真空遮断器とは
真空遮断器はVCB(Vacuum Circuit Breaker)とも呼ばれ、機器や電力系統に異常が発生した際、回路の遮断に利用されている装置です。
真空遮断器は遮断器のなかでも性能が高く、短絡電流、負荷電流、過電流などすべての電流を遮断することができることが特徴です。そのため事故電流などで急激に、数千、数万アンペアといった大電流が発生した場合でもアーク放電を消弧し、回路を遮断することができます。真空遮断器は大規模な高圧受変電設備でよく使用されており、高圧遮断器のひとつです。
真空遮断器の使用用途
真空遮断器は、回路を事故電流等から守り、異常な電流が発生した際にその回路を遮断するために使用されています。遮断器はほかにもいろいろな種類がありますが、真空遮断器は電流が大きい場合によく使用されています。価格も高いほうではないので、ほとんどの高圧受変電設備の配電盤では真空遮断器が設置されています。具体的な設置場所は、変電所や大規模な工場ビル、商業施設などです。
真空遮断器のみでは異常な電流を検知できないので、通常は過電流継電器などを併用して信号を受けとり、電流を自動で遮断できるようになっています。
真空遮断器の原理
真空遮断器は内部が真空バルブ構造になっています。その真空度は10-3Pa~10-5Paとかなり高いです。バルブ内では2つの固定電極と可動電極がつながって接点になっていますが、異常があるという信号を受け取ると離れるようになっています。
電流を遮断するためには、回路の接点を離すだけで済むのですが、接点を離した際にアーク放電が発生します。電流が大きいと発生するアーク放電によって発熱して高温になり火花がスパークすると、被覆が溶けたり発火して周辺が損傷したりしてしまいます。そこで、真空遮断器ではアーク放電を防ぐため、真空状態を利用します。真空状態ではアークが拡散され、消弧する性質があります。真空遮断器は真空バルブの中で電極を離し、アークを自然に消滅させています。
真空遮断器は、いざという時に不具合がないよう、真空バルブ機構の定期的なメンテナンスが必要です。ヒューズは一度使用したら交換が必要ですが、真空遮断器は繰り返して利用することができます。また、遮断時の騒音が小さいという特徴があります。
真空遮断器の種類
真空遮断器には取り付け方の違いによって、固定型と引き出し型があります。また、それぞれに手動ばね式、電動ばね式があります。
取り付け方の違い
固定型はパネルに固定して取り付けて使用します。据付の方向によってN、R、Pの方法があります。固定型は小型ですが、メンテナンスや故障時には一次側、二次側とも停電させなければならないので手間がかかります。引き出し型は車輪等がついており、真空遮断器部分を引き出すことができるタイプで、主回路との接続、断路がしやすくなっています。そのため引き出し型は二次側だけの停電で済むので、メンテナンスがしやすい利点があります。価格は固定型より高くなっています。
ばね式の違い
真空遮断器は、ばねの力を利用して物理的に接点を遮断できるようになっています。手動ばね式ではメインとなるばねを自分でハンドルを回して操作し蓄勢します。蓄勢とはばねに力がかかっている状態です。対して電動ばね式はモーターを利用して電動で蓄勢します。電動ばね式の方が、価格は割高なことが多いです。どちらの方式も一度真空遮断器が作動したら接点が開放されたままになっているので、ばねで蓄勢して元に戻すことが必要です。
その他
また、さらに大型の変電所等で使用されるガス遮断器の一部が真空になっているタンク型の真空遮断器もあります。
真空遮断器の選び方
性能が高い真空遮断器ですが、装置により決まっている定格遮断電流と定格遮断容量を確認し、回路の短絡遮断電流が超えないように選択する必要があります。回路の短絡遮断電流が大きすぎると事故の原因となる可能性があります。電力会社から短絡遮断電流が示される場合と、自分で配線インピーダンスを考慮して計算する場合があります。
また、配電盤の形に対応する機種を選択する必要があります。