板鍛造

監修:株式会社寺方工作所

板鍛造とは

板鍛造とは、板金加工と冷間鍛造を融合させた加工サービスです。

板鍛造は、板金加工のコイル材を使って高品質で大量に生産が可能な点と、冷間鍛造の塑性変形を常温で行い高精度な成型が可能な点の両方のメリットを融合させた加工法です。板鍛造を活用すると、複雑な形状の肉厚部品を一気に成型ができます。しかも、高精度かつ低コストです。

FCF工法 (英:Flow Control Forming in Sheet Metal) とも呼ばれています。板鍛造の加工を引き受ける会社はまだ少ないが、依頼すれば、適切な加工サービスを受けられます。

板鍛造の使用用途

板鍛造は、板厚がほとんど変化しない通常のプレス加工に、鍛造要素を取り入れて板厚の変化を制御可能な加工法で、自動車部品や電機製品の小物精密部品などに多く使用されます。例えば、歯車構造を有するギヤ部品や、フランジのように部分的に増肉が必要な部品です。事例の一部を次に示します。

1. 自転車リアーディレーラー用ブラケット

外寸40mm以下の材質S45C、板厚4.6mmの部品です。鍛圧部の公差4.4±0.03、穴径10.15±0.08、座ぐり部11±0.1mmが主要寸法です。工法の特徴は、減厚・エンボス・座ぐり加工などの複合成形です。

2. シートリクライナー用ロックギア

材質S45C、板厚6.0mm、ギアモジュール0.55の部品で、特徴は、つぶしによりギヤとカム面を成形です。粉末冶金による成形部品や、溶接・圧入などによる部品を板鍛造に変更すると一体成形ができ、大幅なコスト削減が得られます。

3. 4輪ブレーキ用ブラケット

材質SAPH440、板厚6.0mmの部品で、ファインブランキング順送加工して、必要な部分のみ増肉することで、材料費を低減し軽量化を実現したものです。

4. ドアロック用ラッチ・ラチェット

前方押し出しによりエンボスを一体成形し、ピンの製作と圧入の工程を省きます。板鍛造により材料のファイバーフローが切断されないので、強度が上がり、ピンが抜ける製品不良もなくなります。

板鍛造の原理

板鍛造は、打ち抜き・絞り・曲げ・バーリングなどを行う板金成形工法と、据えこみ・しごき・押し出しなどの鍛造成形工法を取り込んだ複合成形加工法です。板鍛造の主なメリットを次に示します。

1. 後加工の切削が不要

後加工の切削加工が不要であり、「ネットシェイプ加工」の一つです。加工時間の短縮や材料歩留まりの向上などで大きなコスト低減が可能です。

2. 高強度

製品形状に沿ったファイバーフローができるので、高強度になります。また、鍛造加工で金属内部の気泡や欠陥を押しつぶして、金属の結晶構造を緻密にすることで、粘り強い金属になります。

3. 高精度

板鍛造の加工で、ファインブランキングを用い、高精度な平面度・直角度が得られます。また、従来のプレス成形では困難であった高精度、差厚・段差、歯形のような、高付加価値形状の成形が可能です。

ただし、板鍛造では金型の負担が大きくなるため、金型を高剛性・高精密にし、高剛性のプレス機械が必要です。

板鍛造のその他情報

加工サービス

鍛造は日本が発祥の技術で、2015年前後から普及が始まりました。コスト低減に大きな効果があり、今後の発展が期待されています。板鍛造用の金型を設計・製作できるメーカーはまだ少なく、現時点では専門メーカから加工サービスを受けるのが得策です。

本記事は板鍛造を製造・販売する株式会社寺方工作所様に監修を頂きました。

株式会社寺方工作所の会社概要はこちら