アセチレンブラック

アセチレンブラックとは

アセチレンブラックとは、アセチレンガスの熱分解によって生成される高純度のカーボンブラックです。

ファーネスブラックやケッチェンブラックと並んで、有名な導電性カーボンブラックの1種です。粒子径が非常に小さいため、取扱う際は、保護眼鏡、粉じん用マスクなど、適切な保護具を着用の上、作業する必要があります。

アセチレンブラックの使用用途

アセチレンブラックは、その高い伝導性と吸液性を生かし、電子部品からゴムまで幅広い用途に利用されています。アセチレンブラックの粒子表面には、酸性の官能基やその他の官能基が存在しています。

官能基の種類も、一般的な炭素の微粒子とは異なるため、樹脂やゴム、液体などと混合し、加工されて利用されています。

このような用途では、アセチレンブラックの90%以上がゴム用の補強剤として用いられています。そのうちタイヤ用ゴムの割合が約80%です。また、プラスチック用の補強性充てん剤として使用されたり、印刷インキ、塗料、カーボン紙、墨、絵具、鉛筆、クレヨンなどに加工されて使用されたりするなど、幅広い分野で用いられています。

また、触媒担体、花火、融雪剤など、アセチレンブラック単体でも様々な用途に用いられています。アセチレンブラックは、それ自身が導電性を持ち、アセチレンブラックを練り込んだ混合物も導電性を持つため、乾電池の電解液保持剤、および発生した電気を電極に伝導するために使用されています。近年、電気自動車やスマートフォンなどで需要が伸びているリチウムイオン電池用の導電材としても有用です。

アセチレンブラックの性質

アセチレンブラックは、カーボンブラックの1種で化学式はCです。実際は炭素だけで形成された6員環構造が平面上にいくつも繋がった構造を取っており、その末端部分に水素、酸素を含む官能基を含んだ構造をとっています。

アセチレンブラックの高い伝導性は、高純度の6員環構造のカーボン単体が豊富に含まれているためです。また、ストラクチャーと呼ばれる1次粒子が鎖状につながった構造が、アセチレンブラックの場合は、他のカーボンブラックに比べて発達しており、これが高い電子伝導性や吸液性を生み出しています。

アセチレンブラックの真比重は2.2程度ですが、ストラクチャー構造をとっているため、かさ比重が0.1以下と非常に軽いことも特徴です。

アセチレンブラックの種類

アセチレンブラックには、粉状品の他に、粒状品、プレス品といった、形状に違いを出すことで、使用時の成形性やハンドリング性を高めたものなどがあります。一般的に粒状品は導電性に優れるため、導電性を要求される用途向けです。

粉状品、プレス品は吸液性が高いため、乾電池などの電解液保持剤や導電ゴムなどに適しています。粒状品、プレス品は粉塵の発生が少なく、ICパッキングやICトレーなどの用途に適しています。

アセチレンブラックのその他情報

1. アセチレンブラックの製造方法

アセチレンブラックは、アセチレンガスを加熱して生成されます。アセチレンガスは、C2H2の化学式を持ち、2つの炭素原子が三重結合で結合した構造を持っています。この三重結合を持つ炭化水素が発熱反応を起こすと、炭素原子同士が化学結合し、カーボンブラックが生成されます。

アセチレンブラックは、この反応に酸素を必要としないため、未分解や官能基として存在する水素分が著しく少ないです。また、酸素を含む官能基もほとんど含まれません。このため、アセチレンブラックは高い電子伝導性を持ちます。

アセチレンブラックはアセチレンガスを温度 1,800℃の分解炉に送り、「C2H2 → 2C + H2 + 55 kcal」の反応を連続的に行うことにより製造しています。

2. アセチレンブラック以外のカーボンブラック

アセチレンブラック以外にも、同様の用途で使用されているものとして、カーボンブラックが挙げられます。

ケッチェンブラック
アセチレンブラックよりも比表面積が大きく、吸液量も多いカーボンブラックです。粒子径はアセチレンブラックと同程度。炭素と水から製造され、副生物として水素が得られます。

ファーネスブラック
炭化水素を原料にして作られるカーボンブラックです。製造条件により、さまざまな物性のものが得られます。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/1333-86-4.html

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