熱風乾燥炉

熱風乾燥炉とは

熱風乾燥炉 (英: Hot Air Drying Oven / Drying Machine ) とは、燃料をバーナーで燃焼させ、熱気を炉内に送り込んで対象物を乾燥させる装置です。

熱風乾燥炉は高温の空気やガスを使用するため、乾燥速度が比較的速く、効率的に乾燥できます。これにより、製品や物質の乾燥時間を短縮可能です。

ただし、高温の空気や燃焼ガスを使用するため、火災の危険性があります。燃えやすい物質や可燃性のガスを熱風乾燥炉内に入れないように注意が必要です。

ガスや灯油などを熱源として使用する場合は、排気ガスが多量に排出されます。したがって、熱料率も高く、取り扱いの簡単な電気式熱風乾燥もよく使用されます。

熱風乾燥炉の使用用途

熱風乾燥炉はさまざまな産業や分野で広く使用されています。以下は使用用途一例です。

1. 食品加工・製薬

果物や野菜などの農産物を乾燥させて保存性を向上させたり、食品加工の工程で使用される原料を乾燥させたりします。フルーツチップスや乾燥野菜、乾麺、乾燥したスパイスやハーブなどの製造が使用例です。

また、製薬業界では、薬剤や医薬品の乾燥が重要な工程です。熱風乾燥炉は、薬剤の乾燥や結晶化、凝固のために使用されます。乾燥によって薬剤の安定性が向上し、長期間の保存や取り扱いが可能です。

2. 工業

化学工業では、塗料やプラスチックなどの原料や製品の乾燥が必要な場合も多いです。これらの物質の水分を取り除いて乾燥させるために使用されます。

また、鉱業では、鉱石や鉱物を溶鉱炉に投入する前に乾燥させることが多いです。水分を溶鉱炉に投入すると、溶鉱炉内の熱を奪われるだけでなく、排気ガスも増加してしまいます。熱風乾燥炉を使用してあらかじめ鉱石や鉱物の水分を蒸発させ、取り扱いや処理の効率を向上させることが可能です。

セラミックス製造では、セラミックスの成形や焼成前に乾燥が行われます。熱風乾燥炉は、セラミックス製品の水分を取り除き、均一な品質や耐久性を確保するために使用されます。

3. 木材加工

木材加工業界では、木材の乾燥が重要な工程です。熱風乾燥炉は、木材の湿度を適切に制御し、乾燥させて安定性を向上させるために使用されます。これにより、木材の収縮やひび割れを防ぎ、製品の品質を向上させることができます。

熱風乾燥炉の原理

熱風乾燥炉は、高温の空気やガスを使用して湿った物質から水分を蒸発させます。また、電気加熱要素やバーナーなどの加熱装置を持ちます。この加熱装置は燃料を燃やす、または電気エネルギーを使用して熱風を生成するもので、生成された熱風は高温です。

熱風乾燥炉は送風装置も有し、加熱された空気やガスを熱風乾燥炉内に送り込みます。熱風は高速で送風され、物質や製品の周囲に広がります。熱風は物質の表面に接触し、水分を蒸発させることが可能です。

乾燥中に発生した水蒸気や排気ガスは、排気装置を通じて外部に排出されます。排気装置は乾燥炉内の湿気や有害なガスを除去します。

熱風乾燥炉の種類

熱風乾燥炉には直接乾燥方式と間接乾燥方式があります。

1. 直接乾燥式

直接乾燥式は加熱した燃焼ガスを直接循環ファンにより循環させる方法です。熱効率が高く、短時間で温度を上げることができるというメリットがあります。

2. 間接乾燥式

間接乾燥式はバーナーで熱交換器を加熱し、燃焼ガスとエアを熱交換させて炉内の温度を高めて循環させる方式です。この方法は炉内全体に熱が行き渡るため、乾燥ムラが少ない点が特徴です。また、不完全燃焼によるススが炉内に入る危険性もありません。

また、直接燃焼による火花が引火性成分に接触しないため、爆発の危険性が低いです。乾燥する際に窒素酸化物が塗料と反応しにくいため、塗膜物性を損なわないというメリットがあります。 ただし、熱効率が低く、温度を上昇させるのに長い時間がかかります。

参考文献
https://www.katsuraseiki.co.jp/?page_id=5579
http://www.p-bes.co.jp/product/kansou.html?yclid=YSS.EAIaIQobChMIvqj5utSh7QIVClRgCh3axgD2EAAYASAAEgJNAfD_BwE

急速凍結機

急速凍結機とは

急速凍結機

急速凍結機 (英: Quick freezer / Sharp freezer) とは、急速に冷凍を行う装置です。

最大氷結晶生成温度帯と呼ばれる水分が、水から氷に変化する「−1℃~−5℃」の温度帯を素早く突破する点が特徴として挙げられます。急速凍結機は主に食品の急速冷凍に用いられており、最大氷結晶生成温度帯を30分以内に通過させて、食品の状態を凍らせる前と近い状態を維持します。

そのため、食品業界や飲食業界から大きな期待が寄せられている状況です。

急速凍結機の使用用途

急速凍結機は、主に食品製造業者、水産仲買業者、菓子店、洋菓子店、和牛販売店、冷凍寿司製造業者の食品関係分野のほかに、遺伝子工学や生命科学分野などでも使用されています。

具体的には、食肉卸加工や加工、ハム・ソーセージのテンパリング、水産加工、水産卸、畜産加工、冷凍フルーツの保存などの食品加工用途です。また、病院食や介護食、スーパーやレストランなどで調理した食品を急速凍結機により凍結すれば冷凍状態で流通可能です。

また、果物や野菜類の凍結や飲料凍結、氷菓類凍結なども用途の1つとして挙げられます。急速凍結機では、平均して氷点下40℃〜氷点下110℃までコントロールできます。

機種によって扱いやすさや凍結スピードに差があるため、実験及び研究分野に利用する場合には、特に注意が必要です。凍らせたい試料に最適な機械を選ぶ必要があります。

急速凍結機の原理

一般的な冷凍方法では、組織内で大きな氷の結晶が生じて組織に損傷を与えます。一方、急速凍結機を使用して急速に冷凍すると組織内の水分が数秒以内で急速に中まで凍るため、氷の結晶が大きくなるのを防止し、凍結時の組織の損傷を防止できます。

また、細胞組織が破壊されていない冷凍食品は、解凍時のドリップの発生がおさえられるのも特徴です。ドリップは旨み成分よりなるため、解凍時これが生じない場合、みずみずしさや食感もキープして冷凍前と変わらない状態に戻すことができます。

なお、急速凍結方式には、冷たい風で凍らせるエアブラスト方式と低温液体で凍らせるリキッド方式 (液体凍結方式) があります。

1. エアブラスト方式

エアブラスト方式は、装置内に−30℃~−45℃ほどの低温の冷風を起こす方式です。エアブラスト方式では、冷気が同時に均一に伝わらないと、風の当たる所と届かない所の凍結速度に差が生じます。

そこで、急速凍結機のメーカー各社は風の当て方などを工夫しており、冷たい風で食品などの試料を包み込み一気に冷凍する方法が多く採用されています。

2. リキッド方式 (液体凍結方式)

リキッド方式は、−35℃以下に冷却されたアルコールで満たされたタンク内に試料を入れて凍結する方式です。最短約10秒程度で凍り始めるこの液体凍結方式は、熱伝導率が高いため細胞破壊を防止し、凍結前とほぼ同じ状態を維持できます。

急速凍結機のその他情報

1. 急速凍結機の価格

家庭用の急速凍結機の価格は、5万円〜20万円程度が相場です。一般的に、値段は庫内の容量に応じて決まります。一方、業務用の急速凍結機の価格は家庭用と違い、1時間あたりの凍結能力で決まります。

つまり、ユーザーが対象の食品を1時間あたり何kg冷凍させたいのかで装置を選択し、それに応じて価格が決まります。そのため、ユーザーの要求に応じて、急速凍結機の機種も価格も多種多様です。

業務用の急速凍結機は家庭用と異なり、1時間あたりの凍結能力で決まります。つまり、「対象の食品を何kg冷凍させたいのか」によって決まるということです。時間あたりの希望凍結量を基準に選択するため、急速凍結機の機種は豊富に揃っています。

最小モデルの急速凍結機は200万円程度で、多くのメーカーの基本的なモデルは1時間当たり10kgを凍結できるモデルで300万円ほどです。大きなモデルになると、1時間あたり数トンを凍結可能なものもあります。

2. 急速冷凍機導入時に適用する補助金

急速凍結機は数百万円する高価な装置です。将来的に利益を生むとしても、中小企業などでは簡単に導入できる装置ではありません。そこで、中小企業庁と独立行政法人中小企業基盤整備機構が実施する「ものづくり補助金」 (正式名称「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」) 制度を利用できます。

ものづくり補助金は、中小企業が経営革新のための設備投資などに使える補助金です。補助率は最大3分の2、補助額は最大1,000万円です。毎年希望者を募っており、支援を受けられれば、生産性の向上や導入費用の大幅削減など、事業の大きな助けになります。

参考文献
https://shunkashutou.com/quick-freeze/
https://kyusokureitoki.jp/
https://shunkashutou.com/quick-freezer/price/
https://portal.monodukuri-hojo.jp/
https://shunkashutou.com/hojokin-support/

ブラスト洗浄機

ブラスト洗浄機とは

ブラスト洗浄機

ブラスト洗浄機 (英: Blast washer) とは、一般的にドライアイス粒子を圧縮、ノズルを通して噴出させ、対象物の付着物を除去して洗浄する装置です。

ブラスト洗浄機のドライアイスは、固形状で対象物表面の付着物に衝突した後、気体になるため、廃棄物が出ません。環境に優しく環境保全や労働衛生面の点でも好ましいとされ、従来の塩素系洗浄や炭素系洗浄の代わりに利用されています。

また、洗浄に使用されるドライアイスは柔らかい素材で研磨力が低いため、対象物に傷がつきにくいのもメリットです。

ブラスト洗浄機の使用用途

ブラスト洗浄機は広い分野で使用されています。特に手や器具が触れられない細かい場所などの洗浄が可能なため、製造工場で使用される場合が多いです。

その他、自動車製造やタイヤ、鋳造、化学、機械、プラスチック製造、船舶、食品、建物、道路、航空機製造なども用途として挙げられます。

  • 離型剤、溶接スパッタ、塗料洗浄
  • タイヤ金型からの残留加硫物洗浄
  • 接合剤洗浄
  • 機器の内部洗浄
  • 生産ラインの洗浄
  • 金型の洗浄、工具の洗浄
  • 船体塗料除去、サビ除去、エンジン室洗浄
  • 食品、食肉処理場など各種生産ラインの洗浄
  • 建物の壁、道路、タイル、駐車場などの洗浄
  • 航空機部品、着陸装置、エンジン、電気部品、滑走路などの洗浄

ブラスト洗浄機の原理

ブラスト洗浄機では、ドライアイスを対象物に吹き付け、−79℃のドライアイスが対象物表面の付着物を冷却する際に発生するサーマルショック効果と、昇華時に体積が膨らむドライアイスの性質を利用しています。具体的には、ドライアイスブラストが対象物に強く衝突すると、付着物が熱収縮 (サーマルショック) を起こして細かいクラックが生じます。

つまり、剥離しやすい状態です。その後、ドライアイスが炭酸ガスに昇華する際に膨張するため、付着物に圧がかかって剥離されます。ドライアイスブラストを強く対象物に衝突させると、対象物が熱収縮 (サーマルショック) を起こし、剥離しやすい状態になります。その後、ドライアイスが炭酸ガスに昇華すると、かさばることで汚染物が剥離されます。

その際に使うドライアイスは、パウダー状やペレット状などです。パウダー状のドライアイスは、付着物の厚みが薄く、対象物の形状が複雑で精密なものに向いていて、半導体設備やクリーンルームの洗浄などに好適です。ペレット状のドライアイスは、付着物の厚みが厚く汚染度が高い場所、広い範囲の洗浄や大型設備などに適していて、錆除去や金型設備などに使用されます。

ブラスト洗浄機の種類

ブラスト洗浄機でドライアイスを噴出するノズルとしては、通常のノズルやサイクロンノズルがあります。サイクロンノズルを使用すれば、ブラストが螺旋状に回転しながら噴射されるため、その洗浄効果は非常に高いものです。

また、ブラスト洗浄機は、ドライアイスタンクや本体容量の大きさによって軽いハンディ型から大容量のガンホース型まで多く種類があります。

ブラスト洗浄機のその他情報

ドライアイスブラスト洗浄のデメリット

炭酸ガスやドライアイスを使用するブラスト洗浄は、母材を傷めずに綺麗に仕上げられるメリットです。しかし、同時にいくつかのデメリットもあります。ドライアイスブラスト洗浄は、エポキシ系染料やメッキ、母材自体の変色など、母材と強固に結合したものは除去できません。

また、珪砂などの他のメディアを使用したブラストと同様、ドライアイスが届かない空間の汚れは洗浄できない点もデメリットです。ただし、ドライアイスを細かく粉砕しながら噴射するパウダー洗浄では、比較的小さな空間や狭い隙間にもドライアイスが届くため、用途に応じての使い分けが重要です。

また、対象物が急激に冷却されて結露が発生する場合があります。そのため、ドライアイスブラストは耐水性が低い対象物には基本的に使用できません。

2. ドライアイスブラストの怪我や酸欠の危険性

ドライアイスは珪砂などの他のメディアと比較して軟質ではありますが、人の皮膚と比べれば当然のことながら硬質です。人の体に直接噴射すると大怪我をするため、防護服の着用はもちろん、装置の誤作動や誤操作がないようにする、周囲へ注意喚起するのが大切です。

また、ドライアイスは気化すると二酸化炭素になるため、作業は喚起の良い空間で行う必要があります。作業環境上、密閉した空間でやむを得ず使用する際には、充分に換気をしながら酸素マスクを着けて作業します。

3. ドライアイスの入手と保管

ドライアイスを自社にて用意する場合は、専用の製造装置が必要です。また、ドライアイス自体は購入する場合でも−78.5℃以下で保管可能な保管設備が必要であり、ドライアイスを用いたブラスト洗浄機を利用するには装置自体以外のコストが掛かるデメリットがあります。 

4. 重曹ブラストとの比較

ドライアイスを利用したブラスト洗浄と同様に、軟質で洗浄効果の高いメディアである重曹 (重炭酸ソーダ) 利用する重曹ブラストの使用も拡大しています。重曹は家庭や医療現場でも広く利用されておりドライアイスと比較して入手しやすく、保管も容易なためコストをおさえられるのがメリットです。

珪砂などと比較して軟質ではあるものの、研磨作用が高い上に水溶性であるためドライ・ウェット両方に適用可能で、汎用性が高い点もメリットの1つです。環境への影響もないので、使用後はそのまま水道には流すこともできます。

一方、デメリットとしては、弱アルカリ性なので腐食が進行している金属製のパーツには使用できない点が挙げられます。 

参考文献
https://www.awci.co.jp/products/blast_2.html
https://www.kyodo-inc.co.jp/electronics/super-blast/index.html
http://www.greentech-japan.co.jp/whatis/principle.html
https://www.abbs.jp/dry_ice/faq.html
https://www.goobike.com/magazine/maintenance/maintenance/513/

バキュームクリーナ

バキュームクリーナとは

バキュームクリーナ

バキュームクリーナ(英:Vacuum cleaner) とは、家庭や商業施設などで床や他の表面からゴミやほこりを吸い取るために使用される電動機器です。

内部が真空となる製品も多く、真空掃除機とも呼ばれます。バキュームクリーナは強力な吸引力により、床やカーペットから深く埋まったゴミや細かいほこりなどをしっかりと取り除くことができます。手作業での掃除に比べて、時間と労力を節約することも可能です。

また、アレルギーを引き起こす微小なほこりやアレルゲンを捕集するためのフィルターが装備されている場合があります。特にHEPAフィルターを搭載した製品は、空気中の微細な粒子を効果的に捕捉することでアレルギー症状の軽減に寄与します。

バキュームクリーナの使用用途

バキュームクリーナはさまざまな分野で使用される機器ですが、代表的な用途は床掃除です。床板やタイルなどの床面の掃除に広く使用されます。吸引力を利用して、ゴミや毛髪などを効果的に除去することが可能です。

車内の掃除にも広く利用され、座席やトランクスペースなどに溜まったゴミやほこりを吸い取って清潔な車内環境を維持することができます。ペットを飼っている場合は、抜け毛や毛皮を取り除くのに役立ちます。ペット用の専用アタッチメントを使えば、カーペットからしっかりと毛を吸い取ることが可能です。

バキュームクリーナーは食品業界や医療機関、プラントや工場などで広く使用される機器です。ホテルやオフィスビルなどの商業施設や公共の場所でも頻繁に使用されます。産業廃棄物業界などでは作業環境にある有害粉塵の清掃作業に使われることが多いです。

バキュームクリーナの原理

バキュームクリーナの原理は、風圧と吸引力を利用してゴミやほこりを除去することです。モータ・ファン、吸引ノズル、フィルタなどで構成されます。

バキュームクリーナの内部には、モーターとファンが備わっていることが一般的です。モーターは電力エネルギーを回転エネルギーへ変換し、ファンは回転運動を風圧へ変化させます。ファンの回転によって内部で風圧が発生し、ファンの高速回転で周囲の空気を一方向に押し出します。

先端には吸引ノズルが取り付けられ、空気と共にゴミやほこりを吸引します。 吸い込まれたゴミやほこりは、本体内部にある集塵袋またはフィルターに収集されることが多いです。これにより、後で容易に取り除くことができます。

吸い込まれた空気を清潔化して排出します。一部のモデルではHEPAフィルターを使用して微細なほこりやアレルゲンを捕集し、クリーンな空気を放出します。

バキュームクリーナの選び方

バキュームクリーナを選ぶ際に考慮すべき要素はいくつかあります。

1. 床面

対象の床面について考慮します。バキュームクリーナは畳やカーペットなど、さまざまな床面に対応しています。掃除対象の床面に応じて、適切な吸引力やブラシの種類を持つモデルを選ぶことが重要です。

2. 吸引力

吸引力についても考慮することが必要です。高い吸引力を持つ製品は深い場所のゴミを効果的に吸い取ることが可能です。モーターのパワーが高いほど、吸引力も強くなる場合が一般的です。

3. 捕集容量

ゴミの補修能力も重要な要素です。12~30リットル容量を持つ業務用と30~170リットル容量の産業用などがあります。目的と使用場所によって適切な機器を選びます。

4. フィルタ

フィルタはバキュームクリーナが吸い込んだ空気を浄化する役割を果たす消耗部品です。一部のモデルにはHEPAフィルターが搭載されており、微細なほこりやアレルゲンを効果的に捕集することが可能です。アレルギー症状のある人や、空気品質に敏感な人にとっては重要な要素です。

5. 電源

電源種類やバッテリーの寿命も考慮する必要があります。コンセントを持つ場合は、3相200V電源や単相100V電源などの種類があります。間違った機器を購入した場合、使用できない可能性が高いです。

また、充電式のバッテリー駆動モデルもあります。使用する場所や範囲に応じて、コードの長さやバッテリーの持続時間を確認します。

参考文献
https://www.nilfisk.com/jp-jp/products/Pages/Vacuum-cleaners/Industrial-vacuum-cleaners/group.aspx
https://documents.nilfisk.com/Nilfisk/Nilfiskgreyline/jp/catalogue2020/?page=2
https://www.kaercher.com/jp/professional/industrial-vacuums.html

シリンジ

シリンジとは

シリンジのイメージ

図1. シリンジのイメージ

シリンジとは、注射器の構成部品のうち、注射針とプランジャ(押子)を除いた、液体を充填する筒状の部分のことです。

注射筒、外筒とも呼ばれます。現在は、ディスポーザブルのプラスチック製 (ポリプロピレン) のものが主流ですが、ガラス製 (ホウケイ酸ガラス) のものも必要に応じて使用されます。

シリンジの使用用途

シリンジの使用用途は、医療用と実験用の2種類に大別されます。

現在主流のプラスチック製シリンジは、滅菌して個別包装され、基本的に使い捨て (ディスポーザブル)です。その理由は、医療現場における感染予防、および、化学実験等におけるコンタミ防止です。

プラスチック製注射筒は加熱殺菌できないため、エチレンオキサイドガス滅菌や放射線 (γ線) 滅菌が使用されています。一方、下記のような場合には、ガラス製のシリンジが用いられます。この際、医療用のガラス製シリンジは仕様の都度滅菌して繰り返し使用されます。

  • 医療現場において、プラスチック製のシリンジでは薬物吸着や樹脂添加剤の流出等の懸念がある場合
  • 有機化学実験など、有機溶剤で樹脂が溶ける恐れがある場合

1. 医療用シリンジの使用用途

医療用途では、主に採血や薬剤の注入、浣腸などに利用します。

予防接種など薬剤の注入に利用する場合は、感染予防や作業の効率化等の観点から、予め薬剤が充填されたプレフィルド・シリンジを用いることもあります。

2. 実験用シリンジの使用用途

医療現場以外にも物理・化学・生命科学分野における実験器具として用いられます。主な用途は、液体や気体の注入、体積の測定、加圧・減圧、滴下、分注などです。

シリンジの原理

シリンジの使用時のイメージ

図2. シリンジの使用時のイメージ

シリンジは、通常、可動式のプランジャー (押子) とセットで用いられ、先端に注射針を取り付けて使用します。

シリンジの容量は目的に応じてさまざまなものがありますが、針との接続部分のサイズや形状は容量に関わらず統一されています。そのため、どのような太さ・長さの針でも取り付けることが可能です。 

シリンジの種類

シリンジは、先端の形状と針の接続部分の位置によって、分類することができます。

1. 先端の形状による分類

  • ルアーロック式
    針を取り付ける部分がネジ状になっており、針が抜け落ちないように固定することができます。
  • ルアーチップ式
    針取り付け部分のテーパーを利用して針を固定します。針の着脱がしやすいというメリットがあります。
  • ルアーメタル式
    先端部が金属でできており、強度が高くなっています。
  • 浣腸式
    浣腸や膀胱洗浄に使用する浣腸器等の器具に見られる形状です。体内に挿入するため、先端部が若干丸みを帯びています。
  • カテーテルチップ型
    カテーテルに接続するためのカテーテルシリンジの先端部は、通常の注射器用シリンジの先端部よりも太くなっています。カテーテルシリンジと注射器用シリンジの取り違えによる液剤投与過誤を防ぐため、両者の形状は明確に分けられているのです。

2. 針の接続部分の位置による分類

  • 中口タイプ
    接続部分が筒の中心にあります。容量が10ml以下と小型のシリンジでは、中口タイプが一般的です。
  • 横口タイプ
    接続部分が筒の中心から端にずれた位置にあります。容量が大きいシリンジでも、浅い角度で穿刺しやすいようになっています。また、先端部分が端にあることで空気抜きもしやすくなっています。

参考文献
https://www.google.com/url?sa=t&source=web&rct=j&url=https://www.jstage.jst.go.jp/article/kakyoshi/67/7/67_306/_article/-char/ja/&ved=2ahUKEwir9tyArq3tAhUXxIsBHQkrA10QFjAAegQIBBAC&usg=AOvVaw1eFul-jv6ZyP7vIoPXhG12
https://www.google.com/url?sa=t&source=web&rct=j&url=https://www.jstage.jst.go.jp/article/kakyoshi/67/7/67_306/_pdf&ved=2ahUKEwi2na2f_a_tAhXCFogKHRzaAWwQFjALegQIGxAB&usg=AOvVaw2BmKgp9ZwwMOMCDeY8DDsG

CO2モニタ

CO2モニタとは

CO2モニタとは、CO2濃度を継続的に測定する装置です。

医療用として呼気中のCO2濃度測定に用いられる装置は、カプノメーターとも呼びます。CO2を測定する装置の中でもポータブルでリアルタイム表示する製品をCO2モニタと呼ぶ場合が多いです。

表示画面は7セグメントディスプレイによるデジタル方式が一般的で、人の呼気や排気ガスの影響を受けにくい場所に設置することが推奨されます。大気中のCO2濃度が0.4%程度であることから、単位はppmが使用される場合がほとんどです。

CO2モニタの使用用途

CO2モニタは広く市販されており、オフィスから農業まで幅広い用途で使用されます。具体的な使用用途は、以下の通りです。

  • 人が多く集まるオフィスや会議室の換気状態の確認
  • ビニールハウス内の植物向けCO2濃度確認
  • 小売店や飲食店など、人口密集地のCO2濃度確認
  • 自宅室内の換気状態確認
  • ボイラや自動車の排ガス分析

換気が不十分だと頭痛などの悪影響があるため、CO2濃度を測定することで目安としている場合が多いです。自宅の自室に設置し、換気の目安として使用する場合もあります。ビニールハウスなどは炭酸ガスで定期的にCO2を供給する必要があるため、CO2モニタを使用します。

CO2モニタの原理

広く使用されるCO2モニタはCO2が固有の周波数の赤外線を吸収し、大気中の主成分であるN2やO2と干渉しない性質を利用したNDIR (非分散型赤外線濃度) 式です。他の測定装置と比較して構造が単純で小型化が可能なため、NDIR式が主流となりました。

NDIR式の場合、測定器は主に光源及び試料セル、赤外線検出器及び指示計で構成されます。光源はCO2が吸収する波長の赤外線を発光し、試料セルを経由して赤外線検出器へと照射しています。試料セル内にCO2が取り込まれた空気が流れ込むと、CO2濃度に応じた形で赤外線が吸収されます。赤外線の吸収量にしたがってCO2濃度へ変換出力します。

大気中の主成分であるN2やO2は赤外線を吸収しないため選択的な検出が可能ですが、水蒸気やCO等は同波長の赤外線を吸収するため測定に干渉します。また、光源を用いるため排煙などの汚れた空気の測定には不向きです。

CO2モニタの種類

NDIR式のCO2モニタには光源の数や種類に応じていくつかの種類が存在します。

1. シングルビーム式

シングルビーム式は光源が1つのCO2モニタです。比較する光源が存在しないため、経年による光源劣化や塵埃の体積などにより発光が弱まるとCO2濃度を多めに出力します。ただし、構造が簡単なため安価に製造可能であるという利点があります。

2. 二光源方式

二光源方式では2つ光源を使用し、双方を比較して補正を実施する方式です。シングルビーム式と比較して経年による光源の劣化を補正できるため、正確なデータを測定可能です。ただし、光源を2つ必要とするため部品点数が増加し、故障のリスクが高まるという欠点があります。

3. ダブルビーム式

ダブルビーム式は2波長の赤外線を使用してCO2を測定する方式です。単光源2波長方式とも呼ばれます。

2波長を含んだ赤外線を光学フィルタなどで分離して2つの検出器測定します。2波長のうち片方がCO2に吸収される特性の波長域で、もう片方が吸収されない波長域です。2波長を比較することで経年による光源劣化などを補正し、正確なCO2測定を可能としています。

部品点数が2光源方式よりも少なく、シングルビーム式比較して正確にCO2濃度を測定できる方式です。そのため、現在のNDIRにおける主流はダブルビーム方式となっています。

CO2モニタのその他情報

NDIR以外のCO2モニタ

NDIR式以外のCO2モニタとしては、固体電解質方式などが存在します。CO2とNa2CO3の化学平衡関係を利用し、固体電解質中のナトリウムイオンの増減による起電力を計測してCO2濃度へ換算します。

ただし、他成分の干渉を受けにくい反面、温度や湿度に影響を受けるのが短所です。

参考文献
https://www.environment.co.jp/study/stdy2.htm
https://www.mhiair.co.jp/contents/07-atac/07-04-210.html
https://www.acute-care.jp/ja-jp/document/bloodgas-museum/category03/capnometry
https://www.cqpub.co.jp/toragi/TRBN/trsample/2003/tr0312/0312sp7.pdf
http://gastec.co.jp

高分子凝集剤

高分子凝集剤とは

高分子凝集剤とは、水中に懸濁している粒子の表面電荷を中和して粒子を凝集させる高分子薬剤のことです。

主に、廃水中で汚濁の原因となっている浮遊微粒子を凝集・沈殿させるのに用いられます。高分子凝集剤を用いて沈殿させた沈殿物は、脱水やろ過により、水と分離して処理することが可能です。

高分子凝集剤は、凝集させる微粒子の表面荷電によってアニオン性・カチオン性・ノニオン性・両性のものを使い分けます。粉末状やエマルジョンなどの形状があり、粉末状の方が管理が容易ですが、水への溶解ではエマルジョンの方が優れています。

高分子凝集剤の使用用途

高分子凝集剤は、下記に例を挙げる産業における汚泥の濃縮、体積を減らす (減容化) 用途、選鉱処理などに用いられます。

  • アニオン性凝集剤
    金属・土木・鉱山・窯業・紙パルプ・化学・食品等、無機物質を扱う産業で多く用いられます。
  • カチオン性凝集剤
    し尿・下水・紙パルプ・食品など、有機物を取り扱う産業
    に対して使用される場合が多いです。
  • ノニオン性凝集材
    酸性排水に用いられます。
  • 両性凝集材
    カチオン性凝集剤では不十分な場合に用いられます。

また、用水処理に高分子凝集剤は使用しません。高分子凝集剤が残存した場合、イオン交換装置や逆浸透膜装置の有機物汚染の原因になるためです。 

高分子凝集剤の原理

高分子凝集剤による凝集のイメージ

図1. 高分子凝集剤による凝集のイメージ

高分子凝集剤によって凝集・沈殿を生じるメカニズムは以下のようになります。

  1. 凝結
    まず、水中の微粒子と逆の電荷を持つ無機凝結剤 (ポリ塩化アルミニウム (PAC) 、硫酸鉄等) などを投入し、懸濁粒子の表面電化を中和します。この時にできるかたまり、即ち微細フロック (Flock) を基礎フロックと呼びます。
  2. 凝集
    基礎ロックが生じた水中に、高分子凝集剤を投入します。高分子凝集剤の活性基 (ポリアクリルアミド構造等) と小さなフロックとの分子間相互作用によって、小さなフロックが高分子に絡められるように吸着・架橋し、粗大フロックに成長します。

主な凝集剤

図2. 主な凝集剤

沈殿に際して、pHの調整には注意が必要です。理由として、適切なpH環境でなければ沈殿が生じないことや、沈殿後に再溶解恐れがあることが挙げられます。また、高分子凝集剤を必要量以上に投入してしまうと、高分子凝集剤への吸着が先行し、架橋が不十分になり、凝集が生じにくくなります。

各凝集剤に対して適切なpHは下記のとおりです。

  • アニオン性凝集剤:pH 7~12
  • カチオン性凝集剤:pH 4~8
  • ノニオン性凝集剤:pH 4~8

高分子凝集剤の種類

主な高分子凝集剤のモノマー構造

図3. 主な高分子凝集剤のモノマー構造

高分子凝集剤は、イオン性と形状の観点から分類することができます。

1. イオン性

前述の通り、高分子凝集剤には、帯電している電荷によって、アニオン性 (陰イオン) ・カチオン性 (陽イオン) ・ノニオン性 (非イオン) ・両性のものがあります。アニオン性やノニオン性は、主に、無機・有機凝結剤によって基礎フロックを形成した粒子を架橋し、粗大フロック化するのに用いられます。カチオン性の高分子凝集剤は、生物処理汚泥の脱水に用いられることが多いです。

2. 形状

高分子凝集剤は粉末状の固体と、エマルジョン状の商品が流通しています。粉末状のものは、運搬と保管の上で取り扱い易いですが、溶解性が低いため使用時には注意が必要です。通常は粉体を水に少量ずつ投入し攪拌します。一度に大量に入れると、表面だけが膨潤し、未溶解粒子同士が付着して大きな固まりとなる恐れがあるためです。

溶解自体にも、エマルジョン状のものより時間がかかり、撹拌しながらしばらく待つ必要があります。また、粉体の場合は吸湿するので、保管は禁水です。このため、屋外に高分子凝集剤タンクがある場合はエマルジョン製品を使用する方が適切と言えます。

エマルジョン状のものは粉末状のものより溶解しやすく、比較的すぐに溶解します。ただし、粉体よりも種類が少なく、特殊な原水にはマッチしない場合があるので注意が必要です。

高分子凝集剤の選び方

最適な高分子凝集剤を選定するためには、様々な条件を考慮することが必要です。添加対象の原水の成分、pH変動幅、最適添加量、使用時の気温や、設備上の投入ポイントなど様々な要素があります。夏季用と冬季用で種類を変えるケースも少なくありません。

選定にあたっては、凝集沈殿試験 (ジャーテスター、シリンダーテスター等) や脱水試験机上試験 (遠心脱水試験、ベルトプレス脱水試験等) を行って適正銘柄・適正処理条件を選定した後、実機試験を行います。

参考文献
http://oec.gr.jp/intro03.html
https://www.google.com/url?sa=t&source=web&rct=j&url=https://www.gesui.metro.tokyo.lg.jp/contractor/information/pdf/2024f5ae3d86bebd785c4892b5d7bb6bb7251f14.pdf&ved=2ahUKEwjR4Ofes7ftAhVeyIsBHR6jBUAQFjAAegQIARAB&usg=AOvVaw1cPqu0w0Lfcv3HSyrSdzVK
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kobunshi1952/51/7/51_7_504/_article/-char/ja/
https://www.hsingnan.com.tw/images/aronfloc/TDS/polymer.pdf
https://kcr.kurita.co.jp/wtschool/012.html

葉緑素計

葉緑素計とは葉緑素計

葉緑素計とは、簡便かつ非破壊的に葉緑素の濃度を推定する機器です。

現代農業において、収量増加、環境保全、コスト削減は重要な課題であり、適切な窒素施肥が必要になります。窒素施肥を適切に行うためには、作物の栄養状態を把握しなければなりません。

葉緑素は植物の光合成を担う色素で、一般に窒素含量が多くなると増加する性質があり、葉の緑色も濃くなります。したがって、葉緑素濃度を測定すれば作物の栄養状態を確認できます。

葉緑素計の使用用途

葉緑素計は、稲 (水稲) の圃場管理に主に使用されています。「葉の幅が2mm以上」「測定部で挟める厚さの生葉であること」「葉緑素計で使用されている光源の光をある程度透過できること」の3つが測定条件です。

そのため、農作物全般に使用できます。測定可能な植物は、稲をはじめとした穀類や綿花、野菜や果物などのほか、観葉植物や緑化樹木など多岐にわたります。

また、葉緑素計は、携帯可能なサイズのため、圃場で生きたままの作物の葉を直接測定し、品質向上や収量増加のための施肥管理に活用されています。

葉緑素計の原理

1.  葉緑素の光吸収特性

葉緑素が吸収する光のピークは、一般に、400nm~500nmの青色域と600nm~700nmの赤色域にあります。カロチノイド色素など他の色素の吸収波長も青色域にあり、ピークが同じ領域になります。一方、700nm以上の赤外領域の光は、どの色素にもほとんど吸収されません。

2. SPAD値

SPAD値とは、葉緑素が葉緑素計から照射される赤色域の光を吸収する割合を示す値です。葉緑素計では、葉緑素の光特性を利用して、ピーク波長が650nm付近の赤色領域の光と、940nm付近の赤外領域の光を試料に交互に当てることで、光学濃度の差を測定しています。光学濃度は、光が吸収されて減少する度合いを対数で示した数値です。

葉緑素計の発光部には、ピーク波長が650nm付近の赤色域のLEDと940nm付近の赤外領域のLEDの2つの光源が内蔵されています。そして、試料を透過した光は受光素子で光電変換により電気に変換され、光学濃度が測定されます。測定された光学濃度の差をもとに、赤色域のLEDからの光が葉緑素により吸収される度合いを示す数値「SPAD値」が算出可能です。

SPAD値は、葉身の葉緑素濃度と強い線形の相関があることが確認されており、試料中の葉緑素濃度の指標になります。SPAD値の名称は、前述の土壌・作物体分析機器開発事業 (SPAD) に由来しています。

葉緑素系のその他情報

1. 葉緑素計を使用する際の注意点

葉緑素計は簡単に葉緑素の量を測定できますが、測定できる葉のサイズには制限があります。葉の面積が縦2mm、横3mmよりも小さい場合は測定できません。測定可能な葉の厚みは1.2mmまでであり、葉に厚みがある植物は測定できません。また、葉脈が多い葉は場所によって数値がバラつくため、複数箇所を測定し、それらの平均値の使用が推奨されています。

2. 葉緑素計以外の葉緑素の測定方法

葉に含まれる葉緑素量の測り方は、葉緑素計以外では、葉緑素を薬品により抽出して、分光光度計で測定する方法が一般的です。この場合、抽出したい葉緑素がどこに含まれるかによって抽出方法が異なります。抽出に使う薬品は、アセトンメタノールやジメチルホルムアミドなどです。葉をそのまま使用してクロロフィルを抽出する場合は、ジメチルホルムアミドを使用します。

これらの測定方法の場合、方法に応じて葉を細かく刻む作業や一定期間薬品に浸す作業が必要です。つまり、葉などのサンプルは、樹木や植物体から葉を採取して葉緑素の測定のみに使用されます。そのため、これらの方法と比較すると、葉緑素計は「非破壊的」に葉緑素を測定可能といえます。

3. 葉緑素計の活用事例

葉緑素計は農業分野で幅広く利用されており、畑や水田に生育している植物体をそのまま測定できるため、収穫や追肥のタイミングの判断に活用されています。例えば、植物体の窒素含有量と葉緑素の含有量の相関関係を利用して、稲の栄養状態を把握するために葉緑素計が活用されています。つまり、従来サンプルを採取し、前処理をした上で分析にかけなければ分からなかった値が、現場で簡単に測定できるようになりました。

また、代表的な葉緑素 (クロロフィル) を測るだけではなく、β-カロテン含量の測定にも活用されています。ウシの飼料となるイネを栄養価が高い時期に収穫して与えれば、効率的な肥育管理が可能です。葉緑素計を利用すれば、これまで、目視などの個人の判断に頼っていた部分をブレなく判断でき、より効率的に作物を育成できます。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/cssjchugoku/32/0/32_KJ00002444042/_pdf
https://ocw.kyoto-u.ac.jp/ja/faculty-of-agriculture-jp/010-001/pdf/1.pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsprs/50/1/50_1_34/_pdf/-char/ja
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcs1927/32/2/32_2_157/_article/-char/ja
https://www.jstage.jst.go.jp/article/itej/68/1/68_63/_pdf
https://jspp.org/hiroba/q_and_a/detail.html?id=4359&key=&target= 
https://aimg.as-1.co.jp/c/2/8875/01/61/0288750160manuals.pdf?v=9c5daf0bf8fed7e2ae8cf7685a171a0c0f7cb740

自動滴定装置

自動滴定装置とは

自動滴定装置のイメージ

図1. 自動滴定装置のイメージ

自動滴定装置とは、滴定分析における滴定・当量点判断・濃度計算までを自動で行う装置です。

手動で行う滴定分析の場合、当量点の判断や滴定量を目視で確認する際に測定者による個人誤差が生じやすいのに対し、自動滴定装置では個人の経験によらず比較的安定した条件下での結果を得やすいのが特徴です。また、サンプルの秤量や複数サンプルを連続して測定する機能などを追加することで、多量の試料を効率的に分析できます。

自動滴定装置の使用用途

滴定には主に中和滴定、キレート (金属錯体) 滴定、沈殿滴定、酸化還元滴定などがあり、利用する化学反応の種類によって分類されています。自動滴定装置の主な使用用途は、これらの滴定が必要となる品質管理・検査・試験において、滴定作業の自動化・省力化・高効率化・正確化を行うことです。

1. 中和滴定

中和滴定は、果汁飲料・清酒・ワインや焼酎など飲食品の品質管理や石油製品および潤滑油の中和化試験 (JISK2501:2003) などに利用されます。

2. キレート滴定

金属への配位を原理とするキレート滴定は、金属を扱う業種や水の硬度測定に利用されます。

3. 沈殿滴定

沈殿滴定は、食品における塩分濃度の測定や腹膜透析液中の塩化物の定量などの目的で行われています。

4. 酸化還元滴定

酸化還元滴定は、水質汚濁の重要な指標であるCODを測定したり、食品中のビタミンCを測定したりするなどの目的で行われている手法です。

5. めっき液の分析と滴定

表面処理 (めっき) の分野においては、複数の滴定技術が用いられています。例えば、各種めっき液の金属イオンを検出するためにキレート滴定が行われており、沈殿滴定ではシアン浴のシアンや、ニッケルめっき液の塩化物が検出可能です。

酸化還元滴定はクロムめっき、スズめっき液の金属イオンを検出する目的で行われており、アルカリ度・炭酸塩・硫酸・ホウ酸を検出するためには中和滴定が必要です。このように、めっき技術において滴定分析は欠かせないものであり、新たな機能性材料や小型化・省エネ技術の発展に重要な役割を果たしています。 

自動滴定装置の原理

滴定曲線のイメージ

図2. 滴定曲線のイメージ

滴定とは、定量目的成分の含まれる溶液に対し、濃度が既に分かっている標準溶液を滴下し、これらの化学反応に基づいて定量目的成分の量を計算する分析手法です。手動の滴定分析では、指示薬を添加することで当量点を判断しますが、自動滴定装置では電気化学センサ (電極) を用います。

センサにはガラス電極、白金電極、銀電極などが用いられます。センサは当量点の判断方法に応じて使い分けられ、電位差滴定、光度滴定、分極滴定、電量滴定などの滴定モードがあります。

1. 電位差滴定

最も頻繁に使用される電位差滴定は、溶液に浸した2種のセンサ間に生じる電位差の変化を観察する分析手法です。例えば、中和滴定において2種のセンサを定量目的溶液と標準溶液の混合溶液に浸すと、両液のpH差に比例した電位差が発生します。両液のpHが等しくなる点では電位差が生じないため、当量点を判断することができます。

2. その他

光度滴定では指示薬による色の変化、分極滴定では滴定による電流の変化を測定します。電量滴定はファラデーの法則に基づき電流量により当量点を判断する手法です。

自動滴定装置の種類

多検体自動滴定装置のイメージ

図3. 多検体自動滴定装置のイメージ

滴定分析には上記のようにいくつかの種類があることから、自動滴定装置では製品によって分析可能な滴定分析の種類が異なります。また、測定原理も製品によって異なるため、目的の分析に合わせた製品を用いることが重要です。

製品によっては、カールフィッシャー水分測定計ユニットが取り付けられており、電量法・容量法による水分測定を同時に行うことが可能です。多検体多種類の測定を自動で行うことが可能な8検体用、12検体用、24検体用などがあります。その他、特別な用途に特化した装置もあります。

例えば、ワイン用の自動滴定装置ではワインの成分分析に特化しており、亜硫酸、滴定酸度、ホルモール窒素、pH、揮発酸、還元糖を一括で測定することが可能です。

参考文献
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/sonota/070622/01.htm
https://www.google.com/
https://kikakurui.com/k2/K2501-2003-01.html
http://jsac.jp/bunseki/pdf/bunseki2006/200605kougi.pdf

脱脂洗浄剤

脱脂洗浄剤とは

脱脂洗浄剤 (英: Degreasing cleaning agent) とは、強力な浸透力と脱脂力を持つ洗浄剤です。

油やワックスなどを除去する作業に使用されます。軽いサビの除去や腐食防止効果を持った製品も販売されています。使用後に残物が残らず織物類にも傷を与えないため、繊維にも使用可能です。

脱脂洗浄剤は、雑巾や麻浦を使った作業でも十分な洗浄力を有します。ただし、噴霧器や蒸気洗浄などを併用することにより、さらに高い洗浄効果を得られます。

脱脂洗浄剤の使用用途

脱脂洗浄剤は、さまざまな分野で使用される洗浄剤です。

1. 工業分野

工業環境でも用途は幅広く、金属部品や機械の洗浄に使用されます。自動車のエンジン部品や機械の歯車、ベアリングなどの油やグリースを取り除くために用います。また、金属の溶接面の清浄化や塗装前の表面処理にも重宝します。

2. 医療分野

医療機器や器具の洗浄にも使用されます。手術室や歯科クリニックなどで使用される医療機器は、高い衛生基準を満たす必要があります。医療機器の除菌や清掃に適しており、油や汚れを取り除くことで衛生的な状態を維持可能です。

3. 一般家庭

日常生活では、キッチンでの調理器具洗浄にも使用されます。調理器具には油や脂肪が付着することがよくありますが、これらの汚れを効果的に除去するために脱脂洗浄剤が活用されます。特に鍋やオーブンなどの表面にこびりついた油や焦げ付きを取り除くのに効果的です。

脱脂洗浄剤の原理

脱脂洗浄剤には乳化剤、分散剤、界面活性剤が含まれており、これらによって汚れを除去しています。

1. 乳化剤

乳化剤は油や脂肪分子と水の間に界面活性作用を起こし、油と水を混ぜることが可能です。これにより、油や脂肪が微小な粒子に分散し、水に乳化されます。

2. 分散剤

分散剤は汚れを微小な粒子に分散させ、浮遊させる働きがあり、これによって汚れが表面から剥離され、効果的に除去できます。

3. 界面活性剤

界面活性剤は水と油の間に働き、表面張力を低下させます。これにより、水が油や脂肪に浸透しやすくなり、汚れを効果的に取り除くことが可能です。

脱脂洗浄剤の種類

脱脂洗浄剤には、炭化水素系洗浄剤、有機溶剤系洗浄剤、アルカリ性洗浄剤 などの種類があります。

1. 炭化水素系洗浄剤

石油由来の溶剤を主成分とした脱脂洗浄剤です。油や脂肪の溶解と除去に特化しています。グリースや機械油の除去、金属部品の清浄化などに広く使用されます。炭化水素系洗浄剤には、酸素や窒素、硫黄を含む有機化合物が含まれているのが一般的です。

炭化水素系洗浄剤は、ドライクリーニングに使われるように、水を使わず有機溶剤で洗浄します。金属を腐食しないなどの有益な作用はありますが、危険物に該当するなど、法令と届出による規制対象物質になります。

トリクロロエチレンなどの塩素系炭化水素は、強力な洗浄力と素早い乾燥効果が特徴です。したがって、乾燥などの作業時間を短縮できますが、大気や水質汚染と地球のオゾン層破壊などが問題視されています。

2. 有機溶剤系洗浄剤

有機化合物を主成分としています。油や脂肪を溶解する性質を持っており、特に油性汚れの除去に効果的です。有機溶剤系洗浄剤は、機械部品の洗浄や塗装前の表面処理など、さまざまな産業分野で使用されます。一般的な有機溶剤系洗浄剤には、アルコール、ケトン、エーテルなどが含まれます。

3. アルカリ性洗浄剤

主に水酸化ナトリウム (苛性ソーダ) や水酸化カリウムなどのアルカリ性成分を主成分とした洗浄剤です。乾燥に時間がかかったり、金属部品では錆や変色が起こりやすいデメリットもあります。アルカリはたんぱく質を侵す物質であるため、皮膚に付着すると薬傷を引き起こします。

液体洗浄剤の場合、汚染の程度によって原液または適当な割合で薄めて使用可能です。洗浄温度は常温~80℃で使用できますが、温度を上げるほど洗浄力は上昇します。有機溶剤を使えない工程での脱脂に使われます。

脱脂洗浄剤のその他情報

脱脂洗浄剤の廃棄

炭化水素系やハロゲン系有機溶剤は、そのまま放置すると大気へ拡散します。アルカリ系洗浄剤で床洗浄を行った業者が、下水道に流したケースの報道もありました。脱脂洗浄剤の性質上、いずれの薬剤も適正な廃棄が必要です。

炭化水素系とハロゲン系有機溶剤の場合は、多くのメーカーは焼却を推奨します。アルカリ系洗浄剤は全量焼却する方法と、加圧浮上と中和を織り交ぜる方法があります。専門の廃棄物処理業者に処理委託をすることで、コストが削減できる場合も多いです。

参考文献
https://www.honmasangyou.co.jp/activities/difference.html
https://www.honmasangyou.co.jp/activities/difference.html
https://www.tokyo929.or.jp/m/column/washing_cleaning/2.php
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sfj1989/42/4/42_4_364/_pdf