蛍光表示管

蛍光表示管とは

蛍光表示管

蛍光表示管とは、一般的にVFD (英: Vacuum Fluorescent Display) と呼ばれる電子管の一種です。

ガラス製真空管内でタングステン線を加熱して放出される電子が対抗する蛍光体に衝突して発光します。

1966年に日本のノリタケ伊勢電子 (旧 伊勢電子工業) が開発し、LEDが市場に現れる前の家電製品の数字表示にもVFDが使用されていました。1970年代の電卓戦争ではカシオ計算機製カシオミニに搭載され、ディスプレイ技術が非常に進歩しました。

蛍光表示管の使用用途

蛍光表示管の使用用途は、家電製品、アミューズメント製品、マッサージ機、自動車部品、デジタルサイネージなどの多岐に渡っています。

1. 家電商品

電卓、オーブンレンジ、オーディオ製品、DVDレコーダー、セットトップボックス等です。落ち着いた青緑色の発光色が多く、屋内に高級感を与えます。温度変化の影響を受けにくく、氷点下で平常動作が可能です。

2. アミューズメント製品

各種ゲーム機、オーディオプレーヤー等です。ただし消費電力が多く装置が脆いため、携帯ゲーム機の表示装置には使用されなくなっています。

3. 自動車部品

カーオーディオ、センターコンソール機器 (スピードメーター、クロック、エアコン表示部) などのアクティブマトリックス表示 (ヘッドアップディスプレイ) です。

4. デジタルサイネージ

電子看板 (英: Digital Signage) とも呼ばれ、文字情報の伝達に向いているため採用が進んでいます。具体的には伊豆急行の8000系電車の車内案内表示に採用されました。電飾看板やイルミネーションサイネージ (英: Illumination Signage) と呼ばれるカテゴリでも使用が提案されています。

蛍光表示管の原理

蛍光表示管のガラス内部にはカソード (フィラメント) 、グリッド、アノードがあります。3極真空管から放出される電子を蛍光体に照射して発光しています。

1. フィラメント

高真空のガラス容器内にあるフィラメントはタングステンの極細線にカルシウム等のアルカリ土類金属酸化物を塗布した電極です。フィラメントに高電圧を印加すると熱せられて600°C以上の温度となり熱電子が放出されます。

2. グリッド

グリッドは非常に薄い格子状金属メッシュで作られています。アノードは蛍光体を塗布した導体型の電極であり、セグメントやドット等の形状です。この熱電子はグリッドやアノードの⊕電位に引っ張られながら加速し、アノード電極に到達して蛍光体を発光させます。

蛍光体材料に酸化亜鉛がよく使用され、緑色を発色します。それ以外にも赤色から青色までの発色が可能です。

3. アノード

アノード電極は点灯させる部分のセグメント、ドット、記号のみに電圧が印加されるため、任意の数字、文字、図形を映し出せます。

蛍光表示管の選び方

表示方式には蛍光表示管以外にも、液晶ディスプレイ (LCD) 、発光ダイオード (LED) 、有機エレクトロルミネッセンス (有機EL) などがあり、メリットやデメリットを考慮して選択する必要があります。

1. LCDと比べたVFDのメリット

蛍光表示管は蛍光面で発光するため視野角に優れ、自発光表示素子でコントラスト比が高いです。低温雰囲気で動作特性の劣化がほぼありません。

2. LEDと比べたVFDのメリット

蛍光表示管はドット当たりの製造コストが安く、ドットマトリクスの場合には高密度化が可能です。波長のスペクトラムが広いため、見やすくて目にやさしいです。

3. 有機ELと比べたVFDのメリット

大きい表示を製造する場合には蛍光表示管は面積当たりのコストが安く、寿命が長いです。

4. VFDのデメリット

長時間同じ場所を発光させると蛍光体が劣化して明度が落ちて焼き付きが起こります。応答速度が早く、表示がちらつく場合もあります。

参考文献
http://www.futaba.co.jp/display/vfd/
https://www.noritake-itron.jp/cs/appnote_vfd/1/
https://www.jstage.jst.go.jp/article/micromechatronics/55/204/55_KJ00007295585/_pdf

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