シリンジとは
図1. シリンジのイメージ
シリンジとは、注射器の構成部品のうち、注射針とプランジャ(押子)を除いた、液体を充填する筒状の部分のことです。
注射筒、外筒とも呼ばれます。現在は、ディスポーザブルのプラスチック製 (ポリプロピレン) のものが主流ですが、ガラス製 (ホウケイ酸ガラス) のものも必要に応じて使用されます。
シリンジの使用用途
シリンジの使用用途は、医療用と実験用の2種類に大別されます。
現在主流のプラスチック製シリンジは、滅菌して個別包装され、基本的に使い捨て (ディスポーザブル)です。その理由は、医療現場における感染予防、および、化学実験等におけるコンタミ防止です。
プラスチック製注射筒は加熱殺菌できないため、エチレンオキサイドガス滅菌や放射線 (γ線) 滅菌が使用されています。一方、下記のような場合には、ガラス製のシリンジが用いられます。この際、医療用のガラス製シリンジは仕様の都度滅菌して繰り返し使用されます。
- 医療現場において、プラスチック製のシリンジでは薬物吸着や樹脂添加剤の流出等の懸念がある場合
- 有機化学実験など、有機溶剤で樹脂が溶ける恐れがある場合
1. 医療用シリンジの使用用途
医療用途では、主に採血や薬剤の注入、浣腸などに利用します。
予防接種など薬剤の注入に利用する場合は、感染予防や作業の効率化等の観点から、予め薬剤が充填されたプレフィルド・シリンジを用いることもあります。
2. 実験用シリンジの使用用途
医療現場以外にも物理・化学・生命科学分野における実験器具として用いられます。主な用途は、液体や気体の注入、体積の測定、加圧・減圧、滴下、分注などです。
シリンジの原理
図2. シリンジの使用時のイメージ
シリンジは、通常、可動式のプランジャー (押子) とセットで用いられ、先端に注射針を取り付けて使用します。
シリンジの容量は目的に応じてさまざまなものがありますが、針との接続部分のサイズや形状は容量に関わらず統一されています。そのため、どのような太さ・長さの針でも取り付けることが可能です。
シリンジの種類
シリンジは、先端の形状と針の接続部分の位置によって、分類することができます。
1. 先端の形状による分類
- ルアーロック式
針を取り付ける部分がネジ状になっており、針が抜け落ちないように固定することができます。 - ルアーチップ式
針取り付け部分のテーパーを利用して針を固定します。針の着脱がしやすいというメリットがあります。 - ルアーメタル式
先端部が金属でできており、強度が高くなっています。 - 浣腸式
浣腸や膀胱洗浄に使用する浣腸器等の器具に見られる形状です。体内に挿入するため、先端部が若干丸みを帯びています。 - カテーテルチップ型
カテーテルに接続するためのカテーテルシリンジの先端部は、通常の注射器用シリンジの先端部よりも太くなっています。カテーテルシリンジと注射器用シリンジの取り違えによる液剤投与過誤を防ぐため、両者の形状は明確に分けられているのです。
2. 針の接続部分の位置による分類
- 中口タイプ
接続部分が筒の中心にあります。容量が10ml以下と小型のシリンジでは、中口タイプが一般的です。 - 横口タイプ
接続部分が筒の中心から端にずれた位置にあります。容量が大きいシリンジでも、浅い角度で穿刺しやすいようになっています。また、先端部分が端にあることで空気抜きもしやすくなっています。