SCS13

SCS13とは

SCS13とは、オーステナイト系ステンレス材であり、その中でも最も一般的な18-8ステンレスの一種です。

18-8ステンレスの数字は、それぞれクロムニッケルの含有率を表しています。クロムは金属表面に不動態被膜を形成することで錆びにくくし、ニッケルは耐食性をより高めています。

SCSは「Steel Casting Stainless」の略で、鋳造加工で成型したステンレスのことです。SCS13の番号部分はSCSの化学組成の違いを表しています。化学組成の違いで、ステンレスの機械的性質や耐食性が異なり、番号は1から36までです。

SUS304相当の機械的特性を有した鋳物であり、自動車部品、食品設備、産業機械など幅広い領域で使われています。耐食性は有機酸、硝酸リン酸に対しては高いのですが、硫酸に対しては低いです。そのため、硫酸を扱う場合は用途により注意が必要です。

SCS13の使用用途

SCS13は、SUS304相当のステンレス鋳鋼品で最も一般的な材質です。耐食性に優れ、低温から高温まで幅広く使用できるため、ステンレス鋼耐熱鋼として最も広く使用されています。

鋳物の特徴を活かして、圧延や鍛造では作製しにくい複雑な形状の部材に適しています。例えば、食品設備、化学製造設備、原子力用、機械各種およびそれらの部品、バルブ・ポンプ・インペラー等です。

耐酸性はあるものの、硫酸耐性はそれほどでもないため、硫酸を使用するような用途では、より耐性を強めたSCS14が選ばれることが多いです。

SCS13の特徴

SCS13はオーステナイト系ステンレスのため、磁性はありません。ただし、曲げや打撃を加えることで塑性変形させた場合は、加工硬化が生じて磁性を有します。比重は7.98前後です。

SCS13には熱処理の一種である固溶化処理が施されています。固溶化処理は加熱・保持することで合金成分を材料内に溶かし、析出物を出さないように急冷する熱処理です。SCS13は固溶化処理により、鋳造で生じた内部応力の除去と耐食性の向上が行われています。

また、SCS13はSUS304相当のステンレスでありながら、鋳物として以下のメリットを享受できます。

  1. 形状の自由度が高い
  2. 大きさの自由度が高い
  3. リサイクル効率が高い

一方で、以下のような鋳物のデメリットも有しています。

  1. 寸法精度を高く設定できない
  2. 鋳巣の発生

寸法精度はロストワックス鋳造法を用いることで解消することができます。また、鋳巣とは鋳造物に空洞が生じる現象のことです。鋳物の強度を下げてしまう働きがあります。

SCS13のその他情報

1. SUS304・SCS13a・SCS14との比較

SUS304
シリコン、硫黄、ニッケルなどの化学組成に多少の違いはあるものの、ほぼ同等の性質を持ちます。SCS13よりも一般的なステンレス鋼で、薄板での利用が多いです。

SCS13a
マンガン量が0.5%減少しているのみで、その他の化学組成は同じです。SCS13よりも機械的強度が高いです (耐力、引張強さ) 。硬さはブリネル硬さが183以下であり、同等です

SCS14
モリブデンを添加しており、SCS13よりも高価格、高耐食、高耐孔食です。腐食に強いため、海水や潮風などの腐食しやすい環境で使用されます。

2. ロストワックス鋳造法

ロストワックス鋳造法とは、鋳型がロウでできた鋳造法の一種です。ロウでできているため、高精度で表面がなめらかな鋳物を作製できます。ステンレスや炭素鋼など様々な材質で鋳造でき、小サイズの鋳物作製も可能です。

工程上の都合により、鋳型が一回きりの使い捨てではありますが、制作コストは低いです。そのため、小ロット生産にも対応できます。SCS13においても、複雑な形状のもの、小サイズのものを鋳造する際に使用されます。

3. SCS13と関連する金属材料一覧

参考文献
https://www.takesugi.co.jp/lost-wax
https://www.taiyoparts.co.jp/lostwax-navi/column/420.html
https://suspro.morichu.co.jp/strengths/
https://sanwamekki.com/

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