シールリングとは
シールリングとは機械部品の一つで、相対回転や往復運動をする二つの部品の間において、気体や液体を密封するための部品です。
シールリングは円形状をしていますが、円周上に1箇所「合口」という切れ目があるのが特徴です。合口があることによって、シールリングを使用する部位に取り付けることができます。一方で合口はシール性を低下させる要因になるため、特に樹脂製のシールリングにおいては、さまざまな工夫が施されています。
シールリングは相対運動する二つの部品の間で使用されますが、摺動による抵抗が生じることが避けられません。シールリングの使用用途によっては抵抗を抑えたい場合もあり、低フリクション化のために、特殊な断面形状を持った製品も開発されています。
シールリングはOリングやオイルシールなど、回転シール全般を指すために用いられる場合もあるようですが、ここでは狭い範囲に限定して解説します。
シールリングの使用用途
シールリングは主に自動車などのエンジン、A/TやCVTなどのトランスミッションに使われています。エンジンでは主に排気系で使われる部品です。例えばターボチャージャー、EGR弁、その他軸のシールなどに利用される部品です。
1. トランスミッション
入出力軸などと、その軸に組み合わさる部品との間で、油圧を伝達する必要がある場合に用いられます。これらの部位においては、多くは相対回転する部品の間で、排気やオイルを密封するのが、シールリングの役割です。
2. CVT
プーリーの油圧室のシールのために、シールリングが使われています。ベルトやチェーンを使ったCVTでは二つのプーリー軸におけるベルトやチェーンの回転半径を無段階で変化させるために、油圧室が設けられたシーブ面という円錐部品をスライドさせます。このスライドをしながら油圧を保つために、シールリングが使われています。
CVTの油圧室でシールリングは相対回転ではなく、摺動運動しながら油圧を保持する役割を果たすのが特徴的な使われ方です。
シールリングの種類
シールリングには大きく、金属製と樹脂製があります。金属製は主にエンジンの排気系、樹脂製はトランスミッションで多く用いられています。
1. 金属製
金属製のシールリングは、シール性はもちろん、耐熱性が求められる部位に使われます。使用される材料はSUS、SKHなどです。耐熱性はもちろん、排気ガスなどによって腐食しにくいことも重要なポイントです。
2. 樹脂製
樹脂製のシールリングは、金属製よりも複雑な形状に仕上げることができます。側面や合口の形状を工夫することによって、回転運動の摺動抵抗を低減させたり、合口からのリークを低減させることができます。
樹脂製のシールリングの材料はPEEK材やPPS材などです。シール性を確保しつつ、耐摩耗性を高める工夫が施されています。
シールリングのその他情報
シールリングという名称で部品販売サイトなどで検索すると、本稿で解説した製品以外に、Oリング、パッキン、ガスケットなども検出されます。JIS B 0116:2020によると”シールは流体の漏れ又は外部からの遺物の侵入を防止する機能又は部品。密封部品ともいう”、パッキンは”回転運動、往復運動などの運動部に用いるシールの総称、運動用シール又は動的シールともいう。注記 一般にはシールと同じ意味を表す”と定義されています。本稿で紹介したシールリングは、シール、パッキンいずれにも該当する部品です。
一般的にOリングは相対運動がなかったり、相対運動が比較的少ない部位において、ゴム部材などを圧縮させて積極的に漏れを防ぐもの、パッキンはリング形状によらず広く用いられている部品です。回転運動する部位の密封部品にはオイルシールもありますが、主に外部からの異物侵入を防止することも機能に加えられた製品を指します。