紫外線保護メガネ

紫外線保護メガネとは

紫外線保護メガネとは、紫外線(UV)から目を保護するための眼鏡です。

紫外線は太陽から放射され、可視光線の波長よりも短く、紫外線領域に位置する電磁波の一部です。長時間の紫外線暴露は皮膚や目にさまざまな健康被害をもたらす可能性があるため、適切な紫外線対策を取る必要があります。紫外線保護メガネを使用することで、紫外線が目に暴露することを防止することができます。

太陽光やまぶしい光にさらされると、目が疲れやストレスを感じやすいです。紫外線保護メガネはまぶしさを軽減し、快適な視界を確保するためにも利用できます。

紫外線保護メガネの使用用途

紫外線保護メガネは、さまざまな用途で使用されます。以下は紫外線保護メガネの使用用途一例です。

1. 建設業

建設現場では、屋外での作業が一般的であり、太陽光からの紫外線曝露が高まるため、労働者は紫外線保護メガネを着用することが推奨されます。これにより、作業員の目を保護し、目の健康問題を予防することが可能です。

2. 農業

農業従事者も屋外での長時間の作業が必要な職種です。日光に長時間曝露することから、紫外線保護メガネが農業作業中に必要な場合もあります。また、農薬や化学物質から目を保護するためにも役立ちます。

3. 医療

歯科医師は歯の治療で紫外線硬化材料を使用することも多いです。これらの材料は紫外線を照射することで硬化し、歯を補強する役割を果たします。紫外線硬化材料を扱う際、歯科医師は患者の歯を治療する際に、自身の目を紫外線から守ることが必要です。

また、皮膚科医は皮膚病の診断や治療を行う際に、光線治療を実施することがあります。この場合は紫外線照射が必要であり、医療従事者は患者の治療中に目を保護するために紫外線保護メガネを使用します。

4. 食品業

食品製造業では、紫外線殺菌灯がパッケージ容器などの表面除菌に使用されます。これにより、微生物の繁殖や汚染を防ぎ、製品の品質を保つことが可能です。この装置の周辺で作業をする作業員は、目を保護するために紫外線保護メガネを着用することが推奨されます。

紫外線保護メガネの原理

紫外線保護メガネのレンズは、特定のUV波長をフィルタリングする機能を有します。これはレンズに特殊なコーティングを塗布したり、特殊な材料を使用したりすることで実現される機能です。UVフィルタリングによって紫外線光線がメガネを通過することを防ぎ、目に紫外線が直接当たらないようにします。

紫外線保護メガネは紫外線をブロックする一方で、可視光線は通過させるように設計されています。日常的な視界や視覚のクオリティに影響を与えずに、紫外線から目を保護することが可能です。これにより、メガネとして視界を提供する機能を実現しています。

その他、紫外線を吸収する紫外線メガネも販売されています。吸収型の紫外線保護メガネは紫外光線をレンズ内部に取り込み、吸収することで目を守る仕組みです。

紫外線保護メガネの選び方

紫外線保護メガネを選ぶ際には、さまざまな要素を考慮することが重要です。

1. サイズ

メガネのフレームサイズは、顔の形に合った製品を選ぶ重要な要因です。フレームが合わないと、快適さや保護効果が損なわれる可能性があります。フレームの幅などを確認し、適切なサイズを選ぶことが重要であり、試着してフィット感を確認することがおすすめです。

2. 紫外線カット率

紫外線保護メガネの最も重要な機能の1つは、紫外線カット率です。メガネのラベルや説明に紫外線カット率が表示されているため、高いカット率(通常は99%以上)の製品を選びます。

3. 材質

フレーム材質は耐久性や快適さに影響を与える指標です。一般的な材質にはプラスチックやチタンなどがあります。軽量で丈夫な材質を選ぶことで、長時間の使用も快適になります。

また、目を保護する上でレンズの材質も重要です。一般的には軽量かつ丈夫なポリカーボネートなどが使用されます。

変圧器ブッシング

変圧器ブッシングとは

変圧器ブッシングとは、変圧器の絶縁物を使用して電線を支持しつつ電気を供給する部品です。

電線は重力の影響を受けるため支持する必要がありますが、金属部品で支持すると地絡・短絡してしまいます。したがって、碍子や樹脂などの絶縁材料で堅牢に支えることが必要です。変圧器ブッシングは電線を支持しつつ絶縁し、電気エネルギーを伝送する役割を果たします。

絶縁性能が高く、変圧器内の高圧側・低電圧側の両方を絶縁することが可能です。一般的には高圧側の方に、離隔距離を大きく取れるブッシングを使用します。

適切な保守と点検が行われれば、変圧器ブッシングは長寿命で信頼性が高い部品です。電力インフラの安定性と供給信頼性向上に貢献します。

変圧器ブッシングの使用用途

変圧器ブッシングは変圧器や周辺機器に対して使用されます。周辺機器にはバスダクトや混触防止板などが含まれます。使用場面としては、電力配電事業所や受変電所です。

1. 電力配電事業所

電力配電事業所は電力線を分岐させて、電力を分配する施設です。変圧器を有していることが多く、高電圧の電線を低電圧へ変換して取扱いを容易にしています。変圧器ブッシングは高圧送電線と低圧配電線の接続点で使用され、電力の伝送と分配における絶縁を提供します。

2. 受変電所

受変電所は送電線からの高電圧電力を受け取り、低圧電力に変換して一般需要者へ供給する役割を果たす施設です。 変圧器ブッシングは変圧器の絶縁性能を確保し、変圧器の地絡・短絡を防止します。これにより、受変電所の安全性と信頼性を向上させることが可能です。

変圧器ブッシングの原理

変圧器ブッシングは電線を絶縁しつつ、電力の伝送を効率的かつ安全に行うための部品です。構造としては絶縁体と導体の組み合わせに基づいています。

変圧器ブッシングの最も重要な機能は、充電部分を完全に絶縁することです。これにより、電気の地絡や短絡を防ぎます。絶縁材料によって絶縁性を確保しますが、一般的な絶縁材料にはセラミックやガラス、ポリマー(プラスチック)が使用されます。変圧器ブッシングには、高電圧側から低電圧側へ電気エネルギーを伝送するための導体が内部に配置されています。

これらの導体は銅やアルミニウムなどの導電性の高い材料で作られており、電流を確実に伝送することが可能です。変圧器ブッシングは変圧器本体または受変電所の機器に取り付けられ、電力伝送経路を確立します。高電圧側は送電線や変圧器と接続され、低電圧側は配電システムに接続されることが多いです。

変圧器ブッシングの選び方

変圧器ブッシングを選ぶ際には、いくつかの重要な要因を考慮することが必要です。以下は変圧器ブッシングの選定要素です。

1. 使用電圧

変圧器ブッシングを接続する電線の電圧レベルに合わせて選定します。仕様上の電圧範囲で安全に運用できるように設計されているため、遵守することが重要です。高圧用や特別高圧用のブッシングが販売されており、特別高圧用は66kV用や154kV用、275lV用などの種類があります。

2. 絶縁体材質

ブッシングの絶縁材料は、充電部分を絶縁するために重要です。一般的な絶縁材料にはセラミックやポリマー(プラスチック)などがあります。磁気の碍子は堅牢で汚れの付着も少ない点が特徴ですが、ポリマーの碍子は大量生産や加工が容易です。

3. 許容電流

ブッシングの許容電流は、電流の負荷に対する性能を示します。変圧器の設計電流に合致するブッシングを選択し、負荷に対応できる許容電流容量を確保することが必要です。

4. 寸法

ブッシングの寸法は、変圧器や周辺機器の設計に合致する必要があります。高電圧側と低電圧側のブッシングの寸法を選定し、設置スペースに収まるように計画することが重要です。

5. 耐汚染性

屋外で使用される場合、ブッシングは汚染物に対する耐性が重要です。特に塩害地域などでは、ブッシングの表面処理などによって汚染物の付着を最小限に抑えることが必要です。塩害対策用の変圧器ブッシングなども販売されています。

ポリマー接着剤

ポリマー接着剤とは

ポリマー接着剤とは、ポリマー (高分子) が使用されている接着剤全般のことです。

金属、プラスチック、木材、ガラス、セラミックなど、様々な素材を強力に接着することができます。ほとんどのポリマー接着剤は人工合成材料から製造されており、柔軟性や耐熱性、耐薬品性、導電性など、用途に応じて固有の特性を持たせることが可能です。

ポリマー接着剤の使用用途

ポリマー接着剤は、金属、プラスチック、セラミック、ガラス、皮革、木材、ゴム、コンクリートなどの多様な素材に使用することが可能です。

工業、建設、自動車、船舶、航空宇宙など、幅広い産業で用いられます。承認を受けたものは、医療の現場でも利用することが可能です。また、電気絶縁性が高い接着剤は電子部品に適しており、電子機器、パッケージングなどの分野で使用されています。

ポリマー接着剤の原理

ポリマー接着剤は、液状の物質として対象物表面に液状に付着し、後に硬化することで効果を発揮する物質です。硬化は重合や硬化剤などとの化学反応、溶媒の蒸発などによって引き起こされます。

基材にくっつく接着力と、接着剤自体の構造を維持する凝集力の両方でその作用が成り立っています。接着力とは異なる分子同士をくっつける力であり、凝集力とは同じ種類の分子同士を結びつけておく力です。

なお、ポリマー接着剤の接着力は、物理的接着・化学的接着・分散接着のいずれかの機構によります。

1. 物理的接着

物理的接着とは、接着剤が基材表面の穴に流れ込んだり、突起物に付着したりすることで力学的に固着する機構のことです。基材の表面に小さな穴などがある場合に特に有効な接着方法です。

2. 化学的接着

化学的接着とは、化学結合による接着です。最も強い結合はイオン結合や共有結合であり、次に強い結合は水素結合です。イオン結合とは、正電荷を持つ陽イオンと負電荷を持つ陰イオンの間の静電引力による結合であり、共有結合とは原子間でいくつかの価電子を互いに共有し合うことによってできる結合を指します。水素結合とは、電気陰性度が大きな原子に共有結合した水素原子が、近傍に位置する窒素、酸素、硫黄や、フッ素、π電子系骨格などの孤立電子対と形成する相互作用です。

3. 分散接着

分散接着とは、ファンデルワールス力 (物質内で分極して正電荷と負電荷とを帯びた部分により二つの物質が静電的に引き合う力) によって結合する接着です。

ポリマー接着剤の種類

ポリマー接着剤には、懸濁水溶液状となっているエマルションタイプのものや、ポリマーが溶剤に溶解している溶液型のもの、光 (紫外線) や熱、圧力などを与えて化学反応を起こすことにより硬化が開始する反応型のもの、熱可塑性接着剤であるホットメルト接着剤などがあります。

1. エマルション

エマルションタイプの接着剤は、ポリマーが溶解せずに乳化して懸濁液/懸濁水溶液状となっている接着剤です。代表的な物質として酢酸ビニル樹脂エマルション、アクリル樹脂エマルションなどがあげられます。酢酸ビニル樹脂エマルションは、木工用で広く利用されている接着剤であり、アクリル樹脂エマルションはより接着性、耐水性に優れた接着剤です。合成ゴムエマルション床用接着剤などに用いられます。特に天然または合成ゴムが主体となっている接着剤をラテックス系接着剤と呼びます。

2.溶液型

溶液型の接着剤は、有機溶剤に高分子を溶解させたものです。酢酸ビニル樹脂、クロロプレンゴム、天然ゴムなどの種類があります。酢酸ビニル樹脂は安価であり、またクロロプレンゴムは金属、プラスチック、木材などの接着に汎用される代表的なゴム系接着剤です。 一般的にゴム系の接着剤は、皮革、ゴム、布のような柔らかいもの同士の接着に適しています。

3. 反応型

反応型の接着剤は、光 (紫外線など) や熱、圧力など何らかのエネルギーを与える事で化学反応を進行させ硬化する接着剤です。オーブンや硬化炉、UVランプ等を用いて硬化させるものや、常温にて自然に硬化するものなどがあります。硬化後に熱硬化性高分子となる製品が多いです。

反応の種類によっては2種以上の化学種を用いることから、1液タイプの製品だけでなく、使用の直前に混合する2液タイプの製品も多くあります。用いられる具体的なポリマーの種類としては、フェノール樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、アクリル樹脂系などがあります。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kobunshi1952/19/6/19_6_472/_pdf
https://www.elastomer.kuraray.com/jp/blog/polymer-adhesives/
https://www.monotaro.com/note/readingseries/kagakukoubunshikisokouza/0305/
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kakyoshi/46/5/46_KJ00003519943/_pdf

エアゲージ

エアゲージとは

エアゲージとは、高圧空気を扱うときにその圧力を測定する器具です。

高圧空気配管やタンクの圧力計を指す場合と、タイヤに入れた空気の圧力を測定する器具を指す場合があります。どちらも同様の構造・原理を有しています。

高圧空気配管やタンクは、正常動作をさせるために日常的に圧力を確認することが重要です。空気入りタイヤには高圧の空気を封入して用いますが、タイヤ本来の性能を発揮するには、適正な空気圧を保つ必要があります。

そのため、エアゲージで空気圧を測定することはいずれにおいても重要な役割を持っています。

エアゲージの使用用途

エアゲージの使用用途は、空気圧の確認です。高圧空気配管やタンク用のエアゲージは、実際の圧力が設備に必要な圧力に一致しているかを確認するために用いられます。

タイヤ用のエアゲージは、自動車用、オートバイ用または自転車用の空気入りタイヤにおいて、空気圧を確認する際に有用です。

エアゲージの原理

1. ブルドン管ゲージ

アナログのエアゲージに良く用いられるものはブルドン管ゲージです。曲げて先を塞いだ金属管を用いるもので、圧力がかかると曲がりが伸びます。この金属管の変形に連動して指示針が回転し、圧力を指し示すようになっています。高精度ですが、機械式で精密なものであり、衝撃に弱いことが欠点です。

2. ばね式ゲージ

ブルドン管ゲージと同様に良く用いられるのは、ばね式ゲージです。圧力がばねと拮抗するようになっており、ばねの縮みと連動して圧力が指示針で示されます。構造が単純であり、比較的衝撃に強いことが特徴です。携帯型のタイヤ用エアゲージや、高圧配管の日常点検用圧力計に用いられます。

3. ダイヤフラム式ゲージ

ダイアフラムとは隔膜のことです。圧力によって隔膜がへこむ状況を検出し、圧力を測定するものを指します。検出方法には、隔膜をブルドン管ゲージに繋いで機械的に測定する方法や、隔膜の変形を電気的に読み取る方法があります。

エアゲージの種類

1. 高圧空気配管・タンクの圧力計

高圧空気配管・タンクの圧力計をエアゲージと呼ぶことがあります。日常点検時に正常範囲であるか確認するときに用いられ、耐久性の高いばね式のものが主流です。

2. タイヤ用エアゲージ

エアゲージと呼ぶ場合、タイヤ用のものを指すのが一般的です。表示方法にはアナログ式とデジタル式、検出した圧力を表示に変換する方法には機械式と電気式があります。アナログ式の場合、ブルドン管式かばね式のゲージが多いです。

携帯用の簡易な小型のものから、ガソリンスタンドや整備工場に常備する精密で大型のものまであります。ブルドン管ゲージは衝撃に弱いため、ゲージ全体がゴムで覆われているものが一般的です。

中には、空気注入弁・操作器具と一体になっているものもあります。具体例として、タイヤのエアーバルブに差し込み、グリップを短く握ると空気が抜け、長く握ると空気が入るようになっているものが挙げられます。このタイプはエアータンクに接続して使用します。

エアーバルブのその他情報

空気圧の単位

圧力のSI単位はPaです。通常、空気圧ゲージも Pa単位で表示され、特に高圧空気配管・タンク用のゲージは安全のため単位の統一が重要であり、SI単位の使用が徹底されます。一方、タイヤ用のゲージは、100kPa単位で目盛を振っているものが多いです。

乗用車タイヤの空気圧が200kPa程度であるため、この目盛が見やすいことが理由として挙げられます。また、日本ではタイヤ空気圧にkgf/cm2が用いられてきたことも理由の一つです。

100kPaが約1kgf/cm2であるため、100kPa単位で目盛りを振ることで、どちらの単位になじんだ人も大きな違和感なくゲージを扱うことが可能です。現在でもkgf/cm2やbar表示のゲージが販売されています。

外国製の空気入れなどの器具は、外国で一般的な単位で表記されている場合もあります。英国ではpsiで表記されることがあります。目安として、30psiが約200kPaに相当するものです。

シンチレーション検出器

シンチレーション検出器とは

シンチレーション検出器とは、シンチレータと呼ばれる荷電粒子が通過する時に起こるシンチレーション光を、光検出器を用いて可視化する装置です。

放射線測定器の1つで、私たちの目には見えない放射線を可視化するために使用されます。
シンチレーション検出器には使われるシンチレータには種類があり、無機、有機、固体、液体などさまざまです。

また、放射線の測定にはシンチレーター検出器以外にGM計数管式サーベイメータ、電離箱などの計測器があります。

シンチレーション検出器の使用用途

シンチレーション検出器は幅広い分野で使われているデバイスです。

1. 石油を含む鉱物資源の調査

石油層の周囲には放射性同位体を含んだ層が存在している場合が多く、石油の掘削位置を決定することに役立っています。

2. 空港の荷物検査

セキュリティ分野においては、空港の手荷物検査機です。原理はX線レントゲンと同じ透過撮像であり、手荷物に放射線を照射すると、荷物がある部分の放射線は弱く、荷物のない部分の放射線強度が高くなることを利用しています。

3. PET

病院で利用されるPET (Positron Emission Tomography) は、癌細胞の発見に利用される装置です。癌細胞は正常細胞よりも多くのブドウ糖を消費するため、微量の放射線を混ぜたブドウ糖を患者に投与することによって、癌細胞を見つけることができます。

4. その他

食品の検査装置、核融合炉といった高エネルギー物理学分野、電子部品や文化遺産の非破壊検査装置、地雷探査機にもシンチレーション検出器が用いられています。

シンチレーション検出器の原理

シンチレーション検出器は、大きくシンチレータと受光素子の2つで構成されている装置です。まずシンチレータでは入射したX線を吸収し、X線のエネルギーに比例した数の可視光と紫外線を放出します。

受光素子は光電子倍増管とも呼ばれ、電子を光に変換して倍増させる部位です。シンチレータで発生した光を電子に変換する光電面と、変換した電子を増幅する電子増倍部から構成されています。

光電面はアルカリ金属が主な成分であり、ガラスの窓を通してシンチレーション光を受けます。光電面が変換した電子は高電圧がかけられた電子増倍部に作られた電場によって増幅されます。この増幅された電子が電気信号となって、X線の存在がわかる仕組みです。

シンチレーション検出器の種類

シンチレーション検出器はシンチレータの種類によって分けられ、シンチレータは対象とする放射線の種類や使用目的によって選ばれます。

1. 無機シンチレータ

無機シンチレータはγ線、α線、中性子などの検出に使われます。代表的なものにNal (Tl) 、ヨウ化セシウム結晶 (Csl)、酸硫化ガドリニウム (GOS) 、ケイ酸ガドリニウム結晶 (GSO) などの無機結晶が使われます。無機結晶のシンチレータは発光量が大きく、エネルギー分解能が高いことなどが特徴です。X線撮像装置、食品検査装置、荷物検査装置、医療用PET、車体検査装置、X線衛星などに用いられています。

2. 有機シンチレータ

有機結晶を用いた有機シンチレータは無機シンチレータに比べると、応答性が良いのが特徴です。代表的な物質はアントラセン、スチルベンなどがあります。

3. 有機液体シンチレータ

有機液体シンチレータは、強い放射線が照射されても損傷を受けにくいのが特徴です。ナフタレンやトルエン、キシレンといった有機溶媒にPPO (ジフェニルオキサゾール) などの有機シンチレータが溶解されています。

4. プラスチックシンチレータ

プラスチックシンチレータは、プラスチックに複数種類の有機発光物質を溶け込ませたものです。特徴は取り扱いがしやすく、加工性も良好であることが挙げられます。α線やβ線の検出に適しています。

5. 気体シンチレータ

気体シンチレータには、高純度のキセノン、ヘリウムなどが用いられます。

工業用インク

工業用インクとは

工業用インクとは、産業用インクジェットプリンターや印字機などで工業的に用いられるインク全般のことです。

業務用では幅広い素材への印字・印刷が必要であるため、さまざまな顔料・染料が含まれます。

工業用インクの使用用途

工業製品ではロットナンバーや品質表示、検査印など様々な印字が必要となる場合があります。スタンプマーキング用インクは、金属・プラスチック・紙・段ボール・陶器・ガラス・木材や、布・皮革製品など、様々な素材の製品への印字に用いられているインクです。

また、産業用インクジェットプリンタは、商業印刷、テキスタイル、建材など多様な用途で用いられています。サイングラフィックスや、デジタル捺染、DTG、幟旗などのテキスタイル製品、UV 硬化樹脂、石膏などを用いた模型、部品、鋳型などの三次元造形や、ネームタグ、ラベル、金属缶印刷などが主な用途です。インクジェットプリンタ用のインクは、このような製品素材に合わせて多様な種類が販売されています。

工業用インクの原理

1. インクジェット印刷

工業生産において、多くの製品の印刷に産業用インクジェットプリンタが用いられています。インクジェットプリンタによるインクジェット印刷とは、液体のインクを一滴ずつ滴下させて画像を描く印刷方式のことです。

インクジェットプリンタ用のインクは、染料や顔料などの色料が溶剤に溶かされた組成となっています。顔料は粒子が大きく、浸透せずに対象物の表面に留まる特徴のある色素ですが、染料は用紙などの対象物の中に染みこんで浸透する色素です。顔料は印刷物がはっきりと鮮明にプリントされる一方で、染料は混じり合う事で繊細な色や階調表現をする事が可能です。溶剤には、MEK (メチルエチルケトン) 、エタノール、アセトンなどの揮発性有機溶剤や、水、その他有機溶剤などが用いられます。

その他には、浸透剤 (紙とインクの表面張力を低下させ、インクが紙に定着するのを促進する) 、乾燥防止剤 (インクの乾燥によるヘッドの目詰まりを防ぐ) 、pH調整剤、防腐剤、防カビ剤などがインクに含まれています。これら補助剤は、インクの品質や印刷の品質を維持するのに必要な物質です。

2. スタンプマーキング用インク

ロットナンバーなどの印字に用いられるインクは、スタンプマーキング用インクです。スタンプ捺印によって使用され、一般のスタンプ用インクと同様の使用方法です。油性顔料系、油性染料系、水性顔料系、水性染料系などがあり、スタンプを押す素材によって使い分けられます。非吸収の素材表面に用いられているインクは、溶剤性染料系です。その他にも特殊インクなどもあります。インクそのものの他、インクを含浸させたインクパッドとして販売されている場合もあります。

工業用インクの種類

工業用インクには、黒・白・赤・青・黄色・緑など、基本的な色の種類が一通り揃っています。染料や顔料など色料による分類のほか、用いられている溶剤によって、水性インクジェットインキ、溶剤性インクジェットインキ、UV硬化型インクジェットインキなどの種類があります。これらの溶剤の違いにより、印刷に適した素材が異なるため、選択の際は注意が必要です。また、溶剤性インクジェットインキでは、溶剤の揮発しやすさにより、速乾性のものとそうでないものがあります。

1. 水性インク

水性インクは、溶剤に精製水が使用されています。有機溶剤と異なり人体への悪影響もなく環境汚染の心配もないと言えますが、メチルエチルケトンやエタノールと比べて乾燥時間が長く乾燥しにくい性質です。そのため、印刷対象物は紙などの浸透性のあるものに限られます。連続帳票、商業印刷、段ボール、軟包装、ラベルなどの印刷に適したインクです。

OA用のインクジェットプリンタでは水性インクが主流である一方、産業用インクジェットプリンタでは、水性インクの使用は少ないです。水、色料以外に、保湿剤、浸透剤、pH調整剤、防腐剤などの添加剤が含有されます。

2. 溶剤性インク

速乾性の溶剤性インクには、主にMEK (メチルエチルケトン) が用いられます。メチルエチルケトンを使用したインクは速やかに乾燥して固化するため、常にインクを循環させている連続式のインクジェットプリンターでのみ使用が可能です。印刷後に速乾して速やかに固まるため、非浸透性材質にも印字できるのが特長です。また、メチルエチルケトン含有インクは第四類危険物 第一石油類 (非水溶性液体) に指定されています。

メチルエチルケトンを使用しない溶剤性インクでは、エタノールやアセトンが用いられています。エタノールは、メチルエチルケトンよりは乾燥に時間がかかるものの揮発性があり薬品汚染の心配がないため食品包装などで使用されている溶剤です。アセトンは可燃性ではあるもののメチルエチルケトンよりもさらに速乾性が高いため、ラップなどの軟包材への印字に用いられています。安全対策や法規制対応のコスト削減などから、メチルエチルケトンを使用しないこのような溶剤性インクの需要が高くなっています。

参考文献
https://www.shachihata.co.jp/tat_meister/product/about/
https://www.kishugiken.co.jp/technical_category/ink/
https://www.inx.co.jp/product/use/inkjet.html
https://bipj.brother.co.jp/ink/

ホール効果電流センサー

ホール効果電流センサーとは

ホール効果電流センサーとは、磁電変換素子であるホール素子によるホール効果を利用して、電流値を測るセンサーです。

非接触式の検出センサーであり、直流から数kHzまでの交流電流を連続して計測することができます。製品によって検出可能な電流の強さは異なりますが、4000Aまで検出が可能なものもあります。

ホール効果電流センサーの使用用途

ホール効果電流センサーは、AC/DCカレントセンサとして電流測定に用いられています。製品によって、瞬時波形を記録する短期測定用のものや長期での波形記録に適したものなどがあります。DC及びAC 広帯域波形観測用の電流プローブにも用いられている機構です。

ホール効果電流センサーの仕組みは、産業用、車載用など、各種分野において広く応用されています。例えば、車載用では乗用車やトラック、バス、フォークリフトなどの大型車両においてバッテリー出力モニタリングが挙げられます。

各種産業機器の保守においては、消費電力の把握、電源設備の定期点検、電源品質の監視、などに利用されている機械です。利用される機器には、各種インバーター、産業用ロボット、無人搬送機や、NCマシン、レーザー加工機、溶接機、各種安定化電源、UPS、エレベーターなどがあります。また、太陽光発電システム、風力発電システム、燃料電池システムなどのエネルギー分野でも有用です。

ホール効果電流センサーの原理

ホール効果電流センサーは、電流のまわりに発生する磁界を半導体であるホール素子を用いて、ホール効果で電圧 (ホール電圧) に変換する原理を用いています。この電圧を測定することで、電流値を計測することが可能です。

1. ホール効果

電流の流れる方向に対して垂直に磁場をかけると、電流と磁場の両方に直交する方向に起電力が出現します。ホール効果とは、この現象を指します。

例えば、ホール素子のx方向に電流が流れているときにz方向に磁場がかかると、フレミングの左手の法則によりローレンツ力を受け、y方向に荷電粒子の進む方向が曲げられます。これによってホール素子には+側に帯電する面と-側に帯電する面が現れるため、このそれぞれの面の電位差を測ることによって周囲の磁界の発生有無や磁界の強さを判別することが可能です。

2. ホール素子

ホール素子は、半導体素子の一種です。ホール素子の起電力は磁束密度、電流、キャリアの移動度に比例するため、高感度のホール素子には移動度の大きい半導体を用いることが必要です。原理上は原料にゲルマニウムやシリコンを用いて作製することも可能ですが、素子の感度を高めるため、ほとんどのホール素子では移動度の大きいInSb (インジウム・アンチモン) 、InAs (インジウム・ヒ素) 、GaAs (ガリウム・ヒ素) などが用いられています。

3. ホール効果電流センサーの機構

ホール効果電流センサーは、ホール素子をギャップ部分に組み込んだ磁気鉄芯 (磁気コア) と、増幅回路から構成されます。これは、ホール電圧は一般に小さい電圧であるため、増幅して出力する事が必要なためです。

磁気コア内に測定導体を通過させることで、導体を流れる電流によって磁気コア内に磁束が発生します。この磁束が磁気コアのギャップ部に挿入したホール素子を通過することで、ホール効果が起こり、ホール電圧が現れるという仕組みです。

このホール電圧は磁束に応じて発生するため、電圧を測定することで磁束を求めることができます。また、この磁束は電流に比例して発生しており、結果的に電流の強さを求めることが可能です。

非接触で電流測定するので、測定の為の電圧降下が無いことが特徴です。優れた絶縁性と交流、直流、交直重畳した電流も測定できるデバイスと言えます。

ホール効果電流センサーの種類

ホール効果電流センサーは、1A程度の電流が検出可能なものから2000A、4000A程度まで、検出可能電流範囲は製品によって様々です。

形状は、貫通穴で回路に組み込むタイプの他、完成している回路の外から取り付けが可能なクランプ方式のものなどがあります。測定対象の電流によって発生した磁界をホール素子で直接検出する機構が最もベーシックですが、ホールICを用いているもの、入力電流によって発生した磁界を打ち消すように二次巻き線にフィードバック電流を流すもの (クローズドループタイプ) などがあります。目的に合わせて適切なものを選択することが必要です。

参考文献
https://www.hioki.co.jp/jp/products/listUse/?category=39
https://www.kohshin-ele.com/products/currentsensor/hall/
https://www.tamuracorp.com/electronics/jp/cs/
https://www.nicera.co.jp/about-hall-elements

プラズマジェネレーター

プラズマジェネレーターとは

プラズマジェネレーターとは、プラズマを生成させるための装置です。

プラズマとは物質の状態を表すものであり、気体が加熱された場合に生じる状態です。自然界の太陽やオーロラ、人工物では蛍光灯の光はプラズマであり、空気清浄機など身近な家電にもプラズマが利用されています。プラズマを利用した装置は、プラズマジェネレーターを内蔵している場合が多いです。

プラズマジェネレーターの使用用途

プラズマジェネレーターは、プラズマを活用した製品の製造工程で多く使われます。プラズマを利用した製造工程は大きく、表面改質、洗浄、スパッタリング、エッチングの4つに分類されます。それぞれの工程は以下のとおりです。

  • 表面改質
    他の液体との親和性を示す濡れ性を向上させます。
  • 洗浄
    物質の表面に付着した有機汚染物をプラズマを使って水や二酸化炭素に分解し、次工程の処理をしやすくします。
  • スパッタリング
    対象となる金属に陽イオンを衝突させることで、金属の粒子を飛び垂らしてコーティングや薄膜形成を行います。
  • エッチング
    ある物質に溝やパターンを彫ります。

プラズマジェネレーターを使った表面改質、洗浄、スパッタリング、エッチングは、太陽電池、半導体の製造、さまざまな製品の硬質コーティングなどに活用されています。また、プラズマ加工という主に金属の切断にもプラズマが利用されていますが、プラズマ切断機としてプラズマジェネレーターは組み込まれているものが主流です。

プラズマジェネレーターの原理

プラズマジェネレーターの原理を理解するためには、まずプラズマを理解する必要があります。プラズマとは、気体を加熱して得られる物質の状態のことです。

固体、液体、気体に加えて物質の第4状態とも呼ばれます。水であれば気体となった水蒸気の水分子から電子が飛び出して、水の正イオンと電子が多数飛び回っている状態を指します。

ただし、全ての水の分子が分解しているわけではありません。水のプラズマ状態では水の分子、OH分子、水素原子、酸素原子、水素の正イオン、酸素の正イオン、水の正イオン、自由電子が混在しています。プラズマジェネレーターは、主にアルゴンやヘリウムなどのガスを電気を用いてプラズマ状態を作り出す装置です。

プラズマジェネレーターの種類

プラズマジェネレーターの種類は、プラズマの発生方法によって分類されます。

1. 直流放電方式

直流放電は密閉容器内の圧力を下げ、いわゆる真空状態でプラズマを生み出す方法です。密閉容器内の両端に2つの電極を設置し片方にプラス、もう一方にマイナスの電圧を加えます。

容器内に存在する電子は、プラス電極に向かって動き出し加速していきます。十分に加速された電子が空気の分子と衝突すると分子からイオンと電子が生成されてできるのが、プラズマ状態です。直流放電によって生成したプラズマは真空プラズマと呼ばれ、直流プラズマジェネレーターなどと呼ばれる装置があります。

2. 誘電体バリア放電方式

誘電体バリア放電方式は直流放電とは異なり、大気圧中でプラズマを生み出す方法です。大気圧で生成するプラズマは通常では温度が高く、アーク放電などによって生み出されます。プラズマを工業用に利用する際には温度の低いプラズマが必要な場合が多く、分子の温度を下げる方法が用いられます。その一つが誘電体バリア放電方式です。

2つまたは1つの電極に誘電体を設け、数kHz以上の高周波の正弦波電圧を加えます。ヘリウムやアルゴンなどのガスを用いて大気圧中でグロー放電という現象を発生させる方法です。直接処理方式と、より高い数十kHz以上の正弦波電圧を加える間接処理方式があります。

3. 金属電極パルス電源方式

プラズマの温度を上昇させないために、電源のON、OFFを繰り返すパルス電源を用いる方法です。電源のON時間は数μ秒程度のごく短いパルス波形電源を用います。

工業用ラジエーター

工業用ラジエーターとは

工業用ラジエーターとは、主に産業用機械用に開発されたラジエーターです。

私たちの日常生活で最も身近なものに、エンジンを使った車のラジエーターがあります。自動車用のラジエーターはガソリンエンジンやディーゼルエンジンで発生した熱を大気中に放出し、エンジンが壊れるのを防ぐ役割を担うものです。

工業用ラジエーターは、さまざまな産業用機械において発生した熱を放出するために使われます。エンジンのような内燃機関において必須となる装置です。

工業用ラジエーターの使用用途

1. 特殊車両

工業用ラジエーターは、建設現場などで活躍する特殊車両に使用されています。特殊車両にはトラッククレーン車、ブルドーザー、油圧ショベル、バックホー、ダンプカーなどがあります。

2. 工作機械

工作機械にも工業用ラジエーターが必要です。旋盤、フライス盤、マシニングセンタなどは電気で駆動しますがモーターも発熱するため、工業用ラジエータによる冷却が行われています。

その他、非常用発電装置、業務用空調機器にも工業用ラジエーターが取り付けられています。

工業用ラジエーターの原理

工業用ラジエーターには空冷式と水冷式がありますが、いずれも熱伝導の現象を利用しています。熱伝導とは物体の内部に温度の差がある場合、熱が移動する現象のことです。熱は物体の自由電子が移動したり、原子や分子が振動することによって伝わります。

また、熱は高い温度から低い温度へと伝わるのが特徴です。物体内部の熱の伝わりやすさは、材質によって異なります。物体の熱の伝わりやすさを表す物理量が熱伝導率 (W/(m・K) ) です。

金属では銅やアルミニウムの熱伝導率が高く、それぞれ393W/ (m・K) 、222W/ (m・K) です。金属でもステンレスは熱を伝えにくく、熱伝導率は16.3 W/ (m・K) (SUS301の場合) しかありません。工業用ラジエーターは熱源に対して熱伝導率の高い物質を接触させ、さらに表面積が大きくなる形状によって大気との接触面積を稼ぐことで、熱を放出しやすくしています。

また、熱の伝わりやすさは一般的に気体、液体、固体の順番です。固体で冷却するものはヒートシンクなどと呼ばれています。ラジエーターは液体、気体の熱伝導を利用するのが一般的です。なお熱伝導以外に熱が移動する現象には、対流と熱輻射があります。

工業用ラジエーターの種類

工業用ラジエーターには構造に応じていくつかの種類に分類できます。ここでは代表的な3つのタイプについて説明します。

1. 多管式 (シェル&チューブ式)

多管式は液体から液体に熱を伝える場合に用いられる方式です。円筒形の本体の中に細い管を使って熱を持った液体を通し、円筒内の液体との温度差を利用して放熱させます。

2. プレート式

プレート式は金属を例えば波形などにプレス成形し、一定の間隔を確保しながら積層しています。熱を持った気体や液体がプレートと接触することによって、熱の移動が行われます。工場では排熱利用や熱回収、オフィスビルなど大型の建物の空調機器にも多く利用されている方式です。

3. フィンチューブ式

フィンチューブ式は、管に伝熱板を加えることによって表面積を増やしているのが特徴です。気体と液体との熱移動に利用され、管の内部に水、蒸気、油などの液体を流し、空気やガスなどと熱を交換します。

工業用ラジエーターのその他情報

熱交換器との違い

ラジエーターと同様の働きをするものに熱交換器があります。熱交換器とは、高い熱と低い熱とを交換するものです。ラジエーターも熱交換器に含まれます。

一般的にラジエーターは車の部品として広く認知されており、特に内燃機関の冷却を冷却水 (クーラント) を用いて冷却するものに対して呼ぶ場合が多いです。

ただし、ラジエーターの動詞である「radiate」は放出する、射出するといった意味があり、熱が高いものから低いものへと移動する現象を利用するものはラジエーターと一括りにすることができます。

ガラスセラミックス

ガラスセラミックスとは

ガラスセラミックスとは、特殊な組成のガラスを再加熱処理し、ガラス内部に結晶を均一に析出させたものです。

結晶化ガラスとも呼ばれます。素材表面は滑らかで光沢を帯びており、色は、透明・乳白色・模様を焼き付けたものなどさまざまです。通常のガラスは非結晶質ですが、ガラスセラミックスはガラスの内部に微細な結晶が多数析出した複合体となっています。強度や耐熱性などの点で通常のガラスよりも優れており、様々な産業において幅広く活用されている素材です。

ガラスセラミックスの使用用途

ガラスセラミックスが使用される場面は非常に幅広いです。日用品では、耐熱食器や、電子レンジのターンテーブル、トレイなどに用いられます。また、IHクッキングヒーターやガス調理器のトッププレート用ガラスや、ストーブや暖炉などの前面窓、オーブントースターの前面ガラスなど加熱機器にも多く採用されています。

また、ガラスセラミックスは火災における高温に強く、放水活動による急冷にも割れないと考えられており、防災の上でも有効な素材です。住宅だけではなく、交通施設、教育施設などの人が多く集まる施設の防火ガラス・防火窓としても広く利用されています。

その他、各種保護カバー (カメラ保護カバー、照明器具カバー、各種測定器のメーターカバー、モバイル機器カバー) 、理化学用の耐熱材、人工衛星の材料、精密軸受、絶縁材、低温封着材なども用途の一つです。また、高出力 LED・LD 用基板としても用いられている素材でもあります。ガラスセラミックス基板は、主に車載分野、屋内外照明分野、ディスプレイ分野、医療分野などで活用されている部品です。

ガラスセラミックスの原理

ガラスセラミックスは特殊組成のガラスを成形したのち、再加熱処理を施すことによって微細な結晶を析出させたものです。微結晶体であるために表面からの亀裂が進みにくく、一般に通常のガラスよりも強度が高い性質です。

結晶の光学的性質を利用して、特有の光学特性をもつガラスセラミックスも存在します。ガラスセラミックスの特性は結晶の種類、大きさや量、残存ガラス相などに左右され、これらは元々のガラスの組成と再加熱条件によって決定されます。

なお、ガラスセラミックスは珪酸塩ガラス、アルミノ珪酸塩ガラス、ホウ酸塩ガラスなどのガラスに結晶核形成剤が添加された組成をしています。主な核形成剤は、金・銀・銅・白金などの貴金属や酸化チタン、酸化ジルコニウム、フッ化物、酸化バナジウム(III)、酸化ニッケル、酸化クロム(III)などです。

ガラスセラミックスの特徴

ガラスセラミックスの代表的な特徴の一つが、急激な温度変化 (サーマルショック) に強いことです。通常のガラスを急激に加熱すると、加熱された面が膨張する一方で、外面はすぐに熱が伝わらずに膨張しないため、すぐに割れてしまいます。一方、ガラスセラミックスはガラス内に結晶が含有されているため、ほとんど膨張しません。このため、サーマルショックにも割れずに耐えることが可能です。

ガラスセラミックスの種類

ガラスセラミックスは、前述の通り組成や結晶構造によって性質が左右されます。組成や製造方法によって熱膨張係数を調整することができるため、熱膨張係数をゼロまたは負にするように調製した温度の急変に耐える耐熱衝撃性の高い製品も販売されています。

ガラスセラミックスの中でも特に耐熱性の高いものは、超耐熱結晶化ガラスと呼ばれる素材です。耐熱衝撃性と、反復加熱に対する耐性を備えており、堅固なものでは800℃からの急冷にも割れずに耐えることが可能です。また、LED用基板素材では、紫外線から赤外線領域までの幅広い波長の高出力化に最適化されています。様々な用途で使用される素材であるため、使用する際は自分の用途にあった製品を選択することが必要です。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jiep1985/4/1/4_1_39/_pdf/-char/ja
https://www.neg.co.jp/rd/topics/product-glassceramic/
https://kotobank.jp/word/%E3%82%AC%E3%83%A9%E3%82%B9%E3%82%BB%E3%83%A9%E3%83%9F%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9-47141