閉止フランジとは

閉止フランジ (英: Blind Flange, Blank Flange) とは、配管に使用する継手の一種で、配管などの端部で使用流体の流れを止めるためのフランジです。
一般的に「ブラインドフランジ」「ブランクフランジ」なども同義語として使用されます。フランジとは、パイプ (配管) やダクト、装置などの機器に取り付けられた平面の「つば」状の板を示します。配管のパイプ同士、装置とパイプ、軸同士もしくは軸と回転機の接続に用いられる部品です。
本記事では、一般的な配管継手としての配管用フランジについて説明します。
閉止フランジの使用用途

図1. 閉止フランジの使用例
流体の流れを止める方法として、バルブで閉止する場合もありますが、閉止フランジは配管端部の開口部を完全に塞ぎ閉止するために使用します。流体を閉止するとともに、開口部からの異物侵入を防ぎ、大気に触れることなく閉止が可能です。
また、工場や発電所などでは応急的や一時的な閉止として、閉止フランジが使用されます。消火水や洗浄用水など常設設備ではない配管で閉止フランジを取り外し、パイプやホースをフランジ接続して、流体を流すときのみの使用方法です。
なお、閉止フランジは必ず管端には相手側となるフランジが接続され、ガスケットを挟み込み閉止フランジを取り付けます。基本的には、相手側のフランジと閉止フランジは同仕様・同材質・同サイズの選定になります。
閉止フランジの原理

図2. 閉止フランジによる閉止と対角締付
閉止フランジは、フランジ中央にパイプの貫通穴がなく、ボルト穴だけがある点が他の配管フランジと異なります。閉止フランジの締め付けは、フランジ間にガスケットを挟み込み、ボルト・ナットで締め付け密着力を高めます。
ボルト・ナットは均等に締め付ける必要があり、不均等な場合は漏洩する可能性が高いです。均等に締め付ける際は、対角に締め付けていく方法が一般的です。
また、ガスケット材質やボルト・ナットの規定トルク値で締め付けることが重要です。必要な締め付けトルク値まで対角の順番に、徐々に締め付けトルクを強めて締め付けていきます。
高温流体に使用する場合は、実際に高温流体を流した後に、熱膨張によりねじ部の締め付けが緩むことがあり、ボルト・ナットを増し締めする必要があります。
閉止フランジの種類
閉止フランジは、流体の種類・圧力・温度・流量などを基準として、呼び径 (配管・パイプ径) 、呼び圧力、ガスケット座種類、材質などを選択します。
1. 呼び径
閉止フランジの呼び径は、使用する配管 (パイプ) と同じ呼び径を選定します。JISの鋼製管フランジでは、10A (3/8B) ~1,500A (60B) まであります。
2. 呼び圧力
呼び圧力は使用流体の圧力、温度、フランジ材質によって分類され、各規格の基準に従って選定します。各規格の呼び圧力の例は下記のとおりです。
- JIS規格
5K, 10K, 16K, 20K, 30K, 40K, 63Kの7種類
- ASME/ANSI
クラス150, 300, 400, 600, 900, 1500, 2500の7種類
- ISO
PN10, 16, 20, 50, 110, 150, 260, 420の8種類
3. ガスケット座の種類

図3. ガスケット座の種類
ガスケットに面する座面は下記の4種類があり、ガスケット種類に応じて選定します。
- 全面座 (FF)
- 平面座 (RF)
- はめ込み形 (MF)
- 溝形 (TG)
4. 材質
材質は、炭素鋼、オーステナイト系ステンレス鋼などが使用されますが、代表的な例としてJIS規格の鋼製管フランジでは、下記のような材質があります。
材質
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圧延材
|
鍛造材
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鋳造材
|
材料グループ番号
|
規格番号
|
材料番号
|
規格番号
|
材料番号
|
規格番号
|
材料番号
|
炭素鋼
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JIS G3101 JIS G4051
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SS400 S20C
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JIS G3201 JIS G3202 JIS G4051
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SF390A SFVC1 S20C
|
JIS G5101 JIS G5151
|
SC410 SCPH1
|
001
|
JIS G4051
|
S25C
|
JIS G3201 JIS G4051
|
SF440A S25C
|
JIS G5151
|
SC480
|
002
|
-
|
-
|
JIS G3202
|
SFVC2A
|
JIS G5151
|
SCPH2
|
003a
|
低合金鋼
|
-
|
-
|
JIS G3203
|
SFVA F1
|
JIS G5151
|
SCPH11
|
013a
|
-
|
-
|
JIS G3203
|
SFVA F11A
|
JIS G5151
|
SCPH21
|
015a
|
ステンレス鋼
|
JIS G4304 JIS G4305
|
SUS304 SUS304
|
JIS G3214
|
SUSF304
|
JIS G5121
|
SCS13A
|
021a
|
-
|
-
|
-
|
-
|
JIS G5121
|
SCS19A
|
021b
|
JIS G4304 JIS G4305
|
SUS316 SUS316
|
JIS G3214
|
SUSF316
|
JIS G5121
|
SCS14A
|
022a
|
-
|
-
|
-
|
-
|
JIS G5121
|
SCS16A
|
022b
|
JIS G4304 JIS G4305
|
SUS304L SUS304L
|
JIS G3214
|
SUSF304L
|
-
|
-
|
023a
|
JIS G4304 JIS G4305
|
SUS316L SUS316L
|
JIS G3214
|
SUSF316L
|
-
|
-
|
023b
|
フランジの材質の選定は、JIS規格では配管内を流れる使用流体の「最高使用圧力」と「流体の温度」により、「呼び圧力」と「材料グループ番号」が選択されます。材料グループ番号に区分けされた複数の規格材料から、フランジ製造方法、使用環境やコストなどにより材質を選定します。
1. 規格
フランジ部分の規格も一般のフランジと同様に、JIS、JPI、ASME/ANSIなどの各種規格があります。代表的な例として以下があります。
- JIS B2220 鋼製管フランジ Steel pipe flanges
- ASME/ANSI B16.5 Pipe Flanges and Flanged Fittings, NPS1/2 Through NPS24 Metric/Inch Standard
- ISO 7005-1 Pipe flanges-Part 1: Steel flanges for industrial and general service piping systems
- JPI-7S-15 石油工業用フランジ (JPI: 日本石油学会)
- JPI-7S-43 石油工業用大口径フランジ
2. ガスケット

図4. ガスケットの種類
閉止フランジに使用するガスケットは、使用流体の温度と圧力の適合性で選定します。下記は代表的なガスケットの種類です。
ジョイントシートガスケット
炭素繊維などにゴムを配合し、シート状に加硫圧延したガスケットで、フランジ座面寸法に合わせて切断して使用します。
うず巻形ガスケット
V字形断面の金属フープ (金属薄板) とフィラー (テープ状のシール材) を重ね、うず巻状に成型したガスケットです。密閉性 (シール性) が高く、高温・高圧流体で多く使用されます。
リングジョイント
オーバルとオクタゴナル2種類の断面形状で、軟鋼、ステンレス鋼、モネルなどの材質のメタルガスケットです。主に石油工業界のJPI規格で使用されています。