アキュムレータとは
アキュムレータ(英語:hydraulic accumulator)とは、日本語で蓄圧器という意味を持ち、流体の圧力エネルギーを他の高圧流体エネルギーに変換して蓄えておく装置のことです。主に油圧系や蒸気系の流体機器に使われます。
英語のaccumulateが「蓄える」や「積み重ねる」という意味を持っていることから、何を蓄えたり積み重ねるかによって技術分野ごとに異なった装置があります。例えば、コンピュータ分野では演算結果を一時保存したり、そのまま次の演算に使う累算器、電力分野では蓄電池や蓄電装置、風力発電では風車と発電機の間で油を循環させバランスをとるシステムなどです。
油圧系や蒸気系では、油や蒸気の圧力エネルギーを窒素ガスや蒸気の圧力エネルギーとして蓄え、必要な時に気体を膨張させてエネルギーを放出させます。日本では、高圧ガス保安法・労働安全衛生法による規制を受ける圧力容器です。
アキュムレータの使用用途
アキュムレータは、油圧システムや蒸気ボイラなどに多く使われます。油圧系では、ポンプを出た高圧回路にアキュムレータを設け、運転中の高い油圧により、アキュムレータ内に封入されている窒素ガスを圧縮させます。そして油圧が下がった場合に窒素ガスの力により、油圧を上げて圧力を維持する働きをします。
ボイラ装置では、スチームアキュムレータにより、蒸気が余った時、蒸気の熱量を高温高圧の飽和蒸気として蓄え、必要時に圧力を下げた蒸気を送出します。また、蒸気使用量の時間的変動とボイラの蒸気発生とのアンバランスを吸収するため、ボイラは効率の良い安定運転が可能となります。
水ポンプでもアキュムレータを使用することにより、停止時などの急激な圧力変動をやわらげて、ウォーターハンマーを防止します。アキュムレータの容器に蓄えられた蓄圧気体 のエネルギーを緊急時の補助動力源にすることが主目的です。さらに、衝撃圧力の吸収と緩衝、管内圧力上昇の緩衝、システムの無駄な消費電力の低減等にも効果があります。
アキュムレータの原理
気体式蓄圧器では、主に窒素を使い、これを加圧収縮させたり膨張させることでエネルギーの出し入れを行います。油圧系の場合、ポンプを出た高圧回路にアキュムレータを設置します。アキュムレータの内部にはプラダと呼ばれる袋があり、油側と気体側とを隔離しています。プラダに窒素ガスを封入し、油圧ポンプを駆動して油圧が窒素ガスの圧力以上に上がると、窒素ガスが圧縮されます。
油圧系の圧力が下がったり、ポンプが停止した時、窒素ガスの圧力エネルギーによりプラダが膨張して油圧を維持します。また、油圧の脈動を小さくする効果もあります。容器の内部で窒素ガスを封入するブラダは、ゴム系の材料で作られ伸縮します。容器は腐食の恐れがないカーボンスチール、ステンレススチール、アルミ、合成材などが使われます。
容器の容量は0.5〜450ℓ、許容最大圧は約990気圧程度です。プラダ方式のアキュムレータは、エネルギー放出が速く、必要に応じて速いサイクルでエネルギー蓄積と放出ができる特徴があります。また、装置をコンパクトにすることが可能で、メンテナンスが容易です。
アキュームレータのその他情報
1. アキュムレータのガス
アキュムレータでエネルギーを蓄える気体には、多くは窒素ガスが使用されます。窒素ガスは、不燃性・不活性のガスであるため、アキュムレータに使用している金属の劣化を抑えることができます。また価格も安価で、爆発の恐れがないこともメリットです。
動作を繰り返すと窒素ガスの圧力は次第に減少していくため、定期的に圧力が低下していないかの点検が必要です。アキュムレータをサスペンションに使用している場合であれば、ガス圧力の低下によって路面からのショックを吸収することができず、乗り心地が悪くなります。圧力が低下している場合は、窒素ガスを補給します。
2. アキュムレータを使用した車のシステム
アキュムレータは自動車のサスペンションやブレーキに使用されています。特殊車両では車体重量が大きく、多軸車などはスプリングで衝撃を吸収しきれない場合があるので、ガススプリングの役割を果たすアキュムレータが使用されます。またアキュムレータを用いた油圧サスペンションであれば、車体の上げ下げも自在に行うことが可能です。
ブレーキにアキュムレータを使用するのは、ブレーキ時のエネルギー回収を行うためです。ハイブリッド車では、モーターによってエネルギー回収を行うとき、運転手が求めているブレーキの強さと相違が生まれてしまいます。この違和感を解消するため、アキュムレータがモーターの制動力を適切に補助し、最適なブレーキ力を確保しています。
参考文献
bladder-accumulator.html
http://www15.wind.jp/~Glauben_leben/Buturi/Netu/Netubase4.htm
https://www.nacol.co.jp/qa/index.html
https://www.nacol.co.jp/products/images/caj0804/hpj0804pall.pdf
https://xtech.nikkei.com/dm/article/FEATURE/20100208/180034/