リン酸銅

リン酸銅とは

リン酸銅 (英: Copper(II) phosphate) とは、化学式Cu3(PO4)2であらわされる無機化合物です。

無水物の他、一水和物や三水和物などの水和物が知られています。一般的にはリン酸銅(II)と表記され、別名には「りん酸第二銅」「tricopper diphosphate」「tricopper bis (orthophosphate) 」などの名称があります。無水物のCAS登録番号は、7798-23-4です。

リン酸銅の使用用途

リン酸銅の使用用途は、有機触媒、肥料、乳化剤、腐食防止剤、金属保護剤、飼料添加物などが挙げられます。金属保護剤としての用途は、一般にリン酸塩処理と呼ばれる手法ですが、通常は、リン酸亜鉛リン酸鉄を用いることが多く、リン酸銅の使用は限定的です。

その他の用途としては、無機顔料としての使用が挙げられます。金属リン酸塩は、無機顔料として一般に用いられる原料であり、亜鉛マンガンなどのリン酸塩が工業的に用いられています。リン酸銅を用いた顔料についても、その他のリン酸塩と同様に優れた色相を有することが知られており、研究が進められています。

リン酸銅の性質

リン酸銅の基本情報

図1. リン酸銅の基本情報

リン酸銅の無水物は、分子量380.58であり、常温での外観は、明るい青緑色の粉末です。三水和物は、分子量434.63であり、常温において青色またはオリーブ色の結晶です。

水、エタノール及びアセトンに難溶であり、希塩酸、アンモニア水、アンモニウム塩溶液、チオ硫酸ナトリウム溶液に溶解します。

リン酸銅の種類

リン酸銅は、主に研究開発用試薬製品として販売されている物質です。容量の種類には25g、500gなどがあり、実験室で取り扱いやすい容量での提供となっています。通常、室温で保管可能な試薬製品です。試薬製品の場合、大体の組成は推定可能ですが (例えばCu3(PO4)2・3H2Oなど) 、少量の塩基性塩が共存し、また製造ロットによろ変動があるため、正確な化学式、式量は不詳となっています。

なお、類似名称の物質に二りん酸銅やピロリン酸銅がありますが、これらは組成式の異なる別の物質です。

リン酸銅のその他情報

1. リン酸銅の合成

リン酸銅の合成

図2. リン酸銅の合成

リン酸銅の合成反応としては、リン酸水酸化銅との反応や、高温でリン酸二アンモニウムと酸化銅を反応させる方法が知られています。

2. リン酸銅の結晶構造

リン酸銅の構造

図3. リン酸銅の構造

リン酸銅は、特徴的な配位高分子を形成します。これは、大部分の金属リン酸塩に特徴的に見られるものです。

結晶構造中では、リン酸中心は四面体型構造です。無水物では、銅中心は五配位となっており、一水和物では、銅は、6、5、4配位となっています。

3. リン酸銅の反応性

リン酸銅は、推奨保管環境においては安定ですが、高温と直射日光を避けて保管することが必要です。強酸化剤とは反応するため、接触を避けて保管します。分解の際に発生する有害な生成物として、リン酸化物、金属酸化物が挙げられます。

3. リン酸銅の有害性情報

リン酸銅は、GHS分類において急性毒性 (経口) 区分3に分類されており、飲み込むと有毒 (経口) とされている物質です。取り扱いの際は、局所排気装置を使用した環境にて、適切な個人用保護具着用し、皮膚、眼、衣服との接触を避けることが必要です。また、火災時には熱分解によって刺激性で有毒なガスと 蒸気を放出することがあります。

リン酸銅はこれらの有害性により、種々の法規制を受ける化合物です。毒物および劇物取締法では劇物に指定されており、労働安全衛生法においては、「名称等を表示すべき危険物及び有害物」「名称等を通知すべき危険物及び有害物」に指定されています。安全を守るためには、法令を遵守して、正しく取り扱うことが必要です。

参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0103-0438JGHEJP.pdf

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