ステップドリルとは
ステップドリルとは、金属やプラスチックなどの材料に穴を開けるためのドリルビットの一種です。
通常のドリルビットと異なり、複数のサイズの穴を開けられます。「タケノコドリル」と呼ばれることもあります。
ステップドリルには複数の異なるサイズの刃があり、各刃は前の刃よりも大きなサイズの穴を開けられます。これにより複数のサイズの穴を開けるために複数のドリルビットを使う必要がなくなります。
また、穴を開ける際に生じる振動を減らせて正確な穴を開けられることも利点です。ステップドリルは金属板やパイプ、樹脂、木材など様々な材料に使用されます。
ステップドリルの使用用途
ステップドリルの使用用途は主に下記の通りです。
- 金属板やパイプ
航空機のボディやエンジン部品、車両のボディパネルやフレーム、水道管や配管などの穴開けなど - 電気配線用
家庭やオフィスの壁に配線を通すための穴開けなど - 木材やプラスチック
家具や工芸品などの穴開け、ハンドルやノブを取り付けるための穴開けなど - シャーシや筐体
電子機器の筐体やシャーシに部品を取り付けるための穴開けなど - レールやアルミ材
窓枠のレールに取り付けるための穴開け、自転車やモーターサイクルの部品に穴を開けるなど - メンテナンス作業
ブレーキパッドやホイールなどの部品交換に必要な穴開け、排気系の穴開けなど
ステップドリルの特徴
長所
ステップドリルは複数の穴径に対応できるため、多様な穴径が必要な場合でも複数のドリルを用意する必要がなくなり作業効率が向上します。また鋭い先端部分が素材を切削するため、加工時の振動やバリの発生が少なく、仕上がりが良好です。これにより作業時間の短縮が可能となります。
ステップドリルは専用の加工技術や技能が不要であるため、初心者でも扱いやすい工具です。木材や金属、プラスチックなど広範囲な材料に適用できるため、様々な用途に使用できます。
短所
ステップドリルは、薄い先端部分が他のドリルビットよりも脆いため、長期的には耐久性に欠ける可能性があります。またステップドリルは通常のドリルビットよりも高価であるため、費用対効果が低くなる可能性があります。
ステップドリルは小さな穴を開けるために設計されており、大きな穴を開けるには適していません。また硬い素材や、ガラス、セラミックなどのような脆い素材を加工する場合は、他のドリルビットを使用する必要があります。
ステップドリルの種類
ステップドリルは素材や形状、切削方式などいくつかの分類方法がありますが、切削する素材で分類すると主に以下のような種類があります。
1. 金属用ステップドリル
主に金属板やパイプ、アルミニウム、銅、真鍮、鉄などの金属材料に使用されます。金属用ステップドリルの刃先は非常に硬く、高速回転にも耐えられます。また金属用ステップドリルは、金属を切削する際に発生する熱を逃がすために冷却液の使用が推奨されます。
2. 木材用ステップドリル
主に木材などの柔らかい材料に使用されます。木材用ステップドリルは、金属用ステップドリルと比べて刃先がやや柔らかいため刃先が欠けることが少なく、切削面の仕上がりが滑らかになるように設計されています。
3. プラスチック用ステップドリル
主にプラスチックなどの軟質材料に使用されます。一般的に、プラスチック用ステップドリルは鋭い刃と先端部分がより広がっている形状をしています。これは、プラスチックなどの軟質材料を切削する際に生じるチッピングやバリの発生を抑えるためです。
ステップドリルのその他情報
1. ステップドリルの加工の種類
ステップドリルは、ドリルビットの先端部分に切削刃を付けたものであり、材質や使用目的に合わせて焼入れやコーティングなどの加工が施された様々な種類があります。
焼入れ
ドリルビットの先端部分を焼入れして、耐久性や切削性能を向上させます。焼入れを施したステップドリルは、より高速での切削が可能で切削面の精度も向上します。
コーティング
ドリルビットの表面に特殊な材料をコーティングして表面硬度や耐摩耗性を向上させるもので、様々な種類があります。例えばチタンコーティングは、ドリルビットの表面にチタンをコーティングすることで、耐摩耗性や耐食性が向上します。またダイヤモンドコーティングは、ドリルビットの表面に人工ダイヤモンドをコーティングすることで硬度や耐摩耗性を向上できます。
2. 穴あけの過程
ステップドリルによる穴あけの過程は以下のようになります。
- マーキング
ステップドリルが正確な位置で切削するためにまず穴をあける場所に目印をつけます。 - ステップドリルの取付
必要な穴の大きさに合わせて適切なステップドリルを選択し、ステップドリルをドリルチャックに取り付けます。 - 切削開始
ステップドリルを穴をあける場所に合わせて、軽く圧力をかけながら回転させます。最初は少しだけ切削し、その後段階的に切削量を増やしていきます。 - 穴の拡大
ステップドリルには直径の異なる複数の刃があります。必要な穴の大きさに合わせて適切な刃を選択しながら切削を続けて穴を拡大します。 - 切削終了
穴を完全に切り抜いて切削を終了します。 - 穴の仕上げ
ステップドリルで切り抜いた穴は、比較的滑らかな面を持ちますが、必要に応じてサンドペーパーやバリ取りツールなどを使って切断面を仕上げます。