小型真空ポンプとは
小型真空ポンプ (英: small vacuum pump) とは、密閉容器から空気を排気して、容器内を真空状態にする小型のポンプです。
小型真空ポンプの場合、排気速度は200l/min程度のものが多く、到達圧力は0.1 Paから10Pa程度です。さらに、高真空環境を得るための粗引きポンプとして用いられたり、低真空下で操作可能な各種分析機器や理化学機器に多く使用されたりします。
種類にもさまざまで、油回転ポンプやドライポンプ、ダイアフラムポンプなど、原理や使用条件などに応じて選ぶことができます。
小型真空ポンプの使用用途
小型真空ポンプは、0.1 Pa程度の真空度や、さらに高真空環境を必要とする分析機器や実験装置に使用されます。例えば、電子顕微鏡やX線分析、質量分析装置、ガスクロマトグラフィーなどでは真空環境を必要とするため、小型真空ポンプが最適です。
また、半導体製造の場合、スパッタや真空蒸着、CVD (化学気相成長) などにより薄膜形成するために、真空環境が必要になります。その他、食品加工では、真空包装や真空パックなどを行う際に、小型真空ポンプが活用されます。
小型真空ポンプの原理
小型真空ポンプの分類法は、排気方法による分類、圧力領域による分類、油を用いるか用いないかの分類などがあります。
1. 排気方法
真空ポンプの排気方法による分類には、気体輸送式真空ポンプと気体溜め込み式真空ポンプがあります。気体輸送式真空ポンプは、空気を吸気側から排気側へ輸送する方式です。
また、気体溜め込み式真空ポンプは、排気する空気をポンプ内に溜めこみ、溜まった空気を別の真空ポンプで排気する方式です。
2. 圧力領域
1台の真空ポンプで、大気圧から高真空までカバーするのは不可能です。通常は、高真空用の主ポンプの他に、補助ポンプ又は粗引きポンプを併用します。
3. ドライ・ウェット
真空ポンプには、油を使用しないドライ真空ポンプと、油を使用するウェット真空ポンプがあります。油を使用するポンプで作られた真空領域には、ポンプ自体で発生した油の蒸気や水蒸気が含まれています。
特に微細なコントロールが必要な半導体の製造工程では、ドライ真空ポンプが必要です。また、油を嫌う食品や医薬品の製造でもドライ式が使われます。
小型真空ポンプの種類
1. 油回転真空ポンプ
各種真空ポンプの中で、排気量、到達圧力、価格などの面から、多く使用されるのは、油回転真空ポンプです。このタイプはポンプタイプにより多くの種類があり、ロータリー型と呼ばれます。
オイルはベアリングの潤滑や、シリンダ内のシール性を高めるために機能します。ロータリー型油回転真空ポンプには、回転翼形、カム形、揺動ピストン形などの種類があります。0.1Pa程度の中真空が容易に得られるポンプです。
回転翼形油回転真空ポンプ
回転翼形は、内部のシリンダに組み込まれたロータにベーンが取り付けられた構造です。ベーンによって分割された小部屋の気体がローターの回転とともに排出されることにより、減圧が進みます。
カム形油回転真空ポンプ
カム形は、円筒形ステータの中心に設置された偏芯ローターの一部がステータと接触しながら回転します。ステータとローターの隙間空間にある気体が排出されて減圧します。
揺動ピストン形油回転真空ポンプ
揺動ピストン形は、偏心ローターの回転によってピストンが上下運動を行います。シリンダ内部の空気がピストンにより圧縮・排出されることで減圧します。
2. ドライポンプ
ドライポンプは、油や液体を使用しない非接触型のクリーンな真空ポンプです。ポンプタイプにより、多くの種類があります。
ルーツ形ドライ真空ポンプ
ルーツ形のロータを使用したポンプです。冷却水不要で利便性が高い特徴があります。
スクロール形ドライ真空ポンプ
スクロールが旋回運動し、外側から内側へ空気を圧縮・排出することで真空状態を作り出す構造です。コンパクトで、高真空・低振動・低騒音・省エネなどの長所があります。
クロー形ドライ真空ポンプ
爪の形をした2本のクローローターが、互いに逆方向に回転することにより、真空を作ります。
ダイアフラム形ドライ真空ポンプ
ポンプシャフトと呼ばれるピストンが往復運動することにより、ダイアフラムを上下させ、空気を吸入、排出します。
その他
回転翼型や揺動ピストン型などがあります。油回転ポンプと類似の構造の真空ポンプです。
参考文献
https://www.ulvac-es.co.jp/categories/vacuum-pump/small-vacuum-pump/
https://www.ulvac-es.co.jp/component-guide/selection/vacuum-pump/small-oil-rotary-pump/
http://www.mekatoro.net/mechatro_parts/vol3/pdf/P01-235.html