塩化ビニル

塩化ビニルとは

塩化ビニルの基本情報

図1. 塩化ビニルの基本情報

塩化ビニルとは、ビニル基と塩素から構成される有機化合物です。

別名として、クロロエチレン (英: chloroethylene) やクロロエテン (英: chloroethene) が挙げられます。化審法では「第2種監視化学物質」、労働安全衛生法では「特定化学物質第2類物質」「特定第2類物質」に該当します。

また、PRTR法では「第1種指定化学物質」、労働基準法では「疾病化学物質」に該当します。

塩化ビニルの使用用途

塩化ビニルはポリ塩化ビニルとして、身の周りで広く使われています。ポリ塩化ビニルとは、塩化ビニルの重合体です。主な用途として、塩化ビニルパイプが挙げられます。

塩化ビニルパイプは、機械的安定性、耐久性、耐クリープ性、接着性に優れています。また、樹脂製品であるにも関わらず、難燃性であることも特徴です。非常に安定した物性のため、上下水道管のほか、工業資材や農業資材、車や家電、医療機器など、幅広い分野で用いられています。

さらに、財布やソファに用いられている合成皮革やレインコートなどでは、軟質のポリ塩化ビニルが材料となっています。

塩化ビニルの性質

塩化ビニルの融点は−154℃で、沸点は−13℃です。炭素-炭素二重結合が容易に反応し、光や触媒によって重合反応が進行します。

塩化ビニルは発癌性があると勧告されています。1974年に塩化ビニル樹脂を製造していた労働者が、肝血管肉腫によって死亡したためです。そして、疫学調査によって、塩化ビニルの曝露と肝血管肉腫の関連性が確認されました。

それに加えて、ラットを使った動物試験でも用量の増加により、肝血管肉腫の増加が報告されました。以前の日本では、エアロゾルの噴霧助剤に塩化ビニルが使われていましたが、現在では使用禁止になっています。ただし、ポリ塩化ビニルを生産するために、塩化ビニルの製造自体は継続されています。

塩化ビニルの構造

ポリ塩化ビニルの合成

図2. ポリ塩化ビニルの合成

塩化ビニルはビニル基と塩素を持っており、示性式はCH2=CHClで示されます。モル質量は62.5です。塩化ビニルの単量体は、炭素原子が二重結合を有しています。

塩化ビニルが付加重合すると、ポリ塩化ビニルとなります。なお、ポリ塩化ビニルの示性式は、[-CH2-CHCl-]nです。

塩化ビニルのその他情報

1. 塩化ビニルの合成法

塩化ビニルの合成

図3. 塩化ビニルの合成

直接塩素化法によって、塩化ビニルを合成できます。まず、触媒に塩化鉄 (III) を用いて、塩素とエチレンを反応させることで、1,2-ジクロロエタン (英: 1,2-Dichloroethane) が生成します。反応に使用するエチレンはナフサの熱分解によって、塩素は塩化ナトリウムの電気分解によって、それぞれ得ることが可能です。

次に、1,2-ジクロロエタンを500℃で加熱し、15〜30気圧で圧縮します。1,2-ジクロロエタンは分解し、塩化水素とともに、塩化ビニルを生成可能です。工業的生産では、オキシ塩素化法が用いられます。副生成物として生じた塩化水素を空気と混合して、触媒に塩化銅 (II) を使ってエチレンと反応させると、1,2-ジクロロエタンが生成します。

直接塩素化法とオキシ塩素化法を併用すると、反応プロセス全体で副生成物が発生しません。したがって、環境負荷を抑えられます。

2. ポリ塩化ビニルの合成

塩化ビニルの重合反応によって、高分子化合物であるポリ塩化ビニルを得ることが可能です。ポリ塩化ビニルは、塩化ビニール、ビニール、塩ビなどと呼ばれます。

ポリ塩化ビニルを原料の塩化ビニルと区別するため、単量体の塩化ビニルは塩化ビニルモノマー (英: vinyl chloride monomer) と呼ばれています。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/75-01-4.html

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