ポリマー接着剤とは
ポリマー接着剤とは、ポリマー (高分子) が使用されている接着剤全般のことです。
金属、プラスチック、木材、ガラス、セラミックなど、様々な素材を強力に接着することができます。ほとんどのポリマー接着剤は人工合成材料から製造されており、柔軟性や耐熱性、耐薬品性、導電性など、用途に応じて固有の特性を持たせることが可能です。
ポリマー接着剤の使用用途
ポリマー接着剤は、金属、プラスチック、セラミック、ガラス、皮革、木材、ゴム、コンクリートなどの多様な素材に使用することが可能です。
工業、建設、自動車、船舶、航空宇宙など、幅広い産業で用いられます。承認を受けたものは、医療の現場でも利用することが可能です。また、電気絶縁性が高い接着剤は電子部品に適しており、電子機器、パッケージングなどの分野で使用されています。
ポリマー接着剤の原理
ポリマー接着剤は、液状の物質として対象物表面に液状に付着し、後に硬化することで効果を発揮する物質です。硬化は重合や硬化剤などとの化学反応、溶媒の蒸発などによって引き起こされます。
基材にくっつく接着力と、接着剤自体の構造を維持する凝集力の両方でその作用が成り立っています。接着力とは異なる分子同士をくっつける力であり、凝集力とは同じ種類の分子同士を結びつけておく力です。
なお、ポリマー接着剤の接着力は、物理的接着・化学的接着・分散接着のいずれかの機構によります。
1. 物理的接着
物理的接着とは、接着剤が基材表面の穴に流れ込んだり、突起物に付着したりすることで力学的に固着する機構のことです。基材の表面に小さな穴などがある場合に特に有効な接着方法です。
2. 化学的接着
化学的接着とは、化学結合による接着です。最も強い結合はイオン結合や共有結合であり、次に強い結合は水素結合です。イオン結合とは、正電荷を持つ陽イオンと負電荷を持つ陰イオンの間の静電引力による結合であり、共有結合とは原子間でいくつかの価電子を互いに共有し合うことによってできる結合を指します。水素結合とは、電気陰性度が大きな原子に共有結合した水素原子が、近傍に位置する窒素、酸素、硫黄や、フッ素、π電子系骨格などの孤立電子対と形成する相互作用です。
3. 分散接着
分散接着とは、ファンデルワールス力 (物質内で分極して正電荷と負電荷とを帯びた部分により二つの物質が静電的に引き合う力) によって結合する接着です。
ポリマー接着剤の種類
ポリマー接着剤には、懸濁水溶液状となっているエマルションタイプのものや、ポリマーが溶剤に溶解している溶液型のもの、光 (紫外線) や熱、圧力などを与えて化学反応を起こすことにより硬化が開始する反応型のもの、熱可塑性接着剤であるホットメルト接着剤などがあります。
1. エマルション
エマルションタイプの接着剤は、ポリマーが溶解せずに乳化して懸濁液/懸濁水溶液状となっている接着剤です。代表的な物質として酢酸ビニル樹脂エマルション、アクリル樹脂エマルションなどがあげられます。酢酸ビニル樹脂エマルションは、木工用で広く利用されている接着剤であり、アクリル樹脂エマルションはより接着性、耐水性に優れた接着剤です。合成ゴムエマルション床用接着剤などに用いられます。特に天然または合成ゴムが主体となっている接着剤をラテックス系接着剤と呼びます。
2.溶液型
溶液型の接着剤は、有機溶剤に高分子を溶解させたものです。酢酸ビニル樹脂、クロロプレンゴム、天然ゴムなどの種類があります。酢酸ビニル樹脂は安価であり、またクロロプレンゴムは金属、プラスチック、木材などの接着に汎用される代表的なゴム系接着剤です。 一般的にゴム系の接着剤は、皮革、ゴム、布のような柔らかいもの同士の接着に適しています。
3. 反応型
反応型の接着剤は、光 (紫外線など) や熱、圧力など何らかのエネルギーを与える事で化学反応を進行させ硬化する接着剤です。オーブンや硬化炉、UVランプ等を用いて硬化させるものや、常温にて自然に硬化するものなどがあります。硬化後に熱硬化性高分子となる製品が多いです。
反応の種類によっては2種以上の化学種を用いることから、1液タイプの製品だけでなく、使用の直前に混合する2液タイプの製品も多くあります。用いられる具体的なポリマーの種類としては、フェノール樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、アクリル樹脂系などがあります。
参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kobunshi1952/19/6/19_6_472/_pdf
https://www.elastomer.kuraray.com/jp/blog/polymer-adhesives/
https://www.monotaro.com/note/readingseries/kagakukoubunshikisokouza/0305/
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kakyoshi/46/5/46_KJ00003519943/_pdf