塩化ルテニウム

塩化ルテニウムとは

塩化ルテニウムとは、塩素とルテニウムの化合物のことです。

一般的に塩化ルテニウム(III)や三塩化ルテニウムと呼ばれています。塩化ルテニウムの無水物は、よく物性が研究されているものの、実用的に用いられることはあまりありません。

通常、RuCl3・xH2Oで表されるような、水和物として存在しています。無水物と水和物は暗褐色~黒色で、3水和物が形成されることもあり、ルテニウム化合物の原料に使用可能です。

塩化ルテニウムの使用用途

塩化ルテニウムの水和物は、さまざまな化合物の前駆体として利用可能です。塩化ルテニウム(III)n水和物はルテニウム触媒の原料として用いられ、有機合成で不斉水素化反応やメタセシス反応などに利用されています。

また、Ruめっき (ルテニウムめっき) の原料にも利用されています。Ruめっきは、従来のロジウムめっきと同等の硬度や耐摩耗性を有しながら、コストが2分の1と安価です。そのため、ロジウムめっきの代替品として期待されています。

そのほか、電極用原料や貴金属触媒としても用いられています。

塩化ルテニウムの性質

塩化ルテニウムの融点は500°Cで、常温で黒色あるいは暗褐色の固体です。

RuCl3・xH2Oは多種多様な化合物の前駆体であり、ルテニウム化合物はさまざまな酸化状態を取ります。+2、+3、+4などの酸化数が安定です。

塩化ルテニウム(II)は二塩化ルテニウムとも呼ばれ、化学式はRuCl2です。

塩化ルテニウムの構造

塩化ルテニウムの化学式はRuCl3と表されます。1:4の割合の一酸化炭素と塩素の雰囲気下で、ルテニウムの粉末を700°Cまで熱してから、冷却すると合成可能です。塩化ルテニウムの水和物には、1水和物と3水和物が知られています。 塩化ルテニウムには、α型とβ型の結晶形があります。

α型は黒色葉状の結晶です。塩化クロム(III)と同様の結晶構造を取っています。ルテニウム間の距離は346pmです。水やエチルアルコールに溶けません。

β型は暗褐色の毛状粉末で、8面体の面と面が重なり合った形の結晶構造を取っています。ルテニウム間の距離は283pmです。エチルアルコールに可溶です。β型の結晶を400〜600°Cに加熱すると、α型結晶へ不可逆的に変わります。

塩化ルテニウムのその他情報

1. 塩化ルテニウムの反応

温和な条件でRuCl3・xH2Oは、一酸化炭素と反応します。ただし塩化鉄は、一酸化炭素とは反応しません。一酸化炭素によって、赤〜茶色のRuCl3を黄色に近いRu(II)に還元します。

例えば、1気圧の一酸化炭素が、RuCl3・xH2Oのエタノール溶液と反応すると、[Ru2Cl4(CO)4]、[RuCl3(CO)3]、 [Ru2Cl4(CO)4]2-などが得られます。さらに配位子を溶液に加えると、RuClxCOyLz (L = PR3) 型の錯体を合成可能です。

亜鉛を用いてカルボニル化した錯体を還元すると、三角形のクラスターを持つRu3(CO)12と表される、オレンジ色のトリルテニウムドデカカルボニルが生成します。

2. 塩化ルテニウムから合成される化合物

原料に塩化ルテニウムを用いて合成できる化合物の具体例として、RuCl2(PPh3)3、[RuCl2(C6H6)]2、RuCl2(C5Me5)2、[Ru(bpy)3]Cl2、Ru(C5H7O2)3などが挙げられます。いずれも水和物であるRuCl3・xH2Oから合成できます。

例えばRuCl2(PPh3)3や[RuCl2(C6H6)]2はチョコレート色で、RuCl2(PPh3)3はベンゼンに溶けますが、[RuCl2(C6H6)]2の溶解度は低いです。[RuCl2(C6H6)]2の配位子には、芳香族炭化水素であるヘキサメチルベンゼンなども使用可能です。Ru(C5H7O2)3はベンゼンに溶解します。

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