スライドシフターとは
スライドシフターとは、滑り式のリニアガイドの一種で、直線往復運動させるための機械部です。
高い耐摩耗性と耐荷重性を持ち、精密機械から産業機器などの分野で利用されています。スライドシフターの設計は、リニアガイドと同様にレールやシャフトといった部材上を滑らかに移動することで、装置の動作精度を向上させることを目的としています。
リニアガイドとの違いは、スライドシフターが特に「滑り機構」に焦点を当てた設計になっている点です。リニアガイドが面での接触によって荷重を分散する一方、スライドシフターは部材の種類に応じてさらにスムーズな動作や耐環境性を持たせることが可能です。
スライドシフターの使用用途
スライドシフターの使用用途として、旋盤や研削盤での精密加工、検査機や計測装置、自動供給装置、医療機器やクリーンルーム装置の5つを解説します。
1. 旋盤や研削盤での精密加工
工作機械での切削や研削といった精密加工工程で使用されます。旋盤や研削盤では高精度で部品を移動させる必要があり、スライドシフターはそうした動作を安定させます。
2. 検査機や計測装置
測定や検査装置では、部品を正確な位置に移動させる必要があります。スライドシフターを使用することで測定対象物を効率的に配置し、検査精度を向上させることが可能です。
3. 自動供給装置
自動化装置における部品の搬送や供給にも利用されます。例えば組立ラインで部品を正確な位置に運ぶ際に、滑らかな動作を実現する役割を果たします。
4. 医療機器やクリーンルーム装置
医療分野では、クリーンルーム環境に対応するスライドシフターが用いられます。防塵や耐腐食性に優れたモデルを採用することで、精密で衛生的な動作が可能となります。
スライドシフターの原理
スライドシフターの原理として、ボール転がり構造による低摩擦、リターンキャップによるボールの循環、サイドシールで異物侵入を防止、荷重の均等分散の4つの順に解説します。
1. ボール転がり構造による低摩擦
スライドシフターは精密加工されたレールやシャフト上を銅球が転がることで運動します。銅球が転がることにより摩擦が大幅に低減され、滑らかな動作が可能となります。
2. リターンキャップによるボールの循環
銅球は単純に転がるだけでなく、リターンキャップという部品を通じて循環します。そのためボールの滞留を防ぎ、長時間の連続運転でも安定した性能の維持が可能です。
3. サイドシールで異物侵入を防止
外部からの異物がブロック内部に侵入しないよう、サイドシールが設けられています。
4. 荷重の均等分散
スライドシフターは、ブロックに作用する4方向 (ラジアル方向、逆ラジアル方向、横方向) に対して均等な定格荷重を実現しています。定格荷重によりどのような姿勢で使用しても安定した運動を実現できます。
スライドシフターの種類
スライドシフターの種類として、ガイドシャフトタイプ、ユニットタイプ、特殊仕様モデルの3種類を解説します。
1. ガイドシャフトタイプ
ガイドシャフトタイプはレールではなくシャフトを使用する設計であり、以下の特徴を持っています。
多方向の使用が可能
水平、垂直、斜めといったさまざまな方向に対応します。
取り付けの柔軟性
シャフト径や長さを調整することで、装置の設計に合わせたカスタマイズが容易です。
2. ユニットタイプ
ユニットタイプはガイドシャフトやシフトテーブル、シャフトホルダーが一体化された製品で、以下の利点があります。
組み立ての簡便性
一体型のため、取り付け作業が簡単で時間を短縮できます。
省スペース設計
コンパクトな構造により、設置スペースを削減できます。
3. 特殊仕様モデル
特殊仕様のスライドシフターは、特定の環境や条件に対応するよう設計されています。
耐熱用モデル
高温環境での使用に適しています。
防塵・防錆用モデル
粉塵や湿気の多い環境でも性能を維持します。
クリーンルーム用モデル
清潔さが求められる環境で使用可能です。