FC250とは
FC250とは、JIS (日本産業規格) で規定されている「ねずみ鋳鉄」の一種です。
ねずみ鋳鉄とは、鋳鉄の一種で黒鉛の影響で破面がねずみ色に見えることからこのような名前が付けられました。ねずみ鋳鉄は、6種類 (FC100、FC150、FC200、FC250、FC300、FC350) に分類されています。FCの右側の3桁の数字は、引張強さ (MPa: メガパスカル) を表しています。例えば、FC250の引張強さは250 (MPa) 以上です。FC250の化学成分は、JIS規格では定められていません。
FC250の使用用途
FC250の主な使用用途の例は下記の通りです。
1. 自動車部品
自動車部品では、シリンダーブロック、シリンダーヘッド、クランクシャフト、カムシャフト、ブレーキディスクなどに使用されています。シリンダーブロックとは、シリンダーを収めるためのケース状の部品です。ブレーキディスクとは、自動車やバイクなどの車両に装着されるブレーキシステムの一部で、車輪に取り付けられたディスク状の部品です。
2. 機械部品
機械部品では、ギヤ、ベアリング、ピストンなどに使用されています。特に、鉄道の部品では車輪、車両枠などに使用されています。
3. 金型
金型ではプラスチック成形用金型、圧延用金型、鋳造用金型に使用されています。圧延用金型とは、金属の板や棒状の原料を、所定の形状に加工するために使用される金型のことです。
FC250の性質
FC250の主な性質は下記の通りです。
1. 耐摩耗性
FC250は耐摩耗性が高く、機械部品などの寿命を延ばせます。
グラファイト (黒鉛) が摩擦や衝撃を吸収するので、FC250の耐久性は高くなります。またFC250は、炭素含有量が比較的高く硬いため、耐摩耗性が高いのが特徴です。
2. 切削加工性
FC250は黒鉛の潤滑効果により切削性が良好で、加工しやすい材料です。内部には片状の黒鉛組織が散在するため、切りくずが小さく分断されやすくなります。また黒鉛が固体潤滑剤として作用するので、鋼やステンレス鋼に比べると切削抵抗が低く、切削加工性が良好です。よって適切な工具を使って加工して、精度の高い形状に仕上げられます。
3. 振動吸収性
振動吸収性とは、物体が振動した際に振動を吸収して減衰させる性質です。FC250は振動吸収性が高いので、機械部品の振動や騒音を抑えられます。FC250にはグラファイト (黒鉛) が均等に分布しています。このグラファイトが振動を吸収するため、FC250の振動吸収性能は良好です。
4. 鋳造性
FC250は高い流動性を持っています。溶けた金属が金型内部に均一に流れるため、複雑な形状の部品や大型の鋳物部品を作れることが特徴です。また凝固収縮率が比較的低いため、鋳造品の形状や寸法を比較的正確に作れます。
5. 潤滑性
FC250には、潤滑性があります。理由はグラファイトと酸化膜を含んでいるためです。グラファイトは非常に滑りやすく、潤滑性に優れている点が特徴です。摩擦が発生する箇所にグラファイトが存在すると表面同士の接触面積が減り、摩擦が低減されるため、潤滑性が向上します。
また、FC250には鉄以外にもシリコンやマンガンなどの合金元素が含まれています。合金元素が鉄と反応して、表面に潤滑性が高い酸化膜を形成し、摩擦や磨耗を軽減できます。
6. 耐熱性
FC250は高温下でも安定した物性を維持できます。理由は、グラファイトの存在、金属組織の安定性、および熱膨張係数の低さによるものです。これらの要素が相互に作用し合って、鋳鉄の高温に対する耐性が向上しています。
7. 耐食性
FC250は、耐食性が比較的高い鋳鉄の一種です。鋳造時にシリコンやマンガンなどの添加物が加えられ、鉄の表面に酸化膜が形成されます。酸化膜は外部からの酸素や水分などの侵入を防ぎ、耐食性を高める効果があります。
FC250のその他情報
1. FC250の特徴
寸法安定性が高い
FC250は鋳造時の凝固収縮率が比較的小さいため、鋳造後に寸法が変化しにくく、寸法安定性が高い材料です。鋳造時に適切に冷却することで、さらに寸法安定性が高められます。凝固収縮率とは、金属が液体から固体に変化する際に体積が縮む割合です。
静的強度が高く耐久性に優れる
FC250に静的強度と高い耐久性がある主な理由は、下記の4つです。
- 高い密度
FC250は鉄を主成分とする鋳鉄であり、その密度が高いために強度に優れます。 - グラファイトの配列
FC250に含まれるグラファイトは、配列が均一であることが特徴です。グラファイトの均一な配列によって、材料内部の応力を分散でき、静的な強度が向上します。 - 高い鋳造性能
FC250は高い鋳造性能を持っており、鋳造時に均一な構造を形成できます。よって材料の内部応力を低減し、耐久性が向上します。 - 熱処理による強化
FC250は熱処理によって機械的性質を改善できます。熱処理によって、材料内部の組織が整えられ、均一な強度を持つ材料になります。
2. 不向きな加工
FC250は炭素鋼などと比べると粘り気がなく脆く、塑性加工には不向きです。非常に硬く脆い材料でグラファイトを含んでいるため、グラファイトが存在する箇所では塑性加工性が低下し、クラックが発生する可能性が高くなります。