アダプターナットとは

アダプターナット (英: Adapter Nut) は、軸受 (ベアリング) の位置固定用部品です。
アダプタースリーブ、ロックワッシャと組み合わせてアダプターと称されます。一般的に、ロックナット、ベアリングナットは同義語です。
アダプターは、自動調心玉軸受や自動調心ころ軸受の内輪 (インナーリング) がテーパー穴の場合に使われ、取り付けや取り外しは容易になります。この場合、アダプターナットをスリーブにねじ込み軸受内輪を固定します。
アダプターナットの使用用途

図1. 使用例
1. テーパー穴軸受の固定
アダプターナットは、自動調心玉軸受や自動調心ころ軸受内輪がテーパー穴の場合、アダプタースリーブや取り外しスリーブとの併用で、内輪を固定します。これにより、軸受の取り付け・取り外しが容易になります。
2. 円筒穴軸受の固定
深溝玉軸受やアンギュラ玉軸受の内輪が円筒穴の場合、ねじ加工された軸端にアダプターナットをねじ込み、内輪を押し込み固定します。アダプターナットのねじは、左ねじと右ねじがあります。軸回転が反時計回りでナットが左ねじの場合、双方の回転が同方向のため緩み易くなり、右ねじを採用する場合があります。
アダプターナットの原理

図2. 軸受の固定
アダプターナットによる軸受の固定方法は、内輪の穴形状別に下記の2つになります。
1. テーパー穴
テーパー穴の場合、アダプタースリーブもしくは取り外しスリーブと共にアダプターナットを使用します。スリーブ内径は円筒穴で軸に取り付け側で、外径側は内輪に取り付け側になり、テーパー形状になっています。内輪のテーパー穴はスリーブと逆向きです。
アダプタースリーブ
アダプタースリーブを軸に取り付け、スリーブねじ部にナットを締め込むと、スリーブと内輪のはめ合いがきつくなり、固定されます。はめ合いとは、軸と穴の隙間の関係で、隙間が少ないほど相互の締め付けがきつくなります
取り外しスリーブ
組み立ての際は、取り外しスリーブを軸に取り付け、スリーブおすねじ部にナットを締め込むと、スリーブと内輪のはめ合いがきつくなり、軸に固定されます。取り外しの際は、軸端ねじ部に取り外し用のアダプターナットを締め込むと、スリーブが引き出されはめ合いが緩くなり、軸との拘束を解放します。また、アダプターナットと内輪の間にロックワッシャ (直舌付き座金) を挟み込み、ナットの切り欠きにワッシャの歯を折り曲げると、回り止めになります。
2. 円筒穴
円筒穴の軸受を軸に固定する場合も、アダプターナットを使用します。軸端おすねじ部に、アダプターナットを締め込み、内輪を軸の径違い部に押し付け固定します。この場合も、ロックワッシャ (直舌付き座金) で回り止めします。
アダプターナットの種類

図3. 種類
アダプターナットは、型式、緩み止め、用途による種類があります。
1. 型式
- 標準型
ねじ締めだけで固定するスリーブに使用します。
- 油圧式スリーブ用
油圧によって組み込み、取り外し時の補助をする油圧式スリーブに使用します。
2. 緩み止め
- ハードロックナット
テーパー状の凹凸が偏心している2つのナットで、凸ナットねじ部がスリーブ側に押し付けられ、凹ナットねじ部が逆側に押し付けられるため、クサビ効果で緩みを防止します。
- フリクションリング式ナット
アダプターナットを締め込むと、ナット端のフリクションリングがスリーブねじ部に接触してたわみます。接触した摩擦抵抗により緩みを防止します。
- 精密ナット
ねじ部を高精度に加工し、内輪を均等に押すことで緩みを防止します。さらにセットスクリューで締め付けるタイプもあります。
アダプターナットのその他の情報
1. 規格
アダプターナットは、ロックナットとして仕様・寸法などが下記規格で規定されています。アダプターナットのねじは、JIS B0205 一般用メートルねじ、もしくはJIS B0216 メートル台形ねじになります。
- JIS B1554: 2016 転がり軸受-ロックナット、座金及び止め金
- ISO 2982-2: 2013 Rolling bearings -Accessories -Part 2: Dimension for locknuts and locking device.
2. 材質
一般的なアダプターナットの材質を下記に示します。
- JIS G3101 一般構造用圧延鋼材
- JIS G4051 機械構造用炭素鋼鋼材
- JIS G4804 硫黄及び硫黄複合快削鋼鋼材
3. 工具

図4. 締め付け工具
アダプターナットの締め付け工具は、専用の引っ掛けフックが付いた引掛スパナや、ナットの切り欠きに合うように作られたソケットをラチェットレンチなどにはめ込み締め付けます。