フランジボルトとは
フランジボルトとは座金(ワッシャー)を組み込まずに挿入できるネジのことです。フランジがボルトに付属しているためフランジボルトと呼びます。座面が付属するために緩みが生じにくく、座金を組む手間が省けるのが利点です。
フランジボルトの正式名称はJIS規格において、フランジ付き六角ボルトと呼びます。六角ボルトでは座面を組み込む必要がありますが、フランジボルトでは不要です。1種と2種が存在し、1種はフランジが平ワッシャー状のもの、2種はフランジ上面がテーパー状のものです。
フランジボルトの使用用途
フランジボルトは、自動車などの消費者向け製品から各種製造装置などの産業用製品まで幅広く使用されます。フランジボルトは六角ボルト比べて座面が大きいため、締結対象のボルト穴を陥没させず外観に配慮できます。
また、座金の組み込みが不要で、作業効率の改善を図ることができます。そのため、外観を綺麗に整えたい場合や、作業効率を向上させたい場合に使用されます。
フランジボルトの原理
フランジボルトのヘッド形状や高さなどはメーカーの裁量によって決められることが多く、多品種が存在します。JIS規格において1種(座面フラット)と2種(座面テーパー)が定められており、国内で多く利用されているのは2種です。
M6ボルトの場合、1種と2種いずれも「座面径14.0mm-六角頭10mm-頭高さ6.0mm」は共通しており、座面の表面形状のみが異なります。メーカーの規格の中には、座金の裏側に凹凸(セレート)を加工される場合もあります。セレートによって締結対象に噛みやすいため、安定度が向上します。
材質は鋼やステンレスが使用されるケースが多いです。ただし、周囲環境によってはチタン製を使用する場合もあります。多種あるフランジボルトから適切に選定することで、安定かつ効率的に締結できます。
フランジボルトの使い方
フランジボルトは使用法を誤ると、ナットの破損や締結対象機器の破損を招きます。これを防ぐために、下記の点を注意しながら使う必要があります。
- 締結力が許容範囲内であること
- フランジボルトに加わる繰り返しの力(振動などによる)が、許容範囲内であること
- 座面に加わる圧力で締結対象物を陥没させないこと
- フランジボルトの締結力で締結対象物を壊さないこと
フランジボルトのその他情報
1. フランジボルトの主な材質と主な表面処理
フランジボルトの材質にはスチール、ステンレス、チタンなどがあります。それぞれ強度に違いがあるため、機器の設計段階で十分に検討する必要があります。
また電蝕も重要な要素です。フランジボルトの材質と締結対象物の材質が異なると電蝕が生じます。特にアルミやステンレスの場合は注意が必要です。
フランジボルトの表面処理には銅メッキ、黒色塗装、三価クロメート、ユニクロメッキ、溶融亜鉛メッキ、クロメートメッキ、ニッケルめっき、クロームメッキ、パーカー、ダクロタイズドなどがあります。前述したように、電蝕対策や外観などに応じて選定します。
2. フランジボルトのゆるみ止め
フランジボルトにはゆるみどめの効果もありますが、経年により緩むことがあります。フランジボルトがゆるんで外れると、人命にかかわる大事故に発展する危険性もあります。ゆるみの発生原因には、下記の二つが挙げられます。
- フランジボルトに加わる繰り返し振動
- 外気温または締結対象物からフランジボルトに加わる発熱
フランジボルトを強く締めるとゆるみ止めの効果がありますが、フランジボルトが折損したりねじ穴がなめたりする危険があります。したがって、設計時に締結力の許容範囲を計算することが大切です。
増し締めで防止する場合は、定められたトルクに従って締め付けを行います。増し締め以外のゆるみ防止策は、ゆるみ止め用接着剤の使用やダブルナットなどがあります。絶対に緩まない防止策は存在しませんが、安全に機械を使用するためにはゆるみ止め対策が必要です。
参考文献
https://www.urk.co.jp/contents/elements/element21.html
https://www.tsurugacorp.co.jp/special/huranjibolt.html
http://www.jikuryoku.net/tejyun.html
https://www.akaneohm.com/column/denshoku2/
https://www.nbk1560.com/resources/specialscrew/article/nedzicom-topics-13-galvanic-corrosion/?SelectedLanguage=ja-JP