノポンプの原理

モーノポンプのは、雄ねじに相当する金属製のローターと、雌ねじに相当する弾性材質製のステーターから構成されています。ローターはねじのようにねじりまがった構造となっており、これがステーターの中で回転することにより、定量で液体などを送液することが可能です。

ローターをステーターに装着すると、両者の間の接線によって密閉されたらせん状の空間ができます。ローターを回転させるとステーター内を回転しながら往復運動し、空間容積に充満された液体はピストン運動により吸込側から吐出側に移送されます。

吐出量は回転数により変化するので、回転数を変更するだけで簡単に吐出量を変更することが可能です。また、ローターとステーターの長さを変えることで吐出圧力が変化するので、高圧で吐出する必要がある場合は、長さによる制約がなければ、長いローター、ステーターを使用することで実現できます。

モーノポンプの大きな欠点は、ローターとステーターが常に接しており摩耗しやすいことです。そのため、ドライ運転を実施してしまうと簡単にローターが損傷してしまうことがあります。特にローターが損傷して送液する液体などと一緒に排出されてしまうと、食品業界などでは異物混入で大きな問題につながってしまう可能性が高いです。

モーノポンプの選び方

モーノポンプを選定する際は、使用する用途に応じて選択する必要があります。確認するべきポイントは、以下の通りです。

1. 吐出量

吐出量はローター形状、ローター径により変わります。またローター回転数によっても変えることができますが、常に高回転で運転すると摩耗による劣化や、液体の粘度による制約を受けるため、使用吐出量に応じた機種の選定が必要です。

2. 液性状

吐出量に影響するローター回転数に許容される値は、移送する液体の性状 (粘度、摩耗性) に大きく関係します。粘度は高くなるほど、許容回転速度が小さくなります。液体しか含まない単相流体は摩耗性が低いため高回転で使用できますが、硬度の高い固体粒子などを含む二相、混相流体の場合は使用できる回転数が小さくなります。

3. 液体種類

ステーターの部分は弾性材料が使用されますが、これらは各種ゴムおよび樹脂製の材料が使われています。送液する流体に含まれる物質に対する耐性に応じて選定する必要があります。選択を間違えるとステーターが破損、溶解するといった致命的な不具合が発生するため重要な項目です。

4. 吐出圧力

吐出圧力はローター・ステーターの長さ、すなわち段数 (らせんの数) に比例します。高圧で吐出したい場合は、装置の長さを長くする必要があるため、スペース面での制約を受けやすくなります。

モーノポンプのその他情報

モーノポンプのメンテナンス

モーノポンプを稼働していると、ローターとステーターの摩耗による交換が必要です。寿命は使用環境や流体など各機器の仕様によって左右されます。多くのモーノポンプではローターよりもステーターのほうが柔らかい材質を使用しているため、ステーター側の交換が主となります。

軸封部にはメカニカルシールが採用されることが多く、メカニカルシールもメンテナンス対象となります。メカニカルシールに不具合があると、使用流体が外側へ漏れ出すことになるため、流量減少や危険物の漏洩などにつながります。整備周期をあらかじめ決めておき、定期交換をすることが大切です。

各可動部にはゴム製のパッキンが取り付けられています。パッキン類は摩耗しますのでこちらも周期的な整備対象となります。使用流体が固着性を持つものであったり、スラリーなどであったりすると、可動部に潜り込み円滑な動きを阻害する可能性も考えられます。可動部は可能な限り水洗し、きれいな状態で使用することが重要です。

参考文献
http://www.mohno-pump.co.jp/about/construction.html
http://www.mohno-pump.co.jp/learning/manabiya/b1a.html?time=1907&site=01&code=01&article=01
http://www.mitukura.net/japan/value/motor/1238.html

リリーフ弁

リリーフ弁とは

リリーフ弁

リリーフ弁は配管やタンク内部の圧力が異常に高まった際に、自動で開いて圧力を放出する弁となります。

ボイラーや圧縮機などは気体を圧縮するなどで高圧の気体を生成するなどしますが、これらは非常に大きな危険を伴います。

もし、タンクの設計圧力以上の圧力が発生してタンクが破裂すると大きな事故につながります。このようなところにリリーフ弁は使用され、大きな事故が発生する前に圧力を放出します。

その他にも、容積式ポンプの出口などにも取り付けられます。

リリーフ弁の使用用途

リリーフ弁は大きな圧力を保持するタンクに備え付けられます。特に第一種圧力容器や第二種圧力容器と呼ばれる圧力容器には、法律で必ず設置するように決められています。

このような圧力容器では万が一設計圧力以上に加圧されてタンクが破裂すると大きな事故につながります。

また、それ以外でも容積式ポンプの出口にも使用されます。

容積式ポンプではその構造上出口側が閉塞していると圧力が上昇します。そのような場合ポンプの故障を避けるためにもリリーフ弁が取り付けられます。

リリーフ弁の原理

リリーフ弁自体の構造は非常に単純でバルブの開閉をスプリングで制御しているだけとなります。そのスプリングの強さで圧力を決定することができます。

しかし、大体のリリーフ弁では減圧弁のようにセットハンドルを回転させることで、リリーフ弁が開くときの圧力を調整することが可能です。

しかし、注意点としてはリリーフ弁はほとんどあくことがありません。ですが万が一の時に明かないと危険な状態になるので毎年既定の圧力で開するかをチェックする必要があります。また、一度開いたリリーフ弁も正常に閉まらなかったり、開する圧力が若干低くなったりする可能性があるので、一度作動したリリーフ弁は同様に検査する必要があります。

そのため、リリーフ弁を検査時には当該設備が使えなくなりますが、それが嫌だからと言ってリリーフ弁1次側に手動弁などを入れるのは絶対にやめましょう。開けるのを忘れてリリーフ弁を取り付けると、リリーフ弁の意味がなくなり大きな事故につながります。

実際に過去、手動弁を閉めていたことが原因で大きな事故が発生しています。

参考文献
https://www.tacmina.co.jp/library/glossary/relief_valve/
https://www.sankyo-s-s.co.jp/technology/006.html

小型ACモーター

小型ACモータとは

小型ACモータとは、交流電源 (AC電源) を使用して動作する小型の電動モーターのことです。

ACモーターは電気エネルギーを機械的な回転エネルギーに変換するデバイスであり、多くの家電製品や産業用機械などで使用されています。小型ACモーターは非常にコンパクトなサイズです。したがって、限られたスペースや小型機器に組み込むことが容易です。

さらに、適切なメンテナンスが行われれば、小型ACモーターは長期間にわたって安定して動作し続けることができます。また、一般的に比較的低いコストで入手可能です。そのため、製品の費用を抑えることができます。近年の小型ACモーターは効率も高く、エネルギー消費も最小限に抑えることが可能です。

ただし、小型ACモーターは一般的に低出力であるため、過負荷がかかると故障する可能性があります。適切な保護回路を備えるか、過負荷を避ける設計を行う必要があります。

小型ACモータの使用用途

小型ACモーターは、そのコンパクトなサイズと簡単な制御性からさまざまな用途で使用されます。以下は小型ACモーターの主な使用用途の一例です。

1. 家電製品

さまざまな家電製品に対して、小型ACモーターが使用されます。小型冷蔵庫の圧縮機・ファンや小型扇風機などがその一例です。

また、電動歯ブラシはブラシの振動によって歯の清掃を助けるために小型ACモーターを使用します。電動シェーバーは刃の振動や回転によって剃刀を駆動するため用途の1つです。

2. 電動工具

電動ドリルは、モーターを回転させることによってドリルビットを駆動する工具です。小型ACモーターは高速で回転するため、電動ドリルの効率的な穴あけのために使用されます。

また、電動のこぎりは小型ACモーターを搭載し、ブレードを振動させることで素早く切断することができる工具です。サンダーに小型ACモーターを用いることで、研磨紙を振動させて表面を研磨することができます。

3. OA機器

プリンターにおいて、小型ACモーターは用紙の給紙やプリントヘッドの移動に使用されることも多いです。これにより、プリンターの正確な動作をサポートします。また、スキャナーのスキャンヘッドの動きや用紙の送り出しに利用されます。

小型ACモータの原理

小型ACモーターは、電気エネルギーを機械的な回転エネルギーに変換するデバイスです。一般的な小型ACモーターの原理は、電磁誘導と相互作用する磁場によって成り立っています。誘導電動機と呼ばれる種類のモーターが使用されることが多く、主要な構成要素は回転子と固定子です。

1. 回転子

回転子は、主に導体で構成されるモーターの回転部分です。通常は回転子に巻線が巻かれていますが、小型ACモーターではアルミニウムや銅などの導電性素材で構成された短絡リングの使用が一般的です。この短絡リングにより、回転子に電流が誘導されます。

2. 固定子

固定子は、回転子の周りに巻かれたコイルで構成されるモーターの静止部分です。これらのコイルは交流電源によって供給される電流により、磁場を生成します。

小型ACモーターの選び方

小型ACモーターを選ぶ際には、以下の要素を考慮します。これらの要素を検討して、具体的な用途に適したモーターを選ぶことが大切です。

1. 電源仕様

モーターの動作に必要な電源仕様を確認します。主な要素として、電圧、周波数、相数があります。使用する電源に適したモーターを選ぶことが必要です。

2. 出力

モーターの出力は、モーターが提供する機械的な動力の強さを示します。使用する機器や装置に合った適切な出力を選びます。単位はワット(W)を使用される場合が一般的です。

3. 回転数

モーターの回転数は、モーターが1分間に何回転するかを示す指標です。使用する応用用途に合わせて適切な回転数を選びます。

4. サイズと重量

小型ACモーターのサイズと重量は、モーターの用途や設置スペース、動作要件に合わせて重要な要素となります。一般的にモーターのサイズが小さいほど、設置場所や機器内部への組み込みが容易です。

モーターを設置するスペースが限られている場合、コンパクトなサイズのモーターを選ぶことが重要です。

参考文献
https://www.orientalmotor.co.jp/tech/webseminar/ac_kiso_1_4/
https://www.orientalmotor.co.jp/om/knowledge/uroko_ac/index.html
https://www.orientalmotor.co.jp/tech/reference/ac_motor01/
https://www.orientalmotor.co.jp/products/speed_control/overview_2/

インボリュートスプライン

インボリュートスプラインとは

インボリュートスプラインとは、インボリュート曲線を用いて歯形が形成されている要素のことを指します。一般的なキー溝を利用したものよりも精度が良く、より大きなトルク伝達が可能です。

スプラインとは、外歯・内歯が切られた構造物同士を嚙み合わせることで動力伝達を行う締結要素です。外歯同士を嚙み合わせるギア(平歯車)と根本的な原理は変わりません。

日本では、インボリュートスプラインはJISによって規格化されています。機械装置への組付けを検討する際は、必ずJIS規格に準じたものかどうかを確認する必要があります。

インボリュートスプラインの使用用途

ここでは、インボリュートスプラインの使用用途について説明していきます。

角形スプラインやセレーションなどといった他のスプラインと比較すると、製造方法が容易で精度が良いことから、数多くの機械装置に利用されています。

例えば、自動車やバイクなどの変速装置において、歯車を軸に沿ってスライドし、変速させる用途などに利用されています。

一方で、インボリュートスプラインを削りだしで加工するには、一定の高さの歯たけが必要になるため、細軸や薄肉の軸には適していません。このような場合には、セレーションタイプを使用することで、安定した回転を実現させることが出来るようになります。

インボリュートスプラインの原理

ここでは、インボリュートスプラインの原理について説明していきます。

特徴的な歯形の形状は、「インボリュート曲線」と言われる特殊な曲線を描くことで形成されます。描き方は次のような手順になります。

円筒の外周に糸を巻き、その糸の先に鉛筆を取り付けます。糸をピンと張った状態からほどいていき、この時の軌跡を鉛筆で描いていきます。これを繰り返すことで出来た曲線が、「インボリュート曲線」となります。

こうして出来た2つの歯形を嚙み合わせて回転運動をさせると、両歯形の接点が同一曲線上をスムーズに移動していくのが分かります。このような特徴から、インボリュート曲線は歯形の曲線に適した曲線といえます。

特徴としては、トルク伝達時に自動調心されることや、歯元が太く伝達効率が高いことなどが挙げられます。製造や精度確保も容易に出来ることから、従来の角形スプラインよりも汎用性の高いスプラインとなっています。

スプラインにはそれぞれに特徴があることから、用途に合わせて適切なもの選定する必要があります。

参考文献
https://www.khkgears.co.jp/gear_technology/pdf/gear_guide_060817.pdf
https://gijyutsu-keisan.com/mech/engineer/element/spline/spline_1.php

ジェットクーラ

ジェットクーラとは

ジェットクーラとは、渦の力を利用して物体を冷却する装置です。小型の冷却装置であるため、場所を選ばず利用することができます。

小型以外にも下記の特徴があります。

  • 環境に優しい
    他の冷却装置では、フロンなどの冷媒が用いられています。冷媒が大気中に放出されると、環境に悪影響を与えることがあります。

ジェットクーラは圧縮空気を用いるだけなので、環境に優しい冷却装置となっています。

  • 壊れにくい
    摺動部品がなく、非常に単純な構造です。そのため部品故障が少なく、長く用いることができます。

ジェットクーラの使用用途

ジェットクーラが使われる場面の1つに、半田付けがあります。

半田付けとは、スズと鉛の合金(はんだ)を熱で溶かして固めることで、部品同士を接合する方法です。主に電子部品で使われています。

人体への影響から、鉛フリーのはんだが使われるようになりました。しかし鉛フリーでは不均一に固まることがあります。不均一に固まるとクラックが発生したりして、製品不良につながります。

均一にはんだを固めるため、ジェットクーラで急冷を行います。

ジェットクーラの原理

ジェットクーラは、渦の力を利用して冷たい風を生み出しています。

まずはコンプレッサを使って、装置内に圧縮空気を送り込みます。空気を圧縮することで、エネルギーが蓄えられ、強い力を生み出すことができます。

圧縮空気は装置内にある渦流発生器を通ります。発生器では接線方向に空気が放出され、高速回転します。高速回転により渦が発生します。

渦は回転しているため、遠心力が働きます。遠心力の働きにより、圧力と密度が上昇します。ボイルシャルルの法則により、圧力と密度の上昇に伴い、温度も増加します。

渦は出口に向かって動きます。出口に移動するとき、空気が膨張するため、渦の中心部では温度が下がります。中心部から外側に向かって熱が放出されるため、渦の中心と外で温度差ができます。冷たい中心部の空気は出口から放出され、冷却に使われます。温かい外側の空気は、逆方向から排出されます。

圧縮空気の送り込み、渦の生成、温度による空気の分離を繰り返すことで、定常的に冷却を行うことが可能になります。

参考文献
https://www.jreco.or.jp/furontaisaku_pdf/materials-1.pdf
https://www.mekasys.jp/series/detail/id/BN_0025
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