自動滴定装置

自動滴定装置とは

自動滴定装置のイメージ

図1. 自動滴定装置のイメージ

自動滴定装置とは、滴定分析における滴定・当量点判断・濃度計算までを自動で行う装置です。

手動で行う滴定分析の場合、当量点の判断や滴定量を目視で確認する際に測定者による個人誤差が生じやすいのに対し、自動滴定装置では個人の経験によらず比較的安定した条件下での結果を得やすいのが特徴です。また、サンプルの秤量や複数サンプルを連続して測定する機能などを追加することで、多量の試料を効率的に分析できます。

自動滴定装置の使用用途

滴定には主に中和滴定、キレート (金属錯体) 滴定、沈殿滴定、酸化還元滴定などがあり、利用する化学反応の種類によって分類されています。自動滴定装置の主な使用用途は、これらの滴定が必要となる品質管理・検査・試験において、滴定作業の自動化・省力化・高効率化・正確化を行うことです。

1. 中和滴定

中和滴定は、果汁飲料・清酒・ワインや焼酎など飲食品の品質管理や石油製品および潤滑油の中和化試験 (JISK2501:2003) などに利用されます。

2. キレート滴定

金属への配位を原理とするキレート滴定は、金属を扱う業種や水の硬度測定に利用されます。

3. 沈殿滴定

沈殿滴定は、食品における塩分濃度の測定や腹膜透析液中の塩化物の定量などの目的で行われています。

4. 酸化還元滴定

酸化還元滴定は、水質汚濁の重要な指標であるCODを測定したり、食品中のビタミンCを測定したりするなどの目的で行われている手法です。

5. めっき液の分析と滴定

表面処理 (めっき) の分野においては、複数の滴定技術が用いられています。例えば、各種めっき液の金属イオンを検出するためにキレート滴定が行われており、沈殿滴定ではシアン浴のシアンや、ニッケルめっき液の塩化物が検出可能です。

酸化還元滴定はクロムめっき、スズめっき液の金属イオンを検出する目的で行われており、アルカリ度・炭酸塩・硫酸・ホウ酸を検出するためには中和滴定が必要です。このように、めっき技術において滴定分析は欠かせないものであり、新たな機能性材料や小型化・省エネ技術の発展に重要な役割を果たしています。 

自動滴定装置の原理

滴定曲線のイメージ

図2. 滴定曲線のイメージ

滴定とは、定量目的成分の含まれる溶液に対し、濃度が既に分かっている標準溶液を滴下し、これらの化学反応に基づいて定量目的成分の量を計算する分析手法です。手動の滴定分析では、指示薬を添加することで当量点を判断しますが、自動滴定装置では電気化学センサ (電極) を用います。

センサにはガラス電極、白金電極、銀電極などが用いられます。センサは当量点の判断方法に応じて使い分けられ、電位差滴定、光度滴定、分極滴定、電量滴定などの滴定モードがあります。

1. 電位差滴定

最も頻繁に使用される電位差滴定は、溶液に浸した2種のセンサ間に生じる電位差の変化を観察する分析手法です。例えば、中和滴定において2種のセンサを定量目的溶液と標準溶液の混合溶液に浸すと、両液のpH差に比例した電位差が発生します。両液のpHが等しくなる点では電位差が生じないため、当量点を判断することができます。

2. その他

光度滴定では指示薬による色の変化、分極滴定では滴定による電流の変化を測定します。電量滴定はファラデーの法則に基づき電流量により当量点を判断する手法です。

自動滴定装置の種類

多検体自動滴定装置のイメージ

図3. 多検体自動滴定装置のイメージ

滴定分析には上記のようにいくつかの種類があることから、自動滴定装置では製品によって分析可能な滴定分析の種類が異なります。また、測定原理も製品によって異なるため、目的の分析に合わせた製品を用いることが重要です。

製品によっては、カールフィッシャー水分測定計ユニットが取り付けられており、電量法・容量法による水分測定を同時に行うことが可能です。多検体多種類の測定を自動で行うことが可能な8検体用、12検体用、24検体用などがあります。その他、特別な用途に特化した装置もあります。

例えば、ワイン用の自動滴定装置ではワインの成分分析に特化しており、亜硫酸、滴定酸度、ホルモール窒素、pH、揮発酸、還元糖を一括で測定することが可能です。

参考文献
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/sonota/070622/01.htm
https://www.google.com/
https://kikakurui.com/k2/K2501-2003-01.html
http://jsac.jp/bunseki/pdf/bunseki2006/200605kougi.pdf

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