ベントナイトとは
ベントナイトとは鉱物の一種 (モンモリロナイト) を主成分として石英、マイカ、カルサイトなど組成の異なる複数種の混合成分から構成される粘土の総称で、日本をはじめ世界各地で産出された粘土のことです。
ベントナイトは主成分のモンモリロナイトが持つ層状構造に起因した高い吸水性、膨潤後の高い粘性を持つ点が特徴です。このため、陶磁器をはじめ工業、建設業において広く利用されています。また、医薬品、化粧品や洗剤など日常生活に密着した製造品の添加剤としても一般的な成分です。
ベントナイトの使用用途
ベントナイトは高い吸水性、膨潤後の高い粘性を特徴とする粘土であり、窯業、土木建設業をはじめ日用品や医薬品など幅広い用途に用いられています。以下が主な使用例です。
- 窯業:陶磁器の材料
- 土木業:土木工事用防水材、掘削時泥水
- 日用品:化粧品、洗剤、石鹸、農薬における分散性、粘度および保湿性を高める添加剤
- 医薬品:医薬用軟膏の基剤
- 食品:ワインや梅酒の濁り除去
- その他:砂と混合して鋳型を形成、猫砂、石油精製工程の不純物吸着剤
ベントナイトの原理
ベントナイトは鉱物の一種 (モンモリロナイト) が主成分の粘土です。他の構成成分としては石英、オパールなどの珪酸鉱物、マイカ、ゼオライトなどの珪酸塩鉱物、カルサイトなどの炭酸塩鉱物や硫酸塩鉱物などが挙げられます。
ベントナイト鉱床は日本国内では青森、宮城、山形、新潟、群馬、岡山、島根に、国外ではアメリカ、中国、ギリシャ、トルコなどです。国内外で採掘されている主要な鉱床が生じた理由として、約2億年から数百万年前に起きた火山噴火に由来する堆積物が地下深く埋もれている間に温度変化や圧力上昇による物理的、化学的な変成作用を受けたことが考えられます。
ベントナイトの主成分であるモンモリロナイトは薄いシート状の鉱石が層状に積み重なった構造を持つ微細粒子で、約1nm間隔の層間に水分子やイオン成分を保持した構造です。ベントナイトの高い吸水性は主にモンモリロナイトが持つ層間構造に起因しており、さらにモンモリロナイト内のイオン成分が膨潤作用に重要な働きをすることがよく知られています。
ベントナイトの種類
ベントナイトの構造は、主成分であるモンモリロナイトの層構造により決まっています。このモンモリロナイトは、ケイ素と酸素よりなる四面体がシート状に連なっている四面体シートと、アルミニウムと水酸基よりなる八面体がシート状に連なった八面体シートにより構成されます。そして、1枚の八面体シートを2枚の四面体シートで挟み込んだ構造です。
実際には、この八面体シートのアルミニウムの一部がマグネシウムに置き換わった構造を有しています。このとき、アルミニウムが3価であるのに対し、マグネシウムが2価であるため、電荷のバランスをとるために、層内に層間陽イオンと称される陽イオンを取り込んでいます。
この層間陽イオンの種類としては、主にNa+、Ca2+、K+、Mg2+の4種類があります。この層間陽イオンの種類によりベントナイトの種類が分けられ、「Na型ベントナイト」と「Ca型ベントナイト」の2種類です。
1. Na型ベントナイト
Na型ベントナイトは、モンモリロナイトの層間陽イオンにNa+イオンを多く含むベントナイトで、膨潤性、増粘性や懸濁安定性に優れた特徴を持ちます。
2. Ca型ベントナイト
Ca型ベントナイトは、モンモリロナイトの層間陽イオンにCa2+イオンを多く含むベントナイトです。Ca型ベントナイトは、Na型ベントナイトに比べて膨潤性、増粘性、懸濁安定性の面で劣りますが、吸水性が優れています。
また、Ca型ベントナイトに対して数wt%の炭酸ナトリウムを加えて人工的にNa型化させたものもあり、これを活性化ベントナイトと呼びます。この活性化ベントナイト特性は、Na型ベントナイトに近い特性です。
ベントナイトのその他情報
1. ベントナイトの毒性
ベントナイトは日用品や医薬品などで使用されていることからもわかる通り、通常使用する場合の有害性は報告されていません。皮膚への刺激がほとんどなく、経口摂取しても問題ないので、食品添加物としても一般的な成分です。特に、ベントナイトの微粒子は不純物を吸着できるので、食品製造時の濾過助剤として使用されており、例えば、ビールなどの酒類や清涼飲料水などの濾過に使用されています。
ベントナイトの安全データシートによると、ラットの経口摂取におけるLD50 (半数致死量: 急性毒性の指標) の値は5,000mg/kgです。この値から、ベントナイトが毒物及び劇物取締法の分類において普通物に属すると判断できます。
一方で、ベントナイトの粉塵を鼻や口から大量に吸入すると、じん肺症になる可能性があります。じん肺症とは、粉塵が呼吸器系に蓄積することが原因で起こる疾病です。
最初は自覚症状がありませんが、時間経過とともに咳や痰、さらには息切れや呼吸困難の症状が現れます。一度じん肺症にかかると、治療方法がなく、正常な肺に戻ることがない疾病です。そのため、ベントナイトは日本産業衛生学会による粉塵の危険性レベルの分類においては、タルクなどとともに第一種粉塵に分類されています。
2. 土木工事におけるベントナイト
ベントナイトは建築物の基礎工事やインフラ補強工事において、掘削した地盤の壁面を保護するための泥水の原料として使用されます。単純に地面を掘削していくだけでは、堀った部分の側壁が崩壊する可能性があるためです。具体的には水とベントナイトを混ぜて調製した泥水を穴に満たしながら掘削して側面の崩壊を防止しています。
これは、ベントナイトに水を添加すると、膨潤し、粘性が増加することを利用しており、掘削面に入り込んで側壁を安定化すると同時に、表面に強くて薄い泥層を形成し、掘削部分崩壊の防止が可能です。また、掘削時に発生した土砂が底に沈殿するのを防ぐこともできます。このような性質から、安全に効率よく掘削したいときに使用されます。
また、ベントナイト泥水は安価で、作業性が良いというメリットがあります。一方で、土壌の塩分に弱い、温度に不安定である点がデメリットです。
側壁の崩壊を防止する効果があまり大きくないので、浅く掘削する場合の使用が好適です。また、掘削条件に合わせてベントナイト泥水に分散剤や潤滑剤などの各種添加剤を加えて使用することもあります。
参考文献
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https://www.kunimine.co.jp/bent/basic.html
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https://www.jniosh.johas.go.jp/publication/mail_mag/2013/58-column.html