アクリル樹脂塗料

アクリル樹脂塗料とは

アクリル樹脂塗料

アクリル樹脂塗料とは、1950年頃に誕生したアクリル樹脂を主成分とする塗料です。アクリル樹脂は、アクリル酸メタクリル酸、およびこれらのエステルや、スチレンなどのモノマーを共重合させたものですが、その分子設計の自由度の高さから塗料以外にも接着剤、有機ガラスなど幅広い用途に利用されています。

アクリル樹脂を構成する代表的モノマー

図1. アクリル樹脂を構成する代表的モノマー

アクリル樹脂塗料は販売開始当初、発色とツヤの良さから一気に普及しましたが、現在は、より高性能なウレタン樹脂塗料やアクリルシリコン樹脂塗料が主流になっています。揮発性有機化合物 (VOC) の問題で、溶剤系から水系への代替が進んでいます。

アクリル樹脂塗料の使用用途

アクリル樹脂塗料の主な用途として、外壁塗装やDIY等が挙げられます。ウレタン樹脂塗料などの普及により、減少してきていますが、建築外装・内装のコンクリート面、モルタル面、瓦、PCコンクリート面等の上塗り塗装に広く使用されています。

また、アクリル樹脂塗料は、色の種類が豊富なため、家具類やDIYにも使われることが多いです。アクリル樹脂はモノマーの種類や重合度の調整で、塗膜を柔軟性のあるものから硬いものまで、用途に応じて物性を変えられるため、幅広い使用用途があります。

アクリル樹脂塗料の種類

アクリル樹脂塗料の塗膜形成機構の違い

図2. アクリル樹脂塗料の塗膜形成機構の違い

アクリル樹脂塗料には、油性の溶剤型アクリル塗料と、水性のアクリルエマルジョン塗料の2種類があります。

1. 溶剤型アクリル塗料

溶剤型アクリル塗料は、アクリル樹脂を溶剤であるシンナーに溶解させた塗料で、塗膜形成が分子レベルで起こるため、耐候性、耐水性、耐アルカリ性、耐油性に優れた機能を持ちます。溶剤型アクリル塗料の一番のデメリットは、シンナーの臭いや有害物質です。

主な使用目的が建築であるため、周囲への配慮が必要です。また、周囲だけではなく、取り扱う作業員にも防護措置が必要とされています。

2. アクリルエマルジョン塗料

アクリルエマルジョン塗料は、水性アクリル樹脂塗料とも呼ばれ、アクリル樹脂を水中で乳化、分散させた塗料です。溶剤型アクリル塗料と同様、機能設計することが可能です。最近では、防腐剤、消泡剤、防カビ剤、防汚剤といった添加剤を含めることで、機能性を向上させた塗料が開発されています。

アクリルエマルジョン塗料は溶剤を使っていないため、臭いや有害物質による被害はほとんどありません。添加物による機能が増え続けたことにより、同じ建築用の使用でも採用されるのが多くなった塗料です。

アクリル樹脂塗料のその他情報

1. アクリル樹脂塗料のメリット・デメリット

各種塗料の特徴比較

表1. 各種塗料の特徴比較

アクリル樹脂塗料のメリットは価格が安い、発色・ツヤが良い、豊富な色、素人が扱いやすい、重ね塗りしやすい点が挙げられます。一方でデメリットは、紫外線に弱いため劣化が早いことです。需要が激減した最大要因が紫外線などに対する耐候性の弱さによるものです。

また、塗膜に柔軟性を持たせるために可塑剤を配合していますが、可塑剤が熱、紫外線によって徐々に減ってしまい、塗膜が硬くなり、ひび割れ、所謂クラックが起こります。アクリル樹脂塗料の耐用年数は5~8年と短いため、耐用年数の長いアクリルシリコン樹脂塗料が主流になってきています。

アクリルシリコン樹脂とは、分子内にシリコーン骨格を導入したアクリル系樹脂です。これにより、アクリル樹脂のデメリットを低減させています。そのため、アクリルシリコン樹脂塗料は、住宅外装向け塗料に使用される事が多いです。

2. アクリル樹脂塗料の製造工程

一般的に5つの工程を経て塗料は製造されています。溶剤型アクリル塗料よりもアクリルエマルジョン塗料の方が、分散させる粒子が多くなるため、分散剤等が必要となり、アクリルエマルジョン系のほうが添加剤が多いです。この他、塗膜強度を上げるために、原料として反応性の架橋剤を添加する事もあります。

  • 前練
    樹脂や顔料、界面活性剤、溶剤を混合させ、粒子分散液 (ミルベース) を生成します。
  • 分散
    生成したミルベースを均一になるまで分散機で分散させます。
  • 調合
    分散したミルベースに塗料の性能を向上させるための添加剤などを加えます。
  • ろ過
    異物を除去するため、ろ過を行い塗料が完成します。
  • 着色
    完成した塗料に、着色塗料を混合して色付けを行います。着色後に各容器に充填し、出荷されます。

3. アクリル樹脂焼付塗装の特徴

アクリル樹脂焼付塗装とは、アクリル樹脂塗料を対象物に塗装した後、対象物を加熱することでアクリル樹脂を熱硬化させて塗膜の強度を飛躍的に向上させる塗装方法です。アクリル樹脂の場合は、140℃から180℃の高温で20分から30分ほどの加熱乾燥が必要です。焼付塗装することによって、硬度が高くなり、キズが付きにくい、塗膜の密着性が向上します。

焼付塗装は耐候性が高くなるため、アクリル樹脂の弱点であった紫外線による劣化、退色、チョーキングの発生が改善されます。しかし、丈夫な塗装であるため柔軟性に弱点があり、ひび割れが発生する事がデメリットです。そのため、アクリル樹脂焼付塗装は屋外製品に向いています。

その他、屋内・屋外の家具や壁面塗装だけでなく、その特製から小さな部品の塗装にも向いています。金属製の工業製品から装飾品まで幅広く扱われており、身近なものだと、耐候性の求められる自動販売機やカラー塗料が必要なアクセサリー等です。

焼付塗装することにより、アクリル樹脂本来の性能以上に機能を高められますが、高温かつ長時間の焼付が必要なため、塗装対象物の耐熱温度や、サイズによる制約がかかってきます。

参考文献
https://www.ueda-kk.com/ja/knowledge/index.html
https://www.dnt.co.jp/products/kind/6.html
https://gaiheki-tatsujin.com/13291
https://www.j-proof.co.jp/dictionary/614/
https://www.dnt.co.jp/products/kind/6.html
https://ichi-you.jp

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