硫化ニッケル

硫化ニッケルとは

硫化ニッケルとは、化学式がNiSの無機化合物です。

ニッケル塩を硫化水素で処理することにより、硫化ニッケル (NiS) が生成されます。硫化ニッケルは複数知られており、一硫化ニッケル (NiS) は針ニッケル鉱に含まれます。水に不溶、硝酸に可溶で、無結晶の黒色です。

また、二硫化ニッケル (NiS2) は、炭酸ニッケル(Ⅱ)を炭酸カリウムと硫黄とともに加熱することで得られます。暗鉄灰色の結晶で水に不溶です。二硫化三ニッケル (Ni3S2) は、水にほとんど不溶で硝酸に可溶です。

硫化ニッケルの使用用途

ニッケルの硫化物は、硫化ニッケル触媒として広く用いられています。例えば、重油の高圧水素添加分解や有機化合物の脱水素、脱硫触媒などです。

硫化ニッケルの危険有害情報として、吸入するとアレルギー、喘息、呼吸困難やアレルギー性皮膚反応を引き起こすおそれや、発がん性、長期にわたるまたは反復曝露による呼吸器の障害があります。使用時には適切な保護手袋、適切な呼吸用保護具などを着用し、取扱後は手をよく洗うことが必要です。

硫化ニッケルの性質

NiSは黒色の固体で、ニッケル(II)塩を硫化水素で処理することで生成します。同じ化学式のNiSを持つ鉱物の針ニッケル鉱などを含めて、多数の硫化ニッケルが知られています。有用な鉱石だけでなく、脱硫反応の産物として得られる硫化ニッケルもあり、触媒として用いられることも多いです。

硫化ニッケルの構造

硫化ニッケルには、一硫化ニッケル (NiS) 、二硫化ニッケル (NiS2) 、二硫化三ニッケル (Ni3S2) などが存在します。それ以外にも、Ni9S8やNi3S2などの不定比化合物も知られています。ベース鉱 (NiS2) のように、1つのニッケル原子は複数の硫黄原子と結合することが可能です。

硫化ニッケル(II)も多くの関連物質と同様に、ヒ化ニッケルのモチーフを取っています。この構造においてニッケルは八面体型で、硫化物中心は三方柱型です。

硫化ニッケル(II)には、α型とβ型の多形があります。α型は六角形の単位胞で、β型は菱面体の単位胞です。α型は379℃以上になると安定していますが、低温ではβ型に変換します。この相転移によって、体積は2〜4%増えます。

硫化ニッケルのその他情報

1. 硫化ニッケル(II)の合成法

硫化ニッケル(II)の黒色沈殿は、伝統的な定性無機分析において有名です。つまり、硫化物の溶解度の差に基づいて、ニッケル(II)を含む金属を分離できます。

固相メタセシス合成や元素の高温反応など、制御されたあらゆる合成方法が開発されています。

2. 天然の硫化ニッケル(II)

針ニッケル鉱は、化学式がNiSと同じ硫化ニッケル(II)です。低温の熱水系や炭酸塩岩の空洞といった天然に生じる以外にも、他のニッケル鉱物の副産物として生成することもあります。ただし、硫化ニッケル(II)が形成される条件によって、合成化学量論的NiSとは構造が違います。

3. ガラス中の硫化ニッケル(II)

フロートガラスには、清澄剤の硫酸ナトリウムや不純物の金属合金に含まれているニッケルによって形成された硫化ニッケル(II)が、少量含まれています。このような硫化ニッケル包摂物は、強化ガラスの製造において問題になります。

硫化ニッケル包摂物は焼戻し過程後に準安定α相になり、最終的には低温で安定なβ相に変換されるため、体積が増えてガラスのヒビの原因になるからです。強化ガラスの内部で材料に張力がかかり、亀裂が伝搬することで、自発的なガラスの破壊に繋がっています。この自発的なガラスの破壊は、通常ガラスを製造して数年から数十年後に起こります。

4. その他の硫化ニッケルの構造

硫化ニッケルには、NiS、NiS2、Ni3S2だけでなく、Ni9S8やNi3S2などの化合物も知られています。例えば、ベース鉱と呼ばれるNiS2は、硫化ニッケルを主成分として、コバルトや鉄を少量含む硫化鉱物です。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/16812-54-7.html

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