硫化スズ

硫化スズとは

硫化スズとは、スズと硫黄からなる化合物です。

4価の硫化スズ(IV)や2価の硫化スズ(II)があります。硫化スズ(IV)のCAS登録番号は1315-01-1で、硫化スズ(II)のCAS登録番号は1314-95-0です。

また、硫化スズの国内法規上の主な適用法令は、毒劇法では「劇物・包装等級3」、安衛法で「名称等を表示すべき危険物および有害物」および「名称等を通知すべき危険物および有害物No. 322」に指定されています。

硫化スズの使用用途

硫化スズは、リチウムイオン電池の電解質のうち、全固体電池の固体電解質材料として使用されています。現在、リチウムイオン電池は、液体の有機系溶剤と無機系の固体電解質が主流とされています。主流の一つとされる有機系溶剤は、液体のため漏れによる発火の危惧が払拭できません。それに対して、硫化スズのような無機系の固体電解質材料には、漏れなどの心配がなく重用されています。

さらに、硫化スズは、電池研究用として不純物金属の試験にも用いることも可能です。

とくに硫化スズ(IV)は、彩色金やモザイク金とも呼ばれ、黄金色で変化しにくいため、金色顔料としてニスやラッカーなどに使われます。その一方で硫化スズ(II)は、重合反応の触媒、分析試薬、軸受剤などに使用可能です。

硫化スズの性質

硫化スズ(IV)の融点は600°Cです。水、硝酸塩酸には、ほとんど溶けません。トリチオスズ(IV)酸塩やヘキサヒドロキソスズ(IV)酸塩として、アルカリには溶解します。硫化アルカリや硫化アンモニウム水溶液には、硫化スズ(IV)はトリチオスズ(IV)酸塩を生成するため可溶です。空気中で熱すると酸化スズ(IV)と二酸化硫黄が生じ、王水と加熱すると酸化スズ(IV)と硫酸が生成します。

硫化スズ(II)の融点は880℃、沸点は1,230℃です。硫化スズ(II)は水にほとんど溶けません。濃塩酸に溶け、アルカリ性では水酸化スズ(II)が沈殿しますが、過剰にアルカリを加えると沈殿は溶解します。多硫化アンモニウム水溶液中では、トリチオスズ(IV)酸塩として溶けます。空気中で強熱するか、硝酸で処理すると、硫化スズ(II)が酸化して酸化スズ(IV)を得ることも可能です。

硫化スズの構造

硫化スズ(IV)は無臭の金黄色粉末であり、二硫化スズとも呼ばれています。化学式はSnS2、分子量は182.84で、密度は4.5g/cm3です。硫化スズ(IV)はヨウ化カドミウム型構造を取っており、6個の硫化物中心による八面体孔にSn(IV)が位置しています。

硫化スズ(II)は茶黒色の粉末であり、化学式はSnSで、分子量は150.78です。岩塩型構造の斜方晶系結晶であり、0℃での密度は5.08g/cm3です。

硫化スズのその他情報

1. 硫化スズ(IV)の合成法

塩化スズ(IV)塩を含んだ酸性水溶液と硫化水素の反応によって、コロイド状の黄色沈殿として硫化スズ(IV)が生じます。

塩化アンモニウム共存下で直接スズ箔と硫黄を加熱すると、黄金色の六方晶系板状晶を得ることが可能です。

天然で塩化スズ(IV)は、ベルンド鉱 (英: Berndtite) と呼ばれる珍しい鉱物として産出します。

2. 硫化スズ(II)の合成法

可溶性のスズ(II)塩水溶液と硫化水素の反応で、硫化スズ(II)は生成します。

直接スズと硫黄を加熱しても、硫化スズ(II)の灰黒色の結晶を得ることが可能です。

3. 三流化二スズの特徴

硫化スズ(IV)や硫化スズ(II)以外にも、三流化二スズが知られています。化学式はSn2S3ですが、SnIISnIVS3となっています。分子量は333.6で、比重は4.9g/cm3です。硫化スズ(II)と硫黄の混合物を強熱すると、黄色結晶として三流化二スズは得られます。濃塩酸によって三流化二スズは、SnSとSnS2になります。

参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0120-2112JGHEJP.pdf
https://labchem-wako.fujifilm.com/jp/product/detail/W01ALF014051.html

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