スライドシャフトとは
スライドシャフトとは、機器の直線運動や上下運動を案内する目的で使用される機器部品です。
各種FA機器の部品としても油圧・空圧シリンダのピストンロッドとしても使用されます。
スライドシャフトは耐摩耗性に優れています。繰り返し運動する部品が取り付けられるためです。スライドシャフトは真直度も優れています。機器の直線運動や上下運動を案内するためです。さらに、他部品と組み合わせて使用するため、スライドシャフトは円筒度・真円度といった幾何公差の規格を十分に満たす必要があります。
スライドシャフトの使用用途
スライドシャフトは、油圧空圧機器、建設機械、成形機、特殊車両、各種FA機器など、様々な分野で使用されています。各種産業機械やロボットなどの基幹部品として組み込まれます。使用用途の具体例には以下のものがあります。
- 油圧・空圧シリンダのピストンロッド
- 遊技機 (いわゆるパチンコ) 内部の演出機構
- 自動溶接機の昇降機構
- インクジェットプリンタにおけるプリンタヘッド移動機構
- 粉粒体のコーティング装置におけるノズル移動機構
スライドシャフトの原理
スライドシャフトは、各種FA機器の部品として使用される場合と、油圧・空圧シリンダのピストンロッドとして使用される場合とがあります。どちらの使用かにより、直線運動や上下運動を案内する原理は異なります。
1. FA機器の部品として
メタル軸受・樹脂メタル・スライドブッシュといった部品がスライドシャフトに沿って自在に移動することで、それらの部品に別途接続されている機器が一緒に移動します。これにより、直線運動や上下運動の案内が可能となります。
直線運動なのか回転運動なのかの違いはありますが、部品を自在に移動させるという役割はベアリングの内輪と同様です。
2. 油圧・空圧シリンダのピストンロッドとして
油圧・空圧シリンダのピストンロッドとして使用される場合、スライドシャフトはピストンヘッドに接続されシリンダチューブ内に収容されます。
油圧・空圧を受けたピストンヘッドがシリンダチューブ内で移動することに伴い、ピストンロッドの一端がシリンダチューブから出入りします。その出入りに伴い、ピストンロッドの一端に接続されている物が移動します。これにより、直線運動や上下運動の案内が可能となります。
スライドシャフトの種類
スライドシャフトには様々な要素に基づく多種多様な種類があります。それら要素の一例は以下の通りです。
- 中心が空洞か否か
- 素材が軸受鋼か、機械構造用炭素鋼か、ステンレスか、その他か
- ねじ加工の有無、溝の有無、段の有無といった端部加工
スライドシャフトの選び方
スライドシャフトは、使用用途、使用環境、コスト、接続される部品に応じて選定されます。例えば、移動精度が重視される場合には、中実タイプが採用されます。軽量化が重視される場合には、パイプタイプが採用されます。
設計者はスライドシャフトを選ぶにあたって振動の影響を考慮する必要があります。使用中の振動および繰り返し負荷によって疲労破壊が生じる恐れがあるためです。
スライドシャフトのその他情報
1. 防塵対策
砂・粉塵といった微粒子の付着がスライドシャフトの機能に悪影響を与えることがあります。そういった付着の懸念がある場合、十分な防塵対策が必要です。微粒子の付着の懸念がある場合の防塵対策には、例えばジャバラによるカバーがあります。
2. 曲げモーメント対策
スライドシャフトは大きな曲げモーメントがかかる用途に適用してはいけません。スライドシャフトが折れ曲がると直線運動や上下運動の案内が不可能となるためです。折れ曲がりが懸念される場合、設計上の対策が必要です。
設計上の対策の例には、曲げモーメントの影響を別の部品が受ける設計にする、スライドシャフトに対する接続箇所を回り対偶にするといったものがあります。なお、回り対偶とは、ピンなどを介して2つの物を接続することでそれら2つの物の間に曲げモーメントが伝わりにくくなっている構造をいいます。
参考文献
https://www.kyoei-honing.jp/products/slide_shaft
https://www.toyoshaft.co.jp/products/slide-shaft/