高分子凝集剤

高分子凝集剤とは

高分子凝集剤とは、水中に懸濁している粒子の表面電荷を中和して粒子を凝集させる高分子薬剤のことです。

主に、廃水中で汚濁の原因となっている浮遊微粒子を凝集・沈殿させるのに用いられます。高分子凝集剤を用いて沈殿させた沈殿物は、脱水やろ過により、水と分離して処理することが可能です。

高分子凝集剤は、凝集させる微粒子の表面荷電によってアニオン性・カチオン性・ノニオン性・両性のものを使い分けます。粉末状やエマルジョンなどの形状があり、粉末状の方が管理が容易ですが、水への溶解ではエマルジョンの方が優れています。

高分子凝集剤の使用用途

高分子凝集剤は、下記に例を挙げる産業における汚泥の濃縮、体積を減らす (減容化) 用途、選鉱処理などに用いられます。

  • アニオン性凝集剤
    金属・土木・鉱山・窯業・紙パルプ・化学・食品等、無機物質を扱う産業で多く用いられます。
  • カチオン性凝集剤
    し尿・下水・紙パルプ・食品など、有機物を取り扱う産業
    に対して使用される場合が多いです。
  • ノニオン性凝集材
    酸性排水に用いられます。
  • 両性凝集材
    カチオン性凝集剤では不十分な場合に用いられます。

また、用水処理に高分子凝集剤は使用しません。高分子凝集剤が残存した場合、イオン交換装置や逆浸透膜装置の有機物汚染の原因になるためです。 

高分子凝集剤の原理

高分子凝集剤による凝集のイメージ

図1. 高分子凝集剤による凝集のイメージ

高分子凝集剤によって凝集・沈殿を生じるメカニズムは以下のようになります。

  1. 凝結
    まず、水中の微粒子と逆の電荷を持つ無機凝結剤 (ポリ塩化アルミニウム (PAC) 、硫酸鉄等) などを投入し、懸濁粒子の表面電化を中和します。この時にできるかたまり、即ち微細フロック (Flock) を基礎フロックと呼びます。
  2. 凝集
    基礎ロックが生じた水中に、高分子凝集剤を投入します。高分子凝集剤の活性基 (ポリアクリルアミド構造等) と小さなフロックとの分子間相互作用によって、小さなフロックが高分子に絡められるように吸着・架橋し、粗大フロックに成長します。

主な凝集剤

図2. 主な凝集剤

沈殿に際して、pHの調整には注意が必要です。理由として、適切なpH環境でなければ沈殿が生じないことや、沈殿後に再溶解恐れがあることが挙げられます。また、高分子凝集剤を必要量以上に投入してしまうと、高分子凝集剤への吸着が先行し、架橋が不十分になり、凝集が生じにくくなります。

各凝集剤に対して適切なpHは下記のとおりです。

  • アニオン性凝集剤:pH 7~12
  • カチオン性凝集剤:pH 4~8
  • ノニオン性凝集剤:pH 4~8

高分子凝集剤の種類

主な高分子凝集剤のモノマー構造

図3. 主な高分子凝集剤のモノマー構造

高分子凝集剤は、イオン性と形状の観点から分類することができます。

1. イオン性

前述の通り、高分子凝集剤には、帯電している電荷によって、アニオン性 (陰イオン) ・カチオン性 (陽イオン) ・ノニオン性 (非イオン) ・両性のものがあります。アニオン性やノニオン性は、主に、無機・有機凝結剤によって基礎フロックを形成した粒子を架橋し、粗大フロック化するのに用いられます。カチオン性の高分子凝集剤は、生物処理汚泥の脱水に用いられることが多いです。

2. 形状

高分子凝集剤は粉末状の固体と、エマルジョン状の商品が流通しています。粉末状のものは、運搬と保管の上で取り扱い易いですが、溶解性が低いため使用時には注意が必要です。通常は粉体を水に少量ずつ投入し攪拌します。一度に大量に入れると、表面だけが膨潤し、未溶解粒子同士が付着して大きな固まりとなる恐れがあるためです。

溶解自体にも、エマルジョン状のものより時間がかかり、撹拌しながらしばらく待つ必要があります。また、粉体の場合は吸湿するので、保管は禁水です。このため、屋外に高分子凝集剤タンクがある場合はエマルジョン製品を使用する方が適切と言えます。

エマルジョン状のものは粉末状のものより溶解しやすく、比較的すぐに溶解します。ただし、粉体よりも種類が少なく、特殊な原水にはマッチしない場合があるので注意が必要です。

高分子凝集剤の選び方

最適な高分子凝集剤を選定するためには、様々な条件を考慮することが必要です。添加対象の原水の成分、pH変動幅、最適添加量、使用時の気温や、設備上の投入ポイントなど様々な要素があります。夏季用と冬季用で種類を変えるケースも少なくありません。

選定にあたっては、凝集沈殿試験 (ジャーテスター、シリンダーテスター等) や脱水試験机上試験 (遠心脱水試験、ベルトプレス脱水試験等) を行って適正銘柄・適正処理条件を選定した後、実機試験を行います。

参考文献
http://oec.gr.jp/intro03.html
https://www.google.com/url?sa=t&source=web&rct=j&url=https://www.gesui.metro.tokyo.lg.jp/contractor/information/pdf/2024f5ae3d86bebd785c4892b5d7bb6bb7251f14.pdf&ved=2ahUKEwjR4Ofes7ftAhVeyIsBHR6jBUAQFjAAegQIARAB&usg=AOvVaw1cPqu0w0Lfcv3HSyrSdzVK
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kobunshi1952/51/7/51_7_504/_article/-char/ja/
https://www.hsingnan.com.tw/images/aronfloc/TDS/polymer.pdf
https://kcr.kurita.co.jp/wtschool/012.html

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